アナザー・ワールド 〜オリジナルスキルで異世界とダンジョンを満喫します〜

Blackliszt

38 授業選択

「お二人とも、席にお着きになってください」 


 教室の入り口でエリシアと対峙していた僕の背後から、ニッコリした笑顔でそう語りかけるケイト。 


「は、はい」 


 偶々とはいえ助け舟となったケイトのその発言に、僕は戸惑いながらも、エリシア問題を中断して開き直りいつもの自分の指定席へと向かうことにする。 




▼   ▼   ▼   ▼ 


「・・・おはよう」 


 それから僕はいつも通り、アルフレッド達の座る机へと向かって同席である彼らに朝の挨拶をする。 


 そんな僕の朝の挨拶にフラジールは「おはようございますぅ」と普段と変わらない弱々しいが僕には聞こえる程度の声で挨拶を返す・・・・・・しかし、もう一人の同席人であるアルフレッドは、どこか不機嫌そうに「ああ」と返事をするだけだった。 


「どうしたんだ?・・・らしくない」 


 僕はそんないつもと違う態度を見せるアルフレッドを疑問に思いながら、そんな態度を見せる彼に質問をする・・・すると── 


「ンッ・・・」 


 アルフレッドは少し唸って僕の後ろを示すように、腕を組んでから顎をクイッと上げる。そして── 


「後が詰まっているんだから早くしてくれない?」 


 なぜか後ろの方からそんな僕を急かすような声が聞こえてくる。 


「えっ・・・」 


 そんな遠くない、それも背後から聞こえてくる突然の声に、僕は驚きながらもそれを確認するべく後ろを振り返る。 


『ついてきてたのか?・・・気づかなかった』 


 なんとそこには、おそらく僕の後ろをついてきたのであろうエリシアがいたのだ・・・・・・更に── 


「どうしたのです?・・・早く席にお着きになってください」 


 今度は教室前方の方から、教壇から先ほど同様の笑顔を浮かべたケイトが、そういつまでたっても席に着かない僕たちに注意を促してきた。 


『その笑顔で物言いするのはやめてくれ・・・緊張するから』 


 そんな笑顔で注意をしてくるケイトに、僕は思わず内心でぼやく。 


「・・・・・・はあ」 


 しかし結局、そのケイトの後押しもあり、僕は何がなんだかわからないまま、右隣にアルフレッド、左隣にエリシアといういつもとは違った配席で席につくこととなった。 




▼   ▼   ▼   ▼ 


『少し落ち着かないな〜』 


 ここの教室の机と椅子は大人で四人、僕らのサイズでは五〜六人ぐらいは座れるほど長いものであるが、これまで三人で座っていた椅子に四人でかけているので気持ち狭く感じる。 


「それでは皆さん、本日は先日の告知通り、まずは魔石の配布、それからこちらは本来の予定通り、授業科目の選択をしてもらいます」 


「少し時間も押してるので、先に授業科目選択の用紙を配ります。魔石配布については、対象者をその都度お呼びしますから、その間、対象の方以外の皆さんは各自、自身でお決めになった授業を選択しておいてください」 


 そしてケイトは、時間が押していることを挟みつつもそう説明を続けていった。 


『申し訳ない・・・』 


「時間が押している」・・・・・・この件に関しては、その理由の大部分を僕が占めているため、 


 しかし、そんな僕の内心は気にもとめず、ケイトは持参した科目選択用紙を前の席の生徒達へと配っていく。 


「用紙をお持ちでない方はいませんね?・・・・・・では、昨日の魔石の配布から始めます。呼ばれた生徒は前へ、他の皆さんはくれぐれも大きな声で騒いだり、遊んだりしないよう律を持って自分のすることに臨むように・・・」 


 そして、一通り用紙が行き渡ったことを確認したケイトは、クラス一同に向けてそう念押をし、魔石配布の対象者の名前を呼び、己の仕事に徹すする。 
  
「ねぇねぇリアム、是非私と一緒の授業を取りましょ?」 


 すると突然、ケイトの説明が終わり各自の時間へと移った直後、隣に座るエリシアが僕に話しかけてくる。 


「いや・・・エリシアはエリシア・・・自分の好きな科目を選んだ方がいいと思うよ?」 


 僕はそのエリシアの提案に、否定的な言葉で返す。 


 仲の良い友達と一緒の授業を取るといったことは、前世でもよく聞いた話である。確かにこういう時、もしその友人と同じ授業を取ることでもチーションが上がるというのならば、ここで同意するのも一つの手なのであろう。だけどこういうことは、他人に流されず、自分のやりたいことがあるのならばそれを取るに越したことはないし、その方がきっと後悔しない。 


「・・・・・・という訳でエリシアはエリシア、僕は僕でそれぞれ好きな授業を採った方が建設的だと思うんだ」 


 僕は、そのような自分の考えをオブラートに交えながらも、エリシアに説明し、その誘いを断る理由とする。 


『まあ、前世では友達がいたことがなかったからこういう偉そうなことはそもそも言えないんだけど・・・』 


 そう考えると、自分の考えを自分で言い、自分で想像し自分で帰結したことではあるのだが、なんだか悲しくなってくる。 


『いかんいかん・・・こういうことはもう考えないって決めたじゃないか・・・もう僕は新しい世界にいるのだから・・・・・・』 


 時々フラッシュバックしてくる前世の悲喜。しかし嬉しい事ならばいざ知らず、そんな悲しいことを思い出してもなんの得もない。精々反面教師にする程度が吉であろう。 


『あっ・・・そういえば話の途中だった』 


 現実の時間にして十秒ほどであっただろうか。突如自分の世界へと入ってしまった僕だが、なんとか思考の途中で現在の状況を思い出す。 


「じゃあそういうことだから、この話はこれで・・・」 


 そして僕は、前世の感傷に浸ってしまったからだろうか。話も早々、エリシアの返事も聞かず、この話題を引き上げようとする・・・しかし── 


「フグッ・・・・・・」 


 すると隣から、その話の締めを遮るような呻き声が上がる。そして── 


「ウゥゥ・・・・・・」 


 忠言を聞いたエリシアは何かを我慢するように呻きをあげ、その瞼に涙を浮かべていた。 


「!・・・わかった、エリシアの気持ちはわかったからなるべく一緒の授業を取れると・・・いいね」 


 すると── 


「そうね!それが一番いいわね!」 


 その言葉を聞いた途端、突如ケロッとした表情を見せるエリシア・・・・・・ 


「・・・・・・」 


 僕はそのエリシアの変わりように唖然とする・・・・・・そして── 


『してやられた!』 


 その驚きも束の間、漸くエリシアのその 演技だったことに気づいた。 


『ああ〜・・・またか!』 


 僕はそのことに気づき、ふとそんなことを思いながら苦悩する。 


『・・・最近こんなことばっかな気がする・・・・・・気のせいか?』 


 実際、スクールに入学することになって学長先生、ケイト、そしてエリシアまでにも嵌められた。 


『この世界の人は子供でも油断できないか・・・』 


 この世界の技術水準は『魔法』の概念を抜きにすれば中世のヨーロッパほど、魔法を取り入れるとある分野では突出した発展を見せ、更に解明されていない魔導技術に至っては、それは、前世の近代技術にも届くようなものもあるように見受けられる。 
 そしてこの世界に来て何度も痛感させられることではあるが、この世界の子どもは自立が早く、自発的だ。これは僕の推測であるが、おそらく前世よりも遅れた発展事情、不安定なダンジョンや魔法、モンスターなどの概念が現実として存在しているせいであろう。 
 そんな世界の平民はたくましく、またそんな彼らをリード、統治する家の人々もまた、相対的にたくましい。 
 そしてその子どもたちもまた、その無邪気なあどけなさはあるものの、しばしばどこか達観した、かつ自発的な行動をよく見せる。比較的立場が安定している令嬢、しかし僕の中で今では『ポンコツ寂しがり屋』なレッテルを貼られているエリシアでも、この年齢でその才能の一旦を垣間見せるのだから、なんともたくましいことこの上ない。 


『僕はまだまだ甘ちゃんだな・・・』 


 そんな意外な方向から僕を驚かせてるエリシアに、僕は内心で感心しつつも観念し、一時自分を見つめ直す。 


 人をちょっと騙して楽しむこと。これもまた、この世界でも一つの娯楽なのである。 



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