猫耳無双 〜猫耳に転生した俺は異世界で無双する〜

ぽっち。

第24話 勇者召喚、そして迷宮の奥へ























彼の名前は神谷太一かみたにたいち
ごく普通の高校生である。
彼はいつものように自身が通う高校の教室で楽しく友人との会話を楽しんでいた。


「でさー、かおりっちがそこでコケてさ〜!」


彼女は滝沢千鶴たきざわちづる
長い髪の毛を後ろで括ってポニーテールにしており、適度な運動をしているのか、引き締まったプロポーションは制服越しからでもわかる。
スポーツ少女と言われそうな陽気な性格の彼女は太一の家の隣に住む幼馴染だ。
千鶴がそう笑いながら隣に座っている1人の女性を見る。


「ちょ、千鶴さん!それは言わないでください!?」


そう言って千鶴の口を手で塞ぐのは太一の中学生時代からの親友の恋人である、相川香織あいかわかおりだ。
彼女は高校生とは思えないくらいのグラビアモデルのようなスタイルをしており、短く切りそろえた髪の毛は清純さをさらに醸し出している。まさに大和撫子という言葉が似合う。


「あははっ!相変わらずのドジっ子みたいだな、香織は!」


そうお腹を抱えて笑う太一の隣にいる彼は一条正義いちじょうまさよし
太一の中学時代からの親友であり、香織の恋人だ。
幼少の頃から空手をしており、鍛え抜かれたその体は男子なら一度は憧れる筋肉に包まれている。
名は体を表すのか、彼は名前の通りの正義感で生徒同士のいざこざを率先して解決している。
一頻り会話を楽しんだ太一は教室に置いてある時計を見る。
時刻は下校時刻を示している。


「あ、そろそろ時間だ。」


「そうだな!今日の夜に皆んなでログインしような!」


彼らはあるオンラインゲームでパーティを組んでいる。
彼らは毎日のようにこうして色んな話をし、家に帰る。
その後に皆んなでオンラインゲームをする。
そんな些細な幸せが太一の幸せだった。


「どうしたの、太一?」


幸せな気分に浸っていたので表情に出ていたのか、千鶴が気がつき話しかけてくる。


「いや、こんな毎日が続けばいいなって思ってね。」


「がはは!いつまでも続くぜ!俺たち親友だろ!」


そんな真っ直ぐな正義のセリフに太一は笑みをこぼす。
刹那、彼らの動きが止まる。


「――――っ!?う、動けない!?」


「え、なにこれ!?」


彼らの地面に魔法陣の様なものが広がる。
名前を呼ぼうと声を出そうとするが声が出なくなる。


「(一体なにが――――!?)」


そして地面から眩い光が放たれると彼らはその場から姿を消した。






彼らの幸せはあの世界の狂気に壊されていくのだった。
























「勇者、か・・・・。」


『やっぱり気になるかい?』


『始まりのダンジョン』の第15層。
クロらは未攻略の25層に向け、進んでいたところ。
クロはスーランジュから聞いた情報により、少し上の空だった。
向かってくる魔物はきっちり倒してるのだが。


「・・・・勇者は獣人の敵。でも、クロは敵対心以外の感情がある様に見える。」


シエルが痛いところをついてくる。
クロはまだ2人に転生したとは伝えていない。
深い意味はないのだが、説明すると長くなるしティナに至っては説明しても理解してくれなさそうというのもある。


「まぁ・・・・同情かな。クソ人族に無理矢理召喚されただろうし。」


「・・・・?どういうこと?」


シエルたちも含めて、この世界の獣人廃絶の価値観は長年続いてきたものだ。
あまりよろしくはないのだが、彼女らからしても獣人が差別されるのは当たり前ということ。


「異世界って言うくらいだぜ、俺たちの世界の価値観とズレてて当たり前だ。・・・・もしかしたら、争いのない世界から来た平和主義者だったら、辛い現実だと思ってな。」


すると、ティナが魔物を切り倒して呟く様に言う。


「争いの・・・・ない世界か。そんな世界、あるのかな?」


少し悲しそうな表情でダンジョンの天井を見上げる。
ここにいる3人はこの世界の争いに敗れ、大切な家族を失っている。
クロの居た日本から勇者が召喚されたとは限らないが、どちらにしろ思うところはある。


「・・・・確かにな。争いはどの世界にでもあることだ。」


争いはどこにでもある。
猫宮和人が居た世界にも争いはあった。
世界のどこかで必ず誰かが戦争などで死んでいた。
日本はそういったことからは離れていたからクロ自身には実感はあまりない。
すると、ティナがクロに走り寄ってきて手を握る。


「クロが・・・・クロが作ってよ!誰も争わなくていい世界を!だって、だってクロにはその力がある!私には分かるよ!」


「ティナ・・・・。」


クロ自身、まだ自分の才能スキルが何かは分かってはいない。
だが、ケットはもちろんのことティナやシエルにもそれがどの様なものか言葉では言えないが分かっているらしい。


「俺に、そんな大それたことはできない。今はとにかく前に進むしかできないんだよ。」


「ティナ、クロが困ってる。」


「ご、ごめん・・・・。でも、クロは私たちの・・・・ご主人様だよ!」


「――――っな!?」


少し変な意味合いに聞こえたクロは顔を真っ赤にする。


「・・・・ティナ、いやらしい。」


「え!?なんでぇ!?」


無表情だが、自分もそう思ってるぞと言わんばかりの視線をクロに向ける。
そんな視線を感じ取ったクロはなんだか可笑しくなり、ふと笑みをこぼす。


「無理だとは・・・・思うけど、俺だって猫族がこのままなのは嫌なんだよ。・・・・足掻いてみるさ。」


そう言いながらクロは2人の頭を撫でる。
2人とも嬉しそうに笑う。


『(相変わらずの猫たらしだねぇ。・・・・でも、また勇者召喚か。一度、フレイヤのところに行ってみるか。)』


ケットはこのことを知っているか分からない自信を生み出した猫耳女神の元に近々訪問しようと思うのであった。




















「ここがウルムの街、か。」


「へぇー!すっごいね、太一!」


馬車に揺られながら、太一の幼馴染の千鶴は身を乗り出しながら街の城壁を見る。


「あ、危ないですよ。千鶴さん。」


オロオロとした様子で身を乗り出す千鶴に静止を促すのはこのパーティで1番のしっかり者である香織だ。
彼らが異世界であるこの世界に召喚されて半年の月日が流れている。


「んにしても、スッゲェ所だな。王都とはまた違う活気がある。」


太一の親友でもある正義は落ち着いた様子で車窓から街を見ている。
彼らは半年前、突然この世界に召喚された。
最初はかなりの動揺と戸惑いが隠しきれなかったが、元の世界に戻るためには亜人と呼ばれている邪悪な種族を根絶やしにしなければならないという。
帰るために彼らは剣を握った。
幼少の頃から剣道でそれなりの成績を培ってきた太一はこの半年で充分戦えるまで成長した。
親友である正義は元々空手の才能に秀でていたため、かなりの強さに成長した。
女子2人は魔法の才能が開花したようで毎日楽しく魔法の練習をしている。


「とにかく、その亜人とやらをさっさと倒しちゃおう。」


「あぁ!そうだな!」


そして彼らは街に入り、修行の一環で訪れる予定のダンジョンの情報について聴くため冒険者組合にやってきた。
くるや否やかなりの歓声で出迎えられ、騒ぎが広がらぬうちに応接間に案内される。


「すごかったですね・・・・。あんなに男性が雄叫びを上げられると萎縮してしまいます・・・・。」


むさ苦しい冒険者たちに気圧された香織は少し怯んでしまった様だ。


「大丈夫だぜ、香織。あんな奴らは俺にかかればイチコロだ!」


「・・・・ありがとう、マサくん。」


少し臭いセリフにも好きな人から言われれば嬉しいもの。
香織は顔を赤面させ、俯く。


「っち!甘ったるいもの見せるんじゃないわよ、まさっちもかおりっちも!」


この現状を作り出したのは元を辿れば、太一と千鶴の2人なのだが、やはり公然でイチャイチャされると勘に触るものがある。


「まぁまぁちーちゃん。落ち着きなよ?」


「落ち着いてられっかー!・・・・私だって太一と・・・・」


「ん?」


「な、なんでもないわよ!!」


千鶴は長年、太一に惹かれている。
しかし、その想いは伝わることはなくもう片想いになってから10年くらい経つのだ。
しかし、どこぞのラブコメ主人公のような太一はいつまで経っても千鶴の気持ちに気がつかない。
実は一度告白したことがある。


『わ、私!太一のことが好き!』


『ん?僕も好きだよ?』


完全に友人として好きと言ってるに違いない。
彼は世にも珍しいテンプレのラブコメ主人公なのだ。
そんな難攻不落の彼を見て少し頬を膨らませていると、応接間へとたどり着く。
案内をしてくれた女性が部屋をノックすると中から返事が返ってくる。


「では、どうぞ。」


「はい。」


太一を先頭に4人は部屋へと入っていく。
中には美しく、整った顔とプロポーションを持つ女性と強者だと言わんばかりの雰囲気と気配を放つ男が居た。


「いらっしゃい、勇者諸君。私がここの組合長のサミュエル・ドルッセンだ。こちらの女性がこの組合で1番の受付嬢、スーランジュ・ペトレだ。よろしく頼む。」


「よろしくお願いします。気軽にスーと呼んでください。」


「は、はい。僕はタイチ・カミタニと言います。」


男性の気配もそうだが、女性から放たれる強者特有の空気に若干太一は気圧されていた。


「早速だが、話を始めようか。」


























『始まりのダンジョン』、第24層最深部。
クロらは地下に降りる階段の前で立ち竦んでいた。


「これは・・・・。」


「ん。強い。」


その階段の下から漂ってくるのは尋常じゃないくらいの魔力。
確実にワイバーンを圧倒するような実力を持った魔物がいる。


「だけど、ここまで来たんだ。一気に最下層まで行ってこのダンジョンの全貌を明らかにするぞ。」


『・・・・だけど気をつけなよ。これは、なかなかのものだ。』


「大丈夫だよ、ケット。私たちは強くなった。」


ティナがそう呟く。
決してこれは傲慢な思い違いではない。
彼らは確実に強くなった。今ならワイバーンほどの実力の魔物なら一人で倒せる自信がある。


「よし、いくぞ!」


クロのかけ声とともに彼らは階段を下っていく。
5分ほどだろうか、道なりに下っていくとそこにはここのダンジョンの入り口とよく似た扉がある。
クロは迷うことなく、その扉を開く。


「広い空間だな。」


「・・・・!クロ、何かいる。」


薄暗く、視界はハッキリとしていないが彼ら猫族は夜目だ。
充分に見えている。
目を凝らして部屋の奥を見る。
そこには1匹の魔物が座っている。
こちらの気配に気がついたのか、ゆっくりと立ち上がり喉の奥から唸り声を放ち始める。


「クロ、頭が3つある!」


ティナが驚いた表情で言う。
クロもその存在を認知はしていたが見たことはなかった。
しかし、見ただけでわかる。その魔物の名前が。


「・・・・ケルベロス、か。」


そこに居たのは地獄の門番、3つの頭を持つ異世界定番の魔物・・・・ケルベロスであった。





















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