アナザー・ワールド 〜オリジナルスキルで異世界とダンジョンを満喫します〜

Blackliszt

75 清算と連行?

「じゃあ頑張って」

「うげ〜・・・いってきま〜す」

「それじゃあ私も温室に行ってくるね」

「うん、それじゃあね」

 学校に着き、それぞれの目的のために別れる僕たち。

 コンコン。

「はいはい〜、開いてるよ〜」

 レイアたちと別れた僕は今、この学校の最高責任者がいる、学長室の扉を叩く。

「失礼します」

 僕は入室の許可が取れたことを確認し、中へと入る。

「おお、リアムくん。ちょうどよかった。僕も君に話があったんだ」

 すると入室早々、僕を見てグッドタイミングと喜びをあらわにする学長のルキウス。

「まあまあ、とりあえず座ってよ。お菓子もあるから」

 そして僕はルキウスに誘われ、学長室の中へと入っていくのだった。

 ・
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「というわけで、ポイントの返還と、謝罪に来ました」

 僕はソファーでルキウスと対面しながら、訪問の理由を述べ終える。

「無知であったとはいえ、自分のしでかしたことに対する責任に対する意識が軽薄だったこと、反省しています。約二年ぶりとはなりますが、本当にすいませんでした」

 そしてルキウスに頭を下げ、謝罪の言葉を告げた。

「いいっていいって、別に気にして無いから」

 すると一転、まるでそのことを気にしていないように振る舞うルキウス。

 今日僕は、昨日のラナとの会話で明らかになった、2年前に吹き飛ばしたスクール所有の森、その時得たポイントの返還と謝罪にきたのである。

「確かにあの時外部から持ち込んだモンスターたちが蘇ることはなかったけど」

『・・・やっぱり』

 僕はルキウスの言葉に消沈する。しかし ──

「それよりも君が森を吹っ飛ばした時にできた魔力だまりのおかげでね、もともとあったモンスターの生態系に変化が起きてそっちの方が断然面白いんだ〜」

 ・・・ん? なんだって?

「僕たちが人工的に作り出した環境の中でいかにモンスターたちの行動原理を観察し、導き出すかがその時の課題だったんだけど、魔力環境の変化によるモンスターたちの特異についてはまさに未知の領域。今は絶賛それを研究中で、昔なんかよりよっぽど新たな発見も多いよ」

 笑顔で、楽しそうに新事実を明らかにするルキウス。

「でも物理的に変えられたり失った地形や資源は、ダンジョンの復元力のおかげで一晩かけて元に戻るんじゃ・・・」

 僕はルキウスに、それこそ学校で習ったダンジョン学の内容をもとに、その矛盾について尋ねる。

「うーん、そうなんだけどね。魔力だけは例外なんだよ」
 
 すると僕の質問に、ニヤニヤしながらそう答えるルキウス。

「それもまた未知で研究の対象の分野なんだけどね。今わかっているのは制御下にある魔力はダンジョンの復元力による対象から外れるということ、また何かしらを介して散った魔力は元の純粋な魔力に戻るまで時間が必要であることかな。いわゆる制御下で固定された魔法は一定の塑性をもち、それが解除されると魔法を構成していた魔力の塑性は失われ、復元力によってゆっくりと純粋な魔力に戻る。昔はそれを利用してボスのいるところに魔法罠を仕掛けて復活すると同時に捕獲・討伐していたんだけどおかげで独占が始まってね。ギルドがボス挑戦を制限・管理するようになったんだけど。因みにその時限感知式の魔法罠の陣を作ったのが僕・・・ねえ、凄いでしょ?」 

 余計な自慢を交えつつ、ルキウスが解説をする。しかしその情報はとても有用なものであった。

『僕の描く魔法手法が一つ、確立できるかもしれない』

 実は前から、僕はある魔法行使の手段と方法について構想をしていた。それは興味本位からの妄想から始まったのだが、今ではできるだけ切れるカードを一枚でも増やしておきたいこともある。だけどそれはとても地味で、かつかなり難しい課題があったのだが、今の情報によって展望が見えてきた。

『これは後で実験しないと・・・』

 僕は内心、ニヤリとほくそ笑む。

「まあ君の放った魔法は異常な量の魔力によって構成された魔法の塊が爆発したようなものだから、魔法として確立された時の塑性の度合いも相当高かったんだろう。でも最近はその残留する魔力だまりも徐々に弱まってきているし、なんらなもう一度吹っ飛ばしてくれても構わないよ?」

「遠慮します・・・」

「ははは、まあそのことはまた頭の隅にでも置いて考えておいてよ」

 そう冗談がめしく、物騒なことを提案するルキウスに、僕は心の中の喜びを隠しつつ、やんわりと断りを入れる。しかし彼も、冗談だから忘れろと言わないあたり、なんだか怖い。

「ところで、君の要件はそれだけかな?」

「はい、そうですけど」

「じゃあ、このあとなんか用事があったりとかは?」

「・・・特には」

 本当はこのあとエリシア・アルフレッドの家に赴き、昨日の謝罪やらをしようと思っていたが、気まずさゆえか、僕はそのことを濁してしまう。

『それに三人の家は貴族街にあるから、許可証発行は数日かかりそうだ。こちらの話を聞いてもらった後だし、学長先生の話が終わった後、最後に軽く相談しよう・・・。うん、そうしよう』

 そして、心の中でこれからの流れを念頭に置きながら、話を聞くべく気持ちを切り替える。

「だったら・・・」
 
 それを聞いたルキウスは唐突に、自分の杖を取り出し一振りする。すると ──

「・・・ッ!」

 突然、どこからともなく現れた縄で、僕を縛り上げてしまった。

「なにをッ!」

 僕はその突然の出来事に声を荒らげる。

「まあまあ、落ち着いて。もしかすると君が逃げてしまうかもしれないし、何よりこうした方が面白い」

 そんな生徒を縛り上げ面白いと言ってのけるルキウスはやはり、分かりきったことではあるがマッドである。

「それじゃあ、行こうか」

 ルキウスは自分の紅茶を飲み干し、ソファーから立ち上がる。

「先生♪」

 そう言って、ニヤリと不敵な笑顔を見せるルキウスに、僕はただただじっと黙って睨みつけながら、不安な先行きを嘆いていた。


▽      ▽      ▽      ▽

「そう怒らないでよ」

「いや、普通子供だったら・・・じゃなくても叫んで助けを呼ぶシュチュエーションですよ、これ」

 僕は現在、ルキウスと二人馬車に揺られながら、会話で暇を潰していた。馬車にはカーテンがつけられており、外の様子は見えない。

「で、どこに連れて行こうというんですか?」

「おや、冷めてるね」

「ここ二年で、あなたの性格もだいたい把握しましたから」

 冷静に、ルキウスと問答する僕。すると──

「ククク・・・」

「何か面白いことでもありましたか?」

「いや、6歳の子供が大人の悪ふざけに冷静に対応してるのが逆に面白くて、これはこれで」

「巫山戯すぎですよ?」

 そんな子供らしからぬ対応をする僕を面白いと笑うルキウス。僕は彼に対し、更に辛辣な笑顔を向けて対応する。

「いいや、失礼。先に断っておくが、これから君に手伝って欲しいのは残念だが大いに意義のあることだよ。無駄に面白くが僕のモットーなのにね」

「それは随分自分の趣向をお楽しみのようで。縛っておいて先にも何もないでしょう・・・はぁ」

 僕は皮肉を混ぜ、ため息をつく。

「わかるかい?」

 すると皮肉を拾ったルキウスは、嬉しそうにその共感に感動していた。 

 僕はそんなルキウスに内心呆れつつ、脱線した話を戻すために質問に切り替える。 

「カーテンをする必要があるんですか? 道のりを見られたらまずいとか?」

「カーテンは単純に縛り上げた君をのせているのがバレるとめんど臭いから。ついでに行き先については着いてのお楽しみだよ」

 しかし結局、大した情報を得ることもできず、正直イライラする理由しかルキウスの口から聞くことができないと悟った僕は、もうこの話題は諦めて切り上げることにし、現在気になっている素朴な疑問を尋ねることにした。

「それにしてもこの馬車、随分と揺れないんですね」
 
 確かこの世界にはまだバネはないはずだ。少なくとも僕の知る限りではあるが。

「おや、その年でそこに気づくとはやはり君はいいね」

 するとまた、僕の余計な質問はルキウスの矜持に火をつけてしまったようだ。

「この馬車には緻密に調整した魔法陣が車輪に組み込んであるんだよ。と言っても仕組みは簡単。車輪に空間属性の座標感知を魔法陣に組み込んで、ある一定のスピード以上でZ軸が上下した時に、一緒に仕込んである闇魔法 ” レビテーション ”の魔法式部分に変数によって調整された魔力が送り込まれていて・・・・・・」   

 長々と始まってしまった解説と自慢話。今度からこの人に質問するのは、最終手段にした方が良さそうだ。

「ルキウスー! 関所に着いたぞ!

「この声は・・・」

「よっ!リアム!」

 馬車が停車したことを体感的に察した数秒後、そう言って扉を開けたのは、なんとギルド長であるダリウスであった。

「ダリウスさん・・・何してんですか」

「んあ? なんかな、執務をしてたらルキウスの精霊がきて、『面白いことがあるから来い』って呼ばれて抜け出してきたら、こうして御者をさせられていたんだが・・・」

 一瞬、溜めるように言葉を止めるダリウス。そして・・・

「早速面白いものが見れたな」

 そう言ってニヤニヤと縛られている僕を見ては吹き出し、遂には笑ってしまった。

「笑ってるんだったらこれ、解いてくださいよ」

 僕はそんなダリウスに不満を露わにし、抗議する。

「だっはっは、まあそう慌てるな・・・。おいルキウス、もう十分楽しんだだろ? そろそろリアムの縄を解いてやれよ」

 すると一転、僕の援護をしてそれを解くように進言する頼もしいダリウス。

「わかったよ・・・」

 そしてルキウスも、親友の言葉に耳を傾けたのかそれに了承し、杖を一振りして僕を縛っていた縄を解く。しかし──

「おい、こりゃあどういうこった?」

「悪いけど、ここから先にも着いてきてもらうよ」

 ドア付近で、不平を漏らすダリウスを尻目に、外に出てダリウスの背中を取る。

「お前! 謀ったな!」

「はっはっは!こんなおざなりな罠にかかる君が悪い! 御者は君しかいないというのにどうして君がここで待機になるなんて思ったのか甚だ疑問だね!・・・君は身分証明の必要はないから、そこにいたまえ!」

 すると縄で縛られたダリウスの背中を押し、彼を馬車の中へと押し込んだ。

「おいリアム!今度は俺を助けてく・・・」
「さあリアムくん。君は手続きが必要だから、こっちに来てね」

 一連のゴタゴタの中、助けを求めるダリウスの言葉を遮って僕を馬車から降ろすルキウス。

「おっと・・・」

 僕は馬車から降りると、少しいつもと違う感覚の地面いフラつきながらも、バランスをとる。

「実際に馬車は船のように揺れているわけだから、このフラつき同様、人によっては酔ってしまうことに変わりはないんだけどね。慣れるとこの感覚も楽しいものだよ」

 すると先ほどの馬車の解説の続きか、ルキウスがワンポイント、注意を付け加える。

「まてーッ! この薄情も」

 馬車を降りた僕たちの背後で、ダリウスは馬車の中で立ち上がろうとしながら、必死の抗議を叫ぼうとするが・・・

 ── バタンッ!

 再び、無情にも閉められた馬車の扉によりその叫びは遮られてしまった。

「あいつはな、ここから先に行くのが嫌いなのだよ」

 すると、閉まった扉の向こうでまだ叫んでいるダリウスの声を無視し、ルキウスが目配せしながらある方向を僕に見るよう促す。

「ここは・・・」

 僕はその光景に目をみはる。

「もしかして・・・貴族街の入り口?」

 そしてなんとなくではあるが、ここがどこであるのかを察してしまった。

「えーっ・・・つまんない。来たことあるの?」

 僕の呟きを拾い、ブーブーと不満を漏らすルキウス。

「いや、来たことはないけど、街を出る門所に行ったことはありますから」

 昔、僕はカリナ姉さんと壁外に出て一緒にピクニックに行った時のことを思い出す。今目の前にある検問所と門は、その時通った東門の関所と似ていた。

「この街で関所があって、表裏両方に街があるのは貴族街に通じる南の検問所しかないし・・・」

 引き続き、僕は自分の考察を述べる。この街は大きな円状の壁に囲まれた一般区があり、その南側には小さな円状の壁で囲われた貴族街があるのだ。その形は上から見ると8のような形になっている。

 僕は再び沈黙する。ルキウスの答えを待って。

「なぁ〜るほど。流石だね。僕はてっきり仲の良いアルフレッド君やエリシアちゃんに誘われてきたことがあるんだと思ったよ」

 すると面白くなさそうにいじけながら、ルキウスは目を逸らす。しかし ──

「・・・ッ!」

 僕はその言葉にブルッと、体を震わせてしまった。

「・・・どうかしたかい?」

 不思議そうに、一瞬体を震わせた僕に問いかけるルキウス。

「いえ、なんでも」

 僕はその問いかけをなんとか誤魔化し、自分の感情を抑える。

「ダリウスは月に一度あるこの街の主要人物が集まって話し合いをする定例会議が大の苦手でね、代理に秘書を向かわせては度々サボっているんだ・・・。私は君に頼みたい一件とは別に、さるお方から会議サボリ魔を是非に連れてきてほしいと頼まれていたのだよ」

 ルキウスもそれがなんでもないことだと納得したのか、何事もなかったかのように話を続ける。

「海老で鯛を釣る、罠に嵌り足掻く友人の姿というのは一度で二度面白い・・・一石二鳥とはこのことだね」

 そして愉快そうに、罠に易々とハマった友人をだしに笑い始める。しかし・・・

『・・・まさかいきなり二人の名前が出てくるなんて』

 僕は穏やかではない感情を抑えるのに必死で、その話のほとんどを聞いてはいなかった。

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