アナザー・ワールド 〜オリジナルスキルで異世界とダンジョンを満喫します〜
69 擦りつけ
ウォルターが最初のフォレストラビットを仕留めてから2時間が経った頃。 
「なーんかラビットしかいないんだけど・・・ゴブリンは?」 
既にあれから僕たちはフォレストラビットを3羽ほど仕留めているのだが、このエリアの目玉であるゴブリンに未だ遭遇することなく森を進んでいた。 
因みにフォレストラビットの討伐内訳はアルフレッド1羽、フラジール1羽、そして今僕が倒し収納した1羽で、今回のロガリエメンバーで狩りができていないのはエリシアだけである。 
ロガリエということで緊張していた僕たちが、もしこれからゴブリンの一体とも遭遇できないのであれば、それはもう拍子抜けである。 
「おかしいな・・・普通だったらもう遭遇しててもおかしくないんだが」 
ラナの不可解な呟きに追随し、不思議そうに首を傾けるウォルター。 
 
そしてそれからというもの、パーティーメンバー全員が黙り込み、各自自分の世界へと入ってしまう。 
「僕たちにとっては初めての事ばかりだし、変に危険よりはいいよ」 
しかし皆が考え事を始めて束の間、僕はその雰囲気を断ち切るべく切り替えの言葉を挟む。魔力感知による索敵もあることだし、モンスターを発見したいのなら同じ場所に留まっているのはナンセンスだ。 
「そうだな、次を探そうか」 
そしてウォルターもその事を察したのか、探索を再開しようとする。しかし── 
「ん?・・・何かこっちに近づいてくる・・・これは」 
ラナからの待ったの声。どうやらまた何か感知したようだ。 
ラナの待ったから僕たちは接近する何かに臨戦態勢をとる。それから十と数秒、少し離れた茂みの中から一つの黒い影が飛び出す・・・そして── 
「ラビットね・・・」 
「ラビットか・・・」 
「小物だな」 
「またラビット・・・」 
「・・・・・・」 
「今度はエリシアの番・・・かな?」 
しかしラビットは茂みから姿を現しても、僕たちに目もくれることなくまさに脱兎の如く駆け抜けていった・・・すると── 
「・・・ちょい待ち!・・・今ラビットが来た方向から2・・・いや、その後ろからもよくわかんない魔力の揺れを感じる・・・」 
「ゴブリンの群れか?」 
「わかんない」 
突如ラビットを追おうとしていた僕たちをラナが更に制止し、こちらに迫る謎の魔力を感知したことを告げる。 
「とりあえずみんな臨戦態勢!」 
そして迅速に臨戦態勢の指示を出すウォルター・・・しかし── 
「あれは・・・人か?」 
確かに、ウォルターの呟き通り茂みよりも高い位置から2つの人のような影を確認することができ・・・その影はどんどんこちらに近づいてきて、目視できてから数秒、ようやく僕たちはそれが人であることを再確認できた。 
そして僕たちは再び、茂みの方から迫ってくる冒険者たちに念の為臨戦態勢を続けていたのだが・・・ 
「ガサガサッ・・・!」 
結局先ほどのラビット同様、その冒険者たちは僕たちを一瞥だけして、そのまま駆けていってしまった。 
 
「あいつら一体、何をそんなに焦っていたんだ?」 
そのウォルターの疑問は当然でろう。なぜなら今逃げていった冒険者たちはパーティー年長者のウォルターと同じぐらいの年頃、体格も悪くなくとても初心者冒険者には見えなかったからだ。 
このB-1には強くても分布しているのはゴブリンライダーやゴブリンメイジぐらいで、他の鎧を着たホブゴブリンやキングゴブリンはあるエリア内でしか活動しないはずだ。 
『あの人・・・』 
しかしウォルターの疑問も束の間、僕は逃げていった冒険者の一人を見てある事を思い出す。 
「ねえウォルター・・・」 
僕は、とりあえずその事をウォルターに相談する。小さくとも気づいた事、気になる事はなるべくパーティーのみんなと共有するのが望ましい。 
「ん?なんだリアム」 
僕の呼びかけに首を傾げつつも応えるウォルター。 
「あのさ、今通り過ぎていった人の一人、確かセーフポイントに着いた時に『やっとキングに挑戦か、腕が鳴るぜって!』ってイキッてた人にそっくりだったんだけど、他人の空似かな・・・?」 
そう、僕が気になった彼は僕たちがセーフポイントに入って直ぐの頃、キングへの挑戦を何人かのメンバーと語らいながら横を通りすがっていった冒険者にそっくりだったのだ。しかしそれもすれ違い様、その記憶が正しいとは断言できないが・・・ 
「・・・それは本当か?・・・・・・ヤバイッ!全員今すぐ逃げるぞ!」 
すると僕の話に一度食いつくウォルターであったが、それから数秒考え事をしたかと思うと、突然皆に退避の指示を出す。 
「・・・!」 
ウォルターの突然の指示。一体何に気づいたというのか・・・。 
しかしこういうときもまた、先導者の指示に素早く対応することは大事だ。僕たちはとりあえず彼の指示どうり、この場から離れるべく走り出す。 
僕たちはウォルターの判断で先ほどの冒険者たちとは違う方向に走る。 
 
「何かわかったのウォル兄?」 
先導する彼の横で、何に気づいたのか走りながらに質問するラナ。 
「なあラナ・・・さっき言ってたよくわからない魔力の揺れはどうなってるかわかるか?」  
「一応私たちよりスピードは少し遅いけどこっちに来てる」 
ウォルターの質問に不思議そうに答えるラナ。 
 
「クソッ!・・・とりあえず俺たちはできるだけ早くセーフポイントまで戻るぞ!」 
「セーフポイントまで戻るの?」 
僕は突然セーフポイントまで戻るというウォルターにその訳を問う。 
「さっき逃げて行ったあいつら・・・・・・あいつらきっと、キングゴブリンへ挑戦して途中で逃げてきたんだ・・・!」 
「・・・!」 
「つまり・・・?」 
「確かにキングやホブは縄張りからは出てこないが他のゴブリンたちは違う・・・」 
「そっか! キングゴブリンの討伐ができるのはゴブリンたちの集落だから、もし挑戦して逃げれば集落を守るゴブリンたち以外が全部追ってくるんだ!」 
「ああ・・・それもキングの遠隔統制とバフ付きでな」 
意味深なウォルターの説明に、探索経験のあるラナもどうやら現状を把握したようだ。 
「あいつら、挑戦に失敗して装備を失うのが嫌だったかビビったのかは知らんが、とにかく途中で逃げてきた挙句に俺たちに追っ手のゴブリンたちをなすりつけたんだ・・・こっちにはリアムたちがいたのも確認しただろうにトレインしやがった!」 
先ほどの冒険者たちに向けるよう歯噛みし、怒りを露わにするウォルター・・・しかし── 
「待って! もしそれが本当ならチャンスじゃない!」 
ズザーッとブレーキをかける音と共に、背後から僕たちを引き止めるエリシアの声。 
「どういうことだエリシアちゃん?」 
突如足を止め皆を引き止めるエリシアに、ウォルターも足を止めはしたものの少し早口気味にその真意を問いかける。 
「だってつまり複数のゴブリンがわざわざ討たれにきてくれてるってことでしょ?・・・それってチャンスじゃない!!」 
 
足を止めたウォルターの早口の問いかけに、興奮して意気込むエリシア。その彼女の姿はどこか冷静さを失っているようにさえ見える。 
「だからその中にはライダーやもしくはメイジもいる可能性があって・・・」 
エリシアを説得し諌めようとするウォルター。 
「大丈夫よそのくらい! だいたい最初からビビりすぎなんじゃない? それに私たちにも魔法はあるのよ?」 
しかしウォルターの説得も虚しく、エリシアは聞く耳を持たない。 
「ダメだよエリシア! それでもまだ僕たちには複数体相手をするのは危なすぎる!先ずは一体ずつ相手できるようになってから・・・」 
そんなエリシアを更に説得するため言葉を連ねる僕。僕は精霊契約しかり魔石・魔法事件しかり、この世界の予測不可能な不確定要素は十分己の身を通じて知っている・・・が ──
「グギャギャ!」 
説得の途中、僕の言葉が何かの鳴き声によって遮られる。 
「まじか・・・」 
その鳴き声が聞こえた方を見据え、ウォルターが苦渋の言葉を漏らす。 
『・・・あれが』 
鳴き声とウォルターの呟きに続き、僕も件の方向へ体を向ける・・・すると── 
「グゥーッ!」 
そこにいたのは使役モンスターに跨る3匹のゴブリンライダーたちで、彼らは唸りを上げながらジッとこちらを睨みつけていた。 
「なーんかラビットしかいないんだけど・・・ゴブリンは?」 
既にあれから僕たちはフォレストラビットを3羽ほど仕留めているのだが、このエリアの目玉であるゴブリンに未だ遭遇することなく森を進んでいた。 
因みにフォレストラビットの討伐内訳はアルフレッド1羽、フラジール1羽、そして今僕が倒し収納した1羽で、今回のロガリエメンバーで狩りができていないのはエリシアだけである。 
ロガリエということで緊張していた僕たちが、もしこれからゴブリンの一体とも遭遇できないのであれば、それはもう拍子抜けである。 
「おかしいな・・・普通だったらもう遭遇しててもおかしくないんだが」 
ラナの不可解な呟きに追随し、不思議そうに首を傾けるウォルター。 
 
そしてそれからというもの、パーティーメンバー全員が黙り込み、各自自分の世界へと入ってしまう。 
「僕たちにとっては初めての事ばかりだし、変に危険よりはいいよ」 
しかし皆が考え事を始めて束の間、僕はその雰囲気を断ち切るべく切り替えの言葉を挟む。魔力感知による索敵もあることだし、モンスターを発見したいのなら同じ場所に留まっているのはナンセンスだ。 
「そうだな、次を探そうか」 
そしてウォルターもその事を察したのか、探索を再開しようとする。しかし── 
「ん?・・・何かこっちに近づいてくる・・・これは」 
ラナからの待ったの声。どうやらまた何か感知したようだ。 
ラナの待ったから僕たちは接近する何かに臨戦態勢をとる。それから十と数秒、少し離れた茂みの中から一つの黒い影が飛び出す・・・そして── 
「ラビットね・・・」 
「ラビットか・・・」 
「小物だな」 
「またラビット・・・」 
「・・・・・・」 
「今度はエリシアの番・・・かな?」 
しかしラビットは茂みから姿を現しても、僕たちに目もくれることなくまさに脱兎の如く駆け抜けていった・・・すると── 
「・・・ちょい待ち!・・・今ラビットが来た方向から2・・・いや、その後ろからもよくわかんない魔力の揺れを感じる・・・」 
「ゴブリンの群れか?」 
「わかんない」 
突如ラビットを追おうとしていた僕たちをラナが更に制止し、こちらに迫る謎の魔力を感知したことを告げる。 
「とりあえずみんな臨戦態勢!」 
そして迅速に臨戦態勢の指示を出すウォルター・・・しかし── 
「あれは・・・人か?」 
確かに、ウォルターの呟き通り茂みよりも高い位置から2つの人のような影を確認することができ・・・その影はどんどんこちらに近づいてきて、目視できてから数秒、ようやく僕たちはそれが人であることを再確認できた。 
そして僕たちは再び、茂みの方から迫ってくる冒険者たちに念の為臨戦態勢を続けていたのだが・・・ 
「ガサガサッ・・・!」 
結局先ほどのラビット同様、その冒険者たちは僕たちを一瞥だけして、そのまま駆けていってしまった。 
 
「あいつら一体、何をそんなに焦っていたんだ?」 
そのウォルターの疑問は当然でろう。なぜなら今逃げていった冒険者たちはパーティー年長者のウォルターと同じぐらいの年頃、体格も悪くなくとても初心者冒険者には見えなかったからだ。 
このB-1には強くても分布しているのはゴブリンライダーやゴブリンメイジぐらいで、他の鎧を着たホブゴブリンやキングゴブリンはあるエリア内でしか活動しないはずだ。 
『あの人・・・』 
しかしウォルターの疑問も束の間、僕は逃げていった冒険者の一人を見てある事を思い出す。 
「ねえウォルター・・・」 
僕は、とりあえずその事をウォルターに相談する。小さくとも気づいた事、気になる事はなるべくパーティーのみんなと共有するのが望ましい。 
「ん?なんだリアム」 
僕の呼びかけに首を傾げつつも応えるウォルター。 
「あのさ、今通り過ぎていった人の一人、確かセーフポイントに着いた時に『やっとキングに挑戦か、腕が鳴るぜって!』ってイキッてた人にそっくりだったんだけど、他人の空似かな・・・?」 
そう、僕が気になった彼は僕たちがセーフポイントに入って直ぐの頃、キングへの挑戦を何人かのメンバーと語らいながら横を通りすがっていった冒険者にそっくりだったのだ。しかしそれもすれ違い様、その記憶が正しいとは断言できないが・・・ 
「・・・それは本当か?・・・・・・ヤバイッ!全員今すぐ逃げるぞ!」 
すると僕の話に一度食いつくウォルターであったが、それから数秒考え事をしたかと思うと、突然皆に退避の指示を出す。 
「・・・!」 
ウォルターの突然の指示。一体何に気づいたというのか・・・。 
しかしこういうときもまた、先導者の指示に素早く対応することは大事だ。僕たちはとりあえず彼の指示どうり、この場から離れるべく走り出す。 
僕たちはウォルターの判断で先ほどの冒険者たちとは違う方向に走る。 
 
「何かわかったのウォル兄?」 
先導する彼の横で、何に気づいたのか走りながらに質問するラナ。 
「なあラナ・・・さっき言ってたよくわからない魔力の揺れはどうなってるかわかるか?」  
「一応私たちよりスピードは少し遅いけどこっちに来てる」 
ウォルターの質問に不思議そうに答えるラナ。 
 
「クソッ!・・・とりあえず俺たちはできるだけ早くセーフポイントまで戻るぞ!」 
「セーフポイントまで戻るの?」 
僕は突然セーフポイントまで戻るというウォルターにその訳を問う。 
「さっき逃げて行ったあいつら・・・・・・あいつらきっと、キングゴブリンへ挑戦して途中で逃げてきたんだ・・・!」 
「・・・!」 
「つまり・・・?」 
「確かにキングやホブは縄張りからは出てこないが他のゴブリンたちは違う・・・」 
「そっか! キングゴブリンの討伐ができるのはゴブリンたちの集落だから、もし挑戦して逃げれば集落を守るゴブリンたち以外が全部追ってくるんだ!」 
「ああ・・・それもキングの遠隔統制とバフ付きでな」 
意味深なウォルターの説明に、探索経験のあるラナもどうやら現状を把握したようだ。 
「あいつら、挑戦に失敗して装備を失うのが嫌だったかビビったのかは知らんが、とにかく途中で逃げてきた挙句に俺たちに追っ手のゴブリンたちをなすりつけたんだ・・・こっちにはリアムたちがいたのも確認しただろうにトレインしやがった!」 
先ほどの冒険者たちに向けるよう歯噛みし、怒りを露わにするウォルター・・・しかし── 
「待って! もしそれが本当ならチャンスじゃない!」 
ズザーッとブレーキをかける音と共に、背後から僕たちを引き止めるエリシアの声。 
「どういうことだエリシアちゃん?」 
突如足を止め皆を引き止めるエリシアに、ウォルターも足を止めはしたものの少し早口気味にその真意を問いかける。 
「だってつまり複数のゴブリンがわざわざ討たれにきてくれてるってことでしょ?・・・それってチャンスじゃない!!」 
 
足を止めたウォルターの早口の問いかけに、興奮して意気込むエリシア。その彼女の姿はどこか冷静さを失っているようにさえ見える。 
「だからその中にはライダーやもしくはメイジもいる可能性があって・・・」 
エリシアを説得し諌めようとするウォルター。 
「大丈夫よそのくらい! だいたい最初からビビりすぎなんじゃない? それに私たちにも魔法はあるのよ?」 
しかしウォルターの説得も虚しく、エリシアは聞く耳を持たない。 
「ダメだよエリシア! それでもまだ僕たちには複数体相手をするのは危なすぎる!先ずは一体ずつ相手できるようになってから・・・」 
そんなエリシアを更に説得するため言葉を連ねる僕。僕は精霊契約しかり魔石・魔法事件しかり、この世界の予測不可能な不確定要素は十分己の身を通じて知っている・・・が ──
「グギャギャ!」 
説得の途中、僕の言葉が何かの鳴き声によって遮られる。 
「まじか・・・」 
その鳴き声が聞こえた方を見据え、ウォルターが苦渋の言葉を漏らす。 
『・・・あれが』 
鳴き声とウォルターの呟きに続き、僕も件の方向へ体を向ける・・・すると── 
「グゥーッ!」 
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