アナザー・ワールド 〜オリジナルスキルで異世界とダンジョンを満喫します〜
26 クラスランク制度と忘却のしおり
アルフレッドと和解して約10分ほどが経った頃だろうか。廊下に接する扉が開き、見覚えのある人物が教室に入室する。
そして、その人物が教室に入って来たことに気づいた生徒からだんだんと談笑をやめて静かになっていく。みんな、6歳とは思えないくらいに分別があるようで驚いた。
「・・・よろしい。皆さんおはようございます」
その教室に入って来た人物は教壇につき、皆が静かになったのを見計らい挨拶をする。
「「「おはようございまーす」」」
そしてその挨拶に挨拶を返す生徒たち。
「では、まずは私の自己紹介からしたいと思います。私の名はケイト。この度、約1ヶ月後に控える実力テストまで、この仮のクラスである1-2の担当となりました。よろしくお願いします」
そう、僕たちのクラスの担当は入学式の時に面識ができたケイトであった。しかし ──
「仮のクラスに実力テスト?」
ケイトの自己紹介にあったその言葉の意味がわからず、僕は思わず小声で呟いてしまう。
「なんだ、お前そんなことも知らないのか?」
すると、さっきまで拗ねていたアルフレッドが突然元気になって、僕の方をニヤニヤとした顔で見ながら小声でその呟きに反応する。
「・・・悪かったな」
妙にイラっとする顔を向けられながらも、そのことに対して無知である僕はアルフレッドに反論することができない。
「ふふん・・・ならばこの僕が教えてやろう」
そうどこか嬉しそうに鞄から見るからに高そうなペンと紙を取り出して説明を始めるアルフレッド。
「いいか、このスクールでは入学するとまず、生徒の実力を見極めるためのテストが行われる。このテストは毎年進級とともに行われ、成績順にクラス分けがされるのだ」
そう説明しながらペンを走らせるアルフレッド。
「そのクラスは上からS、A、B、C、Dと良い成績順に並べられるのだ。そしてその人数が大体・・・」
Sクラス 3人+特別枠
Aクラス 20人
Bクラス 20人
Cクラス 20人
Dクラス 10人
「といったところだな。クラスのランクが上がると、受けられる自由科目と時間が増えるのだ」
なるほど。どうやらスクールは習熟度別にクラス分けをするシステムを導入しているらしい・・・だが ──
「この特別枠ってなに?それに自由科目って?」
「?」
 その疑問に、アルフレッドは信じられないものを見るように僕の顔を見る。
「お前・・・特別枠ならまだわかるが、自由科目も知らないのか?」
「し・・・知らない」
「・・・はぁ」
アルフレッドは僕のその知らない発言に、如何しようも無い子供を見るような目をしてため息をつく。
『ええ、知りませんよ・・・知りませんとも・・・・・・お願いだからそんな呆れた目で僕をみないでくれ』
『まさかアルフレッドにこんな目で見られる日が来るとは・・・・・・』とアルフレッドと出会ってそう思う時間すらなかったが、僕は全然スクールのシステムについて知らなかったらしい。
「お前、新入生のしおりを読んでいないのか?」
「?」
僕は何度クエスチョンマークを浮かべれば良いのだろうか。次々に知らない新情報が出てくる。
「なぜしおりのことも知らんのだ!・・・あれは新入生全員に入学前に届けられているはずだぞ・・・!」
大きくなってしまいそうな声をなんとか抑えるアルフレッド。
「・・・あのさ・・・・・・そのしおりって大体入学前の何時頃に届くんだ・・・?」
入学前と言われても、その期間がどれほどなのかわからない。・・・・・・実を言うと、僕が入学試験を受けてから入学式を迎えるまで1週間程しかなかったのだ。
僕はその時期を確かめるべく、アルフレッドに尋ねる。
「・・・?・・・確か2ヶ月ほど前だったと思うぞ・・・?」
なるほど・・・・・・。僕がスクールの制度について無知すぎるその元凶が今、わかった・・・。
『僕が入学を突然志願したのも悪かったが・・・・・・あの学長・・・そのしおりを僕に渡すのを忘れてたな・・・!』
確かに入学を突然志願したことに多少なりとも責がないこともないが、おそらく想像するに、これは学長先生が渡すべき書類を渡し忘れた結果なのであろう。
「・・・もらってない・・・・・・しおり」
僕は内心、なぜか片手軽い握り拳を額側頭部あたりに当て、「てへぺろ」っていっている学長先生を想像し、怒りに震えながらもそのしおりをもらっていない旨をアルフレッドに伝える。
「そ・・・そうか・・・・・・そういえばお前は少々特殊な入学の仕方をしたのだったな」
恐らくアルファード卿から僕が通常の方法で入学してないことを聞いていたのだろう。しおりをもらっていない旨を伝えるその底冷える様な声に、呆れていたアルフレッドの目が同情のそれに変わっていく。
「・・・仕方ない。とりあえずは僕が説明してやろう・・・」
「・・・頼む」
・・・
・・・・・・・
・・・・・・・・・・
しかし、アルフレッドの説明が始まることはなかった。
「・・・どうしたのだ?フラジール?」
アルフレッドが突如フラジールの方に視線を向ける。どうやらフラジールがアルフレッドのローブの袖を引っ張ったようだ。
「だからどうしたのだフラジール。僕は今こいつに教鞭をとっているところなのだから何もないなら邪魔をするな」
僕もその声につられそちらの方を見る・・・・・・そして何も言わないフラジールに「用がないなら邪魔をするな」とアルフレッドが言うと、フラジールは掴んで引っ張っていたアルフレッドのローブの袖から手を離し、青い顔で首を横にフルフルと小さくふる。そして・・・
「・・・・・・!」
何も口にしないフラジールはローブを掴んでいなかった方の左手を恐る恐るあげ、その人差し指を教室の前方の方へと向ける。
「「?」」
僕とアルフレッドはその行動の意味がわからず、そのまま素直にフラジールの指が指す方へと視線を移す。すると──
「── ビュンッ!」
完全にそちらを見る間もなく、僕とアルフレッドの間をまるで弾丸のように風を切り、ものすごい速さで白い物体が駆け抜ける・・・・・・そして、後ろの机の前板に何かが当たる音とともに、パラパラと白い何かが肩に落ちてきた。
僕とアルフレッドはその未確認の白い物体を確かめるべく、お互いの片肩にかかるその白い粉のような何かを視認した後、恐る恐る飛んできた物体が当たったであろう後ろの机の前板を確認する。
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
そして、確認できたのは放射状についた白い何かの跡と、そこについた白い粉と破片がパラパラと今も少しずつ落ちている光景だった ──
「── と、このように、私は風魔法の他にも水、光、魔法陣学の教鞭をとっているので、皆さん、私が担当する科目を取った際にはぜひよろしくお願いしますね」
僕とアルフレッドはその声に「バッ」ともう一度前の方に視線を移す。するとそこには、ニッコリとした笑顔で教壇に立ち、こちらに微笑みかけるケイトの姿があった。
▽      ▽      ▽      ▽
「クシュンッ・・・・・・おや、精霊が噂でもしているのかな?」
ノーフォーク公立学校学長ルキウス・エンゲルスは突如襲われたくしゃみに「迷信のせいかな?」と呟きつつ、机に広げていた文献を閉じる。
昼四つの隅中 ── まだスクールの1日は始まったばかりなのだが、春であるこの時期、この時間は、どうも精霊が春の風とともに眠気を運んでくる。
くしゃみで少しその眠気を散らしたルキウスは、学長室の窓の前に立って背伸びする。そして、窓から差し込む暖かな光を浴びながら、残りの眠気もきれいにリセットした。
「あ・・・そういえばリアムくんに新入生のしおり渡すの忘れてた・・・・・・まぁ、いっか!」
ルキウスは効率家でありながら、何よりも面白さを追求する。唐突に思い出した自分の失敗も、面白ければそれでいい・・・・・・だって、その失敗で自分が不利益を被ることはないのだから。
そして、その人物が教室に入って来たことに気づいた生徒からだんだんと談笑をやめて静かになっていく。みんな、6歳とは思えないくらいに分別があるようで驚いた。
「・・・よろしい。皆さんおはようございます」
その教室に入って来た人物は教壇につき、皆が静かになったのを見計らい挨拶をする。
「「「おはようございまーす」」」
そしてその挨拶に挨拶を返す生徒たち。
「では、まずは私の自己紹介からしたいと思います。私の名はケイト。この度、約1ヶ月後に控える実力テストまで、この仮のクラスである1-2の担当となりました。よろしくお願いします」
そう、僕たちのクラスの担当は入学式の時に面識ができたケイトであった。しかし ──
「仮のクラスに実力テスト?」
ケイトの自己紹介にあったその言葉の意味がわからず、僕は思わず小声で呟いてしまう。
「なんだ、お前そんなことも知らないのか?」
すると、さっきまで拗ねていたアルフレッドが突然元気になって、僕の方をニヤニヤとした顔で見ながら小声でその呟きに反応する。
「・・・悪かったな」
妙にイラっとする顔を向けられながらも、そのことに対して無知である僕はアルフレッドに反論することができない。
「ふふん・・・ならばこの僕が教えてやろう」
そうどこか嬉しそうに鞄から見るからに高そうなペンと紙を取り出して説明を始めるアルフレッド。
「いいか、このスクールでは入学するとまず、生徒の実力を見極めるためのテストが行われる。このテストは毎年進級とともに行われ、成績順にクラス分けがされるのだ」
そう説明しながらペンを走らせるアルフレッド。
「そのクラスは上からS、A、B、C、Dと良い成績順に並べられるのだ。そしてその人数が大体・・・」
Sクラス 3人+特別枠
Aクラス 20人
Bクラス 20人
Cクラス 20人
Dクラス 10人
「といったところだな。クラスのランクが上がると、受けられる自由科目と時間が増えるのだ」
なるほど。どうやらスクールは習熟度別にクラス分けをするシステムを導入しているらしい・・・だが ──
「この特別枠ってなに?それに自由科目って?」
「?」
 その疑問に、アルフレッドは信じられないものを見るように僕の顔を見る。
「お前・・・特別枠ならまだわかるが、自由科目も知らないのか?」
「し・・・知らない」
「・・・はぁ」
アルフレッドは僕のその知らない発言に、如何しようも無い子供を見るような目をしてため息をつく。
『ええ、知りませんよ・・・知りませんとも・・・・・・お願いだからそんな呆れた目で僕をみないでくれ』
『まさかアルフレッドにこんな目で見られる日が来るとは・・・・・・』とアルフレッドと出会ってそう思う時間すらなかったが、僕は全然スクールのシステムについて知らなかったらしい。
「お前、新入生のしおりを読んでいないのか?」
「?」
僕は何度クエスチョンマークを浮かべれば良いのだろうか。次々に知らない新情報が出てくる。
「なぜしおりのことも知らんのだ!・・・あれは新入生全員に入学前に届けられているはずだぞ・・・!」
大きくなってしまいそうな声をなんとか抑えるアルフレッド。
「・・・あのさ・・・・・・そのしおりって大体入学前の何時頃に届くんだ・・・?」
入学前と言われても、その期間がどれほどなのかわからない。・・・・・・実を言うと、僕が入学試験を受けてから入学式を迎えるまで1週間程しかなかったのだ。
僕はその時期を確かめるべく、アルフレッドに尋ねる。
「・・・?・・・確か2ヶ月ほど前だったと思うぞ・・・?」
なるほど・・・・・・。僕がスクールの制度について無知すぎるその元凶が今、わかった・・・。
『僕が入学を突然志願したのも悪かったが・・・・・・あの学長・・・そのしおりを僕に渡すのを忘れてたな・・・!』
確かに入学を突然志願したことに多少なりとも責がないこともないが、おそらく想像するに、これは学長先生が渡すべき書類を渡し忘れた結果なのであろう。
「・・・もらってない・・・・・・しおり」
僕は内心、なぜか片手軽い握り拳を額側頭部あたりに当て、「てへぺろ」っていっている学長先生を想像し、怒りに震えながらもそのしおりをもらっていない旨をアルフレッドに伝える。
「そ・・・そうか・・・・・・そういえばお前は少々特殊な入学の仕方をしたのだったな」
恐らくアルファード卿から僕が通常の方法で入学してないことを聞いていたのだろう。しおりをもらっていない旨を伝えるその底冷える様な声に、呆れていたアルフレッドの目が同情のそれに変わっていく。
「・・・仕方ない。とりあえずは僕が説明してやろう・・・」
「・・・頼む」
・・・
・・・・・・・
・・・・・・・・・・
しかし、アルフレッドの説明が始まることはなかった。
「・・・どうしたのだ?フラジール?」
アルフレッドが突如フラジールの方に視線を向ける。どうやらフラジールがアルフレッドのローブの袖を引っ張ったようだ。
「だからどうしたのだフラジール。僕は今こいつに教鞭をとっているところなのだから何もないなら邪魔をするな」
僕もその声につられそちらの方を見る・・・・・・そして何も言わないフラジールに「用がないなら邪魔をするな」とアルフレッドが言うと、フラジールは掴んで引っ張っていたアルフレッドのローブの袖から手を離し、青い顔で首を横にフルフルと小さくふる。そして・・・
「・・・・・・!」
何も口にしないフラジールはローブを掴んでいなかった方の左手を恐る恐るあげ、その人差し指を教室の前方の方へと向ける。
「「?」」
僕とアルフレッドはその行動の意味がわからず、そのまま素直にフラジールの指が指す方へと視線を移す。すると──
「── ビュンッ!」
完全にそちらを見る間もなく、僕とアルフレッドの間をまるで弾丸のように風を切り、ものすごい速さで白い物体が駆け抜ける・・・・・・そして、後ろの机の前板に何かが当たる音とともに、パラパラと白い何かが肩に落ちてきた。
僕とアルフレッドはその未確認の白い物体を確かめるべく、お互いの片肩にかかるその白い粉のような何かを視認した後、恐る恐る飛んできた物体が当たったであろう後ろの机の前板を確認する。
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
そして、確認できたのは放射状についた白い何かの跡と、そこについた白い粉と破片がパラパラと今も少しずつ落ちている光景だった ──
「── と、このように、私は風魔法の他にも水、光、魔法陣学の教鞭をとっているので、皆さん、私が担当する科目を取った際にはぜひよろしくお願いしますね」
僕とアルフレッドはその声に「バッ」ともう一度前の方に視線を移す。するとそこには、ニッコリとした笑顔で教壇に立ち、こちらに微笑みかけるケイトの姿があった。
▽      ▽      ▽      ▽
「クシュンッ・・・・・・おや、精霊が噂でもしているのかな?」
ノーフォーク公立学校学長ルキウス・エンゲルスは突如襲われたくしゃみに「迷信のせいかな?」と呟きつつ、机に広げていた文献を閉じる。
昼四つの隅中 ── まだスクールの1日は始まったばかりなのだが、春であるこの時期、この時間は、どうも精霊が春の風とともに眠気を運んでくる。
くしゃみで少しその眠気を散らしたルキウスは、学長室の窓の前に立って背伸びする。そして、窓から差し込む暖かな光を浴びながら、残りの眠気もきれいにリセットした。
「あ・・・そういえばリアムくんに新入生のしおり渡すの忘れてた・・・・・・まぁ、いっか!」
ルキウスは効率家でありながら、何よりも面白さを追求する。唐突に思い出した自分の失敗も、面白ければそれでいい・・・・・・だって、その失敗で自分が不利益を被ることはないのだから。
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