VRゲームでも身体は動かしたくない。
<Girl Meets Girl >
退屈な大学の抗議を聞き終え、ブラウザを閉じ一息つく。
コーヒーは苦手だから飲むのは紅茶だけどね。
もう大学3年生だから就職を考えなければいけないの。実際周りのみんなはもう就活を始めているし。
実家には余るほどお金があって、あたしが働く必要はない、親の決めたよくわからない男と見合いして結婚させられる。そんな人生になるんじゃないかと思ってた。
自分の人生を他人に決められるなんて嫌。
だから大学進学と同時にマンションを買ってもらって、一人暮らしを始めることにした。
慣れない一人暮らしで、精神的にも参っちゃう。
家に一人でいることに耐えきれなくて、誰かと話したいという欲求は日が経つにつれ増していく。
だからオンラインゲームを始めたの。
少し前、SNSでみた同じオンラインゲームをやっている人たちの会話を見たのも大きいかな。
顔も知らない人とここまで仲良くできるものなの? 私の興味は尽きなかった。
オンラインゲームのランキングを見て、新規で一番ランキングが高かった<Imperial Of Egg>を始めたのはただの偶然だったと思う。
高性能のパソコンを使っていたから、インストールもすぐに終わった。
トキントキンと鳴る心臓を深い呼吸で落ち着け、ゲームスタートボタンを押す。
よくわからないがキャラクターを作り、昔から使っていたニックネームを付ける。
それが『エルマ』の誕生ね。
チュートリアルを終え、動かし方を学んだ後、すぐさま街へ繰り出す。
昔からゲームは結構遊んでいた。
オンラインゲームは初めてだけど、そんなに差があるとは思えなかった。
固定の会話しか返せないNPCに話しかけクエストを受け、レベルを上げる。
ただそれの繰り返し。
これじゃ退屈な講義と何も変わらない。
それでも数日は遊んでいた。
町中に流れるプレイヤー同士の会話を見るだけでも楽しかったから。
画面を挟んだ向こうには生きてる人がいるのが実感できたから。
でも自分から話しかける勇気はでない。
気を紛らわせるためにモンスターを狩りドロップ品を集めていた。
そんな時、初期装備に身を包んだ女性のキャラクターがテクテクと歩いていた。
とくに何かをしゃべっていたわけじゃないけれどあたしはその女性のキャラクターがとても気になった。
「はじめたばっかりなのですか?」
初めて自分からチャットを打った。
心臓の鼓動が早くなる。動いていたキャラクターが立ち止まり、数秒後返事がきた。
「さっき始めたんです。景色が綺麗で歩き回ってたらこんなところまで来てしまいました」
普通ゲームだったら歩き回る前にクエストを受けたりとかする。ゲームはあまりやらない人なのかな?
「MMOやるのは初めてです。顔も知らない人と話すのってなんだか緊張しますね」
この人私と一緒なのかな?
「あたしもMMOでチャットをしたのは初めてです」
「そうだったんですか? てっきり結構遊んでいる方なのかと……」
「そういえば自己紹介がまだでしたね。あたしはエルマといいます。よろしくお願いします」
「チェリーといいます。こちらこそよろしくお願いします」
これがチェリーとの出会い。
その日はチェリーの装備を整えたり、少しばかりだけれど狩りをしたりと、今までとは少し違うゲームができた。
「明日もまた遊べるかな?」
自然に心で思った言葉をチャットにしていた。
「明日もINするつもりです。よかったら遊んでくれませんか?」
「はい。フレンド登録しませんか?」
「どうやってやるのかわからないです……」
そう言ったからあたしからフレンドを送った。
次の日も、またその次の日も遊んだ。
モノクロ写真のような退屈な毎日が、カラー写真のような美しいものになっていった。
いつの間にかチャットをするのも億劫になって通話ツールで言葉を交わすまでになった。
少し気だるそうで、でもどこか落ち着いた雰囲気のある女性にあたしはどんどん惹かれていった。
半年ほど経った時、お互い敬語じゃなくなってることにふと気づいた。その気兼ねない掛け合いがとてもあたしには心地よかった。
このゲームを全力で楽しむ彼女のおかげであたしも友人が増えた。
今になって思うとチェリーと出会っていなければMMOは続けていなかったと思う。
VR化すると発表があった時は本気で落ち込んでいた彼女を支えられたし、専用端末が買えないと彼女の心の慟哭を聞いたときは何が何でも手に入れようと思った。
あたしの心を動かすのはいつも彼女だった。
彼女の心を動かせる存在にいつかはなりたいわ。
今日も<Imperial Of Egg>で彼女や友人に会えるといいな。
チェリー。ほんとにありがとう。
<Girl Meets Girl完 >
コーヒーは苦手だから飲むのは紅茶だけどね。
もう大学3年生だから就職を考えなければいけないの。実際周りのみんなはもう就活を始めているし。
実家には余るほどお金があって、あたしが働く必要はない、親の決めたよくわからない男と見合いして結婚させられる。そんな人生になるんじゃないかと思ってた。
自分の人生を他人に決められるなんて嫌。
だから大学進学と同時にマンションを買ってもらって、一人暮らしを始めることにした。
慣れない一人暮らしで、精神的にも参っちゃう。
家に一人でいることに耐えきれなくて、誰かと話したいという欲求は日が経つにつれ増していく。
だからオンラインゲームを始めたの。
少し前、SNSでみた同じオンラインゲームをやっている人たちの会話を見たのも大きいかな。
顔も知らない人とここまで仲良くできるものなの? 私の興味は尽きなかった。
オンラインゲームのランキングを見て、新規で一番ランキングが高かった<Imperial Of Egg>を始めたのはただの偶然だったと思う。
高性能のパソコンを使っていたから、インストールもすぐに終わった。
トキントキンと鳴る心臓を深い呼吸で落ち着け、ゲームスタートボタンを押す。
よくわからないがキャラクターを作り、昔から使っていたニックネームを付ける。
それが『エルマ』の誕生ね。
チュートリアルを終え、動かし方を学んだ後、すぐさま街へ繰り出す。
昔からゲームは結構遊んでいた。
オンラインゲームは初めてだけど、そんなに差があるとは思えなかった。
固定の会話しか返せないNPCに話しかけクエストを受け、レベルを上げる。
ただそれの繰り返し。
これじゃ退屈な講義と何も変わらない。
それでも数日は遊んでいた。
町中に流れるプレイヤー同士の会話を見るだけでも楽しかったから。
画面を挟んだ向こうには生きてる人がいるのが実感できたから。
でも自分から話しかける勇気はでない。
気を紛らわせるためにモンスターを狩りドロップ品を集めていた。
そんな時、初期装備に身を包んだ女性のキャラクターがテクテクと歩いていた。
とくに何かをしゃべっていたわけじゃないけれどあたしはその女性のキャラクターがとても気になった。
「はじめたばっかりなのですか?」
初めて自分からチャットを打った。
心臓の鼓動が早くなる。動いていたキャラクターが立ち止まり、数秒後返事がきた。
「さっき始めたんです。景色が綺麗で歩き回ってたらこんなところまで来てしまいました」
普通ゲームだったら歩き回る前にクエストを受けたりとかする。ゲームはあまりやらない人なのかな?
「MMOやるのは初めてです。顔も知らない人と話すのってなんだか緊張しますね」
この人私と一緒なのかな?
「あたしもMMOでチャットをしたのは初めてです」
「そうだったんですか? てっきり結構遊んでいる方なのかと……」
「そういえば自己紹介がまだでしたね。あたしはエルマといいます。よろしくお願いします」
「チェリーといいます。こちらこそよろしくお願いします」
これがチェリーとの出会い。
その日はチェリーの装備を整えたり、少しばかりだけれど狩りをしたりと、今までとは少し違うゲームができた。
「明日もまた遊べるかな?」
自然に心で思った言葉をチャットにしていた。
「明日もINするつもりです。よかったら遊んでくれませんか?」
「はい。フレンド登録しませんか?」
「どうやってやるのかわからないです……」
そう言ったからあたしからフレンドを送った。
次の日も、またその次の日も遊んだ。
モノクロ写真のような退屈な毎日が、カラー写真のような美しいものになっていった。
いつの間にかチャットをするのも億劫になって通話ツールで言葉を交わすまでになった。
少し気だるそうで、でもどこか落ち着いた雰囲気のある女性にあたしはどんどん惹かれていった。
半年ほど経った時、お互い敬語じゃなくなってることにふと気づいた。その気兼ねない掛け合いがとてもあたしには心地よかった。
このゲームを全力で楽しむ彼女のおかげであたしも友人が増えた。
今になって思うとチェリーと出会っていなければMMOは続けていなかったと思う。
VR化すると発表があった時は本気で落ち込んでいた彼女を支えられたし、専用端末が買えないと彼女の心の慟哭を聞いたときは何が何でも手に入れようと思った。
あたしの心を動かすのはいつも彼女だった。
彼女の心を動かせる存在にいつかはなりたいわ。
今日も<Imperial Of Egg>で彼女や友人に会えるといいな。
チェリー。ほんとにありがとう。
<Girl Meets Girl完 >
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