アナザー・ワールド 〜オリジナルスキルで異世界とダンジョンを満喫します〜

Blackliszt

61 完成品

「ただいま〜・・・行ってきたぜ!マレーネ!!」 


「・・・はぁ〜ご苦労さんウィル坊。ちょうどいい、このポーションを見てみな」 


 突然店に帰ってきた父さん。そしてそんな父さんに溜息を漏らしつつも僕が完成させたポーションを見せるマレーネ。 


「なんだこれ?普通の初級ポーションだろ?」 


 父さんはそのポーションを見て、何のポーションなのかを言い当てる。 


「やはりお前の目は節穴かい・・・もう少し見る目を養いな」 


 しかし父さんの反応を聞いたマレーネは、なぜかそれを非難する。 


「なんだよ帰ってきて早々〜・・・ブーブー」 


 子供のように抗議する父さん。 


「いいかい?確かにこれは初級ポーションだ・・・・・・しかしこの淀みない美しさがお前にはわからんのかい?」 


 すると父さんはマレーネの言葉に、そのポーションが入った瓶をまじまじと見つめる。 


「うーん・・・わからん」 
  
 しかし真面目に見つめるも、やはりその違いに気づくことはなかった。 


「通常複数の材料を混ぜて作るポーションは、その効果を高めるために魔力でそれらを繋ぎ染め、相乗させて効力を高めていく・・・だからこそ魔力調整はポーション作り一番の重要な作業であり、その技量が求められる・・・」 


 はぁ〜・・・ともう一度ため息をつき、解説を始めるマレーネ。 


「もちろんチマチマと弱い魔力を流すだけでは駄目。安定性を上げる素材同士を繋げる強固な魔力密度もさることながら、それらを一定に染め上げる量の魔力と繊細さが必要だ・・・」 


「へぇ〜・・・」 


「なるほどな・・・」 


 その解説に感心するように聞き入るラナと父さん。 


「そしていわゆる純度、その質によってポーションの価値は同じ材料、工程で作った物でも価格が変わってくる」 


 どうやらポーションには、僕の知らない基準が他にもあるようだ。 


「完成度の高いポーションは時には中級に近い効力を発揮する・・・。薬屋は商売柄、その偏りが出ないように純度を調整することで価格差を出さずに安定して供給ができるわけだが、そんな柵を取っ払ちまえば混合物であるポーションを、いかに純度の高い純物質に近づけられるか・・・、ポーション作りはその一点に尽きると言っても過言じゃない」 


 そういえば前世のRPGなんかでは、一定量の回復値を持つポーションの他に、出来によって差が出るポーションもあったようななかったような・・・ 


「この子は世界に愛されているね・・・これだけの才と実力を持ち合せているとは・・・・・・」 


 話も終盤、何かを溜めるように一度言葉を切るマレーネ・・・そして── 


「是非うちの孫として婿に欲しいね」 


 なぜか始まる見合い話。 


「あっ!だったら私と・・・」 


 するとまるで最初から仕組まれていたかのように、ごく自然に立候補しようとするラナ。しかし── 


「・・・!」 


 それに立候補しようとしたラナの口が、途中で止まった・・・・・・因みにレイアは、話の端で顔を赤くして俯いていた。 


「どうかしたのかい?ラナ」 


 突如口ごもったラナを心配するマレーネ。 


「いやちょっと・・・なんかカリナがそこにいたような気がして」 


 ・・・不憫だ。 


「まあ、それは本人同士が決めることだからお互い無理することじゃないさね」 


 怯えるように震えるラナを鎮めるように諭すマレーネ。 


「それじゃあちょっと待ってな」 


 すると転換、マレーネは急に話を切り替える。 


「何かするの?おばあちゃん」 


 そんなマレーネに、先ほどまで顔を赤くして俯いていたレイアがあれ?っと復活して尋ねる。 


「実を言うとお前さんの魔法の力についてウィル坊に相談されてね・・・・・・ウィル坊には息子のところに行ってもらって、ある材料を取りに行ってもらってたのさ」 


 父さんが先ほどまで店にいなかったのは、どうやらそういう理由らしい。 


「聞いたよリム坊・・・。あんたすでにダンジョンに入っただけじゃなく、森半分と一緒に大量のモンスターまで消しとばしちまったんだろ?」 


 唐突に暴露される僕の醜態。 


「もともと回復属性の魔力は人や動物、自然といったこの世に存在するありとあらゆる物に精通する身近なもの。ポーションもその性質はそれらを強める効果を持つ薬草などを精錬して高めたものだ・・・」 


 マレーネの話から、ポーションは回復属性と大きく関わりがあるらしく・・・そして── 


「別の効果を持つものを付け足すことで、更に別の効果に変化させたり、付随させることができる」 


 更に明かされるポーションの秘密──。 


「ウィル坊に持ってきてもらったのもそれ・・・。実際に先ほどリム坊がポーションに込めていた魔力にしては、量に限って言えば完全に飽和しきっていて、魔力が大気中に漏れ出すレベルだった」 


 そして先ほどの暴露に続き、思わぬところで受けるまさかのダメ出し。 


『嘘・・・』 


 また僕はそこまで魔力を流していたつもりはなく、まさか無駄遣いをしているなんてサラサラ思ってもいなかった。 


「純粋な回復ポーションは様々な効果を持つポーションの基礎となるんだよ。だから私がこれから、一時的に魔力を抑える薬を作ってやるさね」 


 どうやら父さんは自分の賭けの勝利宣言をしにきただけでなく、信用できるマレーネのところに僕の魔法の相談をしに連れてきてくれたらしい。 
 魔力を一時的に抑える薬・・・。それは魔力常識に欠ける僕にとって、新たな諍いを避けるためにとても魅力的な品である。 


「あ・・・ありがとうございます!」 


 僕は当然、その薬を作ってくれるというマレーネに感謝を述べる。 


「良ければリム坊、時間があるときにうちに遊びにきな。その時はお前さんにポーション作りを教えてやろう」 


 するとマレーネは、そんな僕に更に嬉しいお誘いをくれる。 


「よかったなリアム!いくらマレーネが顔馴染みだからって、エルフにポーションの作り方を教えてもらえることなんて中々ないぞ!」 


 告げられた衝撃の事実。 


「えっ・・・?マレーネおばさんってエルフだったの?」 


 それに気付いていなかった僕は、すぐ様それが聞き間違いではないかの確認をとる。 


「ん?・・・ああだって婆さんの耳、とんがってんだろ?」 


 うーん。確かにとんがっている・・・。 


「まあ、そう言うことさね。私は基本店にいるから時間が空いた時にいつでも来な!・・・その時は私自ら教えてやるよ」 


 どうやらマレーネは、本当にエルフであるらしい。 


「もちろん、薬の購入もいつでも歓迎するがね」 


 ニヤリとした表情で商売魂たくましく、冗談織り交ぜて話を締めようとするマレーネ・・・、しかし── 


『マレーネおばさんって一体何歳なんだ?・・・というかラナやレイアたちもエルフの血を引いてるってこと!?』 


 エルフといえば長寿で森のことや魔法、弓術に優れているなどのイメージがあるのだが・・・。 
 最後の最後に、聞くに聞けない新たな疑問と謎を抱えてしまった僕であった。 

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