猫耳無双 〜猫耳に転生した俺は異世界で無双する〜

ぽっち。

第28話 シエルvsサミュエル&スーランジュ





























「うぉりゃああああ!!」


「ッチ」


シエルは少し苛立っていた。
まず、自身が足止めしなければならない勇者がメイトの増援に向かってしまった。
これは正直言って仕方がないことかもしれない。
相手が悪いのだ。


バゴォォォォン!!


空気を揺さぶる轟音と爆発音が剣先からダンジョン内に響き渡る。
サミュエルの才能スキルによるものだ。
彼の才能スキルは『爆豪の極み』。
自身の体から、もしくは武器から爆発を放つことができる才能スキルだ。
シエルはあの爆発に巻き込まれたらひとたまりもないと判断し、距離を取りながら精霊魔法と弓矢を使って距離を保っていた。


「・・・・筋肉馬鹿。」


「はっはっは!それは俺にとっての褒め言葉だ!」


バゴォォォォン!!


また爆発音が空気を揺らす。
彼は自慢の筋肉で常人にはできない動きをしており、シエルの攻撃が一向に当たらない。


「・・・・『アイスランス』!!」


「――――っく!」


サミュエルの後方から3本の巨大な氷の槍が飛んでくる。
1つ1つが地面を抉り、衝撃波を放つ。
シエルはそれらを自前の身体能力で避けていく。


「(・・・・ん、ピンチ。)」


なんとか攻撃を回避し、距離を保つことができたが危機的状況には変わりない。
サミュエルが前衛役として自身との距離を詰める。
近寄せまいとシエルも迎撃するがそれをうまい具合で後衛役のスーランジュが魔法で阻害してくる。
特にスーランジュの才能スキルは『魔法巨大化』というもので普通の魔法を巨大化してしまうため魔法を無力化することが難しい。


「・・・・何故ですか、シエスさん!なぜ!こんな事に!」


薄っすらと涙を浮かべるスーランジュ。
彼女は受付としてクロらをかなり信頼しており、裏切られた気持ちになっていた。
クロらがした功績は実はかなりのものである。
彼らが毎月のように大量の魔石を売りにきていたため魔石の供給量が若干だが安定していた。
そのおかげか、魔石を使う魔法具や魔剣の価格帯が安定して冒険者の生存率が上がったのだ。


「・・・・私たちは貴女達の敵。それは今も昔も変わらない。それにシエスは偽名、私の名前はシエル。」


シエルは矢に魔力を込め、サミュエルに向けて放つ。
サミュエルはその威力を感じ取ったのか体を捻り無理に躱す。
空を切った矢は地面に刺さるとバゴンッ!と轟音を立てて地面を抉る。


「『魔撃』か・・・・。その年で・・・・本当に亜人にしとくのが勿体ない。」


「亜人と呼ばないで。」


シエルは三本の矢を一度に放つ。
一本一本が『魔撃』となっている矢だ。
サミュエルは両手剣を振りかざし、矢を切り落とそうとするが矢に別の魔力を感じる。


「なっ!?」


両手剣は矢を切り落とすことはできず、滑り宙を舞う。
三本の矢はそのままサミュエルに突き刺さる。


「――――っぐ!」


普通の人間なら弾け飛ぶところだが、サミュエルは身体強化の魔法を咄嗟に解除、身体硬化の魔法を全力でかけた。
それでもかなりの衝撃だったのか、数メートル吹き飛ぶ。
だが、なんとか持ち堪えて自身に刺さった矢を引き抜く。


「っっく!イッテェ・・・・!」


「・・・・アレで死なない、本当に人間?」


「へへっ!場数が違うんだよ、嬢ちゃん!」


「『ファイヤーボール』!!」


するとシエルの左方から巨大な炎の塊が迫ってくる。


「・・・・水の精よ!」


シエルが手をかざすと、水の壁が前に現れる。
火球が水壁に当たるとジュゥゥゥ!!と音を立てて水蒸気が辺りに広がる。


「・・・・なるほどな、水の精霊魔法士だったか。あの矢が滑るのもわかる。」


先程シエルが放った矢には水の精霊魔法を付与していた。
それにより、薄い水の魔力が覆うことにより矢にかかる摩擦係数を最大限に低くしたのだ。
水蒸気がシエルを包み、姿が見えなくなる。


「スーランジュ、火の魔法はあの子には相性が悪い。できれば・・・・雷魔法がいいんだが。」


「・・・・私には使えません。」


「そうだったな。」


人族の魔法にも属性があり、様々なものが使えるがそれは個人の魔法の適正による部分が大きい。
スーランジュの適正属性は火、水、氷の3種類になる。


「――――来るぞ!」


水蒸気の中から矢が数本飛んでくる。
相手の場所が見えないにも関わらず矢は的確に2人を射抜くコースを辿ってくる。
気配に敏感な獣人だからこそできる芸当。
2人は矢を避け、サミュエルは前進する。


「はぁぁぁぁっ!!」


地面に剣を振り下ろし、爆発を起こす。


ドガァァァァン!!


爆風が水蒸気を吹き飛ばし、シエルの姿を露わにさせる。
爆風で怯んでいるシエルに対してスーランジュは魔法を放とうとする。


「・・・・ごめんなさい!!『アイスランス』!!」


シエルめがけて、一本の巨大な氷の槍が迫る。


「――――っ!」


シエルは巨大な槍を紙一重で避け、瞬時に一本の矢を放つ。
サミュエルの巨体を躱し、矢は一直線にスーランジュに向かう。
トドメを刺したと判断したスーランジュは油断してしまい、一瞬判断が遅れた。
矢はスーランジュの肩に命中する。
『魔撃』だったのか、激しい威力にスーランジュは数メートル吹き飛び地面に横たわる。


「スーランジュ!!」


「・・・・ぐぅ!」


サミュエルはシエルから距離を取り、攻撃に警戒しながらスーランジュに駆け寄る。


「大丈夫か!?」


「き、傷は・・・・大したことないですが・・・・!?」


スーランジュの視界が歪む。
それと同時に激しい睡魔が彼女を襲う。


「・・・・睡眠作用の毒が塗ってある。熊でも一撃で寝る強さ。」


「・・・・くそ!」


解毒薬は持っているが神経毒などの生命に関わる毒にしか効かない。
サミュエルはそっと眠りについたスーランジュを抱きかかえ、安全な場所に運ぶ。
その間何もしないで見ているシエルにサミュエルは呟くように問う。


「なんで、攻撃しないんだ?」


「・・・・私は、オマエらみたいに外道じゃない。」


シエル自身、意識のない人族をナイフで殺したことはある。
無意識のうちに身体が動き、ナイフを突き立てていた。
しかし、その後に襲ったのはなんとも言えない虚無感。そして、後悔。
自分がやったことは人族のやっていることと変わらない。人族と同じなのは彼女にとって耐え難いこと。
それに、スーランジュにも情がある。
彼女は何もわからない自分たちに手取り足取り冒険者について教えてくれたのだ。


「・・・・世界が違ったら俺たちは争わずに済んだのかもな。」


そう言ってサミュエルは剣を構える。
実力差を考えれば不利なのはシエルの方だ。


「・・・・争いのない世界なんて、ない。」


シエルは魔力を矢に込めて構える。
静寂が2人の空間を包む。
先に動いたのはサミュエルだった。


「はぁぁぁぁっ!!」


身体強化で極限まで高めた脚力で地面を蹴り、シエルとの間合いを詰める。丸太のような腕で振りかざした両手剣を振り下ろし、才能スキルによる爆発を利用しさらに加速する。


「――――!」


剣速は音を置き去りにし、シエルを切り裂いた。


ドガァァァァン!!


剣から放たれた衝撃波が辺りに響き渡る。
やった、と確信をする刹那、サミュエルは剣に感じた違和感を感じる。


「――――っ!?」


シエルの姿を確認するとそれはシエルの姿をした水の塊だったのだ。


「『鏡の弓矢ミラージュアロー』。」


シエルは水の精霊魔法を使って自身の姿を鏡のように映し出していたのだ。
シエルの声が後方から聞こえ、振り向こうとするが彼の背中に激しい衝撃が激痛とともに襲う。


「がっ――――!?」


背中には矢が刺さっており、そこからじわじわと熱が伝わってくる。
それが全身を回ると身体の自由が効かなくなる。


「こ、これは・・・・!?」


「麻痺毒。すぐに効果は切れるから安心して。」


「・・・・殺さ、ねぇのか?」


シエルは何も言わずに場を去ろうとしたが足を止める。


「呆れた。まだ話せる?」


シエルは彼の身体から通常の3倍の濃度の毒を使っていた。
それは象でも一瞬で動けなくするほどの強さだが、彼はそれを受けて喋っているのだ。
シエルは俯き、呟くように言う。


「・・・・私が殺すのは、両親の仇のみ。それ以外の人族は、クソでない限り殺さない。あなた達と同じには、なりたくないから。」


「は、ははっ・・・・そうか。」


そしてシエルは黒の加勢に向かうため、歩き始める。


「っく・・・・!」


シエルはその場に座り込む。
あの2人を相手にして無傷というわけではない。
魔力の方も殆ど使い切っており、かなりフラついていた。


「・・・・クロ。」


彼は今、仇を前にして戦っている。
邪魔をするのは無粋かもしれないがせめて、見守ることくらいはしなければならない。
彼の心が死んでしまわないように。

















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