アナザー・ワールド 〜オリジナルスキルで異世界とダンジョンを満喫します〜

Blackliszt

90 霧

「ヴィンス・・・これって」

 僕が読み上げたスキル名に、リンシアが真剣な声色で呟く。

「リアム君は魔眼持ちだったのか・・・」

 目頭を押さえ、俯くヴィンセント・・・が ── 

「素晴らしい・・・。まさか、我が母を模倣するものが現れるとは」

 その3秒後には、俯いた顔を上げて天井を仰ぎなんとも感慨深そうな表情をしていた。

「模倣・・・という事は、前例があるんですか?」

 ヴィンセントに尋ねる。

「・・・そうだな。君は魔眼についてどのくらい知っている?」

 すると質問に質問で返すヴィンセント。

「ええっと・・・確か先天的なものと後天的なものがあって・・・、先天的なものは種族的に生まれつき所有している魔眼。後天的なものは大量の魔力が眼に集積した結果、誘発的に獲得する眼の力を強化するスキル・・・自分のステータスの説明にも『純粋な魔力が集積した眼』と出ていたし・・・」

「うむ、大方はあっている。中には生まれつき種族的な能力が内在的に存在しながら、後から覚醒する魔眼もあるが、今リアム君が言ったように、基本的には先天的な魔眼と後天的に得たそれとではその性質は大きく違ってくる」

 僕の魔眼に対する解釈を聞いたヴィンセントが大きく頷く。

「君は後天的な魔眼であるな。・・・そうだな、先(せん)魔眼と後(こう)魔眼とでも呼ぼうか。・・・人種であれば母から聞いた話、3千ほどの魔力でも保有していれば誰でもスキルの獲得ができるはずだ」

 どうやら魔眼の獲得には相当な量の魔力を保有し、収束させる必要があるらしい。大体人種の平均保有魔力量は成人で千程度、その値には3倍ほど足りていない。

「かくいう人と魔族のハーフである私は獲得が不可能なスキルだ。・・・魔族は種族の個性が強すぎてな。クォーターであるエリシアならあるいはいつか発現させる事が叶うかもしれぬが、先天的な種族に見合った先魔眼ならまだしも、純粋な魔力を収束させなければならない後魔眼の獲得はかなり難しい」

 魔族の種族特性はその魔力性質にも及ぶほど相当に複雑なものらしい。まあ、それくらい性質が複雑なのも、これまでの吸血種の種族癖やらで納得はできるが。

「純粋な魔力が集積した後魔眼はあらゆる魔法の媒体となり得る。・・・我が母の私が把握している最終魔力は4千ほどであり、父と魔力契約をするときには既に、後魔眼のスキルを獲得していたようだ」

「それが僕の新しいスキル・・・」

「ああ。我が母は父と魔力契約を交わした際に、新しい魔眼に目覚めた・・・それが《魔族の血胤》だ」

 それからヴィンセントが言うには、血胤といえども、僕の体が魔族に変質したわけではないらしかった。

「リアム君、左目に少量でいい。魔力を通してみてはくれまいか」

 僕は言われた通り、魔力を体に巡らせ、少量左目に魔力を集中してみる。

「違ったか・・・、では右目だ」

 が、左目には特に何の変化も起きなかった。僕の左目に何の変化も起きなかった事を確認したヴィンセントは、次に右目への魔力の伝達を指示する。すると ──

「この浮かび上がった印はまさに魔力契約と同じもの。・・・やはりリアム君は母と同じ力を手に入れたということか・・・」

 どうやら僕の左目に変化があったようだ。ヴィンセント曰く、どうやら瞳の中央に魔力契約と同じ印が浮かび上がっているらしい。
 僕の目の色は青色。魔眼を使おうと魔力を目に集中すれば、普通はうっすら淡い青白い光を含むのだが・・・。ふと窓の方を見て、己の姿を確認してみると、確かに僕の右目から何やら紫色の光が漏れているようだった。

「よし、ならばそのままどちらの腕でもいい。・・・こう、自分の腕が大気中に溶けるようなイメージを頭の中で浮かべてみなさい・・・」

 間髪入れずに、更なる指示を出すヴィンセント。僕は言われるがまま、自分の両腕を数秒見つめた後、目を瞑ってイメージに集中する・・・が ──

「・・・リアムの手がッ!」

 隣にいたエリシアから、悲鳴のような驚きのような声が上がる。僕もその声に思わず反応し、目を開ける。すると── 

「うわぁぁぁぁッ!」

 大声をあげてその光景に狼狽える。

「手が、手がない!!」

 そう、そこにあったのは黒い霧。そして僕が目を開けた先、先ほどまで両手が存在していた場所に、それがなかったのだ。

「・・・成功だ」
 
 だが一方で、落ち着きを見せながらその霧に感嘆の声を漏らすヴィンセント。

「ヴィンス・・・ちゃんと説明してあげないと驚きと混乱で制御もままならないわよ」

 狼狽える僕たちを尻目に、また一人で感慨に耽っていたヴィンセント。そんな彼をリンシアが咎める。

「ああ、そうか。すまない」

 リンシアの忠告に、一言謝罪を入れるヴィンセント。

「リアム君、落ち着きなさい・・・。大丈夫、君の手はちゃんとある」

「へっ・・・?」

 ヴィンセントが変わらず戸惑い続ける僕の肩に手を置き、なだめようとする。

「見なさい。・・・どうだ? 私の手も霧になって・・・戻ったであろう?」

 そして彼はもう片方の手を掲げて僕の前に見せると、それを霧に変えてみせ、やがて元通りの手に戻してみせた。

「感覚は残っているはずだ。元の自分の腕の感覚、そして漂う霧の感覚が」

 それは不思議な体験だった。ヴィンセントの言った通り、実態は限りなくないに等しいのに、そこにはちゃんと腕と霧の感覚が介在していたのだから。

「その霧の感覚を、残っている腕の感覚に収束してみなさい。そうすれば腕は元どおり綺麗に戻る」

「・・・戻った」

 それから僕は、言われた通り広がる霧の感覚を腕の感覚に収束してみせた。すると腕は無事に元通り、まだ幼く可愛らしい腕がそこにあった。

「まあ単純にその右目に魔力を流すのを止めれば元通りにはなる。・・・だが、これから先を考えると、今みたいに自力で戻す練習も行っていた方がいいだろう」

 魔眼を発動したままの能力の制御は重要だと、後に付け加えるヴィンセント。

「我が母は偉大な母だ。人の世では彼の勇者を父とともに支えた友人であり、魔族の理においては我がブラッドフォードが一角を担う、ダン・スカーよりスカアハを名乗ることを認められ、今では父に代わり魔国で吸血種の代表として評議会に参加するほどだ・・・」

「お義母様はお忙しい人だから、まだ私もエリシアも会った事がないの。魔国は遠い所にあるし、私の体がこんなだから中々訪問が難しくて」

 どうやらエリシアの祖母はまだ魔国で生きているらしい。先日、リンシアの話を聞いた時にはてっきり・・・。まあ兎に角、エリシアも、そしてリンシアも、まだその後の義祖母様にはあったことがないらしい。

「そして母は二つの魔眼を保有している。一つは君と同じ魔族の血胤、そして別にもう一つ・・・。母曰く、後魔眼で生み出せる魔眼は二つ。それは目の数であり、母も二つ目である魔族の血胤を所得した際に後魔眼のスキルは残ったが、そのスキル説明からはそれまであった『付与可』という表記が消えたそうだ・・・君の魔眼の説明にも『付与可』という表記があったのではないかね?」

「・・・! ありました!!」

「そうか、では念の為確認してみなさい。まだ後一つは枠が残っているはずだから、表記は変わっていないはずだ」

 僕は言われるがまま、自分のステータスボードに目を落とす。しかし ──

「あれ・・・?」

 ステータスボードの魔眼の項目を長押して首を傾げる。

『付与%$?』

 ・・・バグってる。

「ん? どうかしたのかね?」

「それがその・・・、表記されている内容に変化はあったんですが・・・」

「ふむ・・・、すまないがリアム君、君のステータス拝見しても?」

 反応を伺っていたヴィンセントからステータス開示の願いを受ける。

「えっとその・・・僕の魔力、自分で言うのもなんですが異常な量でして・・・」

「そのことならば気にする必要はない。実は昨日、君のご両親からその事についてお話があった。なんでも相当な量の魔力と豊富なスキルを持っているとか・・・」

 すると意外も意外、すんなりと話が進む。まさかもう、父さんと母さんがヴィンセントにそのことを喋っていたとは。

「わかりました。・・・どうぞ」

 そして僕は、自分のステータスボードをヴィンセントに寄越す。

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Name:リアム Age : 6  Gender : Male

- アビリティ - 
 《生命力HP》710 / 710
 《体力SP》590 / 590
 《魔力MP》29万2980 / 29万3120
 《筋力パワー》 579 
 《魔法防御》2万9312
 《防御》579
 《俊敏》12
 《知力》32
 《幸運値》%?_#

 《属性親和》全属性

- スキル - 
 《全属性魔法》
  《火魔法Ⅱ》《水魔法Ⅴ》《風魔法Ⅲ》
    《雷魔法Ⅱ》《土魔法Ⅴ》《光魔法Ⅲ》
    《闇魔法Ⅲ》《空間魔法Ⅱ》《回復魔法Ⅲ》
  《氷魔法Ⅳ》
    《無属性魔法Ⅴ》

 《魔法陣》《魔法陣作成》〈《精霊魔法∞》〉
 《複合魔法》《鑑定Ⅲ》《魔力操作Ⅴ》

- EX スキル - 
 《分析アナライズ》《しょ》〈《隠蔽》〉
 《テイム》《自動翻訳》

- ユニークスキル -  
〈《???》〉《魔眼》《魔眼:魔族の血胤》

〈- オリジナルスキル -〉
《カスタマイズ》


- 称号 -
〈《転生者》《精霊王の寵愛ちょうあい》《???》〉《魔力契約:エリシア》

 *〈〉内のスキルは隠蔽で隠しています
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『また魔力が上がってるんだよな〜・・・ハァ』
 
 自分でステータスを確認するのは先ほどを含めロガリエの時ぶりだ。僕はまた、魔力の最大値が上がっている事に内心ため息を吐く。

『少し減ってる?』

 一方で、最大値が増えていたのに対し、先ほどより少々魔力が減っている事に注目する。おそらくこれは先ほど、《魔族の血胤》を発動させた時に消費した魔力であろう。僅かな時間の発動であったが、中々にその消費量は多いようだ。

 僕はとりあえず、魔力以外の施してある隠蔽はそのままに、ヴィンセントにステータスボードを見せたが ──

「なんだこの魔力の量は・・・。それに知力が私に匹敵するだと・・・?」

 そのステータスボードを見たヴィンセントが目を見開く。どうやら、父さんたちが話した内容はあくまでも曖昧な魔力量だけだったようだ。・・・だが、僕は思わず、魔力の次に知力に注目するヴィンセントに「そこかよ!」心の中で突っ込んでしまう。

「リアムは全属性の魔法が使えるんだから〜! すごいでしょ?」

 ステータスボードを見て震えるヴィンセントに向け、胸を張って自慢を始めるエリシア。実はエリシア、アルフレッド、フラジール、ラナ、そしてウォルターには機会がなく後からになってしまったが、隠蔽で隠しているスキル以外については話してあったりする。彼らは僕が最も信頼を置く友人たちであり、背中を任せあってロガリエに望んだメンバーだからだ。

「Exスキルもランクの高いものばかり・・・」

 しかし暫くスキルを一つずつ確認するように見て、感嘆の声を漏らしていたヴィンセントであったが ──

「どうなっているん・・・ッ!」

 突然、言葉を止めて更に大きく目を見開く。

「・・・鑑定」

 そして一言、そう呟くと今度は体を震わせながら僕のステータスボードを握りしめる。

「・・・ヴィンス?」

「リンシア ・・・、今すぐに魔力の調整を始めなさい」

「えっ?」

 するとそんな脈略もない言葉を唐突に発するヴィンセントに、首を傾げるリンシア。

「エリシアは少し席を外していてくれ・・・。私はリアム君と少々急用ができた・・・バット、頼む」

「えっ? お父様?」

「・・・畏まりました。さあ、お嬢様」

「ば・・・、バット!?」

 そして気づけば、バットに連れられたエリシアは、もう部屋の中にはいなかった。

「ヴィンス・・・。どう言うこと?」

 突如、なんの説明もなく自分に魔力の調整をするように言い、エリシアを退出させたヴィンセントに尋ねるリンシア。

「・・・彼が飛び級し、スクールでエリシアと同じ学年であったこと、そんな彼とエリシアがこうして婚約を結び、早くに種族癖を克服できたこと、そして魔族の血胤まで所得してみせたこと・・・それぞれが大切な過程であり運命。しかし神の導きか・・・まさか彼がここまで我が家に影響を与えられる存在だとは思いもよらなかった・・・」

 リンシアの質問に答えるためか、何やら前置きを述べ始めたヴィンセント。そして ──

「リアム君・・・まだ幼い君に私は既に願いを聞いてもらい、大人としてこれ以上君に頼るのは自粛すべきとても恥ずかしいことなのかもしれないが・・・」

 まるで先日のエリシアとの婚約を持ち出した時を思わせるような真剣さで ──

「君に、君の持つスキル《鑑定》を使ってリンシアの診察をお願いしたい」

 再び、彼は僕に悲願の思いを告白するのであった。

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