月下の幻想曲

矢能 智郁

43話


校外演習当日。生徒全員が集められ出発式のようなものが執り行われる。

「さて諸君。入学後初めての大きな行事だが気分はどうだろうか。緊張している者、気持ちが高揚している者など様々だろう。3泊4日、森の中で生活してもらう訳だが、当然危険は常に傍にある。いくつかのグループは3年のA・Sクラスの者を加えて安全性を強化してはいるが、何が起こるかわからない。絶対に気を抜かないよう───」

校長からの有難いお言葉を頂き、細やかに説明を受けたあと出発。数班ごとに固まり学園を発つ。馬車にて半日をかけて街道を進む。道中に出てくる魔物は、学園側が護衛として雇った冒険者が駆除することになっている。

今回演習を行う修魔の森は、王都周辺で有名な駆け出しの冒険者向けの森で、浅いところではゴブリンなどの比較的弱い魔物が生息している。深層には当然それなりの魔物も居るが、周縁部に出現するのはかなり稀。
その為、小遣い稼ぎとしてはかなり優秀な森となっている。


修魔の森に着くと、各々が準備を整え入っていく。
「さぁ、行くぞ」
リヒトらもディドルトを先頭に森の中へ。





「おっ、何か居たな」
森へ入って凡そ1時間、漸く魔物と遭遇した。
「腐って変色したような緑色、狡猾そうな顔立ち、どうやって手に入れたのかわからない木製の武器。うん、あれがゴブリンだね」
事前に学んだ情報を頼りに割り出たのは、魔物の中でも最弱に位置するゴブリン。特徴は今述べた通りだ。
「へえ、あれが。ラスタナ行くよ」
「ええ、任せて」

2人が剣を抜き、敵の隙を伺う。幸いゴブリンは未だこちらに気づいていない様子で呑気に単独で・・・歩き回っている。

ゴブリンがこちらに背を向けたタイミングで接近。ディドルトが背中側から心臓に剣を突き立てる。
人間ならばここで力尽きるのだろうが、相手は魔物。人に似た体作りをしているとはいえ、構造が全く同じだとは限らない。
心臓に突き刺さった剣を見て、仕留めた、と確信した2人だが、ゴブリンの体から力が抜けていないことに僅かな違和感を覚える。その違和感を信じ反応出来れば良かったのだが、瀕死の状態から反撃を喰らうとは想像もしていなかったのだろう、リヒトが「まだだ」と叫ぶも、ディドルトへ伸びる腕が彼の身体を鞭打つ。

無事だったラスタナは彼が吹き飛ばされる光景を目にし、恐怖に脚がすくみ思うように剣を握れない。
はじめは2人に任せようと気を緩めていたリヒトだったが危険だと判断し直様魔法を放ち2人の安全を確保。ゴブリンの首を切り落とすことで一瞬にして絶命させるのだった。

「2人とも、大丈夫か?」
「ええ。なんとか」
目立った外傷の無いラスタナはそう返すが、大怪我を負ったディドルトはそうもいかない。当たりどころが悪かったのだろう、どうにか立つのが精一杯のように見える。リヒトは彼に駆け寄り、治癒魔法をかけた。

「リヒト、か。ありがとう」
「これくらいはさせてくれ。仲間として」
「あ、あぁ。……僕はやつの胸に剣を刺せたはず。なのに」
致命傷を負わせたはずなのになぜ、とディドルトは不思議に思う。
「ディドルト、魔物と戦うのは初めてだよね?知識は有るみたいだけど」
そんなディドルトの疑問をリヒトは見抜き問いかける。
「ああ、そうだが」
「今のミスはそれが原因だ」
「どういうことだ?」
「人と魔物は違う」
「当然のことだろう?何を今更」
「胸に剣を突き立て心臓を止める。狙いは間違ってないけどそれが上手くいくのは一部の魔物だけだよ。
鼓動が止まれば生き物は死ぬ。これは当たり前だ。でも、別に直ぐに死ぬわけじゃない。刺されてからも少しの間は生きてる。その間に攻撃を食らう可能性だってある。それに、種類によっては心臓を複数持っていたり、心臓が体内を動き回る奴もいる。スライムなんかそうだよね。オーガは皮膚が硬くて、俺らでは剣を突き立てることすら苦労する。体格が俺らより何倍も大きければ剣程度ではそもそも届かない。
ディドルトは人間の特徴を他の生物にも当て填めすぎだ」

リヒトの言葉を回らない頭で必死に解釈しようと試みる。しかしそれが当然のこと過ぎて頭に無かった事実だと言うことに気付く。
「人間と魔物は違う…。当たり前だが、だからこそ見誤っていたのか。リヒト、ありがとう。だけど、そんな奴が現れたらどうするんだ?」
「簡単な事だよ。人間の弱点は心臓だけじゃないよね」
「心臓以外。そうか、頭」
「正確に言えば頭と体を切り離すか、脳にダメージをいれるか。別に反撃されないように四肢を壊したっていい。
そんなことをされればどんな生物だって一溜りも無い」
四肢を壊し、反撃の手段を奪ってしまえばその場に居るのは命を乞うただの生物。

「まあ俺から言えるとしたらこうかな」
3人の方を向き、告げる。




「好きなだけミスしな。ここはそういう場所だ。皆は俺が守り抜くよ」




リヒトの宣言に圧倒される3人。そんな宣言を口に出来る程の力を羨ましいと思う気持ちめ少しはあるだろうが、今は圧倒されるばかりだった。だからと言うべきか、ミスの仕方によっては命を失いかねないと言う事実は彼らの頭には無い。
「あ、ああ。ありがとうな。僕達は目の前のことに集中する。元々そういう予定だったしな」
「リヒトさん。ありがとうございます。私達がピンチの時は宜しくお願いします」
「あ、ありがとう。た、頼りにしてるわ」
三者三様の期待の言葉を投げられ、リヒトは少し照れる。当然の様にラスタナは頬を紅くしている。
「うん。とはいえ俺にも出来ないことはある。でも大抵は、咄嗟の時はしょうがないとしても、数秒耐えてくれればそれでいい」
後ろで見守ってくれる大きな存在が、彼等から恐怖を奪い去る。気が付けばディドルトの中には先程感じた恐怖は無くなっていた。




ディドルトの体調をみて少しばかり休憩を取る。
「リヒトさん。かっこよかったです。私もそう言える人に成りたい」
休憩の為に場所を移動している最中、すれ違いざまに囁かれる。
「成れるよ。きっとね。そのために今頑張っているんでしょ?」
「ふふっ、そうでしたね。リヒトさんとルナちゃんには感謝しています」









(どうして。俺はあんなことを)










この日はこれ以降、特別目立ったことは起きず、着々とクエストをこなしていった。ディドルトもラスタナも初戦以降は自身なりに戦い方を見つけ、連携を取る事で失敗から学んでいるようだった。効率よくこなせていけたのは偏にリヒトの[探知魔法]のおかげだろう。もっとも、彼等の中に先程のリヒトの言葉が残っているのが一番大きいだろうが。







事が起こったのは翌日の昼。森の中を彷徨いながら獲物を探していた時のこと。リヒトの[探知魔法]に巨大な影が引っかかった。











当初の予定から外れ、ディドルトの提案は割愛されました。


何故か。


偏に全く思い浮かばなかったからという他ありません。1週間かけても納得のいく展開が思い浮かびませんでした。3、4通りのルートはかけたのですが、全て「違う」と思い、修正に修正を加え、期限が迫り、泣く泣く割愛の道へ。この決断が昨日の話。
決断が遅れたせいもあり今話は短くなっております。すみません。



ということで、前話の修正も行います。が、現段階では訂正に割く時間が取れなかったので、暫くはあのままとなります。今月中には訂正を行い、気が向いたら続きを書きます。
ただし前科があるので期待はしないでもらえれば……。




さて、本編ですが。
漸く。漸く。ただ、致命的な所で何かが違う気がする、と言うのが私の感想。

作者本人がこんな風な評価…………減りそうな予感しかしない。
あと一部分、雑い。


軌道修正は気が付いたら行われてると思います。

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