アナザー・ワールド 〜オリジナルスキルで異世界とダンジョンを満喫します〜

Blackliszt

02 新しい両親と姉さん

  __ウィルにアイナ。


 この2人がぼくの新しい両親。


 ウィルは黒い髪にダークブラウンの瞳を持ち、日本人に近い見た目をしている。背はすらっとしているが、つくべきところにつくべき筋肉がしっかり付いており、感情が面に出やすくて少し抜けていることが玉に瑕あるが強くていざって時に頼れる良いお父さん、という印象だ。


 アイナはブロンドの長い髪に、透き通った綺麗な青の瞳をしている。こちらもスタイルはよく、優しさの溢れる美人の母さんだ。


 ちなみに、ぼくは母さんに抱かれて窓に映った自分を見たことがある。髪はまだ薄いが父さんと同じ色に違いない。目は母さんの色を受け継いだようで透き通った青い瞳だった。


 突然の転生からもう3週間ほど経ったが、ウィルもアイナもぼくのお世話を一生懸命してくれている。いきなり赤ちゃんになってしまって不便なことや戸惑うことも多々あるが、徐々に慣れてきた頃合いだ。それから、あの時は思わず声が出たものの、不思議なくらいあれからうまく声を発することができない。


 そして実はもうひとり?


 時々壁の向こう、開いたドアからダークブラウンの髪が見える。髪の高さ的に背丈はまだ子供ぐらいだと思うんだけど・・・・・・ぼくはまだその子の姿を見たことはない。




▽         ▽         ▽         ▽




 さらにあれから5ヶ月が経った。


 父さんや母さんに外に連れて行ってもらうこともあり、やはりこの世界は元の世界でないということを確信することができた。


 ぼくたちの住んでいる国の名前はアウストラリア、都市の名前はノーフォークと呼ばれている。どうやらアウストラリアの中では2番目に大きい公爵領の農業ダンジョン都市らしい。


 そして前の世界とは著しく異なることがある。それはこの世界にはスキルという概念があり、魔法やダンジョンがある。ただ、ぼくはまだ1歳にもなっていない乳幼児だ。これ以上詳しいことはまだわかっていない。






 ── うららかな春の日差しが心地よいこの頃。


 乳幼児のぼくはしばしば眠気に襲われて大変だ。例のごとく今まさに瞼の重いぼくに、母親のアイナが話しかけてくる。


「リアムー。そろそろ乳離に向けて離乳食を食べ始めても良い時期ね」


 そうか、やっとそういう時期になったのか。やはり自由度の低い赤ん坊の身で、自分の成長が感じられるというのは嬉しいものである。


「今日は家族みんなでご飯を食べましょうねー」


 あやすようにぼくに話しかける母は、どこか感慨深そうに頭を撫でてくれていた。




 ── その日の夜。ついに離乳食を食べる時が来た。母さんがキッチンに立ち食事を作っている。この世界に来て初めての食べ物だ。おそらくペースト状の離乳食だろう。


『この世界の食事が美味しいといいなー。早く固形物も食べれるようになりたい。その時はちゃんと嚥下できると良いけど・・・・・・』


 そんな他愛もないことを考えていると、テーブルに母さんが食事を配膳していく。ぼくの前に置かれたのはやはりペースト状の離乳食だ。


 1人分は赤ん坊であるぼく用だけどそのほかに3人分の椅子と食事が用意されている。


『4人分か・・・・・・。父さんと母さんの分に、もうひとり分はあの子のかなぁ?』


 廊下の曲がり角や開いたドアから覗くダークブラウンの髪。それに気付いた母に名前を呼ばれると家の中を走る足音が聞こえ、いつもそれは遠ざかっていく。ぼくはまだ一度も彼女に会ったことがない・・・今日は会えると良いけど。


 配膳された食事を眺めながら密かな願いを思い浮かべていると、聞き覚えのある声が玄関の方から聞こえてくる。


「ただいまぁー」


「お帰りなさい、ウィル。ちょうどご飯ができたところよ」


 どうやら父さんが仕事から帰ってきたようだ。父さんの仕事は主にダンジョン関係で、魔物を討伐したり他にも雑用などして稼いでいるようだ。


 いつか父さんが惚気を交え一方的に話してくれたことだけど、今は安定した仕事を選んでいるようだが、昔は無茶してダンジョン探索していたらしい。その時に、一緒に組んでいたパーティーの一人である母さんに惚れて、今に至るらしい。


「おおー、今日も美味しそうだな」


「あらあら、今日も疲れたでしょ。今日はリアムも一緒に食べるのよ。はいはい、先に座って待っててね」


 料理を褒める父さんに嬉しそうに返事する母さんは、父さんを席に着かせリビングから廊下に出ると、別の部屋まで聞こえる大きな声で夕食ができた旨をあの子に伝える。


「カリナー!夕食の時間よ。いらっしゃーい」


 そう、彼女の名前はカリナ。時々母や父が彼女を呼ぶ声から名前を知った。そして彼女は6歳上のぼくの姉らしい。


 母さんが戻って席に着いて少しすると、廊下の方からゆっくりとした足音が聞こえてくる。そして足音がドアの近くあたりで止まると少しだけドアが開く。


 ・・・・・・しかしドアは少し開いたところで止まり、それ以上はこちらに踏み込んでこない。


「カリナ、大丈夫だから入ってきなさい」
「気にすることはない、カリナ。ほら、母さんの料理が冷めてしまうぞ。だからこっちに来て一緒に食べよう」


 母さんと父さんはちょっと困ったような、しかし優しい声をカリナ姉さんにかける。


 すると、途中で開き止まっていたドアが再び動き始める。ドアが完全に開くとそこには・・・・・・見覚えのあるダークブラウンの長い髪にキリッと整った顔立ち、母さんと同じ色の瞳をした綺麗な女の子が立っていた。


「あぅあー」


 母さんとは違うタイプの美人さんだ。その整った容姿に一瞬目を奪われて声が漏れてしまう。しかし、そんな声をぼくが漏らすとカリナ姉さんは少しだけ俯きがちになる。


「あらあら」


 母さんはそう口を零しわずかに困った笑みで席を立つと、カリナ姉さんの背中を優しく押して席に促す。


 母さんに促されたカリナ姉さんは、渋々といった感じで席に着く。席に着いても相変わらず、どこか落ち着かず不安そうに口を噤んでいる。






 ── そんななんとも言えない雰囲気の中、「パン!」と母さんが空気をリセットするように両手を合わせる。


「さ、せっかくの料理が冷めちゃうわ。食べましょ!」


 ニコニコした笑顔でそういう母さんに続き、父さんも「そうだな」と母さんの言葉に賛同する。


 少し気まずい中始まる食事。カリナ姉さんと初めて顔を合わせた今日だが、それからもカリナ姉さんがその場で喋ることはなかった。


 ちなみに、ペースト状の離乳食は久しぶりに口にする違う味だったが、場の気まずさ故か、味をあまり感じなかった。

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