猫耳無双 〜猫耳に転生した俺は異世界で無双する〜

ぽっち。

第25話 VSケルベロス























クロは腰につけていた『天雷刀』の柄を握る。
ティナはすでに抜刀しており、シエルも弓を構えていつでも射貫けるようにしている。
3人の視線の先には数メートルはくだらない巨体を持つ大きな身体に3つの犬の頭。
ギリシャ神話で出てくる冥界の番犬とも呼ばれる犬の怪物。
ケルベロスはクロらの気配を察知したのか、こちらの様子を見ながら威嚇のような唸り声を放っている。


「――――ッチ、犬は苦手なんだよ。」


クロは犬が苦手だ。
嫌いというわけではない。むしろ、獣耳を持つ彼らは崇拝すべき存在の一種なんだが、今まで1度も犬に好かれたことはない。
そのせいか、どうしても犬とは仲良くなれないのだ。


「来る。」


シエルがそう呟くとケロベロスは地面を凹ますほどの脚力でこちらへ向かってくる。
かなりのスピードだが、クロら猫族特有の反射神経で避ける。
鋭い前足の爪が地面を抉る。


「ガァァァァァッ!」


「ケット!」


『分かってるよ。』


相手の力量からこのままでは倒せないと判断したクロはケットを呼び寄せ、頭の上に乗せる。


「『完全雷化カンゼンイカズチカ』!!」


轟音が鳴り響き、クロを紫がかった白い紫電が包み込む。
クロの髪の色も黒色から変化してその色になっていく。
紫電が服のようなものを形成し、周囲に若干の放電を繰り返す。
クロとケット『精霊昇華せいれいしょうか』だ。


「グルァァァ!!」


クロの精霊昇華が1番危険と判断したケルベロスはクロに真っ先に襲いかかる。
しかし、その行動は精霊昇華したクロにとって遅すぎる。


「――――おせぇ!!」


ケロベロスの爪は空を切る。
クロは瞬時にケルベロスの頭上に移動すると天雷刀を振りかぶり、1つの頭を切り落とす。


「グガァァッ!?」


攻撃されながらも残る頭で反撃をしてきたのでクロは瞬時に避け、地面に着地すると同時にティナたちの近くまで距離を取る。
すると、ケルベロスの動きが数秒間だけ止まる。


「ガァッ!」


吠えた瞬間、クロが切り落とした首から新しい首が瞬時に生えてくる。


「・・・・キモい。」


シエルの言うことも最もだ。
謎の体液を散らばしながら首を生やすその姿は若干、気分を悪くするものだ。


「再生能力とはね・・・・。ティナ、行けるか?」


「もちろんだよ!」


ティナは魔剣フラムを構える。


「行くぞ!・・・・『電光雷撃デンコウライゲキ』!!」


クロは目にも留まらぬスピードでケルベロスの胴体を切り裂く。
この時のクロの速さは実に雷とほぼ同じスピード、秒速150km。
生物が感知できるスピードではない。
追い討ちをかけるようにティナが魔剣フラムを振り下ろす。


「フラム!力を!」


ティナがそう叫ぶと答えるように魔剣フラムから膨大な熱量を感じさせる炎が噴き出る。
爆炎がケルベロスを包む。


「・・・・ん!」


シエルがその瞬間を見逃さず、自身が持てる最大威力の『魔撃』を乗せた矢を放つ。
空気を裂き、ケルベロスの胴体に1メートルほどの風穴を開ける。


「・・・・やったかな?」


「それは、フラグ。」


シエルが呟くと同時にケルベロスの身体は先ほどと同様に謎の液体を撒き散らしながらクロらが与えた傷を次々と治していく。


「・・・・面倒な相手だ。」


『無敵な存在なんて居ないさ。弱点を探そう。』


いつもより真剣な声でケットが言う。
ケットは今は『精霊昇華』しているため、クロと同化しているので姿は見えないが声は聞こえる。


「こういうやつの攻略法は相場が決まってるんだよ。」


「・・・・それは?」


「まずは色々試してみよう。まず・・・・首を一斉に全部落とすぞ。」


「わかった!」


クロらは瞬時に陣形を組み直す。
3人でケルベロスを囲むようになって構える。
同時となるとかなり厳しいかも知れないがやるしか方法はない。


「行くぞ!!」


クロは先ほどと変わらぬスピードで相手の動きを止めるためにケルベロスの足を斬り裂こうとする。
しかし、その刹那。


「――――っ!?」


ケルベロスがクロの動きに反応して、1匹の頭の犬歯が向かってくる。
クロは咄嗟に回避をするが、服を掠める。
現在のクロの服は紫電に包まれているため、触れた瞬間ケルベロスを麻痺させた。


「はぁぁぁぁっ!!」


ティナがその隙を見て魔剣フラムを振り下ろす。
鉄が融解するほどの熱量を感じるがケルベロスは素早くバックステップをし、ティナから距離を取る。
剣戟は空振りしてしまうが、シエルが追撃を仕掛ける。


「・・・・ッシ!」


鋭く息を吐くと同時に矢が空気を裂き、ケルベロスの真ん中の頭に当たると思った瞬間。


「ガウッ!!!」


矢を口で掴み、噛み砕いた。


「・・・・アイツ、強い。」


シエルが呟く。
クロは自身の『電光雷撃』に反応されたことに違和感を感じる。


『クロ、アイツはどうやら魔力探知に長けてるようだね。』


姿は見えないがケットが話しかけてきた。


「わかってる。あれは・・・・生物が反応できるスピードじゃあねぇ。」


ケルベロスが反応できたのはクロの放つ魔力を察知し、先に行動を予測したのだ。
しかし、2度目で判断してさらに対処できること自体異常だ。
さらにあの再生能力もある。


「かなり厄介だな。・・・・ケットはアイツの再生能力、どう思う?」


『そうだね・・・・、あの再生能力には魔素が関係してそうだ。』


「つまり?」


『このダンジョンがあのわんちゃんに力を貸してるってことだよ。』


クロは額に汗を浮かべる。


「どうやったら勝てるんだよ・・・・。」


ケットの推論はつまり、ダンジョンの力が尽きるまであのケルベロスは死ぬことがない。
ダンジョンの力は地脈そのもの。
地脈の力は世界の魔素の根源であり、力の塊だ。


「とにかく、今はやるしかない。」


こういう時でも冷静なシエルは矢をケルベロスに放つが今度は避けられてしまう。
シエルが牽制をしているとティナがニヤッと笑う。


「・・・・再生ができないくらい、消し飛ばせば良いんだよ。」


クロらは全身に寒気を感じ、顔を蒼ざめる。


「ティナ、怖い。」


『ちょっとボクも怖いかな・・・・。』


「あれぇ!?なんでそんなリアクション!?」


最近ティナはこのような戦闘狂のようなセリフをたまに言う。
クロは「自分が悪影響を与えたんじゃ・・・・?」と罪悪感に悩まされている。


「とにかく、それはやってみる価値はあるだろう。」


クロは地面を蹴り、宙に舞う。
魔力を放出し、ケルベロスへと標準を合わせる。


「『雷槍招来ライソウショウライ!!』


空気を切り裂き、巨大な雷の槍がケルベロスに突き刺さる。


「ガァァァァァッ!?」


「・・・・水の精よ。」


シエルは矢に魔力を込めて、精霊魔法を行使する。
シエルの精霊魔法は水の精霊によるもので、圧力をかけた水を矢に込めて放っている。
水は鉄をも凌ぐ硬度を持ち、ケルベロスの体の一部を消しとばす。


「・・・・『業火滅却ごうかめっきゃく』!!」


ティナは魔剣フラムから激しい熱を放ちながら、ケルベロスを切り裂く。
同時に爆炎が吹き荒れ、辺りを蒸発させていく。
あまりの威力と熱量にクロとシエルは距離を取る。
土煙と水蒸気が辺りを覆う。


「・・・・ティナはあれで無事なんだからおかしい。」


『しょうがないさ、あの剣はそういうものなんだよ。』


あれほどの威力を放ってもティナは無傷なのだ。
曰く、『フラムが守ってくれてるんだよぉ〜』だとか。
すると、土煙が流されて周りが見え始める。
地面が真っ赤に融解している。
ティナは満足気な表情でこちらに向かってくる。


「ふぅ、流石に疲れたよ。」


「ケルベロスは?」


ティナはブイっとピースサインをして、ニカッと笑う。


「消しとばしたよ!」


「(笑顔でなんて怖いこと言う子なんだ・・・・。)」


しかし、確認してみるとそこにはケルベロスはおらず、カケラすら全て蒸発してしまったのだろうか。何も残ってはいなかった。あるのは融解して激しい熱を放つ地面だけ。
すると、少し薄暗かった周りが光り始める。


「・・・・なに?」


「ボスを倒したからだろ。」


まさによくあるRPGのようなシステムにクロは若干呆れながら、部屋の奥を見る。


「・・・・なんだあれ?」


そこには謎の箱。
見る限り、宝箱らしきものが置いてある。
クロは『精霊昇華』を解き、その箱へと向かう。


「これは?」


シエルはジロジロと箱を見る。
クロは怪しさが滲み出る箱を見つめ、色々と確認する。


「開けてみる??」


「待て、一応罠かもしれないから・・・・このロープを使ってあげよう。」


クロは次元収納のエンチャントが施されたカバンからロープを取り出すと器用に少し離れた距離から宝箱を開ける。
ガチャっと音がなり、開く。
危険がないことを確認し、中になにが入っていたかを見る。


『なんだい、これ?』


「紙?・・・・と、魔石かな?」


クロは紙を読む。


「えーっと・・・・『試練を乗り越えた人族よ。お主らには更なる試練を乗り越えてもらう。次のダンジョンに向かいたまえ・・・・。最後には私、ラッシュと会する権利を授けよう。』ってなんだよ偉そうだな。」


『・・・・。』


「(ラッシュ?あのこの世界の唯一の宗教の神様・・・・だったか?)」


クロは色々と考えようと思ったが、猫に関係のないことに彼は頭を使うことができない。
ということで、いつものように考えるのをやめる。
難しいことはケットに聞けば良いのだから。
しかし、当の本人のケットは難しい顔をしていた。


『(・・・・ラッシュのヤツ、本当に何を考えているんだ?)』


クロはケットが本気で悩んでいることはつゆ知らず、その紙を宝箱の中に戻し、魔石だけカバンに入れる。


「・・・・クロ、相変わらず悪どい。」


「だってよ、ここには人族が来て当たり前みたいなことが書いてあったからな・・・・腹立つだろ?」


「確かにそうだけど・・・・。」


「とにかく、今日は疲れた。一度街に帰って休もう。」


「賛成!私も疲れたよー。」


そういって彼らは踵を返し、ダンジョンの外へと向かった。

























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