月下の幻想曲
37話
先に言います。新しいことはありません。
まとめのような感じです。
「さて改めまして、この度はお集まりいただきありがとうございます。本来ならばこれよりパーティを始めさせて頂きたいのですが今回はまず全員の持つ疑問を晴らすことと致しましょう。では、よろしくお願いします」
先にリヒトの紹介の謎を晴らすべく進行していく。
「私は王立魔法師団、大地の社所属のクロワと申します。この度は新たな魔法の常識についてお話しに参りました。
さて、皆様は今、「魔法適性」を1つの才能の指針として見ていらっしゃることと思います。この度、そちらが不適切であることが判明致しました。
「我々は元来より全ての属性の魔法を使用することが出来る」と言うものが我々の研究で正しいことがわかったのです。
これまで適性外の色を使うと言ったことは幾度か観測されておりました。Sランクが一角「魔導王」が代表例です。我々はこれまでそう言った例を「生まれ持った才能」として扱ってきました。しかし、その根底が覆されました。他ならぬリヒトと言う少年の手によって。
リヒト君、この前同様、害のないもので実演してもらってもいいかな?」
流れを振られ、両親も含む全員の視線が集まってしまう。
リヒトは部屋の中心まで歩み出て、空中に五色の色の玉を出現、円描くようにゆっくりと回転させる。
「お分かり頂けるでしょうか。彼は紛れもなく5色の色魔法を使用しています。これだけなら彼に才能があるだけだと思う方もいらっしゃるでしょう。ですが、ここには居ませんが、3席のシモネ、4席のルナ についても同様のことが出来ることを確認済み、そして現在、Sクラスのメンバーには指導中となっており、僅かではありますが''成果が見られて''います。
もう一度言います。これは紛れもない事実でふ。我々全員に等しく、これの同等のことが出来ます」
前代未聞の事柄に部屋全体が沸き上がり、しかし半信半疑となりながらも自分達にもその可能性があることに活気づく。
一呼吸置いてから再びクロワが話し始める。
「では今まで我々が信じてきた「適性」とは何だったのか。既に答えは出ています。
お考え下さい。相反する5色の属性。そして一人一人全く異なる私達。そこに得手不得手があっても何らおかしくはありません。
つまり、これまで私達の適性を示してきたあの水晶は「我々の得意な属性を示していた」だけに過ぎなかったのです。これについて言えば、数が多いほど才能があるというのは従来通り変わりません。
つまり、反応する色が1番伸びやすく体に馴染みやすい。反応しない色は全く使えない訳では無いがそれなりに努力は必要。そういう訳でございます。
実際、リヒト君の適性─反応した色は青と緑でした。こちらはうちの職員2名とSクラスのメンバー全員が証人となります。決して5属性の適性がある訳ではありませんでした」
その言葉に6人に視線が集まる。彼らとも当惑した様子で突然の出来事にどう対処したらいいかわからないでいる。
「そして、2つ目。こちらも常識を覆すこととなります。
それは、「無詠唱魔法は可能である」と言うことです。今ご覧になった通り、リヒト君は詠唱を一切行っておりませんでした。リヒト君、もう一度お願いします」
再び否応無しにすることを催促される。リヒトは仕方なしに、もう一度同じものを発動させた。
「ご覧になりましたね?勿論魔道具の類ではございません。
『魔法大全論』で証明されているではないかという指摘もございますが、近年我々はそちらについて疑念を持ち、研究してきました。
そもそも『魔法大全論』の一節には皆様が御存知の通り「魔法発動には鮮明なイメージを伴い、集中することが必要である」というものがあります。
この文面自体では、無詠唱は不可能であるということにはならないのです。ここで示されているのは、あくまでも「魔法発動には鮮明なイメージを伴い、集中することが必要である」ということだけなのです。
そこで、我々は何故このような解釈が生まれたのか辿ってみました。するとこういうことがわかりました。
「基本的に、無詠唱よりも詠唱した魔法の方が威力が高い」ということです。
この理論を誤った「不可能だ」という方向へ持っていったのは世間の流れ。口伝いに伝わっていくにつれて何処かで変わって行ったのでしょう。噂に尾鰭がついて行くのと同様に」
主要な話を終えた彼女は今回のまとめに入っていく。
「お分かり頂けたでしょうか。今まで世界が信じてきた2つのことが、今崩れ去りました。
質疑、批判、反論があるのであればどうぞおっしゃってください。しかし、今皆様がご覧になった通り事実は事実です。
勿論、体得するまでは個人差がございますでしょう。この点についてはこの歳で気付き、到達しているリヒト君には「才能があった」と片付ける他ありません。しかし同時に努力すれば到達可能ということでもあります。努力すれば道は開けます。その努力に裏切りはありません。どんなに困難でも、どんなに険しくても。
道は示されました。追いかけるか、信じられないとして無駄に反論し目を背けるか。それは皆様方次第です。
以上です」
クロワが話し終えた後は、少しの間会場は静まり返っていた。
しかし次の瞬間、自分達にも可能性がある「かもしれない」という事実が彼らを掻き立てる。
加えてここに居る彼らは入学したばかり。これからの数年間、打ち込むことも出来うるのだ。
一方で、この事実を既に知っていた6人は、いや5人は下から追い上げてくる焦燥感とまだ上に昇れるという期待感の狭間に居た。
「さて、いかがでしたでしょうか。
では、今夜は無礼講、立食形式となっております。学生達は輪を広げるために、大人達はいつも通り、楽しんでください。
パーティの開始です」
サスタの合図とともに、異例なパーティが始まる。
まとめのような感じです。
「さて改めまして、この度はお集まりいただきありがとうございます。本来ならばこれよりパーティを始めさせて頂きたいのですが今回はまず全員の持つ疑問を晴らすことと致しましょう。では、よろしくお願いします」
先にリヒトの紹介の謎を晴らすべく進行していく。
「私は王立魔法師団、大地の社所属のクロワと申します。この度は新たな魔法の常識についてお話しに参りました。
さて、皆様は今、「魔法適性」を1つの才能の指針として見ていらっしゃることと思います。この度、そちらが不適切であることが判明致しました。
「我々は元来より全ての属性の魔法を使用することが出来る」と言うものが我々の研究で正しいことがわかったのです。
これまで適性外の色を使うと言ったことは幾度か観測されておりました。Sランクが一角「魔導王」が代表例です。我々はこれまでそう言った例を「生まれ持った才能」として扱ってきました。しかし、その根底が覆されました。他ならぬリヒトと言う少年の手によって。
リヒト君、この前同様、害のないもので実演してもらってもいいかな?」
流れを振られ、両親も含む全員の視線が集まってしまう。
リヒトは部屋の中心まで歩み出て、空中に五色の色の玉を出現、円描くようにゆっくりと回転させる。
「お分かり頂けるでしょうか。彼は紛れもなく5色の色魔法を使用しています。これだけなら彼に才能があるだけだと思う方もいらっしゃるでしょう。ですが、ここには居ませんが、3席のシモネ、4席のルナ についても同様のことが出来ることを確認済み、そして現在、Sクラスのメンバーには指導中となっており、僅かではありますが''成果が見られて''います。
もう一度言います。これは紛れもない事実でふ。我々全員に等しく、これの同等のことが出来ます」
前代未聞の事柄に部屋全体が沸き上がり、しかし半信半疑となりながらも自分達にもその可能性があることに活気づく。
一呼吸置いてから再びクロワが話し始める。
「では今まで我々が信じてきた「適性」とは何だったのか。既に答えは出ています。
お考え下さい。相反する5色の属性。そして一人一人全く異なる私達。そこに得手不得手があっても何らおかしくはありません。
つまり、これまで私達の適性を示してきたあの水晶は「我々の得意な属性を示していた」だけに過ぎなかったのです。これについて言えば、数が多いほど才能があるというのは従来通り変わりません。
つまり、反応する色が1番伸びやすく体に馴染みやすい。反応しない色は全く使えない訳では無いがそれなりに努力は必要。そういう訳でございます。
実際、リヒト君の適性─反応した色は青と緑でした。こちらはうちの職員2名とSクラスのメンバー全員が証人となります。決して5属性の適性がある訳ではありませんでした」
その言葉に6人に視線が集まる。彼らとも当惑した様子で突然の出来事にどう対処したらいいかわからないでいる。
「そして、2つ目。こちらも常識を覆すこととなります。
それは、「無詠唱魔法は可能である」と言うことです。今ご覧になった通り、リヒト君は詠唱を一切行っておりませんでした。リヒト君、もう一度お願いします」
再び否応無しにすることを催促される。リヒトは仕方なしに、もう一度同じものを発動させた。
「ご覧になりましたね?勿論魔道具の類ではございません。
『魔法大全論』で証明されているではないかという指摘もございますが、近年我々はそちらについて疑念を持ち、研究してきました。
そもそも『魔法大全論』の一節には皆様が御存知の通り「魔法発動には鮮明なイメージを伴い、集中することが必要である」というものがあります。
この文面自体では、無詠唱は不可能であるということにはならないのです。ここで示されているのは、あくまでも「魔法発動には鮮明なイメージを伴い、集中することが必要である」ということだけなのです。
そこで、我々は何故このような解釈が生まれたのか辿ってみました。するとこういうことがわかりました。
「基本的に、無詠唱よりも詠唱した魔法の方が威力が高い」ということです。
この理論を誤った「不可能だ」という方向へ持っていったのは世間の流れ。口伝いに伝わっていくにつれて何処かで変わって行ったのでしょう。噂に尾鰭がついて行くのと同様に」
主要な話を終えた彼女は今回のまとめに入っていく。
「お分かり頂けたでしょうか。今まで世界が信じてきた2つのことが、今崩れ去りました。
質疑、批判、反論があるのであればどうぞおっしゃってください。しかし、今皆様がご覧になった通り事実は事実です。
勿論、体得するまでは個人差がございますでしょう。この点についてはこの歳で気付き、到達しているリヒト君には「才能があった」と片付ける他ありません。しかし同時に努力すれば到達可能ということでもあります。努力すれば道は開けます。その努力に裏切りはありません。どんなに困難でも、どんなに険しくても。
道は示されました。追いかけるか、信じられないとして無駄に反論し目を背けるか。それは皆様方次第です。
以上です」
クロワが話し終えた後は、少しの間会場は静まり返っていた。
しかし次の瞬間、自分達にも可能性がある「かもしれない」という事実が彼らを掻き立てる。
加えてここに居る彼らは入学したばかり。これからの数年間、打ち込むことも出来うるのだ。
一方で、この事実を既に知っていた6人は、いや5人は下から追い上げてくる焦燥感とまだ上に昇れるという期待感の狭間に居た。
「さて、いかがでしたでしょうか。
では、今夜は無礼講、立食形式となっております。学生達は輪を広げるために、大人達はいつも通り、楽しんでください。
パーティの開始です」
サスタの合図とともに、異例なパーティが始まる。
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