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Blackliszt

22 傷心のリアムと復活のアルフレッド

「これにて、第35回ノーフォーク公立学校入学式の全てを終了とし、閉会する」


 ブラームス公爵の祝福も終わり、閉会宣言も彼の担当だったため、そのまま閉会への下りと至った。


 拍手とともに閉会する入学式。アクシデントもあったが、とりあえず無事?・・・終わって何よりだ。




▽      ▽      ▽      ▽


 入学式の後は、その場で軽い登校日の確認をして各自解散 ──。


 登校日は3日後。確認も終わり解散となった後、僕は校内をぶらついて家族の用が終わるのを待っていた。父さん母さんは保護者の説明会兼懇親会、カリナ姉さんは在校生として式の後片付けに駆り出されている。


 ・・・
 ・・・・・・
 ・・・・・・・・・


『そういえば・・・・・・代表挨拶ってフラジールにやってもらえば万事解決だったんじゃない?』


 ブラブラと歩きながら、ふとそんなことを思いつく。彼女の場合、アルフレッドのことを隣で見てきたかの様に、初めに1、2文加えて、カンニングペーパーの出来事を人称を変えて話せば済んだわけだし・・・。
 しかし、今更そんなことに気づいても後の祭り。僕はもう、入学式でやらかしてしまっている。それに・・・『いや、あの子は気が弱そうだったし、押し付けるのも酷だったか』と、実際にはわからない想像上のIfに、無理やり納得をこじつける。


 そして、そんなことを考えながら校舎外の中庭を一人歩いていると、背後からちんちくりんな怒鳴り声が聞こえてくる。


「やい平民!よくも俺様の晴れ舞台になるはずだった新入生代表挨拶を横取りしてくれたな!」


『誰だろう、かわいそうに・・・。平民って呼ばれてるってことは相手は貴族か?それに新入生代表挨拶を横取りって・・・・・・』


 自分は知らぬ存ぜぬ話で、絡まれている人物に同情の念を抱いていたが、最後の新入生代表挨拶という言葉に身に覚えがある。嫌な予感がするが、相手は仮にも貴族。流石に無視すると、先ほどのように悪いことが身に降りかかりそうで怖いし・・・・・・。


 そして、僕は嫌々、声の聞こえた背後へと振り返ることにする。


 ── すると、そこには入学式の前に僕に絡んできたアルフレッドがいた。


「ええっと、何かご用ですか?」


 渋々僕はアルフレッドに伺いを立てる。


「やい平民!よくも俺様の晴れ舞台になるはずだった新入生代表挨拶を横取りしてくれたな!」


『ええぇ・・・リピート?それに代表挨拶は、君が自爆したせいで代わりにやらされたんだけど・・・面倒臭い』


 新入生代表挨拶の件で傷心しているリアムは、内心で毒を吐きつつも愛想笑いを浮かべる。


「おい!返事をしろ!これじゃあまるで僕がお前に構って欲しいだけのように見えるだろ!」


『実際そうなのではないだろうか』


 どうもこのアルフレッドに対してだけは、何を言っても心が痛まないような・・・・・・そんな気がする。


「それに、俺の魔法を食らってピンピンしやがって!おい貴様!どんな汚い手を使った!は・・・!まさかトリックか!」


『もう怒っていいかな?勝手に絡んで、勝手に魔法を放ち、勝手に自爆して、それを僕が悪いのだと言う。それにお前が自爆したせいで、やりたくもない挨拶をこっちに飛び火させた挙句(本当)、その引火で式の挨拶では誘爆までしたんだぞ(これは単なる自爆)。さらにその後の処理も面倒ときた。こいつは連鎖崩壊する不安定な核か何かでできているのか?』


 さらに内心、『トリックって・・・この世界には魔法があるのにそんな概念が存在するのか・・・?』とそんな疑問を抱いていると、アルフレッドの向こう側から声が聞こえてくる。


「アルフレッド。その辺にしておきなさい」


 すると、アルフレッドの後ろに一人の男が立っていた。


『あれは公爵様の横に座っていた・・・名前は確か・・・・・・アルファード・ヴァン・スプリングフィールド』


 僕が挨拶に失敗・・・もとい大成功・・・・・・した時に公爵様の次に学長先生や母さんたちと一緒に拍手を送ってくれていた人なので、その容姿と・・・かろうじて名前も覚えていた。


「アルフレッド、聞いているぞ。今回の件は全面的にお前が悪い。それに、彼は倒れたお前の代わりに新入生代表挨拶をしてくれたのだぞ。その行為に感謝こそすれど、攻め立てるなど言語道断だ」


 そういってアルフレッドを咎めるアルファード卿。そして ──


「私はスプリングフィールド領領主アルファード・ヴァン・スプリングフィールドだ。陛下からは辺境伯の称号を賜って領地を収めている」


 突然こちらを見て自己紹介するアルファード卿に、僕は面食らう。


「リアム君・・・だったかな?今日はうちのアルフレッドの代わりに代表挨拶をしてくれてありがとう。実に見事な代表挨拶だった」


 そう言いながら、アルファード卿は僕に手を差し出してくる。突如お礼を言われ、差し出される手に、僕はさらに面食らう。


 ・・・・・・そして僕は一つの心配事を口にした。


「いいんですか?僕に礼を・・・その、名誉とか・・・」


 今回、代表挨拶を棄権する形となったアルフレッドの代わりに、僕が代表挨拶をすることとなったのだ。前世の小説や漫画では、それに登場する貴族の多くが、その名誉を一番大事にしていた記憶が残っている。


「ハッハッハ!君はその年でそんなところまで気が回るのか?」


 僕の質問ににアルファード卿はその心配を一蹴するように笑って答える。


「大丈夫!君がしっかりとした挨拶をしてくれたおかげで 棄権した形になったうちの家名にも逆に傷がつかなかったと言うもの!それに、筋を通してこその名誉!だから私は君に礼を言うのだ」


「・・・!そうですか ──」


 なんとも豪快な人だ。どうやら僕の心配は無用の産物だったようだ。


 そして、心配を払拭された僕はその言葉に答えるべく、差し出されるその手に、手を伸ばした。


「それではそのお言葉、謹んでお受けいたします。・・・そして遅くなりましたが、私はリアムと申します。以後、お見知りおきくださると幸いです」


「君はその年で本当にしっかりしているな。・・・将来が楽しみだ!どうだ?将来はウチの領地に来て働かないか?文官として君は相当優秀に育ちそうだ!」


「優秀な文官は重宝するのだぞ!」と力説しながら勧誘してくるアルファード卿。しかし、僕はその言葉に入学式前のアルフレッド同様、お断りする。


「お誘いは嬉しいのですが、将来のことは自分でも予測がつきませんので・・・謹んでお断りいたします」


 すると、僕の断りの言葉に目を丸くするアルファード卿。そして ──


「そうかそうか!そうだな!君の将来を選ぶ権利は君にある!まあ、物事を常に前向きに考えることができるのであれば、人生というものはそれだけ豊かになる。しかしなかなかどうして、ずっとそうあるわけにもいかない。君も己の道は己で真っ直ぐに、時には臨機応変に遠回りでもして着実に一歩ずつ、踏みしめて前に進んでいくといい・・・!」


 そんな人生観をまた、豪快に説くアルファード卿に、僕は『全く、子供になんてことを言ってるんだこのおっさんは・・・』と呆れながらも、こういう人の生き方もまたいいものだな、と少しだけ子供の体ながらに憧れを抱く。


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「──ッ!どうして父様とうさまは楽しそうにそいつと喋ってるんだよ!」


 突如横から飛んでくる怒声に、僕とアルファード卿はそちらの方に視線を移す。


 そこには、顔を真っ赤にして歯を食いしばっているアルフレッドがいた。


『そういえばいたな』


 完全に彼そっちのけで、彼に声をかけられたことがそもそもの事の始まりだったことすら忘れていた僕は、今の彼の横槍でその存在を思い出した。


「父様は僕の父様だろ!それなのになんでそんな奴の味方をするんだよ!悪いのはそいつ・・・」


「やめなさい!アルフレッド!お前も自分ではわかっているのではないか?」


 アルファード卿の言葉に、口をつぐむアルフレッド。


「・・・アルフレッド、お前に問おう。今回の出来事、私は悪いのはお前だと思っている。そして、お前はリアムくんに謝罪をするべきだ。違うか?」


 言葉を途中で遮られて再び咎められたアルフレッド。そのアルフレッドを見つめて問をかけるアルファード卿の目は有無も言わさないほどに真剣なものだった。


「── クソッ!」


 やがて、自分の目を見据えて問いかけるアルファード卿に堪えきれなくなったのか、アルフレッドは捨て台詞を吐き、背中を見せてその場を離れはじめた。


 ・・・
 ・・・・・・
 ・・・・・・・・・


 何かを我慢するように肩を震わせ、徐々に離れていくアルフレッド。僕とアルファード卿は、黙ってその彼の背中を眺めていた。


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「どうか許してやって欲しい・・・あれも悪い子ではないのだ・・・・・・」


 それから十と数秒、アルフレッドの姿はまだ確認できる。しかし、今も離れていく彼に僕たちの会話は届きそうにない。
「息子が非礼した」と、許しを請うアルファード卿。そして、それからアルファード卿は、思い起すようにアルフレッドと家の事情を語り始めた。  


「うちの長男はな、現在、王立魔法学院の高等部に通っているのだが、その長男が高等部に通うまで、その子には我が領地で家庭教師をつけて教育していたのだ・・・・・・」


 そう語るアルファードは、離れていくアルフレッドの背中を優しい眼差しで眺めていた。


「しかし、次男であるアルフレッドは今回、他領地であるこのスクールに通うこととなった。このスクールには素晴らしい環境が整っている・・・!それはあの子も理解しているはずだ・・・・・・。だが、心のどこかでおそらく、自分には才能がないために私が家庭教師を雇わず、あの子のための環境を作らなかったと思っているのだろう」


「必死に自分がこのスクールに通う理由を考えていたからな」とそう考える理由を語りながら、アルファードの表情は徐々に渋くなっていく。


「見ての通り、あの子は他の子と比べて小さい。もちろん、これから成長期が訪れるのだから、それは些細な問題なのだが・・・。それにその・・・他意はないのだが・・・・・・。おそらく、あの子が君に突っかかる理由は、その劣等感ゆえではないかと私は考えている・・・・・・」


 少し項垂れるように語るアルファード卿に、僕は、彼らそれぞれの葛藤のようなものを感じ取る。


「だがそれは間違いだ!私はあの子がとても優秀だと思っている ──・・・!」


 急に頭を上げ、強く拳を握り力説するアルファード卿。その勢いに、僕も思わず瞬きをしてしまう。


「なぜなら、あの子はあの若さですでにッ! 国境線を守る防人さきもりである我が家秘伝の魔法を複数使うことができるのだ!魔力がまだ少ないため多用はできないが、いずれそれも時間が解決してくれる問題だ!」


 親バカだ。親バカがここにいるぞーい。


「あの子は外の世界を見て自分自身の才能を自覚し、その豊かな才能をさらに伸ばしていくことができる!それを正しく使いこなせるように切磋琢磨することこそが、これからその力を昇華させていくために必要なのだ」


 引き続き、熱くアルフレッドの才能とこれからの彼に必要なものを語るアルファード卿。


「だがあの子は今、迷いの真っ只中・・・・・・引きこもっているだけでは本当の経験も知識も得られない。領民の気持ちを気づかぬうちにないがしろにしてしまう・・・貴族にはよくある話だ・・・・・・」


 握りしめられていた拳が徐々に緩んでいく。その拳を見つめる目は、どこか悲しそうだった。


「だからこそ、私はあの子をこのスクールによこした・・・! それ故、君もどうか気を悪くせず、時々でもいいからあの子の相手をしてやって欲しい・・・・・・すまない、息子よりも若い君に妙な事を語ってしまったな・・・・・・」


『ああ、そしてそう繋がるわけか・・・・・・いい親御さんじゃないか ────』 


 世間を知らない愚かさと、それを知りたいのに方法がわからない辛さは身を以て知っている。


 ── 話を終えたアルファード卿のその眼差しは、最後に真っ直ぐ子を見守る親のそれとなっていた。


 ・・・
 ・・・・・・
 ・・・・・・・・・


「よしッ!お詫びに将来は我が領地の文官として・・・」


「いたしません」


「はははッ!いや、全く!これは手厳しいな!」


 訂正。最後に突っぱねられ笑い飛ばしているアルファード卿。僕はそんな彼に『最後まで油断ならない』と妙な警戒心を覚える。・・・・・・しかし、そのままかっこよく締めて欲しかったのも一論。だが、『これはこれで悪くない』と、心の中でちょっとした彼らの家族としてのあり方と温かさを感じる僕であった。

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