アナザー・ワールド 〜オリジナルスキルで異世界とダンジョンを満喫します〜

Blackliszt

148 密談

「入った・・・」

 橋の境界線を越えて一歩踏み出すと、地面が木の床から森の中の土の床へと変わる。

「本当、このいきなり地面が変わる感覚は不思議ね」
「まあ転送されること自体珍しいから仕様が無いわよ」

 すると、続いてミリア、そしてエリシアが僕の背後へと転送される。

「来たな」
「来たわね」

 中央のスクリーンに明かりが灯り、ウィルとアイナが掛け合う。

「こんにちはー!いまテールで話題の期待の新星! チームアリアのエリアCボス戦!」
「「オォーッ!」」

「実況は本日も私、ナノカがお送りします!」
「「オォーッ!」」

「皆さん応援の準備はいいですかぁー!」
「「ウオォォォォーッ!」」

「それでは音声、映像、そして私の実況をお供にコンテストをお楽しみください!」

 ・
 ・
 ・

「うぉー! きたぞ私の愛娘が!」

 ナノカと観客の雄叫びに合わせて、執務をほっぽり出して応援しにくるほど愛する娘の登場に立ち上がって歓喜するブラームス。

『『うるさい』』

 まだ戦闘すら始まっていないただの登場でここまで盛り上がる夫、あるいは父に心の中でうんざりするマリアとパトリック。 

「よかった。いつも通りね」
「ああ」
 
 戦闘を前にミリアと言葉を交わすエリシアを見て、一安心するリンシアとヴィンセント。

 その後、ウォルター達兄弟にアルフレッド、フラジールにティナも入場してくるわけだが──

「なんでウチの天使が先頭じゃないんだ!レイアを差し置いてなんだあのガキは!」
「まぁまぁ落ち着いてカミラ。先頭できたってことはあれがウィル達の子の・・・」

 自分の子供が先頭でないことに怒るカミラが怒る。だが──

「・・・の」
「あ〜らどうしたのエド? リアムちゃんを見て固まっちゃって」

 そんなカミラをなだめようとしたエドの口が、リアムに焦点を当てたまま固まった。

「ん?おいちょっと待て!エド、あの坊主!」
「うんカミラ、昨日森で助けた子だよ!」

 途端、リアムに気づいたカミラもエドと同調して驚愕する。

「あら、二人ともリアムと会ったの?」

「「リアム?」」

 隣でリアムを見て騒いでいる2人に、アイナが尋ねる。

「そうか、あの子がウィルとアイナの子だったのか・・・」
「ああ、俺の自慢のせがれだ!」
「でもだったらどうしてあいつエリアDでぶっ倒れてたんだ?」

 ウィルの反応で更なる確信が得られたところで、カミラが不穏な言葉を口にする。

「なんだと?」「倒れてた?」

 これにはウィルとアイナ、2人ともが動揺する。
 
「実は昨晩、研究小屋から帰ってくるときにエリアDで彼に会ったんだ」
「それとそうだな。今入って来たあのもう一人のちんちくりんも一緒にいたな」

 もう一人のちんちくりん。つまりはアルフレッドのことである。

「ちょっと待ってエド、カミラ。エリアDにリアム達がいたっていうことも驚きだけれど、倒れてたって?」

 すると、何よりもまず、リアムの安否に不安を覚えたアイナからの質問が。

「大丈夫だよアイナ。僕がちゃんと診て薬を渡した。彼があそこに映っているのがなによりの証拠だ。それより・・・」

 エドは心配を顔に浮かべるアイナを安心させるべく、昨日自分が診察をし、適切なポーションを渡したことを伝えた。

「エリアDからは、そもそもの魔力の質が違う。だから資格を持っていなければ全身激痛に蝕まれてやがて死ぬ」
「おいエドでもあいつは・・・」
「そうだね。確かに防護用の魔力は纏っていなかったし、なにより魔力切れで倒れていた。でも今彼は資格を得るための試練でもあるエリアCのボス戦に挑んでいる。だから──」

 エリアDから先のエリアの特徴を確認しつつ、昨日のリアムの容体も確かめて考察をするエド。しかし、だから──・・・と、エドが話を続けようとした瞬間──

「「リアム(小僧, リム坊, くん)が魔力切れ(だと)?」」

 その場にいたリアムを知る誰もが、驚愕と不可解なクエスチョンを浮かべる。そして、以外にも一番早くそれに反応したのが──

「馬鹿なあり得ない!」

 なんと、ブラームスの息子であるパトリックであった。

「だがエリアDに資格なしに入る裏技に魔力で全身を覆う方法がある。それだとすると──」
「でもリアムの魔力量でそう簡単に魔力切れになるかしら?」
「そうね、リアムちゃんの魔力量だとちょっと信じられないわね」

 一方、ウィルやアイナを始め、一度ダンジョンに潜ったことのあるベテラン達は冷静だった。しかしやはり、その波紋は大きかった。

「落ち着きなさいパトリック」
「しかし父上・・・」

 未だ、信じられないという顔で、スクリーンに映るリアムの顔を見るパトリックに、ブラームスが声をかける。

「最近、あなたはリアムくんの話ばかりしていたわね。だからかしら?」

 それに続き、母のマリアも。

「件の調査はあなたに一任しているけど、根を詰めすぎているんじゃない?」
「いえ、その・・・」

 マリアの言葉に、言葉を詰まらせるパトリック。しかし──

「母上達は彼のことを過小評価しています! 彼の才能は異常といっても差し支えない! だから奴らも・・・!」
「パトリック!・・・この件は重要機密だ。あまり内容を匂わすような発言は慎め」

 パトリックが反論をと、必死な様相で2人に訴えるが──

「・・・はい。申し訳ありません。少々気が動転していました」

 父の一声によって、彼は冷静さを取り戻すに至った。

「よっぽど気に入っちゃったのね」
「全くミリアだけじゃなくパトリックまでとは・・・」

 考え事をするパトリックの横で、密談するマリアとブラームス。

「じゃあ取っちゃいましょうか?」

 すると──

「マリア!?」

 マリアがとても危険な発言をする。衝撃的すぎるマリアの発言に、ブラームスは思わず周りを見渡す。

「確か4年に上がる前には50万を超えたって言ってたような」
「おいおいそんなの神話のバケモノじゃねぇか。流石根暗。相変わらず冗談のセンスは壊滅的か」
「なんだと!この・・・」
「とにかく! 一番の問題は彼の魔力量じゃなくて、どうして魔力切れの状態で普通にエリアDで倒れていたのかだよ」
「「確かに・・・」」
「でも倒れてるのに普通ってのもなんだかおかしな話よね〜」
「「確かに・・・」」
「あんまり大差な〜いんじゃないのアイナ? ほら、霧と霞みたいなもんよ〜」
「「確かに・・・」」 
「あら!それを言うならクッキーとビスケットだってそうよね」
「「確かに・・・ん?」」
「あ〜もう! みんな変わってないのはいいけどどうしてこうすぐ話が本筋から逸れるんだー!」

 直ぐに話を逸らしてしまう旧アリアメンバー+エクレアに振り回されるエドガー。
 
「 ・・・そ、そんなことしたらウィルとアイナと戦争になるぞ!」

 そんな彼らの様子を確認したのち、ブラームスはヒソヒソと口を手で隠してマリアの方へ向けて言葉を送る。

「あら。別にミリアのそば付きとしてスカウトするくらいならいいんじゃないかしら?」
「・・・え」
「やだあなたったらその反応、一体何を考えていたのかしら?」
「んな! い、一緒だ! おまえと一緒のことを考えていた!」
「なんだかんだ言って、あなたもリアムくんには一目置いているってことね。ふふ」
「・・・」

 面食らいつつ恥じらうブラームスに、微笑むマリア。

「なにか、非常識なことが起こったようだが私たちにはイマイチ・・・」
「そうね・・・ヴィンス」

 そんな中、ちょっと置いてけぼりをくらってしまうブラッドフォード夫妻であったが──

「まあ、あんた達はこいつらの分まで子供達を見守ってやってくれ。ほれ、そろそろ始まるようだよ」

 マレーネのその一言で、彼らはスクリーンに映る子供達を見て、密かなエールを送る。

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