アナザー・ワールド 〜オリジナルスキルで異世界とダンジョンを満喫します〜

Blackliszt

136 ミカ

「クソッ! いい感じに誘導できていたのに!」
「まあまあ若、他にも方法ならあります」
「先生・・・」
「おやおや、私は教職をとった覚えはないのですが」
「だけど、あんな見る目のない奴らよりよっぽど先生の方が先生らしいさ」
「クックック・・・」

 ・
 ・
 ・

「なんかひんやりしない?」
「そう?うーん確かに冷えて来たかも」

 隣を歩くエリシアが、両肘を抱えてさする。

「ここら辺は木々が生い茂っているから陽の光は届きにくし・・・」

 そして、前を行くウォルターが──

「──ほら、着いたぞ」

 立ち止まって、更に前方を指差す。

「ここが、あのそびえ立つコルト山脈から流れる双子の川でできたツインズ川だ」

 そして、僕たちの目の前に飛び込んできたのは──

「「「デッカーイ!」」」
「「「シローイ!」」」」

 パーティー全員がその雄大さに感嘆とするほど荘厳で、美しい景色だった。男3人組とフラジール、ミリアを残した他のメンバーが、川岸へと駆けていく。

「というか、本当に色が違うのね」
「ああ。対岸の青い方がコルトの氷河が溶け出して流れてくる水で、こちらの少しくすんでいる方がコルトの麓に続く渓谷から流れている水だ」
「森の木の色も、なんだかあちらの方が黒いよな」
「うん。でもそれが余計にそびえ立つ山脈の白を際立たせてる」
「本当に、雄大です」

 アルフレッドの言った通り、幅も比較的ある対岸側に見える森の葉の色は黒緑と言った感じだ。

「でもなーんか、すごいって言えばすごいし夏の避暑地にもなりそうなものだけど」

 すると、いつもは一緒になって駆け出し、はしゃぐみんなの中に混じっていそうなミリアが僕の横に立ち──

「やっぱりちょっと肌寒いわね。これだったら、海でのバカンスの方が良いわね」

 ツンと、まるで今の気温のような和やかな雰囲気を壊す言葉を放つ。しかし、そんな彼女の体が小刻みに震えていることから、彼女のそれが強がりであるということは大体察しがつくわけで・・・

「そんなこと言わないのミリア。絶対暑いって薄着できたのはミリアじゃない」
「う、うるさいわね! こっちの方があんたがゴニョゴニョ・・・」
「ん? なに? ごめん後の方が小さくて聞こえなかった。もう一回」
「バカッ!」

 季節は移り変わり夏。と言っても、それはアース側の話で、気候が変わらないガイアでは、一年中地域ごとに決まった気温だ。

「・・・んッ」
「ティナあったかーい」
「あ!ずるいよレイア! 私にもッ!」
「ちょっとラナ姉の手冷たいよ! なんで私まで・・・!」
「二人ともあったかーい」

 ここまで丸一日かけて歩いて来たというのに、川辺で追い駆けっこを始めたラナたちは本当に楽しいのであろう。が──

「・・・エリシアさん」
「・・・エリシア」
「あいつ・・・」

 しかし、彼女らと一緒に駆けて行ったはずのエリシアが、川のほとりで一人そびえ立つ山脈を見据え、立ち尽くしていた。

「そっとしておいてやろう。今日は相手が相手だ」
 
 すると、そんなエリシアを見たウォルターが、穏やかな声で僕らを宥める。しかしそれは同時に、自分自身を鼓舞するための言葉にも僕たちには聞こえた。

「さて、確か少し川下の方に・・・」

 しばらく、その景色の雄大さに浸り楽しんだ僕たちは今日のキャンプ地、エリアCのセーフポイント、そして──

「見えたぞ・・・あれが幽霊橋だ。そして、あのたもとが俺たちの今晩のキャンプ地だ」
「おー、でも幽霊って言う割に普通の木でできた橋じゃない?」
「ガイドによれば、あの橋は渡る人間を選ぶらしいぞ。なんでも、あの先に行ける実力があるかどうかを判別しているらしいとか」

 ラナの疑問に、テールのエリアガイドに目を通しながらアルフレッドが答える。

「最も、真実は判別の基準がエリアCのボス戦をクリアしているかどうかで、その名の由来は対岸のエリアDから出現するモンスター達のこと、ゾンビやゴーストなんかのアンデットらしいがな」
「なんか、益々寒くなるような話ね・・・ブルブル」
「そーですねー・・・」

 そして、ガイドの情報に更に体を震わせるミリア・・・

「え?」
「ん?」

 ・・・・・・ん?

「げーッ!あんた誰よ!いつの間に私の隣に!!!」
「ぎゃーッ!・・・あー私か。びっくりした」

 なんと、ついさっきまで誰もいなかったはずのミリアの隣に、一人の女の子が立っていた。

「あ、ミカじゃない、よッ」
「よッ! ですラナ!」
「あれ? ラナの知り合い?」

 しかし、どうやらその女性とラナには面識があったらしく・・・

「ミカは私とカリナの1個上の先輩で、スクールの中等部三年生。でも本職は見ての通りギルド職員だから、たまーに顔をあわせるくらいだけど・・・」
「お姉ちゃんの先輩!?ラナ姉だったらもっとこう・・・後輩らしく誠実な態度を・・・」
「あーいいのですよレイアちゃん。ラナとはとある約束を結んだいわば盟友みたいなもんですからー」
「そうそう盟友盟友〜」

 ラナとミカがにっこり笑顔で肩を組む。二人は中々に親しいらしい。

「ところでウォルターさん。今日はあいにくCエリアの担当はニカ姉じゃなくて私だったわけなんですけどー」
「ん? ああそれがどうした?」
「・・・ラナちゃん」
「ほいっと、えいっ!」
「イタッ! おいいきなり何すんだラナ!」

 突然、ミカとアイコンタクトをとったラナが、次の一瞬でウォルターの背後に回り、そのお尻を蹴飛ばして逃げた。

『『『あ〜・・・なるほど』』』『寒いわ・・・』

 そして、この時他のパーティメンバー全員が、ラナとミカがどういう約束で結束しているのか、理解したりしていなかったり。

「ここが、チームアリアのスペースでーす。あっちの組み木がある中央が共用スペースですー」

 セーフポイントへと入った僕たちは、ミカの案内で自分たちの割り当てられたキャンプスペースを確認する。

「では、何かあったらギルド出張所にいるから・・・」
「あのーミカさん」
「はい、なんですレイアちゃん?」

 すると、案内も終わり出張所へと戻ろうとしたミカを、レイアが呼び止める。

「あの・・・あの橋って、幽霊橋って言うんですよね。さっきその名前の由来は聞いたんですが・・・」
「へー、それで?」

 モジモジと、聞きにくそうに質問するレイア。

「その・・・本当に、幽霊って出ないんでしょうか!」

 そして、とうとう本音をさらけ出した彼女が、勢いよくミカに疑問をぶつける。

「あー、そういうことですかー・・・」

 それを聞いた、ミカはぼーっと一言呟くと──

「クスッ、もしかしたら出るかもしれませんよ〜・・・」
「エッ・・・」

 質問したレイアがエッと驚く。

「向こうのエリアDの ”D” は ”Death” の ”D” とも言われているんですよー」
「「「エッ・・・」」」

 すると今度は、その物騒な情報にメンバー全員が驚く。

「なーんて、ゴーストを相手にするなら適正魔法か付与武器(エンチャント)必須ですが、こっちの初心者エリアに出たなんて事例はあーりません!」
「「「ホッ・・・」」」
 
 だが、どうやらこれまでの情報は僕らをからかうために用意した前振りだったようである・・・その前文の真偽は別として。

「それに壁の境界線は実はあの川の色の変わり目なんですー。ですから、泳いで向こう岸に行こうとしても途中で弾かれちゃうので注意ですー」

 しかし──

「だから安心してー・・・あーでもみんなは明日ボス戦だしー・・・」

 そんな「あー」という不安を煽る文句を含む言葉に急ブレーキをかける。

「「「ゴクリ」」」

 その溜めに、僕らはゴクリと思わず生唾を飲む。

「震えながら眠るがいい!・・・じゃね!」

 ミカはそんな間抜けにも一喜一憂する僕たちの反応を楽しむように、もう一度クスリと笑うと、そんなどこかの厨二病のような台詞を吐き、足早に駆けて行った。

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