破壊の創造士
027:外交の影
 俺は外に出たものの、少し落ち着かなく、城の自室へと戻っていた。ずっと思っていることだが、俺は重大なミスをしていた。俺たちは今、魔人から追われている身である。ダンジョン内で待ち伏せされるほど、奴らの目は広く、正確に俺たちの行動を把握している。そんな中、只でさえ目立たないように努めなければいけないのだが、、、城という大目印を創ってしまった。これは自ら、「ここにいますよ」と言っているようなものだ。かといって何も考えずに城を建てたわけでもない。これはこれでしっかりと狙いはある。それに今から取り壊すわけにはいかない。しかしやはり困ったものだ。
 どうやら今のはフラグ扱いのようだ。外で爆音が聞こえた。窓から顔を出すと、城の一番高い部分、確か展望台に当たる位置から煙が上がっていた。俺は急いで城の外へ出た。ミリアと戦闘組は既に到着しており、門前の敵と向かい合っていた。
「フフ。まさかこんな大きな目印を作ってくれるなんて、探す手間が省けて助かるわ。」
 やっぱりか。俺もそう思う。
 レマンダ・セレティキス   Lv142
 HP     4450
 MP     3200
 AP     2850
 IP     4200
 GP     3050
 SP     2800  
 スキル:
 ネクロコントロールLv10   呪怨Lv10   漆黒魔法極Lv9   魔法耐性Lv9   物理耐性Lv9
 マインドコントロールLv7   獄炎Lv7   獄氷Lv6   雷電Lv5   回復魔法Lv5
・・・フムフム。なかなかの相手だ。スキルも強い。少なくとも戦闘組が連携を組んでも勝てないだろう。
「そういえば、ご挨拶がまだでしたわ。」
   
 女はそう言うと、背中の羽を大きく広げて一礼をした。
「私は不死様の第一部隊『霊鳥』の副団長 レマンダ・セレティキスでございます。」
「ご丁寧なものだな。今まで会った瞬間から攻撃かます常識知らずにしかあったことがなかったので、お宅の魔人様の配下教育に疑問を持っていたところだ。いや、先の爆撃をカウントするとお前もそういう部類か?」
「ええ、団長もそうですし存じていますよ。しかし我が主である不死様は、初対面の者には必ず挨拶を、と常識的な教育を行っていますわ。」
・・・挨拶のとらえ方が違うだろう。
 
「まあそんなことはどうでもいい。お前はなぜここの来たんだ? 俺たちはお前より強いメルガンとかいうやつを倒している。単体でやりあいに来たわけではないだろう?」
「全くその通りですわ。わたくしのこの度の目的は、貴方たちの発見、基偵察ですわ。団長は人使いが荒いので見つけるまで帰ってくるなと言われてしまいました。」
 こいつは助かる。今の会話で分かったことがいくつかある。まず彼女の言う団長とやらはかなりの策士だ。偵察が目的であれば見つからないことが最低条件だ。そこでわざと見つかり、偵察という嘘の目的を伝えることで、俺たちに対してより困惑を感じさせながら分の存在をアピールするように、こいつに伝えた可能性が高い。こちらにかなりの緊張感を与えてくる。それと同時に、その団長とやらがダンジョンの階下にいた存在に当たることも、奴のフレーズから導けた。
「ところで、あなた方は自己紹介をなさらないのですか?認識のある人物は、貴方とそこのフードの少女だけなのですが。それとも    このまま戦闘に入ってしまったり?」
 レマンダは顔を歪めながら楽しそうにジョブを始めた。
 配下達も武器を構え、その先をレマンダへ向ける。緊迫した空気が、空間をゆがめる錯覚を見せた。ピリピリとしたものが俺の頬を撫でる。
「その必要はない。、、、それではお別れだ。」
 ところで話を戻そう。冒頭で、目立つ城を創ってしまい敵に位置を把握されて困る。そう言ったが、なにも対策をしていないわけではない。
「へっ!?」
 レマンダの足元に魔方陣が現れる。大体、刺客が送られてくるなど予想の範疇だ。それにその大半はアンデッドだろう。有効な罠を城中に、またその外にも張り巡らせておいた。俺の声一つでそれは作動する。
「青の魔方陣 『ソウルエリミネル!』」
『ソウルエリミネル』。これは魔法創造で創った除霊魔法を魔方陣に乗せたものだ。自分より総合的に弱いアンデッド系統の魔物を浄化できる。すべてのアンデッドに対して有効にすることもできるのだが、相手が強い場合、力が足りない分俺の魂も浄化されるようだ。絶対にやらない。
 ところでレマンダは、悲鳴を上げながら消えていった。呆気ないものだ。
「えーと。坊ちゃん。もっとこう、、、なんじゃ。戦闘とかしてもよかったんじゃないかのぅ。」
「なんかちょっとかわいそうだった。」
 なぜか配下達から批評を受けた。
「いやでも、聞きたい情報は聞きだせたし、無駄な被害が出なかったからいいと思うが。」
「それでも、、、相手もあのまま戦うだけつもりだったんじゃないですかね。自信満々な仕草でしたし、、、。」
「全く悪いことはないですよ。ただ、、、。」
 よく見ると配下全員が微妙な顔をしていた。俺にはなぜなのかよく理解できなかった。
 襲撃から3日後、これといって何も起こらなかったが、各国へ宣伝且情報収集のために向かわせていたインテリス達が帰ってきた。そのうちの一人が、なんと国の王に対面し、手紙を預かってきたという。
 ~リューク・デ・エルフィ様
我が国は汝の国へ、挨拶と会合を考えておる。我が直接参ることはできない故、使者を送ることとなるのだがどうか無礼とは思わないでほしい。一月後に使者が到着するので、是非もてなしを施してもらいたい。  ネルディウス王国国王   ネルディウス・ロード・セレデス・クロフト~
 内容はいたって簡潔で、そして丁寧だ。しかしこういう国ほど、内情が掴みにくいため攻略が難しい。インテリスの言うには、うまく内政は調節されており、ここ一年間での経済が著しいようだ。しかしそれと同時期から戦争が多いらしく、度々隣国と争っているそうだ。にもかかわらず、国内に被害が渡ることは一度たりともない。
 怪しさ極まれりだ。なぜそんな豊かで軍事力の高い国が、建国間もない国との接触を図ろうとするだろうか。理由は簡単だ。用があるのは国自体ではなく、それの所持する資源だからだ。本国で言うと良質な土と生活環境だろう。それは別に怪しいことではなく自然なことである。が、なぜこの土地の有用性を知っている?商会長の話では、『魔物が強く、めったに人の近づかない異界の地』というのがこの土地の一般的な認識だ。農地として最良な土地だということは知られていないはずだ。それを知っているということは、、、本国の情報が漏れている。
 
 ここから考えられる可能性は二つだ。
1:国に在住する者が他国に向けて、本国の情報を流した。
2:他国の目耳が本国に存在する。
 前者はない。現在国内に住んでいるものはすべて俺の配下達だ。彼らは俺に絶対服従であり、国内の情報をほかに流さないようにと命令してある。
 あるとすれば、おそらく後者だろう。その場合は強力な魔法による監視をされていると推測できる。配下達には、よその人間を見つけ次第報告するようにと告げてある。報告はまだ来ていない。それに、ほとんどの魔力や気配は、俺やミリアが気づける。それを掻い潜るほど、精密で高度な魔法ということだ。
 そして何より、『一年前から経済成長が著しく、戦争も頻繁になった』というのがどうもくさいのだ。これは魔人出現の時期と重なるからだ。
 以上の考察より、俺はある推測を立てた。
『ネルディウス王国は不死の魔人の息がかかっている。』
 俺が今回、他国へ宣伝に行かせたには本国の人口を増やすためではない。危険視するべき国を探し当てるためだ。魔人とつながりのある国ならば確実に食いついてくるような、そんな内容の宣伝をした。レマンダが俺たちを簡単に見つけられたのは、確かに城が目立つということもあるのだが、俺が国を創り始めたという情報を得たからだ。ただ城が建ったからといって、それが俺によるものであるという確証はない。即ち、ネルディウス王国は魔人の中で、『不死の魔人』と関りがあることがわかる。
・・・さて、一月後か。それまでにいろいろと下準備をしなければな。
 俺は全員を講堂に呼び、このことを話した。
「以下の推測が正しければ、交渉によるが、俺たちは人間の国と剣を交えなければならないかもしれない。相手は魔人のバックアップを得た大国だ。今のままでは太刀打ちできない。かといって、交渉が滅裂してから準備に入っても間に合わない。そこで、今から準備を始めようと思う。これからその分担を指定する。己のできることに全力で取り組んでくれ!」
 全配下達から歓声が上がる。
・・・いや、まだ戦うと決まったわけではない。俺としても戦いは避けたいが、、、これはこれで良い傾向かもしれない。
 そしてそれぞれに役目を与え、直ちに行動を開始した。
    
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