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最強ゲーマーは異世界で無双する ~魔法でつくる自由な国~

塩分不足

11.異世界生活

 日の光が窓枠から差し込み、瞼の裏に隠れた瞳を刺激する。身体はまだ眠っていて、意識も目覚める事を拒んでいる。そこへ扉を開け二人の人影が近寄ってきた。二人は覗き込むように眺めた後、未だ眠る彼に声をかける。

「マスター、もう朝だよ!」

「う~ぅ……」

「起きてくださいマスター。朝食の準備が出来ていますよ」

「……あと五分」

「またそんな事言って。早く起きてよマスター」

 一人が身体を揺さぶる。それでも起きようとしない彼に、二人は呆れた顔をしている。

「はぁ……仕方ないね」

「うん、これはもうアレしかないよ!」

 二人は顔を見合わせた後、再び彼の方を見る。それから声を揃えて、

「せーのっ!!」

「ぐえっ」

 一瞬音が消えた後、激しい落下物の衝撃が彼の腹部を襲った。さすがの彼も今の衝撃で眠ったままではいられず、ゆっくりと重い瞼を上げる。すると目の前には、自分の身体に乗っかる二人の少女が映った。

「おはよう! マスター」

「マスター、おはようございます」

「……おはよう」

 彼の名前はサバト。異世界からやって来た最強ゲーマーである。

 皆さんおはようございます。女の子に起こされるなんてとても良い日ですね。ゴブリン騒動の一件以降、俺はこの街で暮らしています。その時助けた奴隷達も一緒です。聞けば奴隷達は名前が無かったようで、それでは不便だと名前をつけてあげました。

「あのさ、起きるからそろそろどいてもらって良い?」

「えぇ~ せっかくだしもうちょっとこのまま」

「そんな事言ってないで、ほら」

 この元気な狐耳の少女が『ハツネ』、丁寧な話し方をするダークエルフの少女が『クロエ』です。

「着替えて行くから、二人は先に行っててくれ」

「「はい」」

 二人が部屋を退室する。サバトは服を着替え始める。

 さて、どうして俺が二人に「マスター」なんて呼ばれているのか。疑問に感じた人も多いでしょう。実はあの一件の直後、二人が俺に弟子入りを申し込んできたのです。どうして弟子になりたいのか聞くと、

「ボクも誰かを助けられるようになりたいんです!」

「私も、少しでも貴方のお役に立てるようになりたいからです」

 そう言っていました。俺は教える自信が無かったので、最初は断ろうと思いました。だけど二人があまりに熱心にお願いしてくるので最終的には了承する事にしたんです。それ以降、二人は俺の事を師匠マスターと呼ぶようになりました。

 着替えを済ませ部屋を出る。サバトが向かったのは屋敷内にある会食場である。扉を開けるとすでに全員が彼を待っていた。

「おはようございます。サバト様」

「うん、皆おはよう」

 元奴隷達、総勢三十二名が勢揃いしている。彼女達はこの屋敷の使用人として働いてもらっている。普通の食堂もあるのだが、この人数が納まるのはこの広い会食場くらいだ。これもサバトがどうせなら食事くらい皆で一緒に食べよう―――なんて事を言ったのが原因だった。長い長方形の机にたくさんの椅子が並べられ、机の上には人数分の朝食が準備されている。サバトの席は一番奥、その隣で挟むようにハツネとクロエが座っている。

「いただきます」

 お決まりのあいさつの後食べ始める。皆楽しそうに会話をはずませながら食べている。最初に見た彼女達の表情とは打って変わり、今は誰も悲しそうな顔はしていない。服も布を切り剥ぎしただけのボロ服ではなく、街で仕立ててもらった服に着替えている。もう誰にも彼女たちが奴隷だったなんてわからないだろう。

「マスター、今日はこの後どうされますか?」

「この後はいつも通り街の巡回に行くよ」

「ねぇマスター、ボクもついて行っていいかな?」

「ああ、もちろん」

「やったぁー!」

「私もご一緒いたします」

 朝食を終えた後、サバトは二人を連れて街へと繰り出した。

「おはようございます。サバト様」

「ああ、どうも」

 待ち行く人々が声をかける。サバトは現在バルマ公爵が放棄した領主の役目を代行している。巡回もその一環である。

「ハツネちゃんとクロエちゃんもおはよう」

「おばさん、おはよう!」

「おはようございます。今日もお変わりありませんか?」

「ええ、お陰さまで毎日元気よ」

 住人達の二人への対応も変化していた。俺は彼女達を見捨てて知らぬフリをする彼らを、あまりこころよく思っていなかった。だけど、

「本当にすまなかった。これまで私達は自分の事ばかり考えていて、君達の事を見てみぬフリをしてきた。それを今更許してもらえるとは思っていない……ただ、償いはさせてほしい! 私達に出来る事ならなんでもするつもりだ!」

 突然街中の住人が屋敷に押し寄せてきた時は、さすがの俺も何事かと驚いた。住人達の謝罪をうけた彼女達は、

「謝らないでください。もし逆の立場だったなら私達もきっと同じことをしていたと思います」

「うん、ボクもそう思う。だからこれからは皆で助け合っていこうよ!」

 意外とあっさり彼らを許した。俺はというと、住人達の言葉には誠意が感じられたし皆がそれでいいなら何も言う必要は無いと納得した。

 街を巡回していると、三人は正門付近を通りかかる。そこで仕事をしている門番に一声かけた。

「二人ともお疲れ様」

「サバト様、おはようございます」

 衛兵のほとんどはバルマ公爵と共に失踪した。今残っているのは、元々この街に居た衛兵達である。

「異常は無いか」

「はい」

「そうか。引き続き頼むよ」

「お任せください!」

 あの一件以来、この街は少しずつ変わろうとしていた。

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