アナザー・ワールド 〜オリジナルスキルで異世界とダンジョンを満喫します〜

Blackliszt

62 先へ・・・

「おはよう・・・ございまーす」 

 音を立てないように教室のドアを開き、囁くような声で室内に挨拶をする僕。 

「・・・ん?どうしたのだリアム・・・体調でも悪いのか?」 

 どうやらアルフレッドが、こっそり教室に入る僕に気づいたようだ。 

「大丈夫ですか?・・・」 

 すると彼のお付きであるフラジールからも声をかけられる。 

「いや・・・別になんでもないんだ!・・・なんでも」 

 更なる挙動不審に陥る僕。 

「なになにリアム?どこか悪いの?」 

 すると今度は、別の場所にいたエリシアが事に気付いて近づいてくる。 

「・・・私たち仲良しでしょ!だから隠し事はなしよ!」 

「なっ!僕だって親友だぞ!・・・何かあったのならできる限り手助けもしてやるし・・・というわけで何か悩み事があるなら話せリアム!」 

「ちょっと待って!・・・あなたがリアムの親友ですって?・・・そんなの私が親友に決まってるじゃない!」 

「ふん!僕の方がこいつとの付き合いは長いのだ!だったら僕が親友なのが道理であろう!!」 

 そしていつの間にか「なによ!」と「なんだよ!」と喧嘩を始めてしまった二人。 

「はぁ〜・・・なんかビクビクしてた僕がバカらしくなってきた」 

 そんな二人を見て色々と警戒していた自分がバカらしくなってくる。 

「ちょっとリアム〜ッ!このバカにはっきり言ってやって!!」 

「おいリアム!!・・・この分からず屋に真実を告げてやるのだ!」 

 しかし僕の溜息も他所に、喧嘩を続ける二人。 

「全く・・・こっちは変な因縁をつけられるんじゃないかとビクビクしてたってのに」 

 そう、僕が今日こっそりと教室に入ってきたのは先日ラナに確認し杞憂であったことを確かめたものの、もしかしたらという不安からであった。 

「「どっちが『お前』『あなた』の親友なのか!!」」 

 だが二人には僕の悩みの声も届かず、最早いつも通りの展開である。というか、僕にはそんな彼らさえいてくれれば良いかという安心感さえ生まれてきた。 

「・・・わかった。それじゃあ発表しま〜す・・・僕の親友は・・・」 

 そんな彼らのおかげで僕は、先程とは打って変わっていつも通りの平常運転へと戻る。 

「「ゴクリ」」 

 僕の唐突な発表にピタリと静かになり生唾を飲む二人。 

「僕の親友はフラジールだ!」 

 狐につままれたような顔をするアルフレッドとエリシア。 

「確かに・・・リアムとの付き合いの長さは僕とそんなに差がない」 

 目から落とした鱗を見つめるように、床を眺めて震えるアルフレッド。 

「私は一体・・・どれだけの時間を費やせばそこにたどり着けるというのか」 

 なぜかどこかの騎士のような憂いを見せるエリシア。 

「私がリアムさんの・・・・・・嬉しい・・・」 

 そしてハニカムフラジール。 

「ま・・・同じくらいにみんな親しく思ってるんだけどね」 

 三者三様な反応を見せる三人・・・それはそれで面白かったのではあるが、僕は訂正のため、追加の一手を投じる。 

「そ・・・そうだな!」 

「そうよね!」 

「それが一番素敵です」 

 その一言でパアッと明るくなるアルフレッドとエリシア。フラジールも、その言葉には満更じゃなかったようで笑顔を見せてくれる。 
 こうした日常を過ごせる幸せを、僕は今・・・噛み締めている。そして物語は今、先へと進む。 

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