月下の幻想曲

矢能 智郁

1話



次に目が覚めたのは朝だった。聞こえてくるのは鳥の囀りだろうか。ベッドから身を起こし部屋を見渡す。部屋の隅には木の剣が、家具は最低限のものだけだが、今までの俺はいい暮らしをしてきたみたいだ。
日本の頃の記憶もこの(おそらく)10年間の記憶もちゃんとある。少し欠けているように感じるのは気の所為だろうか。

慣れた手つきで身支度を済ませ、部屋を出る。
「おはよう。リヒト」
「おはようございます。お母様」
よかった。ちゃんと話せれるみたいだ。一瞬何を言ってるのかわからくなったが、初めてだからしょうがないだろう。ちなみに違和感は半端ない。

さて、一応自己紹介をしようかな。名前は リヒト=キフェルネ 。キフェルネ辺境伯家の次男で、兄と姉が1人ずつ居る。

朝食を済ませたあと、色々確認して回ろうと思いつつ朝食を済ませた。

まずは魔法。選んだのは創造魔法だ。これは名前の通り色々な物を生み出せるらしい。武器然りアイテム然り。条件次第では魔法も作れる。
ちなみに魔法は今のところ3つまで作れるようになっている。そりゃ無限に作れたらチート確定だもんな。これは今作って誤爆しても嫌だから必要だと思った時にでも。
加えて付与魔法。俺の予想ではこれを使えば色々幅が広がる。かなり重要だ。

そう言えばステータスってあるんだっけ、と思い記憶を辿ると身分証なるカードがあった。貴族はほぼ全員が、平民でも大抵の人が持っているらしい。部屋からカードを探し記憶を頼りに魔力をぶっつけ本番で流す。

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 ステータス
        リヒト=キフェルネ (10歳)
        クラス : 
        称号 : 転生者

        魔力残量 : 99%

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へぇ。この世界ではゲームみたいな能力値はないらしい。純粋な人の力で生き抜くのか。
まぁ本を読んでて、レベルが上がるとスタッツが上がると言うことが想像できなかったから体験してみたくはあったな。

あと確認するのは…と考えていると窓から差し込んだ光が頬に当たっていたことに気付いた。何気なく窓から外を見てみるとそこには大きな街が。
その光景で本当に異世界に来たんだなと言う感覚を改めて覚えた。見たところ中世ヨーロッパより少し進んだくらいの文明だ。
この世界─ヴィクトリア だったか─のことも調べないとな。ある程度は記憶にあるが今の自分の目できちんと確認しておきたい。そこで、父が書斎を持っているのを思い出した。「さてと、どこにあったかな。家の確認がてら探検するか」

暫くして、お目当ての書斎を見つけた。警備のためなのか見つけにくいところにあって時間がかかった。
中に入ると壁の一面に本がずらりと並んでいる。この紙が貴重な時代にここまで集めるのにはとても苦労しただろう。経費も1小貴族の財産くらいにはかかってるんじゃないだろうか。
「これは。すごいな。でもこれくらいなら時間をかければ読破は出来そうだな」

突然、扉の近くに気配を感じた。何も出来ないが少し身構える。
「誰かいるのか?」
「はい」
「リヒト?何してるんだ?」
「いえ、父上。少し魔法関連の本を読みたくなって」
気配の正体は父キルスだった。苦しい言い訳だが大丈夫だろうか。
「そうか。ここに入るなら一言声を掛けてくれと言っているじゃないか。扉が開いているのを見ると盗賊が来たのではないかと不安になる」
「すみません」
「ここには貴重な本もあるのだからな。気をつけろ」
「はい」
そんな貴重な部屋なのに鍵がないのは個人の魔力を識別し、登録してある人のみがはいれるようになっているかららしい。ただそれも万能ではなく穴はある。それを分かっているからこその心配なのだろう。当然俺のも登録されている。

また、父は記憶通り色んな面で頼りになりそうな印象だった。領民からもかなり慕われているとか。

「えっと、お目当ての本は…っと。」
あった。アンシー=グレーテ著『魔術基礎』   
題名こそ安直だが魔法の行使において最も重要な指南書だ。
その他にもそれぞれの属性魔法について載ってる本をいくつか選別して部屋に持ち帰る。
結局これ以降は本を読むだけで終わった。

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