アナザー・ワールド 〜オリジナルスキルで異世界とダンジョンを満喫します〜

Blackliszt

58 マレーネの薬屋

 今日は父さんに連れられて、二人だけで外出だ。 


「もう少しで着くからな・・・」 


 そう言って僕の手を引く父さん。 


「ねえ・・・何処に行くの?」 


 僕は未だ知らされていない行き先に、父さんに疑問を投げかけた。 


「それは着いてからのお楽しみだ」 


 そう言って前方を見ながら歩く父さんの横顔は、何処か嬉しげだった。 




▽   ▽   ▽   ▽ 


 ──家よりダンジョンのある中心街よりの裏路地。 
  
「お〜っす!マレーネはいるか〜ッ!」 


 ドアベルの付いた扉を勢いよく開けると、父さんが店の中に声を響かせる。 
  
「なんだい五月蝿いね・・・その喧しい声はウィル坊だね・・・」 


 すると店の奥から、父さんの名前を呟く老婆が顔を出した。 


「おうマレーネ!あのさ、あいつらいる?」 


 親しげに言葉を交わす父さんと老婆。 


「カミラとエディーは今ダンジョンだよ・・・相変わらず挨拶もなしに不躾だね・・・何か用事かい?」 


 老婆は少し不満を漏らしながも、父さんの質問に答える。 


「悪い悪い!そういうつもりじゃなかったんだが・・・いや、用事ってほどでもないんだがな?・・・ほら・・・」 


 すると突然、父さんが後ろに控えていた僕の背中に手を回し、ズイッとその老婆の前に差し出した。 


「あ・・・あの・・・」 


 突然前に出されて挙動不審になる僕。しかし老婆は目を細め、暫くじっと僕のことを見つめているだけだった。 


「良く来たねチビ・・・お前さんがリアムか・・・」 


 緊張感漂う中、突如老婆の口が開かれる。 


「は、はい・・・リアムです。よろしくお願いします」 
  
 僕はそれまでジッと見られていたのもあり、始め言葉に詰まりながら自己紹介をする。 


「ほうほう・・・私はマレーネだよ。お前さんは父親と違って躾がなってるね・・・・・・さすがアイナの息子だ・・・」 


 するとマレーネは感心したように頷き、そして父さんと僕を比較してその優劣をつける。 


「おいおい婆さん・・・」 


 そんな突然の劣評に、父さんも「そりゃそうだけどさ・・・」と苦笑いで頬を掻いていた。 


▽   ▽   ▽   ▽ 


 それから── 


「カミラと賭けてたんだろ?この子がポーションに頼らずモンスターを倒せるかどうか・・・」 


 ニヤリと笑ったかと思うと、マレーネはその視線を父さんに戻してなにやら僕の預かり知らない会話を始める。 


「ああ・・・カミラのやつ、洗礼式の日に『軟弱な奴は私の可愛い娘には近づかせん!』とかぬかしやがったからな!そりゃあ黙って見過ごせねぇぜ!」 


 僕はそうして「俺の自慢の息子だからな!」と豪語する父さんとマレーネの会話に、イマイチついていけない。 


「全く・・・売り言葉に買い言葉だが、子供は賭けの道具じゃないよ・・・」 


 しかしそんな父さんの自慢も他所に、呆れたように父さんに注意を促すマレーネ。 


「その話は二年前に聞いたよ・・・・・・で、連れてきたってことは早々に負けを認めたわけか・・・それが利口だよ・・・」 


 そしてなにやら会計机らしき受付に着き、机仕事をし始めた。 


「子供がモンスター相手にポーション無しで挑むとか無謀さね・・・ウィル坊もやっと大人になったか・・・」 


 手を動かして帳簿の書類に何かを書き込みながら、マレーネは会話を続ける。 


「で?今日はなんだい?ポーションかい?それとも薬かい?・・・まさかその子をもうダンジョンに連れて行くとは言わないだろうね・・・」 


 すると── 


 リンリン。 


「あれ?リアムじゃん!・・・どうしたの?怪我でもした?」 


 背後の入り口のドアベルが鳴り、僕の名を呼ぶ声が聞こえる。 


「ラナ・・・?」 


 僕はその声に反応し、店に入ってきた人物を確かめた。 


「おはよう!ラナちゃん!!」 


「おはようございます!ウィルおじさん!!」 


 僕の隣にいた父さんと、店に入ってきたラナが挨拶を交わす。 


「おかえりラナ・・・ん?レイアはどうした?」 


 ラナの来店に机から視線を離したマレーネが、僕も聞き覚えのある子の名でラナに尋ねる。


「へっ?・・・あれ?・・・どこいった?」 


 するとマレーネの言葉に、突如辺りをキョロキョロと何かを探し始めた。 


「あっ!・・・なんで隠れてるの?」 


 それから数秒、背後に何かを発見したラナが、首を横に曲げながら、自分の背後を見て問いかける・・・・・・そしてその背後には、なにやら見覚えのある白色の髪の一部が、チラチラと揺れ覗いていた。 


「・・・・・・」 


 しかしその問いかけには、答える者は誰もなく・・・ 


「おやおや・・・確か初対面ではなかったはずだろうに・・・」 


 返事を待ちに待てなかったマレーネが、やれやれと仕様がなさそうに呟く・・・すると── 


「・・・ただいま」 


 ラナの後ろに隠れていた女の子・・・・・・そう・・・洗礼式のあの日、教会で言葉を交わしたあの女の子が姿を現して、帰宅の挨拶を呟いた。  

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