月下の幻想曲

矢能 智郁

17話





6日後、父さん達が帰ってきたので専属の使用人が欲しいことを伝えたところ、
「ん?ああいいぞ。誰を付けるか悩んでいる最中だったからな。自分で選んでくれるのならそれがいい」
とのこと。
翌々日、探しに行くことになった。






「ようこそ、我がナルニーズト商店へ。オーナーのイスラでございます。本日はどのような御要件で?」
「屋敷で雇う者を探しにな。息子と同年代くらいがいいのだが、見繕ってもらえるか?」
「はい。分かりました。息子さんと同年代くらいとなると、8〜13歳くらいでしょうか」
「そうだな」
「では、連れて参りますので、少々お待ちください」


15分もしないうちに、4人ほどを連れて戻ってきた。全員に首輪、手錠、足枷が着けられている。
「うちは健康と質が売りでございますので」
そう言うと4人の説明を始めた。


1人目はシモネ。人族の11歳。
蒼い髪につぶらな瞳が特徴。
家が貧しく、親の生活費工面のため、乃至借金返済のために最近売りに出され、今は様々な知識をみにつけている最中。
白魔法に適性があり、このまま売られることがなければ治癒師として奉仕するのだとか。

2人目はシール=レタルス。人族の13歳。容姿は良く、将来有望。中流貴族の出自だが魔法の才能が無く、将来使い物にならないと判断され奴隷の身分に。生まれが貴族であるため礼儀作法は知っているが、先の理由の通り戦闘面、警備には向かない。

3人目はテソン。猫型の獣人。13歳。茶色の髪から見える小さめの猫耳が可愛らしく、身長は小柄。
獣人属領から迷い出てきたところを違法な奴隷商が保護し、以後奴隷落ち。主人が死ぬなど、巡ってイスラさんの元へ来たのだという。1度奴隷落ちすると一生烙印は消えず、獣人であるため保護してくれる家も無く、あったとしても特殊癖持ちか後ろめたい所で安心して送り出せず今に至るらしい。典型的な獣人らしく身体能力は高く、対して魔法適性は低い。

4人目はルナ=イェーリッグ。人族、13歳。
理由は1人目と似ているが、村自体が財政難であり、村長の取り決めで泣く泣く奴隷堕ち。と本人は話しているが、事実では無いらしく、本当のことは本人にしか分からないのだとか。


ここまで説明したところで、イスラさんの話は終わった。
何故か全員女性だった。「屋敷で雇う者」としか言ってないはずなのに。

「鑑定魔法」を使ってステータスを覗いていく。才能は加味しない。ただ見るだけ。
全員に奴隷身分の証である首輪がはめられている。外すことは可能だと言うが、ステータス欄に痕跡は残るため、ほとんどの人が外れても普通の生活の中で支障は無いとはいえ元通りの生活に戻ることは出来ない。




1人に目が止まる。なぜなら種族の欄に「人族/森霊種《エルフ》」とあるからだ。つまりはハーフエルフ。容姿を見るにエルフらしき特徴が無いため、人族と間違えたのだろう。
[鑑定魔法]も固有魔法の1種であるため、持っている人は極端に少ない。

そもそも奴隷商人は各々と無属性魔法の[契約《コントラクト》]を用いて商売している。無属性であるため理論上は誰にでも使える魔法だが、効果だけに消費魔力量も多く、それだけで使える人が限られてくる。また発動条件に「双方の合意があること」があるため誰でも対象にできる訳では無いのも、堕ちる人に身売りした人が多い理由の1つだ。勿論この条件には抜け道が存在し、その方法で犯罪奴隷が生まれている。

魔法の才能に加えて商売の技巧も問われてくる。こちらは学び、数をこなせばある程度は身につくが、それでも─どの商売でも言えることだが─観察眼やセンスは必要になってくる。特に人を見る目が無いと商売としてやって行くことすらできない。
そういったことを加味し、尚且つ国の承認が必要ともなれば人気が低いのも納得だろう。
商売の中では儲けが上位に食い込むとしても。



商人と奴隷とでは簡易的な契約しか結ばないため基本的には本人からの証言が参考にされている。質を重視していると言うナルニーズトで力で脅して情報を引き出せば何よりも大切である信用を失うことに繋がりかねないため、彼女が「人族だ」と嘘を言っても真実は分からないだろう。

「メイドとして登用するのであれば、この4人からです。如何なされますか?」
女子ばかりなのはメイドとしてが前提だったかららしい。
「リヒト、どうする?」
「そうですね……しばらくこの4人と話をさせてもらえませんか?第一印象だけじゃ決めようにも情報が」
「では、私は退出しましょう」
「1時間後に帰ってくる。それまでに決めておけ」








さて、大人が退出し、5人になったところで
「消音《サイレント》」
重宝する時が必ず来るはざだと練習していた消音《サイレント》。文字通り周囲に音が漏れないようにするための魔法、つまりは防音結界。

「さて、何から話そうか」
緊張や困惑など様々な感情があるのだろう、誰も反応しようとしない。
「じゃあ、第一印象で俺に買われてもいいと思った人」
シモネとテソンがぎこちなく手をあげようとした。
「そうだ、自己紹介がまだだったな。俺はリヒト=キフェルネ。この街の領主の次男だ。」
予想外の言葉に4人全員が驚いている。
「今ある情報だけじゃ君たちから選びきれない。何か、話してくれればいいんだけど・・・」

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