アナザー・ワールド 〜オリジナルスキルで異世界とダンジョンを満喫します〜

Blackliszt

141 メランコリーをぶっとばせ!

「今の風は・・・」

 リアムと別れてたった数十秒後、少し離れた後方で、森の中を突き抜ける鋭い風。

「フン、本当にあいつはどうなっているんだ?」

 が、先ほどまで感じていた悔しさが嘘のよう。今はこの肌を突き刺すような寒さを風を受け、確かな震えと体の中で沸騰する熱さを感じる。

「絶対にいつか隣に立ってやるからな!」

 アルフレッドは猛々しく吠える。己の中で再燃した不屈の意志を胸に。

「・・・なに!? 主人公と高みを目指すと約束して無念にも死んでしまったライバルの怨念を持つ熱血ゾンビ!?」

 すると、20mほど先の木の根元、ビクビクと体を震わせながらもこちらに視線を送る影が──

「お、お前まさか今の聞いてたのか?」
「ど、どうしてあんたがこんなところに!?」

 アルフレッドは刹那、胸の奥どころか足から頭の頂点までに広がった熱により、顔を真っ赤染める。
 
「こんなところにいたのか・・・」
「って無視するなー!」

 だがここは、あえて平静さを装うとしよう。そう、クールでダンディーな男。アルフレッド・ヴァン・ウィンターフィールドを装うのだ。

「それが、本当か? プハァー・・・」

 もしここに、葉巻の一本でもあって吹かしていればこの上なく決まるセリフ。

「いや、その・・・」

 だが彼の手元に、そんな代物があるはずがなかった。突然目の前に現れて熱血したかと思えば、妙なジェスチャーをしながら意味不明なことを言い出す年下の少年に、ミカは内心戸惑っていた。
 
「どうしてこんなところにいるんですかー?」
「結局また、繕うのか。このカバ女が・・・」
「ば!・・・カバ?」

 すると、少年は自分のことをバ・・・カバ?と言って自分のことを叱りつけてくる。

「俺にも覚えがある。過程も発散法も違うが、家の品格を守るというプレッシャーに溺れてしまうあまり、大切なものを見失って誰彼構わずあたってしまう時期があった・・・」

 彼は過去に、次期領主候補である兄とは違う待遇を受け、そのプライドの傷からとある少年にひどく、醜く迫り、権力を翳して暴力的な振る舞いをしてしまった。

「しかし、そんな時。俺はとある人物に出会い、そして諭されたんだ。自分の汚い部分を正面から思いっきりぶつけると、そいつは倍以上の力で思いっきり殴り飛ばしてくれた」

 しかしその少年は自分の暴虐な振る舞いにも屈することなく、従僕するどころかその後失態をしでかした自分の代わりに 懐の深さを見せた。

「だから自分い嘘をついて強がるのはやめろ! 本当の自分をさらけ出すんだ!」

 そんな経験をしたことがある彼だからこそ、彼は彼女の不安定さに気づき、そして言いたかったのだ。迷うな! 自分自身を見定めろ!突き進め!・・・と。

『ど、どうだ・・・言ってやったぞ』

 そのとき、少年の脳内には が溢れ、やってやったぞという自慢に溢れていた。しかし同時に、彼は冷静な判断力を欠いていた。

「あ、あなたに言われたくないですー! 熱血してるところをもろに見られたからってそれを誤魔化そうとなに偉そうに説教してるんですかー!」
「・・・なっ!」
「それにあなたの今の話を私のそれと一緒にしないでくださいー!だいたいあなたのはただ駄々をこねた結果周りに迷惑をかけて慰めてもらっただけじゃないですかー!」

 そう、彼のそれは、崖の前で右往左往している彼女に手を差し伸べるものではなく──

「バッ! カバ野郎! 折角人が慰めてやってるってのになに人の恥を!」
「そんなこと頼んでないもんねー! べーベロベロ!」

 自らが自爆し、結果一緒に奈落の底に落ちるという道連れの手段だった。

「だいたいさっきからどうしてあなたがここにいるのか聞いてるでしょ! 資格を持ってないあなたがどうしてこんな深いところまで来れるのよ!」
「なめるな! これでも辺境伯 スプリングフィールド領領主!アルファード・ヴァン・スプリングフィールドが次男アルフレッド様だ!今更貴族だと己を誇示つもりはないが、魔力の多さならそこらの平民の比ではない!」
「あぁーそうですか! いいですね、天性の才が一つでもある方は!」 

 そして泥沼はさらに加速していく──

「だが、そろそろ僕の魔力も限界が近い。それにリアムが・・・そうだ!リアムが僕たちを接触させるためにゴーストと一人戦っているんだ!」

 とも思われたが、言い合いの最中、アルフレッドはこんな言い争いをしている場合ではないことを一つ思い出す。

「えっ・・・」

 そしてそれを聞いたミカも、駒のように回転する頭の動きで饒舌に動いていた口の動きを止める。

「連れ戻しに来ておいてなんだが、これ以上お前とああだこうだ言い争っている暇はない!」

「まっ──」

 だが、彼女 果たして落ちこぼれの自分が、彼らの力になることができるのだろうかと。

「だから──」

 しかし、そんなことをグジグジ言っている時間が──

「来い! そして僕たちを助けてくれ!」

 もったいない。

「お前の力が必要なんだ!」

 貴族ともなれば、力を国のために奮い、王ともなれば国の心臓として絶対に敗北してはならない。しかし領主ともなれば、民を守ることを最優先とし、冷静な判断で脅威を排除し自分の命を擦り減らしてでも命を守る。

『切り抜けろ』

 アルフレッドは理解していた。

『今僕に必要なのは──』

 自分は決して、絶対じゃない。しかし彼の隣にいれば── 

『友だ』

 そんな憂いが必要ないくらいに、熱くなれる。

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