猫耳無双 〜猫耳に転生した俺は異世界で無双する〜

ぽっち。

第13話 エデンへ















シエルを助けて、1ヶ月の月日が経った。
クロらは心身を回復させるため、この街に少しの間留まることにしたのだ。
シエルを救出する際に起きた騒ぎ。
この街の商会の中でも三本の指に入るとウィリアム商会の会長、フランク・ウィリアムが殺されたのだ。
このニュースはすぐに街中に行き渡った。
そして、1週間という短い期間で犯人は特定されることとなる。
犯人はウィリアム商会の元従業員だったのだ。
彼は妻を寝取られ、脱税の罪を被されたことに憤りを感じ、犯行に至った。
しかし、罪の重さかが彼を苦しめたのか・・・・自殺という歯痒い結末を迎える。
彼が発見された時にはすでにナイフで首を突き刺し、死んでいたという。
彼の部屋には脱税の帳簿の数々にウィリアム商会が目玉商品として売り出していた宝石が散らばっていたという。
彼が犯人で間違いないと思われていたが、この街の憲兵たちは異様な違和感を感じていた。
動機も充分、証拠も沢山あるのだが・・・・犯行の手口がどうも一商人ができる容量を超えている。
まず、当日警備していた被害者の1人は短剣、ナイフのようなもので首を裂かれていた。
次にフランク・ウィリアム等本人は拳で撲殺。彼の愛人はナイフで心臓を一撃で殺されていた。
警備員と愛人を殺した凶器は見つかっていない。フランクは撲殺されているのにも関わらず、当の犯人の拳は無傷。
別の誰かがやったに違いないと、憲兵たちは考えた。
しかし、捜査内容がなぜか漏洩したのだ。
犯人である元従業員の部屋の中や公表されていない脱税の数々。
脱税に関しては噂程度のものだったのだが、真実として市民の間では出回っている。
意図的に誰かが情報操作を行ったんだと憲兵たちは判断したが、世論が元従業員の犯行として決着をつけている。
そして、1つの懸念。
ウィリアム商会が使っていた亜人の奴隷が行方不明になっていた。
市民の声や面倒な捜査が続きそうなこの事件に憲兵たちは嫌気を指し、考えるのをやめ、この事件を元従業員の犯行と決めつける。
そして、犯人は自殺。
ことの全てはクロの思惑通りに進んでいった。
























「・・・・そろそろこの街を出るか。」


クロは宿屋のベットに寝ながら呟く。


「・・・・突然すぎる。理由を。」


すっかり皆と打ち解けたシエル。
出会った頃は痩せこけており、見窄らしい格好だった。口数は・・・・今と大して変わらないが健康的な美少女へと進化していた。
汚れでくすんでいた髪の毛もクロの特性リンスインシャンプーにより鮮やかな水色へと蘇り、ボロボロだった服も新しいのを購入。文学系の清楚系猫耳娘へとなった。
シエルはクロに買ってもらった本を読みながら、クロに問う。


「本当に突然だね。ま、いつものことだけど。」


「クロは何考えてるかわからないからねー。」


ケットとティナはクロが考案(前世の記憶から作った)リバーシをしながら遊んでいた。


「まぁ、この街にいつまでもいるわけには行かないし。てか、お前ら元々の目的忘れてないか?」


クロたちの目的はティナとクロの友人と言われていたフレイドという人に会いに行くことである。
しかし、どこにいるかわからない彼を探すのには手間がかかる。
そこで情報収集のためにこの街に来ていたのだが、情報の集まりが悪い。
クロはここに留まっていても成果が出ないとみたのだ。


「・・・・なるほどね。あ、ティナ角もらうね。」


「あぁぃぇ!?まっ、待ってケット!」


「待ったは3回までだよ。ティナはもう使い切っちゃったでしょ?」


「むむむぅ・・・・ケットのケチ〜・・・・。」


話を聞く気がない2人を横目に、クロは軽くため息を吐きながらいう。


「・・・・とにかく、フレイドって人を探すのが俺たちの目的だ。」


すると、本を読んでいたシエルが耳をピクリと動かす。
おもむろに本を閉じて、クロに問う。


「・・・・もしかしたら、あそこにいるかも。」


「・・・・知ってるのか?シエル。」


「・・・・居るかは分からない。でも、フレイドさんなら一度会ったことがある。」


初耳の情報。
クロは驚きながらシエルに話を聞こうと思ったが、疑問が生じる。


「・・・・なんで教えてくれなかったんだ?」


「・・・・フレイドさんを探してるとは初めて知った。」


クロは苦笑いをしながら頬をかく。


「・・・・そういえば言ってなかったな。」


「クロのミス。・・・・今すぐ私の耳をモフることを要求する。」


ビシィッ!!


ティナとケットとクロは固まり、凍りつく。
猫耳をモフッていい・・・・それはつまり貴方に全てを捧げてもいいということだ。


「・・・・し、シエルさん?」


クロは冷や汗をタラタラ流しながら固まる。


「さぁ、早く。」


そして、シエルはグイッと頭をクロの方に寄せる。


「(・・・・モフりたいモフりたいモフりたいモフりたいモフりたいモフりたぁぁぁぁぁい!!でも、待つんだ、待つんだクロ・マクレーン!?良いのか!?モフっていいのか!?猫耳をモフるって事はつまりそういう事だろ!?まてまてまてまて!!俺たちはまだ10歳だぞ!?そ、そんないやらしいことしていいのかぁ!?)」


クロの中で猫耳をモフる=イヤラシイことに何故か変換されている。
つまり、彼も猫耳文化に染まりつつあるということだ。
クロの手が動きかけたその時、ティナが叫ぶ。


「待ったあああああああ!!」


ティナはシエルの首根っこを掴み部屋の奥へと連れて行こうとする。


「ティナ、待って。まだモフられてない。」


「それはだめぇ!!ちょっとシエルに説教するから!クロは正座して待ってて!!」


「は、はい!」


シエルは抵抗しようとするが首根っこを掴まれているため抵抗できない。
猫は・・・・猫族は首根っこを掴まれると大人しくなる。
猫の方は仔猫の時に母猫に首を咥えられて運ばれるのでそれで掴まれると大人しくなるのだが・・・・。
猫族は何故かはわからない。
いつもの通り、変なところを引き継いでいるようだ。
クロは何故か正座をさせられ、放置されている。
ケットはクロの方を見つめ、頭を差し出す。


「ボクの触ってみる?」


「・・・・なんだがティナに吹っ飛ばされそうな気がするからやめとく。」


「ふふふふっ!正しい判断だよ。」


ケットはケタケタ笑いながら、何故かティナたちの方へ行く。
1人残されたクロは呟いた。


「なぜこうなった?」


クロには分からぬまま、正座が足の痺れをもたらす感覚を感じながら天井を見上げるのであった。
閑話休題。
ティナの説教が終わったのか、少しげんなりした表情のシエルはフレイドの情報について話し始める。


「まず、フレイドさんは各地の獣人族の集落を転々としてる。」


「そうなのか?」


「うん。人族が来たら対応できるように。私の集落は運が悪かった。」


シエルの集落に人族が現れた時は残念ながらフレイドは不在だった。
それのせいか、蹂躙されてしまったのだ。


「・・・・そもそも、なんで俺たち獣人はこんなに負けちまうんだ?戦闘経験があるやつが少なすぎる。」


「理由は簡単。以前の戦争で殆どが戦死した。」


「・・・・なるほどね。」


シエルは納得するクロを横目に話を続ける。


「フレイドさんは1年に一回、絶対に行く場所があると聞いたことがある。」


「ほぅ・・・・有益な情報だね。」


「場所は・・・・ここから真っ直ぐ北に6ヶ月ほど歩いた場所にある。」


「・・・・っ!6ヶ月か・・・・遠いな。それで、なんていう場所なんだ?」


「・・・・獣人の楽園。新しい獣王国、エデンと呼ばれてる。」
























とある森の中にある1つの集落。
そこはすでに人の気配を感じさせない。
そこを歩く、黄金色に輝く髪の毛とピンっと張った耳を持つ男。
20代後半ほどの年齢だろうか、まだ若さを感じさせる整った顔を若干顰めながら男は歩く。


「・・・・ここもダメだったか。」


そう呟くと白いフワッとした毛並みを持つラグドールが男の足元まで歩いてくる。


『生存者はいないようね。・・・・フレイド、いつまでこんなこと続けるつもり?早く、事を為さねば同族が殺されていくだけよ?彼奴らは・・・・狂ってるんだから。』


そう言いながらラグドールはフレイドと呼んだ男の肩に飛び乗る。


「彼が・・・・エデンに来るまでだ。エイス、次の集落に向かおう。まだ助けれるかもしれない。」


エイスと呼ばれたラグドールは軽くため息を吐く。
フレイドは魔力を身に纏い始める。


『なんで、あそこまでククルの忘れ形見を気にするの?・・・・貴方がなればいいじゃない。王に。』


「残念だが、俺にそんな器はない。・・・・王には王になるべき者がなる。・・・・エイスだって認めただろ?あの愛される才能スキルを・・・・。」


『・・・・もちろんあの人が、精霊王が認めたのよ?私なんかが認めないなんて可笑しいわ。』


「・・・・ふはははっ。最上位精霊の一角を担う君がかなわない存在なのかい?あの精霊は。」


『・・・・彼女は私を友人だと見てるみたいだけど、身分が、実力が違いすぎてね、正直言って釣り合わないのよ。』


「そうか・・・・それは君の思い違いな気がするが?」


エイスはプイッとそっぽを向いていう。


『・・・・いいから行くわよ!』


エイスにそう言われて、フレイドは力を使う。
彼らは残像を残して消えた。
彼の名はフレイド。
かつて繁栄していた獣王国の最強を担う男。
この世界で初めて精霊の顕現化に成功し、人族からは『金魔のフレイド』として恐れられた最強の精霊魔法士。
彼は獣人のために世界を飛び回る。
守れなかった命の方が多いが、守れる命がある限り、戦い続ける。
彼が・・・・クロ・マクレーンがエデンに来るまで。


















「っは!せい!!とりゃああ!!」


激しい剣戟をクロは片手で軽く去なしていく。


「型が崩れてるぞ!!相手の動きを見てから反応するな!!常に動きを予測するんだ!!」


「っは、はい!!」


場所はヘルネの冒険者組合にある訓練室。
バンダナを巻いた10歳ほどの子供2人が訓練用の刃が落とされた剣を振るっていた。
そう、クロ・マクレーンとティナ・フローンだ。
彼らは剣の訓練をしている。
正しく言うとティナの剣術訓練をしているのだ。


「はぁぁぁぁっ!!」


クロは振り下ろされる剣を軽く受け止めると剣を傾けて、刃を滑らし無力化する。


「あっ!?」


剣が完全に地面に突き刺さり、一瞬身動きが取れなくなるティナ。
クロはそれを見逃さず、ティナを蹴り飛ばす。


「――――っぐ!?」


ティナは数メートル転がるが、何とか受け身を取り体勢を立て直す。


「力任せの大振りはするなって言っただろ!それに、攻撃を去なされた後の対応が遅い!更に言えばさっきの一撃を食らった後、体勢を戻すのが遅い!!強者相手だったら追撃されて殺されるぞ!!常に相手の次の一手が命に関わる物なんだと身体に覚えさせるんだ!!」


「っはい!!!」


別にコレはティナを虐めているわけではない。
ティナが自ら自分も戦えるようになりたいと申し出てきたのだ。
精霊魔法を教えつつ、筋がいい剣術の方をメインにクロは教えていた。
ティナの剣術技術はまだ発展途上だが、目に見張るものがある。
訓練を始めてまだ1週間ほどだが、クロの技術力に迫ってくるスピードだった。


「(もしかしたら、ティナの才能スキルは剣術関連なのかもしれないな。)」


ティナの剣術技術は10歳とは思えないほどの発達力だった。
実際こうやってクロがボコボコにしているわけだが、その辺のゴロツキ冒険者など瞬殺できるレベルまで昇華している。
現に訓練場でティナたちの動きを目を見開き、口を呆けて見ている冒険者も少ないくない。
それを眺める2人の美少女。
2人同様にバンダナを巻いている。


「・・・・ティナの成長スピードは尋常じゃないね。」


「うん。負けてられない。」


2人の訓練を見守っているのはクロの契約精霊でもあるケットとクロたちに助けてもらった元奴隷のシエルだ。


「ところで、シエルは何か得意なことがあるの?」


「・・・・ん。弓が得意。」


そう言いながら背中にせよっている弓をケットに見せる。
それは以前までクロが使っていた弓だ。


「見てて。」


そう言うと、弦を精一杯引き絞る。
パッと離すと、空気を裂きながら矢が訓練中のティナとクロの前を横切る。
クロの前髪を擦り、はらっと髪の毛が地面に落ちる。
クロとティナは青ざめた表情を浮かべる。


「えへん。」


「・・・・狙ってやったのかい?あの激しい動きのをしてる2人の間を?」


「・・・・ん。アレくらいは序の口。」


クロがシエルに対して怒鳴ってるのが聞こえる。
死ぬかと思ったとかなんだかんだ言っているが2人は聞こえないふりをする。
少し笑いながらケットは思う。


「(まるで三獣士の再来だね・・・・。)」


ケットの予感は見事に的中する事になる。
彼ら3人は『黒魔帝』『銀聖剣』『水妖弓』と呼ばれ、人族の軍を恐怖に叩き落とす存在になるとは・・・・ケットは夢にも思わなかった。
























クロたちがヘルネの街に来てから2ヶ月が経った。
彼らは急遽、街を旅立つことを決意した。
街を旅立つと言ってから1ヶ月ほど経っているが別に急いだ旅ではないため、しっかり準備してから行こうと思っていた。しかし、ここに来て事情が一転する。
どうも人族の軍がここに向かってきているとの一報を入手したのだ。


「たぶん、俺たちを探してるんだろ。」


「・・・・まぁ私たちが行方を完全に眩ませて2ヶ月くらい経ったしね。」


「・・・・襲ってきたら殺すだけ。」


「シエルは恐ろしいこと言わない。・・・・とにかく、エデンって所へ向かうんだろ?」


ケットの指摘にクロは頷いて答える。
この街でも充分な準備ができた。
クロとティナは子供の身長でも使いやすい短剣を腰につけて、軽量で丈夫な皮防具を装備している。
シエルも同様で軽装備の皮の防具にガタが来ていた弓を新調した。
シエルは「クロから貰ったもの。大切にする。」と言って中々変えようとはしなかったがそれが原因で死ぬのも嫌なので何とか新調させた。
ちなみにケットは何も装備していない。
曰く、『ボクは精霊だよ?いるわけないじゃん。』とバカにした表情で言われた。


「・・・・さて、目指すは獣人の楽園。・・・・エデンだ。」


こうして3人と1匹?の長い旅が始まった。

















































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