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Blackliszt

27 自由科目と小さな反撃

「何かわからないことがあれば、手を挙げ、許可を得てから質問すること」


 個人的な話を二人でしていた僕とアルフレッドに、ケイトは引き続き笑顔でそう告げる。


『?・・・これはいいチャンスなのでは』


 ケイトがそう言うや否や、ふと思いついた僕は「はい」と挙手する。


「・・・何でしょう・・・確かリアムさんでしたね」


 ケイトは笑顔のままそう聞き返す・・・少し口元がピクついた様な気がするが発言の許可を得た僕はすかさず言葉を連ねる。


「はい、ケイト先生。実は僕、から新入生のしおりというものを頂いていないのですが・・・」


「・・・!」


 気持ち学長先生を強めたその発言に、ケイトはまた口元をピクつかせた。


「それで最初に先生がおっしゃったことがわからず、アルフレッドくんに質問をしていたのです。ごめんなさい」


 そして続く僕の言葉に、またもケイトの口元がピクついた。そして ──


「・・・いいでしょう。しかし、これからは先ほども申した通り、わからないことがある時には今回の様に先生に質問すること・・・いいですね?」


 発言中、動揺の色が少し見て取れたが、最後には揺るぎない笑顔でそう言うケイトに、僕は「はい、ありがとうございます」とお礼を言う。


「・・・!・・・鐘がなりましたのでこれにて1限は終わりです。次の授業は30分後ですので、各自、暴れたりせぬ様大人しく休憩する様に」


 終業の鐘が校内に響き渡り、授業終了と次の授業開始時間を告げてケイトが教壇から離れ教室を出る。その足取りは、少し足早だった。




▽     ▽      ▽      ▽


「上級生は進級のタイミングで実力テストがある様だが、新入生だけは入学して1ヶ月後のテストを行う。そして、新入生の場合は学力だけではなく、その普段の授業態度や生活態度も大きく評価される。と、そうしおりに書いてあった」


「お前も気をつけるがいい。と、先ほど注意された僕に、これまた先ほど注意されたアルフレッドが説明してくれる。


『ああ、だからか。妙にみんな年齢のわりに分別があるなって思ったけど、ただ自分の内申点を少しでも上げておこうってことだったのか』


 初めての授業だったし、事前にそう言う内容が伝えられていれば、親もそのしおりには目を通しているだろうから口すっぱく色々言われているのだろう。今のアルフレッドの説明に、僕年齢の割に分別あるクラスメイトたちのその態度に納得した。


「そしてさっきの続きであるが、まずは特別枠だ」


 休み時間に入って自由になったアルフレッドが、授業中に話していた続きを話してくれる。


「特別枠とは・・・まあ結局はコレだな」


 そう言うアルフレッドは右手の人差し指と親指で輪っかを作ってみせる。


「金・・・か?」


「ああそうだ。将来何かしら大きな職を継がないといけない子供達は色々と専門的なことを学ばなければならないのだ。そこで、特別枠には一定の学費を納めることで入ることができるという制度があるという訳だ」


 そして「ちなみに僕も特別枠でSクラスに入ることが決まっている」と付け足したアルフレッド。


「なるほど。それじゃあ自由科目って?」


 そう最後の言葉をスルーする僕に「もっと興味を示せ!」と怒鳴るアルフレッドであるが、その後自由科目について説明をしてくれる。


「まあ、今の話にも関係するのだが、自由科目は自由に選べる科目といったところだ」


 ・・・そのままだった。


「つまり剣術や鍛治、薬学などだな。そして、僕の様な貴族にもなると『貴族科』というものまである」


 どうやら自由科目は多種多様な職業用の勉強といったところらしい。


「そして自由科目は、クラスのランクが上がるごとに国語や算術などの基礎授業が免除されて選択することのできる量が増える。だからSランクには特別枠があるという訳だ」


『クラスランクが上がればそれだけ自由に好きな科目を選択することができる・・・とそういうことか』


 どうやら皆が上のクラスに所属したい理由はこれにありそうだ。モチベーションを刺激するなかなかいい制度である。


「大体わかった・・・後はしおりを貰いに行ってから自分で確かめてみるよ」


「ふんッ・・・まあわからないことがあればこのアルフレッド様に聴くがいい」


『急にふてぶてしくなったな……。まあ、今回助かったことは事実だが』


 今回は助かったと素直に思う。・・・しかし ──


「なあ、そういえばなんでそんなにしおりの内容を把握しているんだ?」


 ふと湧く疑問である。アルフレッドも貴族であり、スクール入学前の英才教育を受けてはいるとは言え、6歳の子供が流石にスクールの仕組みについて詳しすぎる。


 ── その質問にアルフレッドは「優秀な人間が近くにいると、嫌でも学びに打ち込むと言うものだ」と感慨深そうに語っていた。そんなアルフレッドに僕は、『彼は本当に6歳なのであろうか?』と哀愁漂わせる彼に、僕は違う意味で疑問を持った。


▽      ▽      ▽      ▽


『つまらなすぎる』


 アルフレッドの説明が終わり、トイレなども済ませ、張り切って次の授業に臨んだ僕は今、絶望していた。


『まさか授業内容がこんな基礎中の基礎なんて・・・しかもこれが1ヶ月続くのか』


 授業科目は国語。そしてその内容はなんと基礎文字の練習だった。
 ちなみに、僕はこの世界の文字の読み書きができる。自動翻訳のおかげだろうか・・・集中して感覚を研ぎ澄ましてみるとまるで母国語である様にその言語を初めから知っていた様な不思議な感覚だけを感じ取ることができる。そして、そう覚えた言葉は普遍かつ不変的で忘れることはない。


「新入生は字が書けるものだったり字も読めなかったりとばらつきがある。しかし、最初からテストをしてクラス分けしてしまっては個人の環境の差が大きく出るからな・・・だから新入生は1ヶ月だけ基礎授業のみの猶予が与えられる・・・・・・らしい」


「これは父様に会話のついで程度に聞いた事なので曖昧だが・・・」と付け足し唐突にそれを口から零すアルフレッド。


「しかし、流石にこれは暇すぎる。僕は家で一応スクール低学年程度の学習は終えているからな・・・」


 そのつまらない授業に、アルフレッドも苦言を呈する。


 だがこの事実は、よく前世を思い出してみればわかりそうなものだった。ちなみに、次の算術の時間は『数字の練習』と僕にとってなんの生産性もない退屈な授業だった。




ー side story ー


「学長先生!一体どう言うことですか・・・!」


 突如学長室の扉が開かれ、一人の女性教師が乗り込んでくる。


「これはケイト女史。どうされたのです?」


 そして私の前に立ち、矢継ぎ早に「どういうことなのか」と怒鳴るケイトに冷静に対応する。


「学長先生・・・あなたリアムくんに新入生のしおりを渡し忘れてましたね・・・!」


 ドッと嫌な汗が流れる。


「あれは新入生がスクールに入る前にスクールの制度や体系を知るための大事なしおり・・・それを渡し忘れるとは言語道断です!」


『なぜよりにもよって彼女に伝わってしまったのか・・・そういえばリアムくんの仮担当者、彼女だった・・・!』


 今、忘れていてはいけなかった大事な情報を思い出した


『他の先生たちならばまだ良い。私でもなんとか・・・というかなんとでもできる・・・・・・しかし彼女はまずい・・・!』


 他の先生たちならば多少のミスは水に流してくれるのだ。・・・しかしケイトは違う。彼女は真面目すぎるからだ。


「・・・どうやら特に反論はない様ですね」


 ミスを指摘されてからずっとだんまりしている私に、ケイトはそれが間違いない事実であるという確認する。


「・・・それではこれをお願いします」


 するとどこから出したのか。学長室の机の上に大量の紙が置かれる。


「反省文です。しっかりと隙間なく書いて私のところに持ってきてくださいね」


 反省文とはまるで生徒に与えられる罰の様だ・・・・・・しかし普通の反省文と違うのはこの紙の量である。一体何枚あるのだろうか、考えるだけでも恐ろしい。


「それでは、しおりは私の方で後日リアムくんに渡しておきます。では失礼します」


 そういって学長室から出て行くケイトと、ポツンと学長の椅子に座り取り残される私。


「・・・フッフッフ」


 ケイトが出て行った後、静かに響く笑い声。


『リアムくん。一度ならず二度までも私の不意をついてくるとは・・・』


 一度目は彼の入学試験の日。預かり知らぬ伝達ミスとはいえ、元の原因は私だ。・・・しかし、もし彼があの難題(笑)の試験に受からなければ、そのミスを浮き彫りにすることはなく、試験問題を間違えた理由も無理やり正当化することができたはずだ。


『彼は僕にとってイレギュラーかな。まさかケイト女史を焚きつけるとは実に興味深い・・・そして面白い・・・!』


 ルキウスは効率家でありながら、何よりも面白さを追求する。
 思わぬ不利益がもたらされることもまた、人生において面白い事柄である。


『しかしこれは流石に多すぎるな』


 机の上に積み上がる紙の塔に、「どうしたものか」とどう処理するか思案するルキウスであった。

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