月下の幻想曲

矢能 智郁

19話



2人を連れて帰宅。道中で軽い自己紹介を済ませた。ルナが口を開くまでに少し苦労した。

自分の部屋に連れていき、改めて2人に向き合う。
「これから、よろしくな」
「はい。よろしくお願いします」
「・・・・・・」
やはりルナからの返答は無い。

「さて、とりあえず2人にはやってもらいたいことがある。それは、魔力操作だ」
「それは、どうして?」
予想外のことにルナが口を開いた。
「とりあえず、これを見てくれ」
普段やっている程度の行為をする。
「ここまでとはいかないが、30日である程度までは出来るようになってもらいたい。一応、根拠もある」
「見せて欲しい、と言ったら?」
「片方は機密だから見せられないが、もう片方は俺自身だ」

全力で魔力を放出、ルナだけに圧を向ける。額から汗が噴き出ていく。
「わ、わかった。でも30日程度で出来るの?」
「あぁ、充分可能だ。これを空いている時間にしてほしい。感覚は今から掴ませる」



ここで、おずおずと口を開いた者が居た。
「あのぅ・・・それなら少し出来ますけど・・・」
想定外の一言。
「そうなのか?」
「はい。村にいた頃に、近所のお兄ちゃんが自慢していたのを見て。周りの大人は無駄だから止めろって言ってたんですが、怪我をしにくくなっているのとかを見て、私には無駄には思えなくて。偶に練習していました。今の程ではありませんけど」

そう言って、実践し始めた。拙さが残っているが、及第点には充分届いているし、努力の跡が見られる。
「なら話が早い。それを極めてくれ。これは掛けた時間がものを言う力。騙されたと思ってやってみろ?30日後には劇的に変わってるよ」


この後は、ルナに方法を教えて時間が終わった。これからはおそらく屋敷の者が2人の教育係に付き、使用人としてのあれこれを叩き込むことになる。その間に行ってくれれば、充分上達する。


 



2人と別れ、自分と部屋に向かっている途中、後ろから声をかけられた。
「ねえ。なんで私を買ったの」
ルナだ。
「知りたいか?」
「勿論。印象が悪くなるように接していたのに、なんで」
当然の疑問。それに俺は予め用意しておいた返答を言う。
「ルナのその態度と雰囲気からだよ、選んだのは。話す時の態度だけなら選んでなかった。でも、待機している間のお前の出す雰囲気が、独りでいることが当然であるかのように感じられた。俺にもそんな体験があったから、迷惑だと分かっていても見捨てる選択肢はなかった。
これで充分か?」

一部嘘が紛れた、本心。見捨てられなかったのは本当だし、感じた雰囲気も本当。

「・・・今は、今はそれでいい。でも、私はあなたを信用しない。時期を見て逃げ出すかもしれない。それでもいいの?」
「あぁ。そんなことはないって確信してるからな」
「変わった人」
「よく言われる。まっ、精々逃げ出してみろ」
ルナは腑に落ちないと言わんばかりの顔をしていたが、俺は構わずその場を去った。





30日後、2人とも魔力操作を習得した。
シモネは俺に心を開き、積極的に接してくる。対してルナは未だに閉ざしている。何度か逃げ出そうとしていたみたいだが、尽くハンナに見つかったらしい。
そう。彼らの指導係に、ハンナが任命されたのだ。あの、俺が隠蔽付与を練習していた時に迷惑をかけた、あの。普段俺を呼びに来ているのも、彼女だったりする。


「ご主人様〜。今日はどうするんですか?シモネは今日屋敷の当番がなくて暇なんですけど」
シモネは俺の事を「ご主人様」と呼ぶようになった。奴隷と言う身分に加え、メイドとしての修行から、ハンナにそう呼ぶよう指示されたらしい。最近は違和感が無くなってきている。

「当然だろ。俺がハンナに頼んで外してもらったんだから」
「そうだったんですか?という事は、今日はついに?」
「いや、たぶんだけど違うな。今日は中庭だよ。ルナも呼んでおいて」
「は〜い」

シモネがルナを探しに行ったところで、はぁ、とため息をつく。今日、学園入学の事を話す。「常闇の夜明け」に関してはもっと後でになるだろう。


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コメント

  • 如月 薊

    ここまで読んでみましたが、とても面白いです!
    これからもお互い頑張りましょう!
    あともし宜しければ僕の作品もよろしくお願いします!

    1
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