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Blackliszt

31 魔力と魔石と・・・

「魔力は万象の源と呼ばれ、あらゆるものに変化し、あらゆる力へと変換できるエネルギーのようなものです。しかし、その変換には変化を促す媒体が必要となります。変化・変換される前の魔力は普遍的なものでありますが、それ故にその生物が保有できる魔力量、変換することのできる属性資質はその個によって変わるということです」


 自己紹介が一通り終わると、ケイトは一度退室し、再び大きな麻袋を持って戻ってくる。そしてその後、すぐに魔力に対する講義が始まった。この講義は、これから先学ぶ魔法属性選択する前の事前説明の一環である。


「それから、魔力は一定量まで不可逆的に増えていき、そのレベルに達した後、基本それが衰えることはありません。また、生命のエネルギー一種いっしゅとしてその一端を担う魔力は、それを多く保有する生物について、基本的に長寿となる傾向があります」


『というか、こんな難しい(体年齢と比較して)説明で他の生徒は理解できているのだろうか』


 ・・・そうしてふと、周りを見回してみると、皆、一生懸命理解しようと講義に集中してはいるが、その眉間にはシワが寄ったりと、どうやら理解できていなさそうだった。


「まあ、この説明は王立魔法学院高等部教科書の初めから抜粋した内容なので、まだ完全に理解する必要はありません。皆さんは簡単に、『魔力は誰にでもある魔法の不思議な素』くらいの認識で結構です」


『なんでやねん』


 王都にしかない高等部レベルの説明を初等部一年目の講義でした上、今は理解する必要がないと言うケイトに思わず、関西弁ツッコミを心の中で入れる。


『・・・しかし、そうか・・・。初めから頭ごなしに答えの見えない問いかけをするよりか、こっちの方が案外良かったりして』


 これが高等部レベルの説明内容であるのならば、もし、僕たちがこの先魔力に疑問を持っても、すぐにそのソースを調べ上げることはこの世界の技術レベルでは難しい。『これはこれで先生なりの優しさなのだろう』と、僕はこの世界に来て初めて受ける”未知”を学ぶ授業の分析をする。


「それから、皆さんも既にご存知であるでしょう魔石について、簡単な説明をしたいと思います」


 魔力の講義に続き、次は魔石についての講義が始まる。


「魔石はみなさんの内に秘める魔力を吸収することで、一定の事象を自動的に変換してくれます。火の魔石からは”火”が、水の魔石からは”水”のようにその秘める属性によってその事象の変化対象が変わるのです」


『へぇ〜。つまり魔石は人間が干渉して引き起こす魔法スクリプトを保存、魔力と魔法の仲立ちをする媒体のようなイメージでいいのかな?』


 そのケイトの説明に、僕は前世のPCやスマホといったデバイス類を思い浮かべた。あれも、電気というエネルギーを使い、ハードウェアと内に内蔵されるソフトウェア、機体とプログラムが引き起こすいわば魔法のような科学の結晶だ。


「そしてッ・・・!専用の陣を作る!・・・または付属的に魔石に陣を書き込むことで、その変換先の現象の特徴、制御を直接的、および間接的に書き換えることでより多様な用途を生み出すことができる分野こそ・・・」


 ケイトはそこで言葉を一旦止め、拳を固く握る。・・・そして ──


「それこそが魔法陣学なのです・・・!」


 程よい溜めを挟み、魔法陣学の美学を熱く語るケイト。・・・どうやら先ほどの魔石のイメージはあながち間違いではなかったようだ。だが ──


 ・
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『『『なんか趣旨ずれてね?』』』


 本題から脱線し暴走するケイトに、おそらくこの教室にいるケイト以外の誰もがそう感じたのではないだろうか。


「文字や図形を使って森羅万象を書き換え具現化させる。・・・ああ!・・・なんて素晴らしい分野なのでしょう!」


 恍惚とした表情で更に魔法陣学の神秘を語り始めたケイト。しかし ──


「・・・はっ!・・・・・・オホンッ!・・・みなさんも是非、魔法陣学の授業を選択してくださいね」


 途中で暴走しかけていたことに気づき、なんとか堪えを効かせたようだ。咳払いをし、自由選択科目である魔法陣学の宣伝で一旦締めくくる。


▼      ▼      ▼      ▼


「では、魔力についての簡単な説明も程々に、皆さんお待ちかね、魔法選択の時間へと移りたいと思います」


 切り替えるように話題と講義内容の転換を行うケイト。


「一人ずつ名前を呼んでいくので、呼ばれた人は前に出てきて自分の持つ魔法属性を無属性以外一つずつ教えてください。・・・それより後のことは実際に見てもらった方が早いので、一人目の実践をしながら説明しますね」


 それからケイトは、自己紹介同様の順番で最初の一人を呼ぶ。
 そして呼ばれて前に出た生徒は、自分の持つ魔法属性を申告した。


「魔法属性は火と水です」


 すると、ケイトはその申告された数と同数の種類、それぞれ一定大の魔石を用意する。


「火と水ですね?・・・それでは、こちらの魔石にように触れてみてください」


『ん?・・・・・・なんか不穏なワードが聞こえたような・・・?』


 ケイトのその説明に、僕は嫌な予感を覚える。
 しかし、僕のそんな不安を他所に一人目の生徒はその魔石に触れる。すると ──


『魔石が光った』


 その生徒が魔石に触れると、魔石が淡い光を持って輝き始めた。


「では、次の魔石を・・・・・・はい、結構です」


 そして、一人目の生徒が二つ目の魔石も光らせ、ケイトの合図で手を離す。


「この魔石にはご覧頂いた通り、流れ込む魔力を魔法に変換する魔石の機能を書き換える魔法陣が組み込まれており、魔力が通ると”光るだけ”となっています」


 どうやら、魔力を通すと現象を引き起こす魔石のプロセスに干渉する魔法陣が、魔石内に組み込まれているようだ。


「これらの属性魔石は皆さんに差し上げますので、是非、日頃から魔力を流し、徐々にその属性と魔力を制御する感覚を養ってください」


「魔力と魔法を操る練習で、最初は誰もが通る道です」と付け加えたケイトは、その意味の説明を終える。


「では次に参りましょうか」


 そういって話の橋渡しをしたケイトは、次々と生徒を前に呼んでいき、その魔力操作練習をさせていく。


 ・・・
 ・・・・・・
 ・・・・・・・・・


 そして大体15分から20分ほど経った頃だろうか、やっと僕の番が回ってきた。


「ふふん・・・光らなくても拗ねるなよ!その時は僕が魔力の流し方を教えてやる」


 魔石を受け取り、戻ってきてそう告げるアルフレッドは、いつもより上機嫌だ。


 入学式の時に見たので知ってはいたが、アルフレッドはもう魔法を使うことができる。・・・・・・つまりそれは、魔力を魔石に流すことは彼にとって容易であると言うことで・・・。


『全く・・・注目と感嘆の声々をちょっと集めたからって、調子に乗りすぎだ・・・』


 事実、アルフレッドの魔石の光は他の生徒とは一線を画すほどにつよく、教室の全体から「おぉ〜」と感嘆の声が漏れていた。僕もそれを見たときは『これはいい練習相手になってくれそうだ』と、心のどこかでその巡り合わせと幸運について嬉しく思っていたのだが、今は『・・・面倒臭い』と素直に喜べない複雑な気持ちである。


── そんな複雑な気持ちを抱えながらも、僕は教壇の方へ、前に出る。


「では、属性の方をお願いします」


「・・・・・・」


 しかし、僕が直ぐに自分の属性を答えることはない。


「?・・・どうしましたか?」


 そんな僕の態度に、不思議そうに顔を傾げるケイト。


「えっと・・・その・・・・・・耳を貸していただいてもよろしいですか?」


 自分の持つ属性を伝える。これはスクールで魔法練習を行う上で、どうしても必要なプロセスである。そして、ここで自分の属性を偽ると言うことは、控えめにいって、デメリットの方が圧倒的に大きいであろう。


 ここは正直に申告するのが吉というものである。── だが、わざわざ自分から喧伝することはない。僕はケイトに耳を貸して欲しい旨を伝え、自分の持つ属性を正直に申告しその判断を教師であるケイトに委ねる。


「リアムさん・・・・・・何冗談言ってるのです?」


 そしてそう伝えた僕の持つ属性に、ケイトは「何冗談言ってるのだ」とその申告を一蹴しようとする。しかし ──


「そういえば、リアムさんは入学式の日にアルフレッドさんの魔法から身を守って見せましたね・・・」


 そう言って入学式前に起こった出来事を昨日のことのように語り出すケイト。


「よろしい。・・・では、ここで全てを否定するのはやめておきましょう」


 どうやらその僕の申告を足蹴にするのだけは止まってくれたようだ。


「しかし、精霊の噂は一見にしかず・・・とも言いますし・・・」


 何かを思案するようにしばし黙り込むケイト。そして ──


「ではリアムさん。提案なのですが、あなたのステータスを私に見せてはもらえないでしょうか?」


 するとケイトはとんでもない要求をしてくる。「あの時からその原因についてはずっと気になっていたのです」と、興味本位からの提案であることを全く隠そうとしないケイト。


しかし ── 


『大丈夫だ・・・』


と僕はその請いに動揺することはなかった。

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