破壊の創造士

ノンレム睡眠

010:図書館

俺たちは例のポイズンスライムのリチエスタを始め、それを含めて5つ、Cランクのものを受けた。
報酬は合わせて12万Mq。そのうちの5万を金銭に代え、あとは残しておいた。高収入に繋がりかねる、ある実験のためだ。成功の確証が無いため今は伏せておこう。
その実験のことだけが目的ではないが、金銭的に余裕の出てきた俺たちは図書館で一日を過ごすことに決めた。もともと常識に疎いこともあり、この世界のそれについて学ぶことが目的だ。


「リューク、図書館では静かにしなきゃだめだからね?」


「流石にそのくらいはわかってる。」


 その辺はこっちも同じか、と思いながら図書館の扉を開いた。
入ってすぐにところに受け付けが置かれていた。どうやら全員受け付けを通過して蔵書庫に入るようだ。


「この度は初めてのご利用になりますか?」


「そうです。」


と答えると、


「お手数をおかけしましすが、本館入場には手続きをしていただく必要があります。その手始めとして、お一人様当たり保証料1万コークを支払っていただきます。」


仕方なく金貨を2枚支払うと、指紋認証のような機械?を取り出して、人さき指で触れるように促された。それが終わると手のひらサイズのカードを渡された。


「こちらが認証カードとなります。次回からは入場の際にこちらを受付にご提示ください。また、毎入場ごとに1000コークとなりますので、金銭のご持参をお忘れなく。」


俺の思った通りだ。図書館が国営にも関わらず入場料や保証料を取るところを見ると、この世界では本はかなり貴重なのだろう。
この町に来てからも黄色味のかかった薄汚れた紙しか見ていないことも考えるとパルプ技術もあまり進んでいないのだろう。
 館内に入ると俺は世界史と魔石技術についての書物を手に取り、机に座ってペラペラと眺めた。
となりではミリアが真剣に、俺とは違うものだが、世界史の書物を読んでいた。
『マドネス・マシネスの紀行証』
それが彼女の読んでいる本のタイトルだった。俺の視線に気づいたのか、慌ててその書物を手に取り元の場所へ戻してきたと思うと、またすぐ他の本を持ってきて読み始めた。見られちゃまずいものだったか?普通の世界紀行書だったと思うが、、、。


 俺はというと目当ての内容は見つけ、それをギルドで買った紙に写し取り畳んでポケットにしまう。
さて、あとは試行錯誤と俺の予備知識頼りだな、、、。
俺たちはそのまま様々な本に目を通し、日が暮れるころに宿場へと戻った。


部屋に戻ると気になっていたことを聞いてみた。


「ところでミリアは最初に何の本を読んでいたんだ?誰かの紀行書だったみたいだけど。」


「有名な旅の人が私の故郷を訪れた時に書いた本。少し気になったから読んだだけ。」


そうかと答えるが、彼女の時折見せる悲壮の瞳がより陰って見えたのを見逃さなかった。
今夜は風呂に入ったあとにすぐベッドに入ってしまった。ミリアは俺と同じベッドで寝ることに慣れてしまったようで、今も俺の裾を掴んで眠っている。可愛い。
しかし時折うなされるのを見ると不安になる。


 日が昇り、いつも通り宿で朝食を食べた後俺は一人で出かけた。
扉を開け、受付に認証カードを見せた後銀貨を一枚払うと、昨日ミリアが読んでいた書物を探した。
それを見つけ出すとすぐに目を通した。


『私はある国へ訪れた。にぎわう人だかり、触れ合う人々。種族の違いを気にもかけないユートピア。鳴り響く音楽が、熱狂が、
私の心を踊らせた。そう思ったのは五年前。今は人も、国もない。ああ愛しのバルニア共和国、いや、『バルニア魔帝国』。どうして汝は過ちを、勇者の粛清に迫られた。
私の心に残るのは、ただただ悲壮と憂いだけ。』


俺は唖然としてそれを見つめるのであった。

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