猫耳無双 〜猫耳に転生した俺は異世界で無双する〜

ぽっち。

第9話 ヘルネの街











クロたちは滞在していた村から南東へ街道を真っ直ぐに進み、野営をしながら2日が経過していた。
冒険者3人組を瞬殺したあと、クロらは急いで村を出た。
出るとき門番に怪しがられたがいつものように金貨を握らせ、事無きを得た。


「それにしても人族ってあの村より大きい村があるんだね。」


とティナが言う。
今向かっているのは人族の街の中でもこの辺りで大きいヘルネという城塞都市に向かっている。


「村ってのは違うな。もっと大きい街になる。」


「へぇー、村と街って何が違うの?」


「・・・・規模的な違いじゃないか?」


「そうなんだ〜。どんなものがあるのかな?」


少しワクワクした様子でティナはスカートから覗かせる尻尾をフリフリと揺らす。


「(そういえばティナって勉強をあまりさせてなかったな。これを機に色々教えるか。)」


村にいれば大した知識はいらないため、あまり色々と教えてはない。
読み書きも不十分、四則演算も得意ではない。
ティナのお勉強計画が頭の中で構成されていく。


『・・・・!クロ、構えて。』


すると人化を解いていつもの猫姿になってぷかぷかと浮いていたケットが街道沿いの茂みに目を向ける。
クロケットの忠告を聞き、ティナを自分の後ろへ庇う。
茂みの方を確認するとガサガサ、と揺れているのが分かる。


「・・・・魔物か?」


『まぁ、狼じゃないかな?ボクには君たちの言う魔物という動物の判断基準がよくわからないし。』


呑気にケットがそう言っていると、茂みから一体の影が飛び出てくる。


「――――ガウッ!!」


「ひっ!?」


突然の鳴き声にティナは驚く。
狼の姿形だが、身体から魔力が滲み出ている。
以前、クロが見たことある熊の魔物と同じ現象だ。


「ッチ!魔物じゃねぇか!」


『だから、ボクには基準がわからないんだよ。』


猛烈なスピードでこちらへ走ってくる狼。
クロは魔力を放出し、ケットを媒介して魔法を放つ。


「――――雷よ!!」


バチバチバチッ!!
激しい放電音と紫電が迸る。
雷は真っ直ぐに狼に直撃し、悲鳴を上げさせることなく真っ黒にする。


「・・・・ふぅ。ここに来て初めての魔物だな。ここまで弱いものなのか?」


『いーや、普通の人族とかじゃ結構な脅威だろうね。キミは基礎能力が顕現化によってかなり上昇してるからキミ基準で考えると色々おかしいことになるよ。』


「そうか・・・・。」


クロは振り返り、ティナの方を見てみる。
ティナは初めて見た魔物と威嚇の鳴き声に驚いて、耳を丸めて塞いでプルプルと怯えている。
尻尾も内側に折りたたまれている。


「(可愛い。もふもふしたい。)」


ティナに癒されながらクロは頭を撫でる。


「ほら、ティナ。大丈夫だよ。もう怖いイヌ野郎は倒したから。」


「・・・・ほんとに?」


涙目&上目遣い。
クロはその可愛さに胸を打たれると同時に無性にもふもふしたい欲に駆られる。
少しわきわきっと動きかけた右手を左手で押さえつけ、自身のおでことティナのおでこをくっつける。


「あぁ。大丈夫だ。」


この行動は猫にとって・・・・猫族にもとって親愛を表す行動の1つだ。
クロもよく母や父とやっていた。
ティナはボッと顔を赤く染め、頬を緩ます。


「えへへ・・・・。」


『(お〜・・・・猫たらしの本領発揮だぁ〜・・・・。でも、羨ましいなぁ。)』


ケットは少しティナに対して羨ましいと思う。


『(ま、ボクも昔はよくやって貰ってたし・・・・。ボクの方が年上なんだし、ここは譲ってあげようか。)』


クロがまだ猫宮和人で自分が飼われていた時、ケットもよくこれをやって貰っていた。
心が暖かくなり、安心する。
自然とここが自分の居場所なのだと理解させられるような、そんな不思議な力を感じていた。


「よし、ティナも落ち着いたし・・・・先を急ごう。」


そう言ってクロは街道を進み始める。


「ところでケット。さっき言ってた魔物と動物の判断基準が分からないってどういうことだ?」


『うーん、そうだねぇ。ボクからしたらどっちも同じ存在ということかな?』


ケットはそう言いながらクロの頭の上にポンっと乗る。


『まず、ボクらからしたら動物と魔物とらやの違いはほとんど無いんだよね。』


「そうなのか?」


クロは上に乗るなよ話しづらいと思いながら問う。


『まずキミたち人間と動物の違いは自我があるかどうかだよ。』


「・・・・まぁ、そうだな。」


『逆にキミは魔物と動物の違いはなんだと思う?』


「そうだな・・・・。魔力を纏ってるか纏ってないか、かな?」


『でも、この世界の生物はどんな小動物でも、植物も魔力を微弱ながら纏っているよ?』


「そうなのか?」


この世界の生物はどの生物も魔力を纏っている。
そこでクロはある疑問を浮かべる。


「んじゃあ、なんで普通の動物と違って魔物はあんなに魔力が強いんだ?」


『・・・・そうなのかい?ボクには違いが分からないよ。』


「お前は魔力おばけだからな。」


ケットは『酷い言い草だなぁ〜』と茶化しながら少し思考を巡らせ、言う。


『そうだねぇ。まず、魔力がどうやって回復してるか知ってるかい?』


「あぁ。空気中の魔素を吸収してそれを魔力に変換してるんだろ?」


この世界には空気中を漂う魔素が存在する。
それは大地から出てくる地脈の力でもあり、生物が死んだ際に魔力が放出され地脈の力に統合されることで魔素へとなる。


『ありとあらゆる生物はその魔素を吸収している。そして、自身の許容できる以上の魔素を吸収すると凶暴化する。』


「・・・・なんでだ?」


『自身に溜まった魔力を放出しなければ魔力が破裂して死んじゃうからさ。』


「そうか。でも、それが魔物の定義ってやつじゃないのか?」


『そうすれば人間だってそれに値しちゃうよ?』


「暴走はしてないだろ?」


『人間は無意識のうちに魔力を放出する術を手にしてる。キミたちが魔物と呼ぶドラゴンやグリフォン、フェンリルだってその一部だ。』


ケットが例に出した魔物はどれも災害級の強さを誇るこの世界の脅威の1つだ。


「・・・・なるほどね。それらも魔物って定義しちゃってるからケットからしたら何が魔物か分かりにくいってことだな。」


『そうだよ。・・・・今思えば、人間に害をなす存在、が魔物なのかもね。』


グリフォンやフェンリルは縄張りを侵さなければ基本的には敵対しないが、ドラゴンはたまに好んで人間を食べることがある。
ケット曰く、ドラゴンは魔力を味覚として感じることができるらしく魔力の純度が比較的に高く、あまり反撃されない人間は格好の餌らしい。
そんな話をしながら、クロ一行はヘルネへと歩を進めていった。




















エルラルド王国の王国騎士団の第3部隊の訓練場。
そこでは『奇剣のメイト』と呼ばれる隊長格の1人が部下を相手に訓練をしていたときのことである。


「メイト様!!ご報告です!!」


訓練場に向かって走って1人の部下が走ってくる。
メイトは訓練を少し抜け出し、タオルで汗を拭きながら部下の元へ歩く。


「どうした?」


「・・・・先日、御命令された追跡部隊の増援から連絡がありまして、ご報告の次第です。」


「そうか。で、どうだった?」


「・・・・それが先に捜索していた部隊が・・・・全滅、との一報が・・・・。」


「は?なんだと?」


メイトは驚愕の表情を露わにする。


「全員、殺されていました・・・・。」


「・・・・土魔法士のウードはどうした?アイツの実力ならそこらの奴にも負けないはずだ。」


部下の男は口篭らせながら、発言する。


「し、死体も無かったのことです。現場には地面と森を激しく抉ったような跡があったと・・・・。」


「ッチ!クソ!!」


メイトは舌打ちをし、怒号を放つ。
部下はその様子にビクッと身体を震わせる。


「(嫌な予感ってのはつくづく当たるもんだな・・・・。)」


メイトは一頻り逃した子供の行動を考える。


「・・・・森を抜けた近くには村はあるか?」


「は、はい。半日ほど歩いた場所に村があります。」


メイトは顎に手をやり、考える。


「・・・・アイツらは鼻がいい。俺たち人間の住む方向には逃げないだろう。その方向とは逆を探せ。」


「はっ!わかりました!」


部下の男は小走りで王宮の方へ行く。
王宮には遠くの魔法士と連絡が取れる魔法陣が設置されているからだ。
メイトのこの判断は間違っては居ないのだが、クロはその上を行っていた。
彼らは結局一月経っても足取りすら掴めないことに違和感を感じ、村の方へと一度足を運ぶことになる。
そこで門番からクロたちらしき子供の情報を手に入れるが、同時に完全に撒かれた後と気づくことになる。


「(獣風情がイラつかせるなよ・・・・!)」


メイトは踵を返し、苛立ちを部下にぶつけるために訓練を再開したのであった。
























「ふぇ〜・・・・大きい。」


ティナは口を呆けながらそびえ立つ20メートルほどの壁を見つめる。
場所はエルラルド王国の国境付近に存在する城塞都市ヘルネ。
かつて隣国であるサファルド帝国の猛攻を止めたこの国の国防の要でもある。
現在は平和条約が締結され、戦争はここ数十年起きていない。
この防壁もただの壁なのだが、観光資源としての役割を果たしている。


「まぁこんな立派な壁を作って・・・・資源の無駄だと思うけどなぁ。」


人族の街が近いということでチラホラ人族の姿も見える。
そのため、ケットには早速人化してもらい3人ともバンダナを巻いている。


「とにかく、ここでやる事は2つだ。一つ、回復薬の確保。二つ、獣人の村の情報収集だ。」


「人族の街で獣人の村の情報なんて集まるのかい?」


彼ら獣人は人族に迫害され、追いやられている。
そう簡単には見つかるとは思えない。


「・・・・俺たちの村も何故か情報が漏れていた。なら人族には何らかの手段や噂なんかで見つけたと思ってる。」


「なるほどね。火のないところに煙は立たぬ、か。情報収集する価値はあるだろうね。」


そう言った会話をしながら街へと歩いていると長い行列が出来ているのを見つける。


「・・・・ふぇ〜人がいっぱいだよ、クロ。」


行列は数百メートルまでなっており、ゆっくりであるが前に進んでいる。
この行列だけでクロたちが住んでいた村の人口を軽くに超えているだろう。


「・・・・そうたな。それにしても何の列だ?」


かくいうクロも転生してから始めて見る人の多さに少し圧巻されていた。
クロは近くにいた人族の男に声をかける。


「すみません、この列は何ですか?」


「ん?あぁ。街に入るための検問だよ。この街は今は隣のサファルド帝国との貿易都市だからね。こうやって各地の商人たちが集まるんだ。」


「・・・・なるほど。助かりました。」


そう言ってクロたちも列に並ぶ。
ゆっくりだが、前へとは進んでいる。


「・・・・これは長期戦になりそうだねぇ。」


「そろそろ日も暮れそうだがどうするんだ?24時間体制ってわけじゃなさそうだし。」


「また野営かな?」


最初は手間取っていた野営だが、最近はティナもテキパキと動けるようになっていた。
働かないのはケットだけだ。
ケット曰く、『ボクはクロのペットだからね。飼い主サマはボクを養う義務があるんだよ。』と言って働かない。
彼女は食べなくてもクロから魔力をもらえば充分らしく、野営の際はずっとクロの頭の上に乗っている。
別に契約精霊は魔力同士が繋がっているため接触が無くても魔力をもらうことができるのだが、そこはケットのちょっとしたワガママと言える。


「この進み具合だと、今日も野営だな。周りのヤツらも準備してるみたいだし俺たちもしとくか。」


「ムム、ボクは働かなきゃダメかい?」


「当たり前だ。今は人の姿してるんだから何もしないのは変だろ。」


「はぁ・・・・薪拾いでもしてくるよ。」


そう言ってケットは少し離れた林の方へ向かってトボトボと歩き出した。
ティナはテキパキと動き、落ちていた石を組み合わせて即席の炉を作っていく。


「手馴れてきたな。」


「うんっ。私ができるのはこれくらいだから・・・・。」


最近、ティナは自分が戦えないことを悔しく思っている。
クロは気づいていないが一度親友になりつつあるケットに相談したことがある。
その時ケットには『今は無力かもしれない。でも、キミには輝く才能が見え隠れしてるよ。ゆっくりでいい。無理に力になろうなんて今は考えなくていいよ。できることから始めてごらん?』と言われた。


「(今は私にできることを精一杯やる!)」


きっとクロは近くに居てくれるだけでいいと言うだろうがそれではティナの気が済まない。


「・・・・成長したな。ティナ。」


そう言いながら、クロはほぼ無意識にティナの頭を撫でる。
優しく微笑みながら撫でられるとティナは顔を真っ赤にしてフニャッと顔を緩ませる。


「えへへ〜。今日も美味しいの頑張って作るね!」


ティナは幼いながらも母親であるテトに料理を習っていた。
今は簡単なものしかできないが、10歳が作る料理にしてはレベルが高い。
テト曰く、『胃袋掴んじゃえばこっちのものよ!!』というらしい。
実際、ティナの父であるティルトはテトに胃袋を掴まれていた。
母の機嫌を悪くして晩御飯抜き!と言われ嘆いていた少し情けない父の姿をティナは思い出し、ふっと笑みをこぼす。


「(お母さん、お父さん。私は頑張る。クロがいつでも戻ってこれるように。)」


ティナのこの決意が本当にクロを救うことになるとは今は誰も知らない。


















日付が変わって次の日。
朝起きてから数時間並び、昼前にようやくクロ一行はヘルネの街へと入ることができた。
案の定、村で発行した冒険者カードの身分証明は有効ですんなりと街の中に入れた。


「うわ〜!!人がいっぱいだよクロ!」


外に居る人族もそれなりの数だったが、街の中はさらに人で溢れていた。
屋台のような出店もたくさんあり、初めて見る光景にティナは目をキラキラと輝かせている。


「そろそろ昼飯の時間だな。屋台でなんか食べるか。」


「いいねぇ。ボクは食べなくてもいい身体だけど美味しい物は食べたいね。」


「賛成ぃ〜!!」


最近は保存食ばかりでティナもクロも少し飽き飽きしていたところだ。
ティナが創意工夫を凝らしてなんとか美味しく食べれているがどうしても単調な味になりやすい。
路銀は有限ではあるが、稼いだ金を考えるとまだまだ余裕がある。
逆に使わないと荷物になって邪魔になると思ってしまう贅沢な悩みもあった。


「よし!行くぞ!」


クロもこの世界に来てまだ大した食べ物も食べていない。
少し期待に胸を膨らませながら屋台を見回っていく。
すると、スパイシーなハーブと肉の香りに誘われて、一つの屋台にたどり着く。
そこの屋台では何かの肉を串焼きにしていた。


「おっちゃん、この肉はなんだ?」


「いらっしゃい!この肉はレッドボアっつて、赤い毛並みの豚のバラ肉なんだが、なかなかイケるぜ?一本銅貨1枚だ!」


「ほう。3つくれ。」


そう言って懐から銅貨を三枚渡す。


「まいど!あちぃから気をつけて食べろよ嬢ちゃん。」


そう言って串焼きを三本ティナに渡す。
3人に串焼きが3人に行き渡ったところでヨダレを啜るティナが最初にかぶりついた。


「――――あっち!」


「猫舌なんだからゆっくり食べなさい。」


彼ら猫族は殆どが猫舌だ。
ごくごく稀に熱いのが平気な人も居るが、かなり珍しいのだ。
かくいう3人とも猫舌だ。


「・・・・ケットも猫舌なんだな。」


「猫だからね。それに人化しちゃってるから基礎的な部分はほぼ猫族の君たちと一緒だよ。」


そう言いながら早く食べたいのか、必死にふーふーっと串焼きに息を当てるケット。
クロも同様にふーふーっと串焼きに息を当て、冷めた頃合いを見て齧り付く。
どんな味か、どんな風味かしっかり味わおうと思ったのだがその思考は一瞬で消し飛んだ。


「う、うめぇ!!」


「ん〜っ!!?美味しい!!」


「これは・・・・!!」


三者同様のリアクションをする。


「(噛めば噛むほど豚特有の風味の油が溢れ出てくる!!だけど、しつこくなくアッサリと水のように喉を通過していく・・・・!!)」


二口目でさらにクロは驚愕する。


「(――――っ!?最初の上部の部分はしっかりと味付けをしてインパクトを強くしてやがったのか!?二口目からはハーブをしっかり効かせて最後まで食べて行けるようにサッパリしてやがる!!)」


そこからは口が勝手に動いていき、気づけば1分も経たぬうちに全ての肉を食べきっていた。


「――――絶品だ。」


クロは異世界に来て、初めてこんなに美味いものを食ったと思わされた。
もちろん、母の料理はとても美味しかったがそれとは違う、外で食べるからこその旨さがあった。
ふと2人を見ると、クロよりかは口が小さいのでまだ食べきれてはいなかったが食べる速度はいつもより早い。
それに小さな口で一生懸命頬張る2人の姿をみてクロは癒される。


「(・・・・美味しいものを食べれて、可愛い猫耳美少女2人のこの姿。至福だ。)」


バンダナのしているので猫耳は見えないのだが、クロの超人的な妄想力で補強されていた。
ティナは串焼きに夢中だが、ケットはクロの変態じみた妄想力を感じ取って口をもごもごさせながらクロを冷めた視線で見る。
クロは「げっバレた」と思い、ワザとらしく視線をそらす。


「――――っゴクン。相変わらずの変態だね。」


「う、うるせぇ。手は出してない。頭の中でモフモフしてるだけだ。」


「そういうところをサラッと言うところが変態だって言ってるんだよ。あと、そのわきわきさせた両手を止めないとへし折るよ?」


と言いながら、無意識で動いている手を見られるクロ。
ハッと気づき手の動きを止める。
閑話休題。
クロらはその後、様々な屋台で至福と胃袋を満たし今日の寝床を確保するため宿屋を探して街を散策していた。


「・・・・少し残念だったのは魚がなかったことだなぁ。」


「仕方がないさ。この国は内陸だからね。魚なんて川魚が多いし、そもそも持ってくるのはかなり難しい。」


猫は魚好きという固定概念が強いが実はそうではない。
実際は鶏肉などの肉が食べられることが多い。
しかし日本の文化の影響のせいか、日本の猫は魚が好きというイメージがあるのだ。


「クロ、魚って??」


「そうか。ティナは食べたことないもんな。美味いぞ?」


「え〜!?私も食べてみたい!!」


かくいうクロもこの世界に来てから魚は食べたことがない。
しかし、美味いに決まってる。
ちなみにケットの大好物は鰹節だ。


「・・・・それにしても賑やかなところだな。」


日が沈みかけているのにも関わらず、街は未だに活気に満ちている。


「貿易都市って言ってたからね。色んな人種も来るってもんさ。」


そんな話をしているとクロは足を突然止める。


「・・・・クロ?」


クロの視線の先には1人の水色の毛並みを持った同じ年ほどの女の子の獣人がいた。
しなっと萎れた猫耳に内側に丸まっている尻尾。パッと見ればクロたちと同じ猫族とわかった。
格好は見窄らしいボロボロの布。
首には禍々しい首輪が付けられており、1人の男がその猫族に怒鳴り散らす。


「っこの!!クソ害獣が!!荷物運びすら出来ねぇのか!?」


「――――っごめんなさい。ごめんなさい。」


少し無表情だが彼女の素の性格だろう。しかし感情を見せない表情でも必死になっているのがわかる。土下座しながら謝るが男は腕を振りかぶり、そして手のひらで一発、ビンタをした。
瞬間、クロから激しい殺気が溢れ出る。
動こうとするがケットがクロの腕を掴む。


「・・・・怒りたい気持ちはわかるが今は抑えるんだ。これまでの努力が無駄になるよ?」


「――――っわかってる・・・・!!だが・・・・アイツは・・・・!!!」


「ダメだ。・・・・周りを見てごらんよ。君の殺気に気付き始めた人族もいる。今は耐えるんだ。」


「――――っクソ!!!」


奥歯を噛み締めながらクロは殺気を放つのをやめた。


「ゴミの土下座なんか見飽きてんだ!!早く運べ!!」


「・・・・はい。」


猫族の女の子はゆっくりと立ち上がり、荷物を持ち上げる。
彼女が持ち上げるには大きすぎる荷物。それにロクに食べてないのだろう、身体はやせ細りって力が入っていない。
だが、彼女は必死に持ち上げ荷物を馬車に押し込む。


「・・・・人族がクソだとは思っていたが、ここまでとはな。」


怒りを抑えながらクロは周りの人族がこの状況に見向きもしないことにさらに苛立ちを覚える。


「・・・・彼らにとってこれは日常なんだ。獣人はこうやって道具として使われる。」


「・・・・クロ。」


ティナも悔しそうな表情で必死に働く彼女を見つめる。


「・・・・分かってる。今は全員は無理だが、あの子だけでも助ける。」


この街にどれほどの獣人が居るかは分からない。
助けれたとしても全員を養って旅を続けれるほどクロたちに余裕はない。


「――――絶対に助けるからな。」


クロは拳を強く握りしめ、呟く。
そして、猫族の女の子の救出をクロたちは計画する。







































「猫耳無双 〜猫耳に転生した俺は異世界で無双する〜」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く