猫耳無双 〜猫耳に転生した俺は異世界で無双する〜

ぽっち。

第20話 魔剣と刀























エルラルド王国の武器庫と呼ばれる都市がある。
鍛治の街、ウルム。
この街の特徴として挙げられるのはもちろん、武具だ。
エルラルド王国の剣から盾、防具の鎧から全ての武具がここで生産されていると言っても過言ではない。
しかし、ウルムから徒歩で半日ほどの洞窟で謎の現象が発生する。
ダンジョンと呼ばれる、魔物を大量発生させる洞窟ができたのだ。
王国は調査を実施する。
これという原因が分からず、地脈がこのような現象を起こしていると思われた。
不安に駆られている市民に説明しなければならない王国は考えられる推論を発表。
冒険者組合と協力し、ダンジョンから魔物が溢れ出ないように間引くように依頼を発行した。
これにより、ウルムの街は好景気に沸いていた。
冒険者が来ては自分らの武具を購入。
ダンジョンに行き、傷ついた武具の修理。
オーダーメイドの依頼。
とにかく、飛ぶように自分たちの商品が売れていったのだ。
その為、ウルムは今現在のエルラルド王国で最も活気がある場所と言ってもいいだろう。
そんな街を知らずと訪れた、クロら一行。
街で情報を集めていると、長年この地にいる1人の冒険者から有益な情報を得る。


「この辺みたいだねー。」


バンダナを巻いたクロの幼馴染、ティナはクロと共にキョロキョロしながら街のメインストリートから少し離れた路地を歩いていた。


「それにしても、こんな路地に入っても武器屋ばっかだな。」


クロがそう言いながら歩いている。
指摘通り、メインストリートならともかくこのような人気のない路地にも武器屋が建ち並んでいた。


「(・・・・こんなに武器屋ばっかで街の機能は成り立つのか?)」


と言われれば確かにそうだ。
武器屋ばかりで食事するところはおろか食材を買うための市場すらまだ見かけていない。
至る所で永遠に鍛造の音が鳴り響いている。
クロら猫族の聴力は人族の3倍程なので正直、辛いところがある。
郷に入っては郷に従え。
文句を言うのも若干馬鹿らしいのでバンダナをしっかり巻いて我慢している。
散策しているとお目当ての店を発見し、店の前で立ち止まった。


「ここだな。」


あまり目立ちたくないのか、小さな看板に『ガッツ武具店』と書かれている。
情報によれば、かなり気難しい店主らしいが作る武器は超一流とのこと。
自身の名前からつけられた店名だとか。
クロは早速店の中に入る。
カランコロン、と扉につけられた鈴が音を鳴らす。
すると店の奥から40代後半ほどの頬に大きな傷をつけた大柄の男性が出てくる。
腕は鍛え抜かれ、着ている服の袖がはち切れそうだ。


「いらっしゃ――――・・・・ガキの遊び場じゃねぇぞ?ここは。」


クロの姿を見た男は眉間に皺をよせ、苛立ちを含んだ声を放つ。
どうやら彼がこの店の店主、ガッツだろう。


「武器を買いに来たんだ。・・・・子供でも客だ。」


クロも負けずと睨みを利かせて店に入って反論する。


「・・・・っふ。面白え――――!?」


クロの反論に対してニヤッと笑みを浮かべたが、後ろのティナの姿を確認すると一瞬で驚きの表情を変えた。
そのままクロらに近づき、ティナをじっくり見るガッツ。


「・・・・??」


厳つい顔の男に視線を浴びさせられ、ティナはキョトンとする。
クロはそんな様子の彼女が可愛く、無性に撫で回したくなるが今は空気を読んで我慢した。


「・・・・なるほどな。好きなの選びな。」


ガッツは納得したような表情を浮かべると踵を返し、カウンターに座る。


「・・・・なんだ?」


「クロクロ!見て!」


ガッツの行動を何も気にしていないティナは近くに飾ってあった剣を眺めて目をキラキラとさせている。
クロも同様に近くの剣を手に取る。


「スゲえな。王国兵士の短剣がおもちゃに見える。」


クロの今までの武器は村から逃げ出した時に追ってきた王国兵士の短剣を拝借して使っていた。
流石は国を守る兵士が使う剣といったところか、多少の無茶をしても壊れることはなかったが・・・・今、この店に並ぶ剣は全てがその剣を凌駕していると手に取っただけでわかった。


「ふぇ〜・・・・これならワイバーンの首も切り落とせそう。」


物騒なことを言っているが、確かに落とせそうなレベルの切れ味を感じる。
すると、ふと異様な気配を含んだ剣が飾ってあるのを見つける。


「クロ、あれ凄いよ。」


ティナも感じ取ったのかその剣を眺めている。


「それは魔剣だ。」


店のカウンター越しにこちらを眺めていたガッツが突然話す。


「これが魔剣?・・・・魔剣は初めて見るが、こんな気配を放つ物なのか?」


「ソイツは特別製だ。・・・・俺の打ってきた剣の中で最も質が良い。触ってみるか?」


「良いのか?」


「あぁ、ソイツは売り物じゃねぇけどな。」


彼によるとこの魔剣は自分の力量を見てもらうための見本のようなものらしい。
ガッツは剣を飾り棚から取り出して、クロに渡す。


「――――っ!凄いな。」


クロは触った瞬間に魔剣の含む激しい魔力量を感じ取る。
それと同時に何か同じ様なものを触ったことがあると思ってしまう。


「(なんだ?魔剣なんて触ったことも見たこともないのに・・・・この、感覚は?)」


いつも感じている様な感覚。
だが、なぜか思い出せない。


「おじちゃん!私も触ってみて良い?」


「あぁ。嬢ちゃんなら尚更だ。」


ガッツの言い方に少し違和感を感じたクロだが、とりあえずティナに剣を渡す。


「ふぇ〜・・・・凄いや。こんな剣が作れるんだね。」


ティナは嬉しそうに剣を眺めている。
すると店のガッツは目を見開き、無愛想だった顔に笑みを浮かべた。


「――――!!ふ、ふはははっ!コイツは驚きだ。」


突然笑い出したガッツにクロの方が驚いた。


「どうしたんだよ?」


彼はニヤッと笑みを浮かべながら言う。


「剣ってのは主人あるじを選ぶんだよ。・・・・そいつは打ったのは良いが・・・・誰にも扱えんくてな。」


「それって・・・・?」


「売り物じゃあないって言ったろ?・・・・だが、過去に何回かソイツを売ったことがある。」


曰く、売って1週間もしないうちにここに戻ってきたらしい。
購入したとある冒険者は文句を言っていたとか。


「魔剣のくせに何も特殊効果がねぇぞってみんな返品しやがった。」


魔剣と呼ばれる剣には魔法効果や特殊効果が付いているらしい。
身体能力を向上させたり、エンチャントの様な魔法効果を発揮したりと。
しかし、この剣は作った瞬間に魔剣とわかったが誰一人扱うことができなかったらしい。


「・・・・長年、鍛冶屋やってると分かるんだよ。剣は主人あるじを選ぶ。剣が認めなかったら、その剣は実力を出さない。」


「なるほどな。その剣は誰も認めなかった・・・・。ってことか。」


クロは納得した様な表情を浮かべる。


「あぁ。だが、今は違う。聞こえるんだよ、その嬢ちゃんに使って欲しいって・・・・いや、待ってたんだって言ってる様に聞こえる。」


クロはその話を聞き、驚きながらティナを見る。
まるで話を聞いていない彼女は楽しそうに剣を見つめている。


「クロ、私この子がいい!」


「いや、売り物じゃあないって言われたろ・・・・。」


そう言われるとあからさまにしゅんとする。
今は隠して見えないが彼女の尻尾と耳はへなっと萎れているだろう。


「いや、売ってやるよ。」


クロは少し目を見開いて男を見る。


「いいのか?」


「・・・・あぁ。剣が、喜んでやがる。こんな嬉しそうにしてるコイツは初めて見る。」


そう言いながらティナに握られている剣を見ている。
クロも同様に見てみるが違いが分からない。
あの剣が放っている魔力以外に違和感はない。


「いいの!?やったぁ!!クロ!この子も喜んでるよ!!」


「いや、なんでティナも分かるんだよ。」と思いながらクロは苦笑いを浮かべている。


「・・・・でも、予算がなぁ。」


クロはそう言いながら懐から小さな麻袋を取り出す。
最初に訪れた村で稼いだ路銀はまだ余裕があるが、この剣の価値を考えれば今の所持金では足りない気がする。


「坊主、気にするな。・・・・金貨3枚でいい。」


クロは驚愕のあまりに表情を歪めてしまう。


「いや、待てよ・・・・。おっさん、それって原価以下だろ?」


売ってくれるのは助かるし、その金額も予算内でかなり助かる。
だが、そうなってしまうと彼の商売が成り立たないだろう。
この魔剣がどれほどの金額で作られたかは分からないが金貨3枚で済むとは思わない。


「あぁ。はっきり言うと大赤字だ。・・・・でもな、坊主。俺は剣が望む人に使ってもらいたいんだよ。この嬢ちゃんに使われるアイツは・・・・幸せになる。」


彼は自分が打った剣をまるで子供に見立てている様だった。
自分の子供が幸せになる、それなら構わないと言わんばかりの表情だ。


「・・・・それじゃあ悪い。俺は貸し借りは嫌いなんだ。そうだな・・・・俺に扱える様な剣を見繕ってくれないか?あの魔剣を含めて金貨20枚で買う。」


クロは人族に対しての絶対的な不信感がある。
その人族がどれほどの良い人であろうと借りを作りたくないのだ。


「・・・・そうか、よし。ちょっと待ってろ。」


そう言ってガッツは店の奥へと入ってく。
数分待つと彼は1メートルほどの木箱を持ってくる。
それを開けると一本の刀が出てくる。


「・・・・!刀か?」


「知ってるのか?」


クロは前世の世界・・・・日本で好まれて使われていた武器、日本刀の様な刀を見て驚いていた。


「(この世界に刀があるなんてな・・・・。何故だ?)」


いつか自分を転生させたこの世界の猫耳女神はクロが元々いた世界とこの世界は隣り合わせと言っていた。
その影響なのかと推測したがその予想を反した答えが返ってくる。


「これは昔、人族の英雄って呼ばれた勇者が伝えたモンだ。・・・・この刀はたまたま手に入ったんだが、変な形してるもんだから売れなかったんだよ。」


そう言いながらガッツはクロに刀を渡す。


「(勇者が伝えた・・・・?まさか、日本人だったのか?・・・・ま、今はどうでも良いか。)」


クロの頭の容量では処理できないと判断して、考えるのをやめた。
またケットに聞けばいいや、と他力本願なことを考えながらガッツから刀を受け取ると鞘から刀を引き抜く。


「・・・・綺麗。」


それを見たティナは思わず呟いてしまった。
クロも同様にその刀剣の美しさに魅入られてしまう。
先ほどの魔剣の様な魔力や不思議な気配は感じない。単なる普通の刀だろう。
きっさきからはばきにかけて反った刃には美しく波打つ様な波紋が流れており、戦うための武器というより鑑賞するために作られたのではないかと思わせるほどの美しさ。


「・・・・一応、魔鋼鉄で作られている。その辺の鋼とは違って刃こぼれはしにくいだろう。魔力を流せば斬れ味も戻るらしい。」


魔鋼鉄は鋼に魔石を少し混ぜた金属の塊だ。
それに魔力を流しながら打つことによって魔鋼鉄となる。
その際の魔石の大きさ、鍛冶職人の技量により魔剣になるかどうかが決まるらしい。


「魔剣って訳ではないのか?」


「残念ながら魔法効果や特殊効果が付いてねぇ。修復能力だけだな。それじゃあ魔剣とは呼べねぇんだ。」


ガッツはそう言いながら、クロを見る。


「買うか?コイツは俺が打った訳じゃないが・・・・業物であるのは確かだ。」


クロはニヤッと笑みをこぼし、カウンターに金貨20枚を置いた。






















クロらがガッツの店で武器を購入していた頃。
シエルとケットは街をブラブラと散策していた。


「・・・・ない。」


シエルは苛立ち(といっても見た目では分からない)の表情を浮かべていた。
彼女は趣味である読書のための本を探していた。
この世界にはそれなりに印刷技術が普及しているため、それなりの安価で本を購入することができる。
と、言っても娯楽の一種なのでどうしても高くなってしまう。なので普及はあまり進んでいない。


「まぁ落ち着きなよ。本屋なんてない街だってあるさ。」


とクロの契約精霊でもあるケットが言う。
シエルは自分の武器である弓矢はすぐに新調した。
と言っても彼女の力量を持ってすればどの弓でも扱えるのであまり拘りがないだけなのだが。
時間が余って暇を持て余したシエルは本屋を探して歩き回っているのだ。
だが、問題が発生する。
どこを歩き回ってもこの街には武器屋しかないのだ。


「んにしても、本当に武器屋しかないね。ここの人はどうやって生活しているんだろうね。」


彼女らもまた市場などの出店すら見かけていない。
実を言うとウルムの街は鍛造街と住宅街、商業街に分かれている。
理由は単純だ。うるさいからだ。
四六時中鳴り止まない鍛造の鉄を叩く音は住民の生活に支障を与える。
とはいってもこの街の半分は鍛造街で出来ている。


「・・・・本の匂い。あっちに行く。」


本の特有の匂いを感じとったのか、シエルは迷うことなく真っ直ぐその方向へ進んでいく。
商業街と鍛造街の真ん中辺りまで行くとそこには確かに本屋があった。


「・・・・確かに本の匂いはするような・・・・よく分かったね。」


その方向へ歩いていくとケットも匂いに気がつく。
ケットは精霊であり、今は人化している状態。
感覚はかなり鋭くなっている。
猫特有の嗅覚も持っていたが、匂いには気づかなかった。
それより鉄の匂いや汗臭い匂いがこの街には充満している。


「・・・・へえん。」


ドヤ顔(している様に見える)をするシエルは自身の発展途上の胸を張る。
早速、2人は本屋に入る。
中は本が山積みになっており、乱雑に様々な本が散らかっている。
奥のカウンターの様な所には今にでも死んでしまうのではないかと心配してしまうほどの老人がプルプルと震えながら本を読んでいる。


「・・・・い、いらっしゃい。」


声も震えている。本当に明日には死んでしまうのかもしれない。
そんなことをケットは考えながら本屋の中を見て回る。
シエルは真剣に色々見ながら本をペラペラとめくったりしているが、ケットは本には興味がないため適当に見て回っているだけだ。


「(・・・・それにしても、湿っぽい所だなぁ。)」


少しジメッとした感覚に不快感を感じながら、ブラブラと店内を見回すと1つの本に目が行く。


「・・・・これは?」


表紙もくたびれており、見窄らしく汚れた本に目がいく。
それを手に取り、内容を確認しようと開く。


「――――っ!」


ケットは目を見開いた。
全て手書きの本に書いてあるその文字はこの世界にはない文字だからだ。
しかし、ケットには見たことがある。
昔、クロの前世である猫宮和人に飼われていた頃によく目にした文字だからだ。


「――――日本語?」





















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