アナザー・ワールド 〜オリジナルスキルで異世界とダンジョンを満喫します〜

Blackliszt

137 Touching heart and Landscape

「なぁ、どうせなら、一度幽霊橋の途中まで行ってみないか?」

 最初は、アルフレッドのそんな一言から始まった。

「行っても弾かれるだけだぞ?」

 ウォルターが、それを聞いてなだめるように、しかしどこか懐かしくこそばゆそうに呟く。

「ウォルターは行ったことがあるの?」
「ああ。だが通れなかった。俺もまだ、エリアCのボスには勝ててないからな」

 僕の質問に、ウォルターが答える。

「なにせ今までソロで雇われやってたからな。どれだけ小賢しく作戦を立てても、さすがに俺だけじゃああいつらを複数相手にするのは骨が折れる」
「私も私もー。・・・骨が、折れる」

 すると、珍しいウォルターの弱音を拾ったラナが、顎に手を当てななめ45°の流し目で眉を上下に動かしながら、キランといぶし銀に追随する。

「ラナ! お前って奴は〜!」
「ゴメンゴメンってウォル兄!でもほら、行ってきたらいいんじゃない? その方が気合も入ると思うんだよねー」

 からかったことで頭を上からグリグリとされるラナが、痛がりながらも渋るウォルターに再提案する。

「ほらほらリアムもいいと思うよね?」

 それから、僕にも。

「ボク?・・・でも今なぁ、夕食のシチューを煮込んでるところだから」
「だったら私がみててあげるって。ほら、私も一回実はカリナとあの橋行ったことあるし」
「本当に? だったら任せて行ってみても・・・」

 そして、僕の心はラナの説得により揺れ──

「って、ラナに任せたらつまみ食いしそうだからダメだ!あぶなー」

 揺れきる一歩手前で、なんとか流されることなく1踏みとどまった。

「えーっ・・・私ってそんなに信用ない?」
「「ない」」

 ラナのおとぼけに、ウォルターと僕は口を揃えて答える。

「うわーんレイア、ティナちゃん! ウォル兄とリアムが二人で私をイジメるー!」
「ちょっとお姉ちゃん!?」
「クシュん!・・・」

 突然、態とらしく鳴くラナに抱きつかれ驚くレイアと、陽も山裾に近くなり、少し寒いのか可愛らしいくしゃみをするティナ。

『イデア』
『全く、スキル使いが荒いですね』

 次の瞬間、僕は声には出さずにイデアを呼び、とあるアルゴリズムの形成を頼む。

「そうだ! だったらレイアも一緒に鍋を見てたらどう? それだったら安心でしょ?」

 その束の間、妙案だと言わんばかりにラナがポンと両手を合わせてレイアを巻き込む。

「えぇー・・・ラナ姉私もウォル兄たちと行ってみた」

 しかし、レイアはラナの提案を却下──

「・・・ごにょごにょ」
「・・・!・・・・・・」

 しようとした瞬間、ラナがすかさずレイアの耳元で何かを呟き──

「やっぱり私・・・ここに残る」

 途端、なにやら青い顔をするレイアが、その考えを180度変えて残る意思を示す。

「そう? レイアがいてくれるんだったら安心だけど・・・」

 ラナのストッパーとして、彼女が残ってくれるのなら心強い。あとは──

「フラジール。火番と鍋番も任せていいかな?」
「はい。こっちの仕込みも終わったので、お任せください!」

 僕のすぐ後ろで、別の料理の仕込みをしていたフラジールにお願いすると、彼女は頼もしい返事でそれに応えてくれる。

「じゃあ、行くよ」

 その返事を聞いて安心した僕は、簡易キッチンの管理を彼女に任せてウォルターとアルフレッドと行くことにする。

「じゃあ、私も・・・ブルブル」

 すると、今の今まで何もせずに丸めた体をブルブルと震わせていたミリアも、一緒についてこようとするが──

「ミリアちゃん!・・・ごにょごにょ」

 またもやすかさず、ラナがミリアの耳元に顔を近づけて何かを囁く。

「・・・うん。・・・なるほど。・・・ムフフ」

 すると、それを聞いていたミリアが──

「やっぱり私残ることにしたわ!」

 先程まで寒さに体を震わせていたのが嘘のように、キラキラとした目で力強く宣言する。

「わ、わかったよミリア」

 その勢いに押されて、僕はたじろぎながらも了解する。ラナとの密談に、ムフフという謎の言葉の漏れは気になるが、ボス戦を控えた前日に彼女も妙なことはしでかすまい。一応彼女も公爵令嬢・・・である。

「エリシアは──」

 そして、その流れでエリシアにも、どうするのかと彼女の意思を聞こうとするが──

「あ・・・そっか」

 僕は今この場に、彼女がいないことに改めて気付き出掛かった言葉を抑える。

「リアム。エリシアはさっきからずっとあの調子だよ」

 そして、僕がその先何を言おうとしたのかを察したレイアがとある方向に視線をやると──

「ファイアー・・・ダークボール!」

 その先には、セーフポイントの外の川辺で、ここに着いてからズッと魔法の練習をするエリシアがいた。

「・・・・・・」

 同時に、僕は息を呑む。

『綺麗だ・・・』

 空の橙にそれを吸収した白い峰、影の強まった黒い森の前を流れる川の前で魔法を操る彼女は、まさに踊るように火と闇を操っていた。



 すると──

『マスター。未来のお嫁さんに見惚れるのはいいですが──』

 ほんの僅かな時間であったが、それに見惚れていた僕をからかうようにイデアが頭の中に話しかけてきた。

「わッ!」

 その呼びかけに驚いた僕に──

「「「えッ!?」」」

 「・・・びっくりしたー!」

「「「いやこっちがびっくりしたよ!」」」

 驚くみんな。

「ゴメンゴメン。ぼーっとしてたらイデアに突然話しかけられてビックリしちゃって」

 すかさず、僕はみんなに謝罪する。

「で、何の用かなイデアさん?」

 そして、不満気味にいきなり挑戦的な態度で話しかけてきた彼女に問いかけるわけだが──

『何ってご自分が私に注文したのでしょう?』
「注文・・・あっ」

 直ぐに、イデアにマウントを取ることを許してしまう。

『あれー・・・マスター。わかりました。それではこの魔法式は破棄で・・・』
「あー待って! 謝る!謝るから!」
「リアム・・・?」
「リアム様・・・」

 現在、このセーフポイントには他の冒険者たちもいるために、イデアの空気振動による音声の伝達を許していない。ついでに、個人的な会話であったために魔力を介した閉鎖的な会話もしていなかったため、さっきからずっと独り言を言うようにイデアと話をしている僕に、状況説明を求めるメンバー。

「ゴメン。なんでもないんだ・・・直ぐにわかるから」

 そんな彼らを安心させるために、とりあえず心配ないことを先に伝える。はぁ・・・きっとみんなには、誰に向けるでもなく情けない声で一人ひたすらに謝罪と機嫌取りする姿が映っていたはずだ。そんな姿を客観的に想像すれば、ため息もでる。

「イデア・・・」
『仕様がないですね』

 僕は、再び未だ上から目線のイデアに話しかけると──

「待って!・・・すっごい魔力」

 パーティーの中でも魔力に一番敏感なラナが一瞬身の危険を感じるほどの魔力を、その手に集める。

「な、なんだ今の魔力は!」
「乱心か!?」

「ヤバッ!」

 同時に、セーフポイントにいる何人かの冒険者たちもそれを感じ取ってしまったようで・・・

「すいませーん!魔力補給のただの調整ミスです! 他意はありませーん!」

 直ぐに大声で、魔道具への魔力補給の調整ミスであると嘘の弁明をする。

「なんだそうか・・・」
「気をつけろよ! ミスってドカンは御免だ!ガッハッハ」

 そして、周りのどよめきは安心へと変わり──

「気をつけまーす!」

 沈静化する。
 たまに、魔道具への魔力補給をしている最中に、その調整をミスして圧縮していた魔力が一気に放出されることがある。今回、簡単に許してもらえたのはきっと、僕たちのほとんどがまだ子供であったからだろう。今後気をつけねば。

「あんなよくそんな嘘がとっさに出るわね・・・」

 咄嗟の嘘で事態を集取した僕に、ミリアが呆れたように呟く。

「何回かやらかしてると自然とね・・・」

 僕はそれに、いつものことだから・・・と答える。今まで、周りを動揺させるようなことを何度かしてきてしまっているために、その対策も最近は考えるようになった。もちろん、まずそもそも気をつけろよということであるので、あまりよくない傾向であることに違いないのだが。

「それより」

 とにかく、僕は気持ちを切り替えて──

「はい、これ」

 ティナの前に、さっき魔力を込めた右手を差し出す。

「な、なによそれ・・・」

 すると、その手の中から現れてきた物体に──

「リアム・・・お前手の中に魔石なんて持ってたか?」

 ミリアとアルフレッドを始め、皆が疑問符を浮かべる。

「起動方法はいつも通りで、魔力は作るときに込めておいたから使ってごらん」

 しかし、それを無視してティナに使い方だけ説明すると──

「ブート・・・」

 彼女にパッと手渡して、それを使わせる。

「あ・・・あったかいです」

 すると、魔石を起動させたティナが、鈍い光を放つそれを不思議そうにジッと見つめる。

「今度はプットオンって言ってみて」
「プッチョ・・・ン、オン」

 そして次に、噛んではしまったものの──

「・・・!」

 周りからは何が起きているのかわからないであろうが、明らかに、ティナが更なる驚いたという顔を見せる。

「魔石を生成する過程にとある法則を加えてみたんだ。組み込まれたのは起動式と熱放出時の供給魔力の制限と操作。魔石の大きさと質、熱温度の相関をイデアに計算させて作った、着れるカイロだよ」

 僕はそんなティナ両手をとって、彼女の周りの温度が変わっていることを確かめながら、その魔石の説明をする。

「着ているときは常に23度くらい、着ていないときは50度くらいの熱を発するように作ったから、この巾着にでも入れて持っておくといいよ。ティナの体の大きさに設定したから尻尾の方まで熱は届いているはずだし・・・ただ、着ていないときはあまりずっと触っていないように気をつけてね」

 低温やけどになるといけないと、非着用モード時の注意をする。

「ねぇ・・・リアム?」

 すると、そんな僕の背後から、機嫌の良さそうなミリアの声が──

「なに? ミリア」

 このとき僕は、魔石の生成時に手を入れることで影響を与えられた喜びのあまり、油断していた。

「あのね。私ね」
「うん」
「今までずーっと寒い寒いって言って体を震わせていたのよね」
「う・・・ん?」

 そしてようやく、自分がとんでもない地雷原へと彼女に誘い込まれたことに気づいた。

「あらリアムどうしたの? 体が震えているわよ?」
「な、なんでもないよミリア・・・それより」
「なぁに?」

 僕は恐る恐る後ろを振り返って──

「ミリアさんもお一ついかが?」

 なんてことはない、彼女の笑顔の前でびっしょりと冷や汗をかきながら尋ねる。

「そうね。いただこうかしら♪」

 ミリアはその質問に眉ひとつ動かさず、ただただ笑顔で答える。きっとこの体の震えは、肌寒さ故・・・ではないだろう。

「ふぅ・・・」

 とりあえず、最悪よりましな返事が聞けたことで安堵の息を吐く。

「ただし」

 ・・・え?

「なんでティナのくしゃみ一つで動いたのに、私のは無視していたのか、その弁明を聞いてからね!」
「待って眷属魔法はヤバイって!」

 安堵の息を吐いたのも束の間、激昂したミリアは手に眷属魔法を放つための籠手を出現させ、魔力を込める。

「ゴメンなさーい! ただの貴族の癇癪でーす!」
「なんだ貴族か・・・」
「なら納得」

 次の瞬間、再び強い魔力の発現を感じ取った冒険者たちに向けて、アルフレッドが大声で理由を叫ぶ。

「ラナ姉」
「ん?」
「こんなに大きな魔力使っちゃってて周りの人、大丈夫かな?」
「大丈夫だって。だってリアムの使ってる魔力が大きすぎて、もう、大きすぎる魔力って感知しかできないもん」

 ミリアとのちょっとしたじゃれ合いを経て、僕は今、メンバー全員分のカイロを作らされていた。

「流石にこれに殺気が乗ると、魔力に敏感な人はみんな気絶するか漏らして一目散に逃げると思うけど」
「やっぱりダメじゃん」

 ついでに、その時の周りの冒険者たちの反応は流石、ここまでくると場数をこなしているのか、いちいち魔力に反応しなくなった。また別に理由があるとすればそれは、僕の隣でミリアがあの魔力のこもった籠手の甲をもう片方の手で叩き、ゴンゴンと音を出しているからである。

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