アナザー・ワールド 〜オリジナルスキルで異世界とダンジョンを満喫します〜

Blackliszt

146 此岸と彼岸

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「思い出した・・・あの後あまりの酷さに今の今まで気絶してたんだ・・・」

 あの極度に命を脅かす危険な奇跡的なほどに不味すぎる味覚破壊死の毒シチュー・・・

「命に関わる・・・」

 大事なことなので、2回言いました。

「でも、一応僕のためにミリアが作ってくれたんだよね」

 ふと、隣をみると、両隣にはエリシア、そして──

「ありがとう」
「ふふっ・・・リアむにゃ」

 寝言で僕の名を呼ぶミリアがいた。

「よいしょ、と・・・ふふ」

 まだみんなは夢の中。起こさないようにゆっくりと立ち上がるが、適度な間隔をとって静かに眠るアルフレッドとフラジール、仲良くくっついて寝ているティナにレイア、寝相の悪いラナの体重を一身に受け止めウンウン唸っているウォルターと、それぞれがそれぞれの微笑ましさに、思わず笑みをこぼしてしまう。

「おはよう」
「おはようございます」

 すれ違い、声を抑えて挨拶を交わす厚着の冒険者たち。

「うーん。気持ちいい」

 リアムはキャンプから離れた河原に来ると、朝霧が覆う川の辺りで大きく背伸びをして深呼吸する。

「うっす!」

 すると──

「ウォルター。ごめん起こしちゃった?」
「いいや。ラナの奴が顔面にかかと落とししやがってな。ほらこの通りだ」

 右頬に赤く丸い跡をつけたウォルターが、バシッと程よい強さで背中を叩く。

「昨日は勝手なことをしてごめん」
「ああ。全くだ」

 それから、2人で川のほとりで並んで朝霧を眺めながら──

「もう、体調はいいのか?」
「うん。大丈夫」

 単調な言葉を交わしていく。

「なんというかさ。とても穏やかな気分なんだ」
「そうか・・・俺は今、緊張しまくってる」

 口元から柔らかくまばらに広がる息と、フーッと吹き抜けていく白い風。

「精神が一気に解放されたというか、今まで見えない靄で制限されていた場所が使えるようになった感覚」
「俺は、キュッと体の中心に神経を引っ張られている感覚だ」

 センチメンタル。相反する2つの感情。

「・・・時々思うよ。同じチームの仲間だからって砕けた接し方をしているけど、心の奥ではしっかり尊敬してる」 

 よく知る親しい関係。

「男の兄弟がいたら、こんな感じなのかなって」

 だからこそ、相手の感情に感化されることも、また必然であった。

「そうだな。俺もそう思うよ」

 適度に保たれた距離。親友とは少し違う関係。

「ふふ・・・」
「クク・・・」

 遠すぎず近すぎない。それがまた、心地いい。

「今日のボス戦。頑張ろうね」
「おう!」

 差し出された右の拳に、彼の左拳が重なる。

「よし!・・・ってな」

 すると、合わさった拳の横からもう一つの拳が──

「「アルフレッド!」」
「なんだシリアスな雰囲気だったから隠れて見ていたが、いてもたってもいられず出てきてしまった」

 もう一人の、気心の知れた仲間。

「年齢(とし)でいうと、僕が一番下かな?」
「だとすると、威厳もなにもないんだが」
「だな。うかうか昼寝もしてられねぇ」

 3人で、顔を合わせて冗談を言い合う。
 
「太陽だ・・・」
「ああ」
「眩しいな」

 対岸とは反対側、背後から体を照らし始めた光に振り返り、2つの影が霧に映る。

 川に溜まっていた霧は自然とはけて、霞を連れて消えていく。

 やがて、景色の主役となるのは──



 
──此岸に立つ


──3人の親友(きょうだい)たち。

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