アナザー・ワールド 〜オリジナルスキルで異世界とダンジョンを満喫します〜

Blackliszt

15 リアムのステータス Ⅰ

 血がついたステータスの魔石は黒に染まった。


「えっ!」


 驚くように声を上げるカリナ姉さん。父さんと母さんはその魔石をじっと見つめていた。


「えっ!」


 今度驚いたのは僕だ。黒色に変わったと思われた魔石の中に白い光の粒子が浮かび始める。


「なんか浮いてる」


 家族全員が再び魔石に注目する。やがてその光の粒子は法則性を持って集まり始め、中心の文字を囲う二重円に覆われた、星型10角形の陣を描き出した。


<a href="//27390.mitemin.net/i346505/" target="_blank"><img src="//27390.mitemin.net/userpageimage/viewimagebig/icode/i346505/" alt="挿絵(By みてみん)" border="0"></a>






「こ、これは!」


 父さんのがその陣を見て何かに気づいたような声を上げる。どうやら母さんとカリナ姉さんもその陣の意味に気づいたようで、続きの言葉を固唾を飲んで待っていた。そして ──


「これは・・・・・・なんだっけ?」


 父さんのその言葉に父さん以外の3人は思わずコケそうになる。


「いや〜、なんか見たことがあるんだけど思い出せないんだ。なんだっけなー」


 そんな僕たちを見た父さんはバツが悪そうに右手で頭を掻いて「ごめんな」と謝る。


「もぉ〜ウィルったら。これは基礎の魔法陣でしょ」


「父さんったら思わせぶりなことを言って・・・・・・。知ってた私まで構えちゃったじゃない!」


「そうだそうだ。いや〜悪い悪い」


 父さんは母さんとカリナ姉さんに攻められながらもようやくそれを思い出したようだ。


「基礎の魔法陣?」


 どうやらよくわかっていないのは僕だけのようだ。


「ええそうよ。その陣はね、魔法陣学を習うときに一番最初に習う陣なのよ」


 なるほど、魔法陣学における基礎の魔法陣ということか。


「といってもあくまでそれは魔法陣を理解するための教材。その陣に魔力を流しても陣は光るだけで発動しないわ」


 よく見ると前世のギリシャ文字の小文字 ζゼータのように見える。


「昔のことだから全て正しいか・・・一番外の円は世界、星が触れている円は魔力、そしてその星の10個の頂点はそれぞれ基本の魔力属性を表していて・・・真ん中の文字は終わり?だったかしら」


『なるほど・・・円は世界の環、内の星型10角形の外接円は魔力、そして頂点が基本属性の10属性と・・・終わりってなんだ?』


 その疑問に僕は「終わりって何?」と質問する。


「それは単純に術を終わりますよ〜って感じかな?魔力の流れを止めて完成させないと陣が壊れたり暴走しちゃったりするから」


「さすがアイナはよく知ってるな〜」


「これでも元魔術師だからね」


 おそらく理解してないであろう父さんが感心した様子で母さんを褒め、母さんは昔取った杵柄だと照れている。


「とにかくその魔法陣の理論を基に、変形したり文字を追加していくことで実用的な魔法陣ができているらしいのよ」


 母さんはその後も照れながらも世の中の魔法陣の成り立ちを教えてくれた。


「ねぇ、もういいでしょ?それよりも早くリアムのステータス見たい!」


 カリナ姉さんにとってはつまらない復習だったのか、僕のステータスを見ようと急かしてくる。


「そうだな。よし、リアム。とりあえずステータスを見せてくれないか?そうすればこの魔石の謎も解けるかもしれん」


 父さんも置いてけぼりにされて居心地が悪かったのだろう。カリナ姉さんの話題の転換にすかさず便乗する。


「そうね。それじゃあリアム、その魔石を指輪の窪みにはめて指につけて」


「え・・・でもこのままじゃ窪みに入らないよ?」


 指輪の魔石をはめる窪みはどう考えても魔石が入る大きさじゃない。僕はてっきりこの魔石を加工してからはめるものと思っていたので、不思議に思う。


「大丈夫だから窪みに魔石を当ててみて」


 カリナ姉さんはどこか楽しそうだった。それに母さんと父さんもまるでイタズラにかけるのを楽しみにしている、そんな表情をしている。
 僕はその対応にさらに謎を感じながらも、言われた通りに魔石を指輪の窪みに当てた。すると ──


 窪みに触れた魔石が黒い光を帯びて溶け始める。溶け出した魔石はそのままどこかに溢れることはなく、次々と指輪の窪みに吸い込まれていった。


「うわッ!」


 溶け出した魔石に驚き思わず手を離す。しかし魔石はその後も窪みに吸い込まれ続け、やがて隙間なく指輪の窪みに収まった。指輪に収まった魔石からは先ほどの魔法陣は消え、元の黒い色をしていた。


「その指輪を指にはめて」


 実は指輪の輪の大きさも、僕の指より大きい。だが先ほどの魔石の現象同様、また何かあるんだろうと察する。
 そして指輪を左手の人差し指にくぐらせると、輪が指の太さに合わせてサイズを変えた。


「ちゃんとはまったわね。それじゃあ《ステータス》って声に出して唱えてくれる?」


「ステータス」


 直後、指にはめた指輪魔石が淡い光をもち、その黒の中に星が散りばめられたような光の粒子が現れる。同時に目の前に半透明なボードが現れ、そのボードに何か書かれていた。


「スキル所得:スキル名《魔法陣》《魔法陣作成》?」


 出現したボードに書かれた字を読み上げる。するとステータスボードを覗き込む母さんが僕の疑問に答えてくれる。


「ああ、魔法陣は今、私が基礎の魔法陣について教えたからね。このスキルは少しでも魔法陣のことを理解すれば誰でも習得できるの。つまり『新しいスキルを覚えましたよ』ってこと・・・でも変ね。魔法陣作成は専門の知識がないと習得できないはずなんだけど・・・」


「それってどんなこと?」


「おかしいわね」と首をひねっている母さんに僕は問いかける。


「私もそのスキルは持ってないし・・・人づてに聞いたことだけど、例えば水が沸騰すると泡が出る?とかだったかしら」


『沸騰して出る泡は水が熱によって状態変化し、気化した水蒸気だ。ってことだろ・・・。それって化学みたいに現象を理解するってことかな?簡単な事だけど・・・・・・でも、もしそうだとしたら前世の記憶のせいかもしれないな・・・・・・』


 僕は自分の中で勝手に考察し、適当に納得する。そして「なんかよくわかんない」と誤魔化す。


「まあ、よく知らないことを考えていてもしょうがないわよね!とりあえずその下に出ている『確認』ってところに触れればステータスが出るはずよ」


 今は答えが出ないと判断した母さんは、どうやって次に進めばいいか教えてくれる。母さんの切り替えが早くて僕も助かった・・・。

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