アナザー・ワールド 〜オリジナルスキルで異世界とダンジョンを満喫します〜

Blackliszt

53 緊急避難

「・・・何これ?」 


 僕の目の前に現れたのは、眼前に広がる森の手前に鎮座する大きな炎の塊だった。 


『・・・!これってヤバくない!?』 


 突如として目の前に現れた火の塊に、僕は一瞬うろたえるが── 


『?・・・でもなんでだろう・・・全く熱を感じない』 


 その火の塊からは何故か、全くもって熱を感じなかった。 


「先生!熱いよ!」「おっきーい・・・」「あっつーい!」 


 すると先生たちの後ろに集合していた生徒たちであろうそんな声が、後ろの方から聞こえてくる。 


「フラン!私が水の壁で熱を防ぎますから、あなたは空間魔法で生徒たちを避難させてください!」 


 そしてケイトが何やら、生徒たちを避難させるためにフランに指示を出している声が聞こえてきた。 


「・・・?」 


 全く熱を感じていない僕は当然その発言の意味がわからず、思わず背後の彼女らの方へと視線をやる。 


「・・・!リアムさん!あなたは前を向いてその火の球の制御に集中してください!」 


 ケイトの注意で一瞬しか見ることができなかったが何やら背後の水の壁の向こうでは、フランが維持する空間に開けた丸い穴のようなものに次々と他の先生たちが生徒を誘導していた。 


「先輩!避難が終わりました。これからどうしますか!」 


 それから数分、どうやら生徒たちの避難を終えたであろうフランがケイトに次の指示を仰ぐ声が聞こえてくる。 


「ふっふっふ・・・どうですアラン!私の言ったことは正しかったでしょう?」 


 しかしその内容とは真逆に、なぜかアランに今更自身の正当性を問うケイト。 


「ああ・・・確かに、どうやらお前の言ったことは正しかったらしい」 


 その受け答えをするアランの声も、なぜか落ち着いていた。 


「火魔法は私の担当外ですので、ここは私より上手くイメージを伝えられるアランにお願いします」 


「わかった」 


 そしてここはアランに一任するとケイトが言った数秒後、アランは僕の背後に立つと魔法の指示出しを始めた。 


「いいかリアム君、そのまま聞いてくれ。通常火魔法を止める場合、単純にそこに通じる魔力の供給を止めればいいわけだが、今君が発動している火の魔法は魔法自体はとても初歩的なのだが如何せん、内包する魔力と今も君が流している魔力が大きすぎて最早火魔法の派生系である炎魔法レベルだ」 


 どうやら現在、僕の目の前で鎮座する火の塊はより強力と言われる火魔法の派生系、炎魔法に匹敵するらしい。 


「であるから、突如魔力供給を止めると魔法内に抑えられていた魔力が爆発的に霧散することになってそれは危険だ」 


 アランは続けて淡々と、現在の状況について説明していく。 


「しかしこれは同時に魔法のキャンセルを練習する良い機会でもある。恐れるな・・・ここはオブジェクトダンジョンの中だ。いざとなったらフランの空間魔法で速やかに移動すればいいし、もし失敗しても傷は治るし生き返れる。もちろん私も最後まで付き合おう」 


 アランやケイトがそれほど動揺していなかった理由はここがオブジェクトダンジョン内である事をより理解していたからだったようだ。 


「だから今できることを一つずつ試していこう・・・」 


「・・・わかりました」 


「よし!まずは現在両手で供給している魔力を片手だけに絞れるか?」 


「やってみます・・・」 


 僕はアランに言われた通りに左手で供給していた魔力だけを抜き取っていき、その魔法とのリンクを右手だけに絞る。 


「良い感じだ・・・そうしたら今度は、少し難しいがその片手の魔力供給を更に絞りつつ、もう一つの手で現在目の前にある炎を少しずつ弱めていくイメージをするんだ。・・・そうだな、炎を弱めるというのはつまるところ火の元である魔力を抜いていけば良いわけなのだが・・・結論としてやることは今したことと変わらん。先ほどよりもより繊細に、もう片方の手で魔力を供給する方の手のコントロールをサポートしてやるんだ」 


『なるほど・・・これを小まめにどんどん繰り返していけば良いわけか・・・仕組みとイメージはガスバーナーだな』 


 今度は先ほどやったように、魔力のリンクが繋がっている右手の魔力供給を絞っていきつつ左手を右腕に添え、そのコントロールにより細かな繊細さを足して慎重に絞っていく。 


「その調子だ・・・ゆっくりと・・・消え入る灯火をイメージして・・・」 


『結構簡単だけど、気を抜くと突然プツンと切れそうだ』 


 そして僕は背後のアランのアドバイスを聞きつつ、少しの緊張はあったもののみるみるうちにその炎の塊を萎めていくことに成功した。 


▼   ▼   ▼   ▼ 


 だがその炎が散っていき、やがてその直径が5m程に縮まった頃・・・ 


「・・・!」 


「良いぞリアムくん、炎がどんどん小さくなって・・・!」 


 その場にいた誰もが気づく、真っ黒に劇的な変化を見せた球体が炎の中から出現した。 


「おいおい・・・嘘だろ・・・」 


 すると僕の背後の直ぐ傍から、アランとは違う声が聞こえてくる。 


「あれはデケェが闇魔法の・・・魔法自体は単純な闇力子グラビトンの一種だな」 


「闇力子か・・・」 


「ああ・・・闇魔法が複数の性質が混在する魔法の代表なのは知ってるだろ?」 


 その声の主は、魔法演習では闇属性の魔法を担当するジェグドであった。 


「もちろんだ」 


「その中の力の魔力子基本の一つで、これは一応初級魔法に分類されるんだが何せ初級レベルなのにイメージが難しくて実質的なレベルは中級、なかなか発現させることが難しいんだ」 


 闇属性担当の教師らしく、その魔法について解説をしていくジェグド。 


「ではジェグド、あれを消すことは可能か?」 


 アランとジェグドはトントンと迅速に二人で話を進め、その球体に対して己の見解と解決策を模索する。 


「いや・・・、俺じゃああれは無理だ・・・」 


 しかしジェグドから告げられたのは、初級魔法でありながらもその闇力子を消すことができないというものだった。 


「あの闇力子の球はおそらく、さっきまでリアムの坊主が周りに纏わせていた炎と熱を吸っている。今炎がなくなってからここの気温が急激に冷えているのもきっとそのせいだ」 


 ジェグドの言う通り、先ほどまでと違って炎の勢いに押されていた周りの草木の揺れは逆にその球体に吸い寄せられるように揺れており、現在もそれほどではないものの、少しずつ周りの気温が下がっているような気がする。 


「つまり・・・」 


「ああ・・・、あれは俺の専門外の《複合魔法》だ。そしてあの闇魔法をもし取り除くことができたとして、その後のことを考えると・・・」 


「今度は内包された熱の爆発的な拡散が起きる・・・と」 


「そういうことだ。炎は消せても熱は残るからな・・・」 


 ジェグドの見解を述べて数秒、黙り込む二人・・・ 


「困りましたね。これは私も流石に専門外です」 


 そして遂に、先ほどまで炎の消し方を教えてくれていたアランも白旗を揚げたようだ。 


「仕方ない・・・フラン!」 


「はい!」 


「今すぐゲートを用意してくれ!無念だが一旦魔力供給をリアム君に切ってもらった後、直ぐに移動する!」 


「わかりました!」 


 すると更に、僕の背後に増えた一人の気配を感じる。 


「・・・先輩とビッドさんは生徒たちと一緒に先に避難しましたので、あとは私達だけです」 


「であればリアムが魔力リンクを切ったあとは俺がこいつを抱えて飛び込むぜ!」 


「確かに、この中でリアム君を抱えて一番俊敏に動けるのはジェグドだな・・・わかった、では私は先にフランと先に行ってゲートを閉じるタイミングを計るとしよう」 


「申し訳ないのですが先ほどの生徒たちの移動でほとんど魔力がないので、出来るだけ早めにお願いします」 


「ああ、善処しよう!」 


「では念の為先輩たちとは少しズラしたところに繋げますね・・・《ゲート》!」 


 そしてフランは空間魔法の一つであろう《ゲート》の名を唱え、その詠唱ともに、僕は何やら後ろの方で少しずつ広がっていく魔力の穴のようなものを感じた。 


「良いかリアム、少しでも拡散を遅らせて逃げる時間を得るために、リンクを切るついでにこいつを森の方に飛ばしちまえ!」 


 するとそんな魔力の流れを感じたのも束の間、ジェグドがある提案をしてくる。 


「でも・・・」 


 しかし僕はそのジェグドの提案に、直ぐに賛成することができなかった。 


「大丈夫だ!さっきケイトのやつが話してただろ・・・ここ一帯はスクールの演習地で、あの森もそれに含まれているから実害は皆無だ」 


 だがジェグドは、そんな僕を見るや否やこれから起こるであろうデメリットについて僕に心配がないことを説明してくれる。 


「森の方がセーフエリアより遠いし、それにもし森の中に冒険者がいたってのなら、それは無断で森に入った冒険者が悪い!」 


 冗談っぽく、明るく振る舞い僕の不安を拭おうとするジェグド。 


「こういうことを想定して・・・まあ流石にこれは想定外だが、そのために魔力が増える年代の生徒たちの練習をダンジョンの中でやってるんだ・・・だから気にするな!なあアラン?」 


「そうだな、気にすることはない。それに今は別の不可解な疑問が湧いてきた・・・あとでそれを処理するのに付き合ってくれれば問題ない」 


「だってよ?」 


 そんな風に笑いかけてくれるジェグドの言葉には、僕の中の不安を全て包んでくれるほどの包容力があった。 


「残魔力が少なくて穴を広げるのに時間がかかりましたが、固定化はできました!急いでください!」 


「ではジェグド、先に向こうで待っているぞ」 


「おう!ゲートを閉じるタイミングはお前に任せるからしっかりとフランと計ってくれよ!」 


 そしてジェグドの返事から数秒、フランとアランは先にゲートの向こうへと行った。 


「魔力を絞るのがここまでできたんだ・・・リンクを切るぐらいはわけないよな?」 


「はい・・・!」 


 ジェグドのおかげで一時の不安を拭えた僕は、そのジェグドの問いかけに対して力強く肯定する。 


「よしッ!・・・それじゃあ3、2、1でいくぞ!・・・さん・・・・・・いち」 


 カウントダウンを始めたジェグドに合わせ、僕も緊張感を高めながらタイミングを計る・・・そして ── 


ゼロッ!」 


「・・・!」 


 ジェグドから0のカウントダウンが告げられ、僕は一気にその黒い力の塊を前方へと飛ばし、同時にリンクを断ち切る。 


「よし!いくぞリアム!」 


 僕がリンクを切ったのと同時にそれを確認したジェグドは僕の腹に手を回して担ぎ、ものすごい勢いで後ろへと飛んだ。 


 ・ 
 ・ 
 ・ 


「これって・・・」 


 体が後ろに引っ張られて数秒、僕の視界に飛び込んできたのは先ほどまでいた演習場や森が映る空中に開いた穴だった。 


「フラン!今だ!」 


「閉じます!」 


 そして聞こえてくるアランとフランの掛け合い。 


 ──次の瞬間 


「眩しい!」 


 その掛け合いと同時に僕の目にはその映像から閃光のような光が飛び込み、束の間に穴が閉じていた。 


「なんとか間に合ったぜ・・・!」 


 安堵するジェグド。 


「よくやったジェグド・・・そしてリアム君」 


 無事に事を得てこちら側に辿り着いた僕たちを褒めるアラン。 
  
「やりましたねジェグドさ・・・ん」 


 そして無事事なきを得て貢献した最後の一人であるフランが喜びを分かち合おうとしのだが・・・その途中── 


「・・・!」 
「うお・・!」 
「ひっ・・・!」 


 突如遠方の彼方から強烈な光が上がり、その方角から途轍もない爆発音が鳴り響いた。 


「まさかここまでとは・・・」 


「はっはっは!流石に生き返るっつっても木っ端微塵はゴメンだな!」 


「冗談になってませんよ!ジェグドさん!」 


 そんな閃光と爆音を眺めながら、やがて立ち上る煙と赤い境界線をバックに各々の反応を見せる先生達であった。 

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