アナザー・ワールド 〜オリジナルスキルで異世界とダンジョンを満喫します〜

Blackliszt

08 スクールの編入?入学試験

 学長先生の突然の告知により、急遽入学試験を受けることになった僕は今、別の教室で待つように言われ大人しく席についている。待機している教室の机は、前世の大学の大講義室のような段々配置となっていた。そんな教室の真ん中、それも一番前の長机の中心に、僕はぽつんと座っていた。


 そして教室で待機し始めて2、30分ほど経った頃だろうか。「まだかなぁ〜」なんて机に肘をつき、足をバタバタさせていると、教室の引き戸がガラガラと開く。すると、そこには赤いショートの髪に緑色の碧眼をした、カリナ姉さんと同じ年ぐらいの活発そうな女の子が、片足を教室に踏み入れた状態で停止していた。
 そんな彼女を見て「えっ」という顔で僕が驚いていると、向こうはもっと驚いたように、「えっ⁉︎」という声をあげて驚いていた。するとその女の子は急にあたふたし始める。


『僕が驚くのは普通?だよな?それじゃあなんで彼女は驚いた挙句にあたふたしてるんだ?』


 僕は不思議なものを見るような目で、つい彼女を見てしまう。そしてその視線に「ハッ」と気づいた彼女は、一度廊下に出ようとする。しかし、その後すぐ反転すると、何事もなかったかのようにドアを閉め、教壇の方に向かい始めた。
 しかし、そんな彼女は足元を見ずに歩いていたのか、教壇の段差に足を引っ掛け思いっきり転んだ。「バターン」と持っていた茶封筒の中の試験問題であろう紙を盛大にぶちまけた彼女は、しばし固まったように動かなかった。
 僕は、固まって動かない彼女に思わず「大丈夫ですか?」と声をかける。
 すると、今度は「クッ」という呻き声を上げながらも、床にぶちまけた紙を集めると、その順番の確認をし始める。そして確認が終わると、また何事もなかったかのように毅然と歩き始め、教壇につく。


『面白い女の子だ』


 表情がコロコロ変わっていく彼女を見ていた僕は、そんなちょっと的外れな感想を抱いていた。




▽      ▽      ▽      ▽


 教壇についた彼女は、どこか怪しいものを見るように、ジトッとした目で僕の方を一瞥した。そして、その一瞥もまるでなかったかのように、再び毅然とした表情をすると「コホンッ」と咳払いを挟み試験の説明を始める。


「えー、それでは試験の説明をします。教科は国語と算術、制限時間はそれぞれ50分です。始めの合図とともに試験を開始するので、試験が始まったら解答は配布する解答用紙に記入し、算術は計算用紙を配りますので、そちらに途中計算をお願いします。また、カンニング行為については罰則のため失格となりますので、お気をつけください。それでは、何か質問はありますか」


 受験者は僕は一人だったため「ありません」とその女の子の問いに声を出して答える。


「よろしい、まずは国語の筆記試験です。問題用紙と解答用紙を配るので、手を触れないようにお願いします」


 女の子はそう告げると、問題用紙と解答用紙を裏面にして僕の机の上に置き、再び教壇の上に戻る。今度は下にも気を配っていたらしく、女の子が転ぶことはなかった。


「これから、国語の筆記試験を始めます。制限時間は50分。それでは、始めッ── 」


 始めの合図とともに机の上に取り出した砂時計をひっくり返す女の子。それと同時に、僕は国語の問題に目を通し始める。


 この世界の文字や言葉は、驚くことになぜだかわかるのだ。いかにもそれが母国語であったかのように扱うことができる。まぁ、この世界ではこの国が母国なんだけど。
 そして国語の問題は、文章の並べ替えや、文章中に「そして」や「しかし」といった接続詞を選択肢から入れていくようなとても簡単な問題ばかりだった。
 念の為見直しも入れても10分くらいだろうか。問題を解き終わってしまった僕は挙手して、教壇で砂時計と睨めっこしている女の子に「終わりました」と声をかける。


 するとその女の子は「ハッ⁉︎もう終わったの⁉︎」と砂時計を机に置いて小走りで僕のところに解答用紙を回収に来る。


「ウソ・・・・・・解答欄が全部埋まってる」


 信じられないものを見るような目で解答を一通り目を通した彼女は「でも全部合ってるってことはないよね」とボソッ呟いた後「まあ、いいでしょう」と表情を取り繕うと、教壇の方に向かい、茶封筒の中に解答をしまう。すると、算術の試験問題も一緒に入った茶封筒を胸に抱え、


「砂時計を一つしか持ってきてないので、別の砂時計をとってきます」


と教室を後にした。そして1〜2分後、再び教室に戻ってくると、今度はそのまま算術の問題用紙、解答用紙、計算用紙を僕の机に置き、教壇に戻った。


「それでは数学の筆記試験を始めます。制限時間は同じく50分。それでは、始めッ── 」


 今度は軽い事前説明もなしに唐突に数学の試験が始まる。僕は突然の試験の始まりに慌てながら問題用紙をめくった。


 算術の主な問題の内容は、お金の計算だった。
 この世界のお金は大体日本円に換算すると、


 白金貨 : 1000万円


 金貨 :100万円


 大銀貨:10万円


 銀貨   :1万円


 大銅貨:1000円


 銅貨 :100円


となる。


 そして算術問題の1例を挙げると、例えば


「Aさんは所持金に銀貨1枚と大銅貨5枚を持っています。Aさんは1個銅貨1枚のジャガイモを70個買うことにしました。さて、Aさんの元に残る所持金はいくらでしょう」


といった具合だ。というかジャガイモ1個の値段が高すぎるし『こんな高いジャガイモを70個も買うAさん、ヤバくない?』と下手くそな設問にツッコミを入れながらも『でも、これ本当に一年生の筆記試験か?』と内心驚いていた。


 順番に数を数えて出す様なことがない限り、この問いの計算過程には


(1×10)+5ー(70/10)= 8


 答:大銅貨8枚


のように足し算と引き算の他に、掛け算と割り算を使わないといけない。


『まあ、問題ないけど』


しかし、結局算術の筆記試験はこの小学生レベルの問題が5〜6問あっただけで、見直しも含め7〜8分ほどで恙なく終わってしまった。


「すいませーん。終わりました〜」


 無駄に緊張していた僕は、気が抜けたように試験官の女の子に挙手して試験終了の旨を伝える。


「ッ、ツ ──!」


すると、先ほどよりも早い僕の突然の終了宣言に急に立ち上がった試験官の女の子は、右足のアキレス腱あたりを座っていた椅子の足に打ち付けてしまったようだ。


『あー、あれは痛そうだ』


 僕は苦悶の表情を浮かべる彼女に同情の念を抱きながらも、一応試験中なのでそれ以上余計なことは言わないように、彼女が復活するまで見守っていた。


「そ、それでは、本日の試験は終了します。お疲れ様でした」


 まるで背伸びしているがそれを必死に隠そうとする子供のように、最後まで面白い子だった。


 そして時間にして約20分。この世界で初めての試験は ” 試験時間より待ち時間の方が長かった ” という結果に終わった。

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