アナザー・ワールド 〜オリジナルスキルで異世界とダンジョンを満喫します〜

Blackliszt

19 嫌な流れと人柱

「魔力切れです・・・」


 アルフレッドのお供である少女フラジールは、アルフレッドの容体を診てそう告げる。


「魔力切れ?」


「は、はぃ・・・。この魔法は対象の魔力の防御を破って干渉するために多くの魔力が必要なので・・・。理論を知っていても相応の魔力がないと使えないから・・・で、でもアルフレッド様は貴族だから魔力も多くて・・・だから、えぇっと」


 オドオドしながらも質問に答えるフラジール。


「教えてくれてありがとうございます」


 それでも大体の理由がわかった僕は、フラジールにお礼を言っておく。フラジールは「はぃぃ・・・」と相変わらずおどけていたが、返事はしてくれた。


 僕は今の話も交えて先ほどの対応の反省を始める。


『確か僕の魔力って異常じゃなかったっけ?とういうことはそもそも心配する必要がなかったのでは・・・いや、しかし・・・』


 そして僕が先ほどの反省を初めて十数秒後、どうやら事態を聞きつけた先生が到着した様だ。ここはスクールの在校生が管理していたから、きっと彼らが先生を呼びに言ってくれたのだろう。


「何事ですか・・・ッ!」


 新入生の待機場所にやってきた先生は倒れるアルフレッドを見て、すぐさま駆け寄っていった。そしてフラジール同様、アルフレッドの容体を確認する。


「── 魔力切れですね・・・一体何があったというのです?」


 アルフレッドの容体を確認した先生は事実確認のため聴衆を始める。


「── なるほど。おそらく彼の持つ魔法防御の方がアルフレッドさんの放った魔法の魔力より大きかったのでしょう。子供とはいえ仮にも貴族、そんなアルフレッドさんの全魔力が乗った魔法は一定の指向性を持っていたはずです。故に魔法に込められて魔力が魔力切れといえど直前で霧散するということはあり得ない・・・あなた、お名前は?」


「リアムです」


「リアムさんですか・・・私はスクールで水・風・光の魔法と魔法陣学を担当しているケイトと言います。突然で申し訳ありませんが、あなたのステータスを拝見させていただいてもよろしいでしょうか?」


『この流れはまずい・・・!』


 ステータスが判明してから数日。この数日は入学の準備を進めるのでほとんどの時間を使ってしまった。そのせいで、EX スキルにあった唯一の希望である《隠蔽》の効果をまだ試していないのだ。 
 というか、魔力扱いの指南を受けていない状態でスキルを使うのはためらわれたし、初対面の人間にステータスを見せて欲しいと願うことは、その人に疑いを持っていたり、興味半分で他人のプライベートを覗くような行為と同等として考えられている。であるため、滅多なことがない限り、ステータスを見せろとは言われないだろうと後回しにもしていた。・・・まさか、いきなりその滅多なことが起きるとは僕も予想していなかった。


『どうするべきか』


「ステータスを見せて欲しい」というケイトの対応を悩む僕。すると ──


「どうかしたのかね」


 悩む僕の後ろから問いかける声が聞こえた。この声は聞き覚えがある。


「学長先生!」


 僕の後ろの人物に気づいたケイトが声を上げる。


「ふむ、ケイト女史。何か問題が起きたということで立ち寄ったのですが・・・」


 そう言いながら倒れるアルフレッドを学長先生が確認したようだ。


「何かあったようですね。すいませんが事の経緯の説明をお願いしてもよろしいですか?」


「はい」


 学長先生に事の経緯の説明求められ、ケイトが説明を始める。


「つまり、攻撃を仕掛けようとして魔力切れで倒れてしまったと・・・。しかし困りましたね。魔力切れで倒れたということは、彼はしばらく目を覚まさないでしょう。彼は新入生代表挨拶者。式ももうすぐ始まりますし、これは本当に困りましたね」


 そして気のせいだろうか。学長先生は「本当に困りました」と言いながらチラッとこちらに目配せしたような気がした。


「そうですね。それは本当に困ります。今、直ぐにでも代理の者を選出せねば・・・しかしその代理の子が上手く代用者挨拶をできるとは・・・・・・」


 新入生代表挨拶は、成績優秀者ではなく、今年入学するもので一番位の高いものから選出される。いわゆる貴族や大商人の商家といった、名家と呼ばれる家の子供が選ばれるわけだ。そもそも、スクールの新入生は、いわば前世でいう公立の小学一年生と同じようなもの。入学試験自体が僕以外の新入生にはなかったはずだから、成績優秀者の中から選ばないということは、当然のことだ。
 そしてここは異世界。さらに貴族や平民といった区分もある、権力が最も強い世界だ。故に、お披露目の一環として、スクール入学生であるまだ小さな我が子に、顔売りさせることを目的としたこのシステムが成立しているのだろう。


「ええ、そこで提案なんですがね・・・」


 ものすごく嫌な予感がする。学長先生にはケイトの示した問題を解決する策がある様だ。


「この、リアムくんに新入生代表挨拶を頼むのはどうでしょうか?彼もいわば、問題を起こした関係者でありますし」


 予感が直ぐに的中した。なに言ってるの?この学長?


「しかしそれでは問題の解決にはなっていません。それに、本日ご出席なさっている名家の方々からも問題の声が上がるのでは?本日はアルフレッドくんの親御さんであるスプリングフィールド卿も御来賓としていらっしゃっていますし・・・何より彼、ごく普通の平民なのですよね?」


 そうだそうだ。それが普通だ。ケイトさん!もっと言ってやれ!


 ・・・しかし、そんな僕の心の声も虚しく、唯一の希望も粉々に打ち砕かれることとなる。


「それは大丈夫だと思います。あなたも聞いているでしょう?今年は特別処置で、年齢が入学基準に達していないながらも、早期に入学した天才の少年がいると。そして、彼がその今年の特別措置でうちに入学した少年です」


『いや、天才とか言われても照れないぞ。元々チートだし・・・・・・別に嬉しくないんだからね!』


 僕は「天才」という言葉に、照れそうになり、心の中で思わず反応してしまう。
 ケイトも「この子が・・・」とでもいうかの如く、僕をまじまじと見ていた。確かに、こんなちびっ子でダボダボのローブを着ていれば、その違和感を抱くのは正しいのだろう。


「今回の騒ぎはアルフレッドくんに非があったようだし、あの方は王が国境を任せられるほどに誠実な方だ。事前に説明すれば、スプリングフィールド卿もご納得してくださることだろう。それに、いきなり他の名家のご子息に代表挨拶を頼み失敗でもして御覧なさい。あなたの懸念の通り、親御さんから非難の声が上がりそうなものです。それよりも、この少年に代表挨拶を任せて失敗する方が、ずっと建設的でしょう?」


『なにそのジェットコースター理論!?それに僕の立場は?本人の前でさすがにそれは酷くない!?』


 持ち上げて落とす。その落ちる先はまさに奈落の様だ。


 僕はそのあまりにも酷いこれから差し出される生贄の様な扱いに、周りを見渡して助けを求める。


 周りを見渡すと、ケイトも、その様子を見ていた子供たちも、どこか憐れむような目で僕を見ている。中には僕と目が合いそうになって直ぐに視線を外す子も・・・きっと名家出身の子供なのだろう。自分は無関係だ、と言わんばかりにそらした目を強く瞑って、こちらを見ないようにしている。健気だ・・・。


「あの試験に合格した君なら、ここにいる誰よりも上手くスピーチできるんじゃないかな?それに、貴族であるアルフレッド君の面子を潰すような言動もあったみたいだし・・・・・・ここは彼に責任を取ってもらうのが一番だと思うんだ」


 周りを味方につけた学長先生の猛攻が続く。


『まさかここで特別措置を取ってもらった弊害が出るとは。幾ら何でも早すぎる!・・・というか、学長先生はこっちが素なのか?・・・キャラ変わってるし・・・・・・』


 僕に責任を取ってもらうのが一番というその提案に、誰も意を唱えない。そして ──


「でしょ?ね、リアムくん?」


「・・・・・・はい」


「できるよね?」とこちらに問いかける学長先生の顔は、それはもう満面の笑顔で、僕が付け入る隙はなかった。


 ゲスい、ゲスいよ学長先生!

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