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最強ゲーマーは異世界で無双する ~魔法でつくる自由な国~

塩分不足

8.領主に物申す

「こちらです」

 二人に案内されサバトはテレジノの街を目指す。進んでいるのは森の中、整備された道ではなく文字通り獣道だった。

「そうだ、二人とも名前は?」

 サバトは唐突に思った事を質問する。それにダークエルフの少女が答える。

「私達に名前はありません」

「え、そうなの?」

「はい、奴隷には不要ですので」

「そんな事……」

 二人とも……今までどんな扱いを受けてきたんだろう。きっと俺が思う以上に辛い目に……

「ったく、またやらなきゃいけない事が増えた」

「何かおっしゃいましたか?」

「いいや何も」

 サバトは先導して歩く二人の姿を眺めた。

「今更だけど、その格好のまま街に入るのは良くないよなぁ」

 二人とも裸に布きれ一枚を羽織っただけだ。街には住人もいるだろうし、人前でする格好としてはみすぼらし過ぎる。そう考えたサバトに、狐耳の少女がキョトンとした表情する。

「どうしてですか?」

「いや、だって二人とも布切れ一枚だぞ」

「大丈夫ですよ! 普段の服とそこまで変わらないですし、むしろ今の方が温かいくらいです!」

 狐耳の少女は笑顔でそう答えた。その発言からも垣間見える二人の扱いの悪さに、サバトは苛立ちを感じていた。そして街での用事を済ませたら、二人にちゃんとした服を用意してあげよう……そう決めたのであった。

 それから歩く事二十分、サバト達は遂にテレジノの街へ到着した。

「ここが……」

 森を人工的に切り倒して作った土地、高い壁が視界を遮る。入り口らしき門があって、そこには門番が二人立っている。そこへ三人で近づく。

「ん? 何だお前、こんな遅い時間に」

「お勤めご苦労様です。私は旅人のサバトといいます。中へ入れてもらえないでしょうか?」

「旅人……?」

 門番はサバトの全身をチェックしている。明らかに怪しまれている様子だった。その視界の中に二人の少女を見つけて驚いた反応を見せる。サバトはそれに気付き説明する。

「ああ、この二人は道中モンスターに襲われているところを助けたんです。聞けばこの街で暮らしていたという話だったので、案内してもらったんですよ」

「そっそうか……わかった。入っていいぞ」

「ありがとうございます」

 門がゆっくりと開かれる。そこを潜ると街並みが飛び込んできた。

 おぉーすごい。これがこの世界の街かぁ。壁みたいにギッシリ並んだ建物、石畳で造られた道、宿屋に道具屋の看板……アニメとかゲームで見た異世界の街並みだ。それが現実に広がってるなんて、ほんと夢見たいだ! それにしても……

 サバトは振り返って潜った門を見た。

 あの門番達、二人の顔を見た途端あっさり通したな。つまり、あの門番達は二人が今日何をさせられていたのか知っていた。それだけじゃない。さっきから何人も住人が通り過ぎているけど、皆チラチラこっちを見ては目を逸らしてる。街の住人もこの事は知ってるのか。

「嫌になるな」

 サバトは二人に聞えない程小さな声で呟いた。

「あのさ二人とも」

「はい!」

「何でしょうか?」

「領主ってどこにいるのかな」


 同じような建物が続く街並み。その中で一際大きく目立つ建物がある。そこにこの街の領主バルマ公爵が居る。

「旦那様!」

 使用人らしき男が部屋の前で声を上げる。中から入れという声が聞えて、その男は扉を開けた。

「何を慌てている」

 部屋に入ると正面に椅子と机があって、そこには凛々しい髭を生やした中年男性が座っていた。この男こそ領主バルマ公爵である。

「それが、旦那様と面会したいという者がおりまして」

「何? この時間にか?」

「はい」

「約束もしていない。帰らせろ」

「しかし旦那様、その者は―――」

 使用人が来訪者について話す。すると、

「何だと!? それは本当なのか?」

「はい、間違いありません」

「そうか……わかった。その者をここへ通せ」

「畏まりました」

 しばらくして、部屋の扉をノックする音が聞える。バルマ公爵の一声で再び扉は開かれる。扉の向こうから三人が入る。

「初めまして領主殿、面会を受けていただき感謝いたします」

「君が私に会いたいと言っている―――」

「はい。サバトと言います」

「うむ、私は領主のバルマだ。使用人から聞いたのだが、私の奴隷を助けてくれたというのは本当かな?」

「ええ」

 サバトの後ろに隠れていた二人が顔を出す。二人とも少し怯えている様子だ。バルマは二人を確認すると無言で頷いた。

「どうやら本当のようだね。奴隷の管理者として感謝する」

「いえ、助けられたのは偶然ですので」

「そうか。何か礼をさせてもらえないもらえないだろうか」

「礼ですか」

「ああ、奴隷を回収してもらった礼だ」

 二人の表情が暗くなる。

「何かほしいものは無いか?」

「ほしい物ですか。そうですねぇ~」

 サバトは考える素振りを見せる。そして、

「なら、この二人を解放してください」

「―――!」

「サバト様?」

 暗くなっていた二人の表情が明るさを取り戻す。対してバルマ公爵は理解できないという顔をしていた。

「二人というのはまさか、その奴隷の事か?」

「はい」

「そんな事で―――」

「足りませんか? だったら、貴方の元にいる奴隷達を全て解放してください」

「何だと」

 バルマ公爵が顔色を変え不快感を露にする。

「聞えませんでしたか? この子達だけじゃなくて、全員の奴隷達を解放しろと言ったんです」

「貴様ふざけているのか。奴隷を全て解放? そんな事をしてゴブリン達はどうするつもりだ」

「知りませんよそんな事。この屋敷を守ってる兵士でも対処させればいいでしょ?」

「馬鹿を言うな。ここの兵士は私の直轄だ。それにそんな事をするよりも奴隷を餌に撒いた方が早い。なによりずっと安上がりだ」

 安上がり……その言葉にサバトの怒りが沸点ギリギリまで上昇する。

「貴方はこの子達を、人の命を何だと思って―――」

「何を言っている? それは奴隷だぞ。奴隷が我々と同じ価値を持っているわけがないだろう。人の命? 奴隷は人ではないただの家畜だ」

 その瞬間サバトの怒りは沸点を越えた。彼は怒りに任せて大きく足を踏みつける。すると石で作られた地面は大きな音と共にひび割れた。それにバルマは戦慄する。

「ふざけるなよ。この子達は生きている。俺達と同じように生きているんだ。奴隷だろうが領主だろうが関係ない……人の命に優劣なんて無いんだよ。ましてやお前みたいなクズに、好き勝手されて良い物じゃねぇ!!」

「っ―――」

 緊張感が高まる。その場の誰一人声を発する事無く、一切身動きすらとらなかった。それほどの迫力、それほどの威圧感を放っていたのだ。しかし、

 カンカンカンカン!

 その静寂を裂くように、街中に鐘の音が鳴り響く。

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