破壊の創造士
011:商会との契約
俺たちは今、とある商会に向かっている。例の実験が無事成功したため、それを売り込みに行くのだ。
隣を歩いているミリアを気にかけながら、俺は考え事をしていた。
・・・今までのミリアの言動を考えると不自然な点が多すぎる。外で一切フードを脱がないこと。見た感じ、俺と出会った以前にほかの街に入ったことがないこと。俺ほどではないが、常識に疎いことがあげられる。図書館で例の紀行書を読んでいた時も見せた悲壮の瞳と、実力の高さも含めて、恐らくミリアは魔族であろうというのが俺の見解である。まあそれなら、彼女が空前絶後の美少女であることも納得がいく。ここが大事なのだ。
 いろいろと思慮してる間に目的地が見えてきた。
「大きいね」
「ああ、なんて言っても国内きっての大商会だからな、、、。」
俺はそこそこ緊張していたが、成功する確証はあった。
 
 扉の奥から人当たりのよさそうな男が出てきた。
「よくいらっしゃいました、リューク様。私は当商会の秘書を担当しております、ディグルというものです。会長は執務室におりますので案内致します。」
丁寧な対応に感謝しつつ、建物の中に入った。
「あなたがリュークさんですか。お若いのに、、、うわさは聞いているよ。すごい活躍だね。ああ、名前を言ってなかったね。私はこのプリンタ商会の会長、マルティックだ。今日は有益な時間になることを期待してるよ」
執務室に入ると、片眼鏡をかけた金髪の中年男性がこちらに向かってきて出迎えてくれた。
「どうも。私のことは既にご存知のようですが、リューク・デ・シルフィというものです。後ろにいますのは私のパーティメンバーのミリアです。彼女には同行を頼みましたがよろしかったでしょうか?」
「構わないよ。ギルド長のあなたたちの語りっぷりと言ったらすごいものだよ。彼はあなたたちを尊敬しているようだし、私がそんなあなた方を疑うは筋違いって奴だよ。」
「ありがとうございます。」
俺たちは、机をはさんでマルティックと向かい合うようにして座った。
 俺はあらかじめギルド長に、プリンタ商会とのコンタクトを頼んでおいた。名の知れない若造が直接話を持ちかけても、相手にされないだろうからだ。
「あなたとはもっと世間話なり何なりしていたいのだが、私も時間が限られていてね。早速本題に入らせてもらうが、何やらすごいものを持ってきたようだね。」
俺が首からかけた四角いデバイスに気づいたマルティックが、興味ありげにそう言った。
俺はそれを机の上に置いて、
「そうです。私がこの度、貴商会に紹介するのはこの『カメラ』というものです。」
「手に取ってみてもよいですかな?」
どうぞと許可を出すとそれをいろいろな角度から見つめ、難しそうな顔をした。、
「これの説明を頼む。見ただけではわからないな。」
「もちろんです。名称は『カメラ』といいます。簡潔に説明いたしますと、時を切り取り保存する、という機能がございます。」
彼はよく分からなそうな顔をしてので、彼の手前に置いてあったカメラを手に取り、彼に向けてシャッターを切った。。
「実際見ていたただく方が理解しやすいと思います。こちらをご覧ください。」
そう言って彼に写真を撮られた彼自身を見せると、とても驚いた顔をした。
「これはすごい。まるで絵のようだ。いや、それよりももっと精密で本物と見間違うほどだ。だが用途が分からない。いくらすごいものでも使い道がなければ市民の生活に浸透しないというものだ。それにこれは作るのにかなりコストがかかるのではないか?それでは売ることは難しいよ。その辺の説明を頼む。」
うむ、なかなか考えているな。流石は大商会の会長。
「はい。まず用途について説明致します。どの人間にも思い出というものが存在します。それは初恋の人との出会いだったり、子供が生まれた日だったり。どれも大切でかけがえのないものです。しかしそんな大切な存在も、歳を重ね時間が立つとともに人の記憶から去っていきます。いつの間にか大切だったあの時が、まるで何もなかったかのように消えてしまうことも少なくはありません。思い出というものは覚えているから価値のあるものであって、人の記憶から消えてしまえば無価値で虚無の存在にすらなるものです」
 
 マルティックは頷きながら聞いている。
「そこで登場するのがこの『カメラ』です。失いたくないあの瞬間。いつまでも心にとどめておきたいこのひと時。それを凍結させて保存してしまえば一生廃れることのない価値あるものとして残しておけるのです。例えば、初めて町を出て初めて外から見たランドスケープ。自分の愛おしい子供の誕生日。時間を、場所を、そのすべてを永遠の思い出として留めることができるのです。」
 マルティックは指で眉間をつまんで笑顔を漏らしていた。
「次にコストについてです。この機器は非常に安価に、それも短時間で作ることができます。交渉が成立するまで詳しい話はできませんが、私ならこれを3分で組み立てることができます。さらに部品は細々としていますが、、、。」
「もういい、話はおしまいだ。」
彼はそういうと席を立った。・・・まずったか!?
そう心配したのもつかの間、彼は身を乗り出して俺の両手をつかむと。
「ぜひ我が商会に『カメラ』を売ってくれ!」
どうやら上手くいったようだ。
「それともう一つ頼みがあるが聞いてくれるか?」
俺は頷くと彼は思い切ったように笑顔で、
「わが商会と商業契約を結んでくれ。契約金として5000万Wq支払おう。またこのカメラというのも君の指定する金額で構わない。」
俺ははっきり言って驚いた。こちらもこの商会と契約を結ぶつもりで来たのだが、まさかあちらから声がかかるなんて。それも自分が思っていた契約金より数倍も上回る金額だ。すべて金銭に換算すると約2億5千万コークだ。一生遊んで暮らせてしまう。
「わかりました。それではこちらのカメラは契約の記念として無料で差し上げます。それに残りの49機のカメラに関しては一台5万コーク。Wqにして1万Wqで売りましょう。」
「そんな安価でいいのか?」
「言ったでしょう。低コストだと。」
記念として3人で写真を撮った後、商会との契約書を書いて、互いに握手を交え俺はその場を後にした。
こうして俺の初めての交渉は大成功に終わったのであった。
隣を歩いているミリアを気にかけながら、俺は考え事をしていた。
・・・今までのミリアの言動を考えると不自然な点が多すぎる。外で一切フードを脱がないこと。見た感じ、俺と出会った以前にほかの街に入ったことがないこと。俺ほどではないが、常識に疎いことがあげられる。図書館で例の紀行書を読んでいた時も見せた悲壮の瞳と、実力の高さも含めて、恐らくミリアは魔族であろうというのが俺の見解である。まあそれなら、彼女が空前絶後の美少女であることも納得がいく。ここが大事なのだ。
 いろいろと思慮してる間に目的地が見えてきた。
「大きいね」
「ああ、なんて言っても国内きっての大商会だからな、、、。」
俺はそこそこ緊張していたが、成功する確証はあった。
 
 扉の奥から人当たりのよさそうな男が出てきた。
「よくいらっしゃいました、リューク様。私は当商会の秘書を担当しております、ディグルというものです。会長は執務室におりますので案内致します。」
丁寧な対応に感謝しつつ、建物の中に入った。
「あなたがリュークさんですか。お若いのに、、、うわさは聞いているよ。すごい活躍だね。ああ、名前を言ってなかったね。私はこのプリンタ商会の会長、マルティックだ。今日は有益な時間になることを期待してるよ」
執務室に入ると、片眼鏡をかけた金髪の中年男性がこちらに向かってきて出迎えてくれた。
「どうも。私のことは既にご存知のようですが、リューク・デ・シルフィというものです。後ろにいますのは私のパーティメンバーのミリアです。彼女には同行を頼みましたがよろしかったでしょうか?」
「構わないよ。ギルド長のあなたたちの語りっぷりと言ったらすごいものだよ。彼はあなたたちを尊敬しているようだし、私がそんなあなた方を疑うは筋違いって奴だよ。」
「ありがとうございます。」
俺たちは、机をはさんでマルティックと向かい合うようにして座った。
 俺はあらかじめギルド長に、プリンタ商会とのコンタクトを頼んでおいた。名の知れない若造が直接話を持ちかけても、相手にされないだろうからだ。
「あなたとはもっと世間話なり何なりしていたいのだが、私も時間が限られていてね。早速本題に入らせてもらうが、何やらすごいものを持ってきたようだね。」
俺が首からかけた四角いデバイスに気づいたマルティックが、興味ありげにそう言った。
俺はそれを机の上に置いて、
「そうです。私がこの度、貴商会に紹介するのはこの『カメラ』というものです。」
「手に取ってみてもよいですかな?」
どうぞと許可を出すとそれをいろいろな角度から見つめ、難しそうな顔をした。、
「これの説明を頼む。見ただけではわからないな。」
「もちろんです。名称は『カメラ』といいます。簡潔に説明いたしますと、時を切り取り保存する、という機能がございます。」
彼はよく分からなそうな顔をしてので、彼の手前に置いてあったカメラを手に取り、彼に向けてシャッターを切った。。
「実際見ていたただく方が理解しやすいと思います。こちらをご覧ください。」
そう言って彼に写真を撮られた彼自身を見せると、とても驚いた顔をした。
「これはすごい。まるで絵のようだ。いや、それよりももっと精密で本物と見間違うほどだ。だが用途が分からない。いくらすごいものでも使い道がなければ市民の生活に浸透しないというものだ。それにこれは作るのにかなりコストがかかるのではないか?それでは売ることは難しいよ。その辺の説明を頼む。」
うむ、なかなか考えているな。流石は大商会の会長。
「はい。まず用途について説明致します。どの人間にも思い出というものが存在します。それは初恋の人との出会いだったり、子供が生まれた日だったり。どれも大切でかけがえのないものです。しかしそんな大切な存在も、歳を重ね時間が立つとともに人の記憶から去っていきます。いつの間にか大切だったあの時が、まるで何もなかったかのように消えてしまうことも少なくはありません。思い出というものは覚えているから価値のあるものであって、人の記憶から消えてしまえば無価値で虚無の存在にすらなるものです」
 
 マルティックは頷きながら聞いている。
「そこで登場するのがこの『カメラ』です。失いたくないあの瞬間。いつまでも心にとどめておきたいこのひと時。それを凍結させて保存してしまえば一生廃れることのない価値あるものとして残しておけるのです。例えば、初めて町を出て初めて外から見たランドスケープ。自分の愛おしい子供の誕生日。時間を、場所を、そのすべてを永遠の思い出として留めることができるのです。」
 マルティックは指で眉間をつまんで笑顔を漏らしていた。
「次にコストについてです。この機器は非常に安価に、それも短時間で作ることができます。交渉が成立するまで詳しい話はできませんが、私ならこれを3分で組み立てることができます。さらに部品は細々としていますが、、、。」
「もういい、話はおしまいだ。」
彼はそういうと席を立った。・・・まずったか!?
そう心配したのもつかの間、彼は身を乗り出して俺の両手をつかむと。
「ぜひ我が商会に『カメラ』を売ってくれ!」
どうやら上手くいったようだ。
「それともう一つ頼みがあるが聞いてくれるか?」
俺は頷くと彼は思い切ったように笑顔で、
「わが商会と商業契約を結んでくれ。契約金として5000万Wq支払おう。またこのカメラというのも君の指定する金額で構わない。」
俺ははっきり言って驚いた。こちらもこの商会と契約を結ぶつもりで来たのだが、まさかあちらから声がかかるなんて。それも自分が思っていた契約金より数倍も上回る金額だ。すべて金銭に換算すると約2億5千万コークだ。一生遊んで暮らせてしまう。
「わかりました。それではこちらのカメラは契約の記念として無料で差し上げます。それに残りの49機のカメラに関しては一台5万コーク。Wqにして1万Wqで売りましょう。」
「そんな安価でいいのか?」
「言ったでしょう。低コストだと。」
記念として3人で写真を撮った後、商会との契約書を書いて、互いに握手を交え俺はその場を後にした。
こうして俺の初めての交渉は大成功に終わったのであった。
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