アナザー・ワールド 〜オリジナルスキルで異世界とダンジョンを満喫します〜

Blackliszt

113 ライ麦畑で捕まって

 今回の探索場所はエリアA、ロガリエ時のエリアBよりレベルの低いエリアで、僕がいつも特訓しているエリアCよりも当然低く、このダンジョンでは一番レベルが低く設定されているエリアだ。
 このエリアはダンジョンのマザーポイントがある街から2kmほど行ったところにある近郊で、その特徴は一面にライ麦が生えていること、そして奥の丘には大きな風車が建っているというとても不思議で、長閑な風景が心に安らぎを与えてくれる場所だ。
 僕たちはそのライ麦畑の中をウォルターを先頭に、ラナ、レイア、僕&ティナ、フラジールの一列で行進しているわけなのだが・・・

「ティナ・・・そろそろ離れてくれないと」

 マクレランドの商会にティナを迎えに行ってからというもの、彼女はずっとこの調子、僕の腕にしがみついたまま離れない。

「ですがあの人が・・・」

「大丈夫。もうしないって」

「・・・はい」

 そしてようやく、説得の甲斐あって僕の腕から離れその背後に回るティナ。

「ちぇ・・・リアムばっかりずるいよ」

「ラナ姉・・・いきなり出会い頭に知らない人が飛びついてきたら、誰でも怖いよ」

「だって可愛かったんだもん」

 妹のレイアの言葉につまらなさそうに返事をするラナ。彼女はマザーポイントの街からずっと不貞腐れている・・・つまりはそういうことだ。

「おいラナ。頼むから魔力感知はしっかり頼むぞ?」

「チッチッチー! 魔力感知じゃなくて魔力探知! 頑張ってようやくスキルが進化したんだから、間違えないでよねウォル兄!」

 すると前を行くウォルターに、間違えないでよね!と一転して自信満々に胸を張って威張るラナ。ちょっとしたことで直ぐに調子に乗れる・・・これがラナの短所でもあり長所でもある。

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 それから更に100mほどを歩いた僕たちは、ライ麦畑の中にぽっかりと空いた大きな円状の広場へと出る。その広場はとても広く、更にその中心には、可視できる大きな魔力壁のドームがあった。

「はいはーい。こんにちは! チームロガリエの皆さんですね! 私はギルドボスエリア管理部所属のエリアAボスエリア管理担当、イチカです!」

 すると、何やらとてもハツラツとした声で語りかけてくるギルドの制服を着た女の人が・・・──

「おっすイチカさん。お久しぶりっす」

「おーおーウォルターくんじゃないですか! もしかして私が恋しくて戻ってきちゃったのかな?」

「いえ! 今日はロガリエの先導者として、そしてこのチームのメンバーとしてここにきました!」

「相変わらず熱いのに真面目ね〜・・・お姉さんちょっとショックだな!」

 ウォルターとテンポの良い挨拶を交わす。因みに先ほどイチカの言ったパーティー名は仮のもの、今日はレイアのロガリエ、そして僕たちのリベンジということもありこの名前で登録した。

「それでいきなりなんですが、リアム様はどの方ですか?」

 すると、突然僕の名前を呼ぶイチカ。

「あなたに用があるらしい方達がいるの・・・案内しますので、ついてきていただける?」

「?・・・はい」

 よくはわからないが、何やら僕に用事のある人間が来ているらしい。一体こんなところまでわざわざ来るとは、何者なのだろうか。

「ちょっと皆な悪いけど、先に準備運動始めといてくれる? 僕も後から合流するから」

「わかった」
「はいはーい」
「ティ、ティナちゃん!?」
「ふぇ!?」
「私はレイア様とフラジール様と一緒に探索してご主人様をお待ちしています」

 僕の言葉に各々の反応を見せる皆であったが、その中でも僕がそう告げるや否や、直ぐにレイアとフラジールの間につき、隠れるようにして返事するティナ。きっとまだラナを警戒しているのだろう。
 だがここ半年、僕と一緒に特訓し、更にはほとんどもうこの国の言語をマスターしてしまったティナなら、レイアたちと別行動しても問題はないはずだ。・・・子供の、それも獣人の子供というのは皆こんなにも学習能力が高いものなのだろうか。うーん・・・種族の神秘だ。

「そこの茂みの奥の方でお待ちですよ?」

 そして皆と別れ案内されたのは、僕たちが抜け出た場所からそう遠くない場所にある広場円周の茂み。

「ここの茂みの奥に?」

 一体何故こんなところに・・・もしかして、誘拐?・・・でもこの人はギルド職員で素性が割れてるわけだし、そもそも僕に何かしようものなら、みんなの前で堂々と呼び出したりはしないだろうし・・・──

「いったい誰がこんなところで」

 謎が謎を呼ぶが、とりあえず僕は茂みの方へと近づいてみる。そして──

「うぅ!? ・・・にゃ、にゃにを!」

 突然何かで口を塞がれた僕は、そのまま茂みの中へと引き込まれた。

「あれ・・・?」

 するとそこにあったのは、小さな麦畑の中にできたもう一つのサークルに3人の人影。

「エリシア・・・アルフレッドにそれに・・・ミリア!!?」

 そしてその人影の正体は、ここにいるはずのないエリシア、アルフレッド、ミリアの3人だった。・・・それにしても、珍しい組み合わせだ。

「お願いリアム! とにかく私にリカバリーをかけて!!」

「ばっ! ずるいぞ貴様! ・・・リアム!先ずは僕を先に・・・!」

 引き込むや否や、僕の服を掴んでリカバリーを! と懇願するエリシアとアルフレッド。

「でもエリシアはリンシアさんが・・・アルフレッドはフラジールが後でなんていうか」

「今ママのこと気にしたってしょうがないでしょ!? ・・・ほら、どうせここは周り麦で囲まれてるから見えやしないわよ!」

「頼むリアム! 一生に一度の願いだ!早く治してくれ!」

 確かに、ここなら周りから何をしてようが見えないとは思うが・・・

「わかった・・・《リカバリー》」

 必死な二人に圧倒され、仕方なく僕は上級相当の力を込めてリカバリーを唱える。エリシア、アルフレッドの不調の原因は暴飲による単なる腹痛、最上級レベルの魔力を込めずとも、容易に治癒するだろう。

「た、助かったー・・・」

「もう二度とストロベリーミルクは見たくないわ・・・」

 猛烈に襲ってきていた腹痛が収まり、膝から崩れ落ちるようにヘタリ込む二人。

「・・・で、なんでみんなここにいるわけ?」

 そんなようやく落ち着いた二人を見て、僕は本題を切り出す。すると──

「なんで?・・・なんでですって?」

 それを聞いたミリアが、体をプルプル震わせとてもこわ〜い低〜い声を出しながら、その可愛らしい顔に影を落とす。

「み、ミリア! お、お、お、落ち着いて!」

 これには僕も、体は仰け反り気味に、尻の下に敷かれた藁をガサッと音させながら後ろにジリジリと引いてしまう。このとても嫌〜な何とも知れない空気で圧倒される感覚、この感じは過去に経験した記憶が──

「な・・・なんでって・・・」

 すると一変、声を弱々しく震わせ、彼女の頬を伝っていくいくつかの涙。

「なんでってそれはあなたが私をのけ者にしたからでしょ!・・・うわーん!」

 そして彼女はそう叫ぶと、そのまま大声を出して泣き出してしまった。

「泣いた!? ・・・お願いだから泣かないで? ちゃんと話を聞くから」

 僕はそんな急に泣き始めてしまった彼女を持て余しながらも、なんとか泣き止んでもらおうと必死になだめる。

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──それから5分後、ようやくミリアの涙が止まってきた。

「それで、のけ者っていうのはどう言う意味なのかな?」

「ヒック・・・アルフレッドにフラジール、それに前のレッスンの時リアムがパーティーを組んでダンジョン探索とエリアボスの討伐に行くって言うから、私も突然行って驚かせようって城を抜け出してこいつの家に行ったんだけど・・・」

『ん?・・・抜け出して?』

 僕は直ぐにでもその言葉の意味も問い質したかったが、とりあえず話の続きを聞くことにする。

「なんかお腹壊しててフラジールに置いていかれたって言うから、無理矢理こいつを引っ張ってダンジョンに向かう途中でその理由を聞いて・・・」

『オイオイ・・・』

 僕は無理矢理病気のアルフレッドを引っ張ってきたという部分に思わず心の中で突っ込んでてしまうが・・・

『なるほど、そういうことか』

 同時に、のけ者の意味について大体把握することができた。

「それで昨日の夜リアムが親しい友人知人を呼んでパーティーしたって・・・でも、でも私は呼ばれてなくて___!」

 再び、泣き出しそうになってしまうミリア。・・・それは悪いことをした。故意に避けたと言うこともあり、またその罪悪感が僕の胸を異常に緊張させる。

「それはもちろんミリアだって招待しようとしたさ! けどミリアはその・・・公爵家の一員、仮に呼ぼうものならみんな緊張しちゃうし、何よりミリアを呼んだらお父さんのブラームス様まで来るとか言い出しそうで・・・」

 そう、僕は実際ミリアも呼ぼうと貴族街にアルフレッドたちを迎えに行った時に城の前までは行ったのだ。だがそこでふと、目の前にそびえ建つ城を見上げた時に、僕は彼女の持つ力の強さについて改めて考えさせられた。いい意味でも悪い意味でも、ミリア、そして彼女の家族には公爵家としてとても計り知れない力がある。その影響力を考えると、他の皆が率直な感想を言えなくなってしまうのではないかという懸念が生じたため、結果彼女の招待は断念したのだった。

「そ、そうね・・・確かにそうね」

 すると、どうやらミリアもそのことを理解してくれたようだが・・・

「そうよね・・・私が偉すぎるのがいけないのよね! うんそうよ!」

 ちょーっと、その態度からは良くないニオイがする。

「リアム! 今回は許してあげるけど、でも次は絶対に私を呼びなさい!!」

 やっぱりそうなるか。いや、そうなるよね・・・うん。・・・でもね、僕が言いたかったことはそういうことじゃないんだ。

「いやだからミリアは公爵家の人間で、ミリアならまだしもご両親まで来るとか言われると困るわけで・・・」

「偉い私の言うことを聞けないって言うの? それならお父様に泣きついて・・・」

「わぁー! わかったわかった! それじゃあもしお店が開店したら開店記念に招待してもらえるようアオイさんにお願いするよ! ・・・ただその時はブラームス様には内緒で、マリア様かパトリック様にだけ伝言するようにお願いね!二人にはその時3人分のお土産を持たせるから、それで手を打ってくれるように頼んどいて!」

「うん! 絶対だからね!」

 これは余計なことを言ってしまったと後になって反省する。弁明するなら彼女の両親を引き合いに出さずに、きっぱりとお断りするべきだった。だがこれは致し方ない。全ては他に良案の思いつかなかった至らぬ僕が、悪いのだから。

「それで・・・どうしてエリシアまで一緒にいるわけ?」

 そして、僕は話をここにいるエリシアへと切り替える。これもおかしな話で、アルフレッドならまだしも、エリシアとミリアは直接の面識はなかったはずだ。もしあったとしてもそれはパーティーに参加した時に姿を拝見するぐらい、そこまで親密な関係にはなかったはずだが・・・──

「貴族街を出ようとするところでこの子に会ったの。なにやらお腹を抑えながら苦しそうに歩いてたから、声をかけたらアルフレッドの知り合いだったみたいで・・・」

 それから僕は、本人であるエリシアにそれまでの事情を尋ねる。知っての通り、お腹を下していたエリシアは母親であるリンシアの看病の元、今日1日は家で療養をとっていたはずだ。  

「えっと・・・お母様が部屋を出た隙を見計らって家を出て、そのままここに来ようと歩いてたんだけどお腹が痛くて・・・」

 すると彼女は、どうやらリンシアが自分のために水を取りに行っている隙にベットを抜け出しここに向かって来たらしいことを説明する。

「エリシア!」

「だ、だって!・・・リアムも知ってるでしょ? 今回だけはどうしても私は参加しないわけにはいかなかった。前回暴走してみんなに迷惑をかけた私は今回だけは・・・」

 責めるように名前を呼んだ僕に対し、ビクビクしながら理由を陳べるエリシア。

「はぁ・・・わかった。今回はエリシアの気持ちに負けたよ。好きにするといい」

 初めはリンシアの気持ちを裏切った彼女に説教するつもりだった僕であったが・・・ あまりにも切実ではっきりした理由を述べられたため、これ以上責める気にはなれなかった。

「ありがとうリアム!」

 すると一変、とても嬉しそうに僕に抱きついてくるエリシア。甘いと言われればそれまでだが、彼女の気持ちはよくわかる。僕もまた、前回の探索で失敗しているから。

「ちょ、ちょっとあなたリアムから離れなさいよ! リアムは私の物なんだから!!」

 だが、それを良しとしなかったミリアが慌てた様子で不服を申し立てる。

「・・・リアム?」

 それを聞いて、不安そうに僕の名を呼ぶエリシア。

「大丈夫。物って言っても雇われ家庭教師、報酬を貰ったからピアノを教えてるだけの者・・・そうだな、ミリアの表現に合わせるならば商品みたいな?」

 僕はそんな彼女の不安を払拭するため、ミリアが使った物という表現についてわかりやすく説明をする。すると──

「ちょっとリアム!? そうじゃないでしょ!? ・・・いや違わないけれども!!」

 更に慌てた様子で、ああでもないこうでもないと異論を唱えようと必死なミリア。まあ確かに、遠回しにまるで自分が人を人とも見ていない奴隷以下のようにこき使う価値観を持っているなんて説明をされれば、否定もするだろう。・・・現に僕もいらぬ誤解を生まぬよう、彼女の言葉の揚げ足を取っただけだし。

『このままじゃこの女にリアムを取られちゃう・・・私の魅力をもっとリアムに分からせるには・・・』

 この時、ミリアが一体何を考えていたのか知りもしないが、僕は難しい顔をして何かを考え始めたミリアを心配して声をかける。

「ミリア?」

「でもそれじゃあ露骨すぎるし・・・ああでもこっちだと・・・デヘヘ」

 だが僕の声は彼女に届かない。・・・それにしてもデヘヘってなんだデヘヘって。

「これよ!・・・こうなったらこれしかないわ!」

 それから再起動まで1分ほど待っていただろうか。ようやく何かを思いついたらしい彼女が、とっておきの名案だと言わんばかりに拳を固く握り、嬉々として吠える。

「こうなったら私がどれだけすごいかあなたたちに見せてあげる! ・・・だから私も討伐に参加するわ!」

 可愛いだけじゃないんだからね! と得意そうにビシッと啖呵を切り、エリアボス討伐に参加する旨を表明するミリア。だが ──

「最初からそのつもりで来たのではなかったのか・・・馬鹿か貴様は・・・」

「なんですってェェえ!」

「ま、待て! 今のはちょっとしたお茶目な高慢貴族ジョークというやつで・・・!」

「問答無料!」

 すると、隣でボソッと呟いたアルフレッドの言葉に反応し、怒りを爆発させるミリア。だが一つ訂正するならば「問答無料!」ではなく「問答無用!」だ。仮に前者のような言葉があるならば、無条件で問答を聞くかなり慈悲に満ちた言葉になってしまう。

「だけど、アルフレッドはまだしも二人は家の人に黙ってここまで来たんでしょ?」

 一方、そんなどうでもいいことを考えつつ、僕はミリアとエリシアに質問する。

「う、うん・・・」「え、ええ・・・」

 するとエリシアは気まずそうに、そしてミリアもアルフレッドを強襲するその手を止めて、こちらに反応する。

「た・・・助かった」

 そんな中、脅威から逃れられたことに一人安堵するアルフレッド。本当にアルフレッドはこのセットでも犬猿の仲というか本音ダダ漏れ同士の素直ちゃんというか・・・ん? もしかして本音が言い合えるほど仲がいい?

「だから僕が今から急いでお家に知らせに行くから、みんなは他のメンバーと合流して準備運動していてね」

 兎にも角にも、黙って家を出てきたのはまずい。こうなったら僕がして、家の人に知らせるしかないだろう。

「本当に!?」「り、リアム〜!」
 
 すると、その言葉にビクつくエリシアとまるで救世主でも見つけ祈るように、両手を合わせ目を潤ませるミリア。

「言っとくけど叱らないであげてって説得しに行くわけじゃなくて、単なる報告に行くだけだから、勘違いしないように」

 ビクビクしているエリシアはまだしも、嬉しそうにはしゃぐミリアは論外だ。ここはしっかり釘を刺しておくことにしよう。

「アルフレッドはフラジールがここにいるからしっかり絞ってもらってね。二人と違って多分執事さんや他のお手伝いさんたちはここに来てることを知ってるんだろ?」

 家に押しかけてきたミリアが無理やり引っ張ってきた。つまりは初めにミリアの対応をしたのは主人であるアルフレッドではなく執事か他の使用人のうちの誰か、ということだ。

「わ、わかった・・・すまないなリアム」

 今回は戒めとして、罰であった自宅待機が意図せず解消となったためにあえて彼のフォローをするつもりはなかったが・・・

「いいよ・・・大変だったね」

「わかってくれるか? ・・・やはりお前は心の友だ」

 一方で共感できるところも十分にある。だが今日探索、討伐に参加できるようになった分、その清算は彼のお付きであるフラジールに任せるとしよう。

「それじゃあこんな狭いところじゃなくて広場に行こう」

 そして僕たちは、元の広いライ麦畑の中にぽっかり空いた広場へと戻ってくる。

「秘密のお話は済んだのかな?」

 すると、ゾロゾロと畑から出てきた僕たちに気づいたイチカが近寄ってきた。

「はい。他のみんなは──」

「それなら準備運動を兼ねた探索に出たよ?  方向はあっち、君がくるまで近くで探索するって言っていたから、大声で呼びかければ聞こえるんじゃないかな?」

 どうやら既にウォーミングアップを兼ねた探索に出かけたらしい他のメンバーたち。

「そうですか。・・・じゃあ3人とも、みんなと合流して探索しててね」

「はーい」「わかったぞ」「はーい!」

 僕は一緒に茂みから出てきた3人にそう告げると、少し離れた場所に移動して魔法の準備をする。

「あれ? どうかしたのかな?」

 すると、一人離れた場所に移動した僕を心配してイチカが再び近づいてくるが── 
 
「僕は少し街に戻ります。・・・あと危ないので離れておいてください」

 簡潔に理由を述べて、離れるように彼女に告げる。
 
「えっと街の方角はこっちで・・・・・・レビテーション」

 方角を合わせて魔法鍵を唱えて宙に浮く。

「ウィンドボール設置(セット)・・・ショット!」

 そして両手の平を後方斜め下に向けしっかり固定すると、そこに風属性魔力を大量に圧縮した風球を作り出し、それを噴出させることで、一気に上空へと飛び立つ。

「うひゃ〜・・・あれがギルド長の愚痴聞き担当で剣狼と炎獄の息子か〜。噂以上に規格外だね〜・・・」
「私・・・ものすごい啖呵切っちゃったけど・・・・・・大丈夫かしら?」
「気にするな。あいつは規格外、一々気にしていたら貴族のプライドなどズタボロになるぞ・・・」
「・・・かっこいい」

 ものすごいスピードで、空へと消えていったリアムに、各々の感想を述べる4人。

「あれはリアムか?」
「だ・・よね?」
「うん・・・お姉ちゃん」
「ご主人様・・・」
「うわー・・・ってティナちゃん!? それ以上強くしがみつかれると腕がちぎれちゃいますぅ!」

 そしてライ麦畑の中、モンスターを探して探索していた5人も急に広場の方から吹いてきた風に煽られ、上空を飛んでいく人影に気づくとそれぞれの反応を見せる。

「・・・そうだ! イチカさんでしたっけ? ・・・この子も討伐メンバーに新しく登録できますか?」

 広場に残された4人の内、エリシアがイチカにミリアのメンバー新規登録ができるかを尋ねる。

「はいはいできますよ。後から登録する場合は、登録済みのパーティーメンバーの方からの申請で登録できます。お名前は?」

 よかった・・・どうやら登録はできるそうだ。

「ミリア・テラ・ノーフォークよ」

「・・・はい? 申し訳ありませんが、もう一度お聞きしてもよろしいですか?」

「仕方無いわね・・・ミリア・テラ・ノーフォークよ」

「・・・えっと」

「だから!・・・ミリア! テラ! ノーフォークよ!」

 名前を聞き、思考力が著しく低下してしまったイチカに自分の名前をこれでもかと大にして叫ぶミリア。

「・・・あの、間違いだったら申し訳ないのですが」

「多分間違えていないぞ? そいつは領主ノーフォーク公の長女、ミリア・テラ・ノーフォークで間違いない」

 そして質問を・・・とイチカが口にした瞬間、すかさずその内容を察っして答えるアルフレッドであった。

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 ── 黄金色のカーペットを後に、町との間にある平原上空を飛んでいく。

 そもそも長距離移動に関しては、転移魔法であるゲートを使えばいいじゃないか!・・・と言う人もいるかもしれないが、ゲートの多用は危険だって昨日学んだばかりだし・・・

「やっふぅぅぅ!」

 ── 訂正。ただライ麦畑やら丘に立つ風車ののどかな風景に感化され、この広い青空を思いっきり飛んでみたかっただけだ。

「雑ですね。さっさと空を飛ぶ感覚に慣れればいいものを」

 すると、この飛び方が邪道だと不満を漏らすイデア。

「うっさい・・・僕の三半規管は繊細なんだ」

 僕はこれに言い訳する。実はこの他にも、僕は現在闇魔法を駆使した斥力飛行と、風魔法を駆使した風力飛行を使える。前者は目に見えないほど薄く密度を高めたレビテーション/空中浮揚の闇力子を繊細にコントロールすることで空を飛ぶ・・・というより宙に浮き続けながら斥力飛行する方法で、後者は単純に風の力を発生、纏うことで空を飛ぶ風力飛行だ。だがどちらもこう・・・繊細な魔法操作に慣れていないためピタッと静止することがまだ難しく、ふわふわ揺れる感覚がとても強い。そのため飛ぶとものの10分で飛行酔いし、必ずと言っていいほどダウンする。

 それに今回は一応急ぎ、この方法ならば体さえ固定していれば安定した推進力でそう揺れはしないし、スピードも出せる。それら全てをを考慮した結果だ。

「ウィンドブレーキ、風力飛行」

 外に出る転移門のある建物の上空付近まできたところで逆噴射、推進力を風で殺し風力飛行に移行する。 
 また、より高度な闇魔法を可能とする ”反重力子” を作り出すことができればこれらの問題はほとんど解決、簡単な魔力調整だけで浮遊が可能であとは己の三半規管を鍛えるだけ、なのだが ──

「着地・・・っと」

 僕はまだこれが上手く生成できない。生成できてもせいぜい手に収まる卵程度、まだ体全体に作用させれるほど一度にたくさん生み出せない。これは魔力不足などではなく単純に僕の熟練度が足りないだけ、こればっかりは練習あるのみなのだ。

「わっ!」「きゃ!」

 突如空から降りてきた子供に、着地地点付近にいた人々が驚きの声を上げる。最近はもう色々ありすぎて、自重という言葉の意味を見失いつつある今日この頃。
 
「驚かせてごめんなさーい!」

 僕は着地すると同時に走り始めると、驚かせてしまった人たちに謝りながら急いで転移門へと向かう。

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「わかったわリアムくん。わざわざありがとう」

「あの子ったら無断で家を出ただけじゃなくて討伐に参加しようなんて・・・!」

 エリシアの母リンシア、ミリアの母マリアの反応はそれぞれこんな感じだった。リンシアの方は朝のことから大体エリシアがどこに行ったのかも察していたみたいで落ち着いていたが、マリアの方は相当お冠で、どうやら城の使用人すべてに声をかけ一丸となって彼女を探していたようだ。一応事前に、僕もミリアの脱走には気をつけるようマリアたちに前もって釘を刺していたのだが・・・、もしも本当に誘拐だったら大変だからね。

「ミリア〜ッ! どこに行ったんだ〜ッ!」

「あれは気にしなくていいわ。ちょっと用が入っていてその間ミリアの監視を頼んだんだけど、うまく言いくるめられてその場を離れた挙句に──

『ミリアがこの世で一番大好きなパパをほったらかしてどこかに行くはずがない! これはきっと・・・そう!隠れんぼだ!』 

・・・なんて言ってぜーんぜん見つからないから、誘拐の線とこじらせ始めて情緒不安定になっているだけだから」

 視界の端で号泣しながら庭を走り回るおっさんがいたのだが、面倒臭い・・・改め、マリアの言葉に甘えることにして見なかったことにしよう。

「それで、ミリアが討伐に参加する件なんですけど・・・」

「・・・許します。元々4年生にみんなが上がった時点でダンジョン探索の実地訓練を始めようと思っていたからそれが少し早くなったと思えばいいし、何よりリアムくんも一緒に参加するんでしょ? それだったらそこらへんの冒険者を雇うよりよっぽど安心だもの」

「僕がついてて安心かどうかはわかりませんけど、経験者もいてギルド職員も側にいる討伐です。ただなるべく無理をしないようにだけ言っておきますね」

「ええ。あの子が言うことを聞かなかったら私が怒っていたとでも伝えてちょうだい。そしたら大人しくなるでしょう」

 そうして僕は公爵城を後にすると、再びダンジョンの方へと走る。だが ──

「あっ・・・ついでにちょっとうちに寄っていこう」

 少しだけ寄り道、とある用事を思い出したために自宅にちょっと寄り道をし、再びダンジョンへと戻っていく。
 

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