月下の幻想曲
11話
昨日は結局確認や調整で1日を終えてしまったので、今日は銃に関してやろうと思っていたことをやってみる。
昨日作ったやつははじめてだったせいか強度が低く、銃身へのダメージが溜まっていた。
昨日の練習のおかげである程度の精密さは出来てきたが、依然まだまだ。ただ、銃の手入れを幾度となく行った為、再度作成するときのイメージは補填できた。
そして、今回作るのは既存の銃に少し工夫を凝らしてみた1品。頭の中で図面を引き、構造は考えてある。
「創造《クリエイト》」
先と瓜二つな、しかしそれよりも黒く澄む一丁。動作確認のため1発─昨日の時点である程度作り置きをしていた─実弾を撃つが、全く持って問題ない。
さて、本命は今改良したやつ。
動作確認のために試し撃ち─バン。
鳴り響いたのは銃声、ではなく破裂音。
つまりは暴発
「痛っ…やりすぎたか」
撃った右手は血塗れ。
「まぁ治るからいいか。回復《ヒール》」
初歩的な治癒魔法。苦手なだけであって、使えない訳では無い。もっとも、詠唱が必要ではあるが。
「ただ、治りが遅いな、痛。要改善か、もしくは」
他人に覚えさせるか。
奴隷に忌避感がないと言えば嘘になるが、表立って商売してるところは大体正規の方法、つまり犯罪者か身売り人か、を取り扱っている。
またこれはその人次第ではあるが、奴隷らしい扱いではなく1人の人間として接しようと思ってはいる。
他の人が非人道的な扱いをしていれば流石に怒りはするだろうが。
金銭面は……まぁどうにかする。
インフレがどうとか、偽造貨幣がどうとかいう問題はこの世界《ヴィクトリア》には存在しない。こっちで重要視されているのは金・銀が貨幣としての価値があるかどうかである。
だから最悪の場合作り出せば問題は無い。倫理的な問題はあり、現に多少の忌避感は抱いているが、直接的であれ間接的であれいずれすることになってしまうであろう殺人とともに、覚悟をしておかなければ生きて行けなくなる可能性がある。
脱線していた話を戻すと、先程やろうとしていたのは魔法を弾にして撃ち出すこと。これが出来れば戦術が広がるに違いない。今のうちに幅を広げておいて損は無い。確立させた後にかえるのは困難だからだ。
なぜ思いついたのかは前々からこういうことに興味があったからだが、些細なことだ。
気を取り直して再度作成。1度作ったためか危なげなく出来た。
先程よりも篭める魔力を少なくして狙撃─しようとしたところに人が。
「リヒト様!何事ですか!?大丈夫ですか!?」
うちで働く給仕の1人のハンナだ。
「何がだ?」
「先程こちらで大きな音がしましたよね?何が起きたのかを確認に来ました。何があったんですか?」
「ああ、ただ魔法の練習をしていて、少し失敗しただけだ。何も問題ない」
右手を背中に隠し、平静を保ちながら言う。
「左様…ですか。わかりました。そのように伝えてきます」
ふぅ。やり過ごせたか。確かに大きな暴発音だったからな。屋敷まで聴こえていてもおかしくはない。
改めて銃を構え、前よりも格段に魔力を少なく込め、撃ってみる。
爽快に響く、1発の銃声─成功だ。
これから、徐々に込める魔力量増やし、限界を見極めていく。
強度に限界が来たところで再度作成。
今度はこれに[付与魔法]をかけてみる。2つ目でやらなかったのは、単純な強度が知りたかったからだ。
付与する効果は硬化と反動軽減。
[付与魔法]ではバフデバフも可能ではあるが、やはりと言うべきか本家の白・黒魔法よりは弱体化されている。一方で[飛翔魔法]や物理攻撃無効などといったものはできなかった。
バフの効果は、練度により上限があがり、上限ないなら好きな値で用いることができる。
そのせいか、初めて使うものは多少の気休め程度にしかならない。
その気休めに助けられることもあるだろうが。
気の負いすぎだろうが、最近は[探知魔法]を定期的に開くようにしている。いつ襲われてもいいように、ではあるが、自分の力を驕れるほど強くない。
メインは銃と魔法、万が一の接近戦用に剣術、とやるべき事が多い。どれもこれも今後不自由しない為のものだから手を抜くことは出来ない。
1人での鍛錬では技の一つ一つの技術は向上していくが、さすがに限度がある。現環境で相手にできるのは、兄か騎士団員か。
兄はなかなか都合がつかないし、騎士団員を相手には気が引けなくもなくない…………。
さて、奴隷に関してだが、今回の件が─終わりがあるのかはわからないが─終わってからにする。
万が一巻き込み、死なせてしまったら恐らく立ち直れない。今から鍛えても中途半端であるし、突然の実践になる。
それらを自分なりに考慮すると、居た方が出来ることは増えるが今ではない。
翌日、些細な動きが見えた。この家に、監視がつき始めたのだ。それに気付いているのを悟られずに行動したいが、もし自分以外が標的であればどうしようもない。俺であってもいやだが。
とは言え狙われる理由が特に思い浮かばない。返り討ちにしたやつらは意識を失っていたため顔が見られてるとは思えない。
一体何故狙う?姉は殺されるようなことはしていないし、俺の事も知られていないはずだ。
もし、1度歴史から消された魔力操作を俺がしていると知っていたら? いや、だとしてもそれはおかしい。広めるような素振りでもしなければ消す必要はない。危険な芽は早めに積んでおこうという算段か…?それなら誰が外に漏らした…?
多少周囲を警戒せずに扱っていたところで素人目には何をしているかわからないはず。そして知っているのは兄と 先生だけ。
一体…だれが?
他の誰かが、見ていたのか?
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