猫耳無双 〜猫耳に転生した俺は異世界で無双する〜

ぽっち。

第2話 自分が猫耳ですか?











猫宮和人は死んでしまった。
大型トラックに跳ねられそうになった猫を助けて。
和人の意識は朦朧としており、何もない暗闇の空間にぷかぷかと浮かんでいるような感覚があった。


「・・・・猫を助けて死ぬか。」


呟いた声は空間に響き、吸い込まれるように消えていく。
不思議と後悔はない。
親に恩を返せなかったことや自分の夢である猫カフェで一日中居るという夢も叶わなかった。


「猫のためなら死ねる。」


彼はそうやって生きてきた。
目の前で自分の人生の一部と言っても過言ではない小さな命を救ったのだ。
後悔どころか死ぬ場面としては満足のいくものだった。


「・・・・ん?」


ふと、暗闇の中に一つ筋の光を見つける。
そこへゆっくりと、引き寄せられるように向かっていく。
そこには1人の女性が居た。


「・・・・なんとか、ここまで持ってこれたか。」


言葉を放った。
しかし、和人にはそんなことはどうでもよかった。
美しく、綺麗な彼女にあるものが付いていたからだ。


「異世界の者よ・・・・。この度は「ね――――」む?」


「猫耳だぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


そう。猫耳だった。
夢にまで見た、猫耳美女だ。


「ね!猫耳ですよ!てかなんですか猫耳可愛いいい!!?顔も可愛いし!猫耳とかなんだよ俺のために生まれてきたのかよ!」


「お、おい。」


「もぉぉぉぉう!我慢できねぇ!!そ、その猫耳をモフモフさせてくれお願いだモフモフさせてぇぇぇ!!!?」


手をわきわきと卑猥な動きをしながら激しい鼻息をさせながら女性に近づいていく和人。
顔は完全に高揚しており人としてしてはならない表情をしている。


バゴンッ!!!


頭に激しい衝撃が走る。
あまりの衝撃に和人は悶絶し、うずくまる。


「――――これが猫パンチだと・・・・!?い、いてぇ・・・・。」


「当たり前だ。魂に直接衝撃を与えたのだ。」


女性は「猫パンチなどではないわ・・・・。」と呟きながらため息を出す。


「お主は自分が置かれた状況を理解しておるのか?」


「状況・・・・??」


涙目になりながら和人は女性を見上げる。


「死んだ。という感覚はあるみたいだな。」


「・・・・あぁ!そうだった。俺は猫を助けて死んだんだよな・・・・。」


「普通は先に死んだことを嘆くはずなのだが・・・・。」


「猫を助けて死んだ。その選択に後悔も反省もない。」


キリッとした表情で即答する和人。
女性はため息を吐き、和人と目を合わせる。


「まず、助けてくれたことには感謝をせねばならないだろう。ありがとう。」


「・・・・へ?俺ってこんな猫耳美女を助けたっけ?」


「助けたであろう。あのトラック?とやらに轢かれそうになった私を。」


和人は考え込んだ。


「(・・・・あのめちゃくそ可愛らしい猫ちゃんがこの猫耳美女で猫耳美女がめちゃくそ可愛らしい猫ちゃん??あぁ、夢でも見てるんだな。死んじまってるから神様が俺に最後の慈悲でこんな幸せな夢を見させてくれてるんだそうに違いない。なんて慈悲深き神様なんだ。俺が信仰するのは猫神様だけど、きっと想いが通じたんだよね信仰した甲斐があるってもんだ。人生最後にこんな最高な夢を見させて――――)」


「あの世界の神に聞いた通り、かなりの変人みたいだな。あのめちゃくそ可愛らしい猫が私だ。」


「へ?心を読むとかテンプレラノベ?」


「そのてんぷれらのべ・・・・?というのは知らぬが神だからな。それくらいのことはできる。」


「・・・・ふぁ!?ってことは俺が猫耳をモフモフしながらあんなことやこんなことを妄想してたのもバレバレ!?」


「バレバレどころか行動に出かけとるわ。その未だに続ける卑猥な手の動きをやめんか。」


和人は未だに自分の手がわきわき動いているのを見て、ピタリと止める。
閑話休題。


「さて、唐突だがお主を転生させようと思う。」


ただでさえ猫耳美女の出現で脳の処理能力を大幅に取られている和人は自称神の言葉を聴き、目が点になっていた。


「よくある異世界転生ってやつですか?」


「うむ。よくあるかは知らぬがそれだ。」


「なぜ俺が?」


「恥ずかしい話だが・・・・、私があの世界に居たのは息抜きの旅行みたいなものだ。」


自称神は語り出す。
彼女は和人が暮らす世界と隣り合わせに存在する世界を支える一柱。
だが、その世界の抱える問題の多さに疲れを感じていた。
そこで彼女は息抜きがてら和人が暮らす世界に旅行をしに行ったのだ。
しかし、神が姿そのまま現世を歩き回るわけにはいかない。しかも、彼女には立派な猫耳が付いておりこれを往来で晒すわけには行かない。
彼女は猫の姿に化けて、観光していたのだ。


「まぁ、あちらの世界では自走する馬車など無いからな・・・・。油断して撥ねられかけたのだ。」


「もしかして、俺が助けなくても良かった感じですか?」


猫の姿をしていたとはいえ、神だ。
トラックの一台なんとかなったのではと和人は思った。


「いや、あの身体では神の力は使えぬ。身体が傷つけばそれなりに私とはいえダメージが強い。今後の仕事に支障が出てしまうので本音を言うとかなり助かった。」


神の仕事はその神にしかできない。
その仕事ができなくなってしまえば、世界に影響が出るのは目に見えている。


「しかし、お主のおかげでこうやって元気に帰ることができる。」


「はぁ・・・・。事情は理解しました。ですが、なぜ俺が転生することに?」


「簡単だ。神はその世界の住民を間接的にでも殺すことは許されぬ。」


神はどこまで行っても世界の管理者。
直接などもってのほかだが、間接的にもその世界の住人の命を奪ってはいけない。


「生物が死ぬのはその世界の理によって死なねばならぬ。しかし、今回は直接的な原因は世界の理とはいえ、間接的には私のミスだ。」


「だから、俺は死んではならないと?」


「そうだ。だが・・・・そちらの世界では死んだ人が生き返ることはない。」


「でも、奇跡的に助かった。みたいな感じで良かったのでは?」


「お主は身体がバラバラになったのだぞ?流石にそこから生き返るのは無理があるだろう。」


和人はそれなりのスピードが出ていたトラックに轢かれたのだ。その姿を想像し、少しぞっとする。


「た、たしかに・・・・。」


「とにかく、お主には生き返ってもらわねばならぬ。だが、お主はあの世界では生き返ることはできぬ・・・・。」


「だから、そちらの世界で・・・・ということですね。」


「あぁ。申し訳ないと思っている。」


そういうと猫耳美女は頭を下げる。


「・・・・頭をあげてください。俺は死んだことに関しては後悔していませんよ。」


「・・・・だが、やり残したことがあるのではないのか?」


「まぁ、親孝行できなかったなーとか猫カフェで一日中居るとか色々ありますけど、俺の親だったら猫を助けて死んだって聞いたら笑って納得してくれますよ。」


そう言いながら両親の顔を思い浮かべた和人。
和人の両親は彼の一番の理解者であり、猫好きにした張本人達だ。


「逆に猫を助けなかったら俺が両親に怒られちゃいます。」


そう言いながら和人はニコッと笑った。


「・・・・すまない。」


「気にしないでください。」


猫耳美女は地面に手を向ける。


「それではお主を転生させる。もともと魂が入る予定がなかった身体にお主の魂を入れる。」


「つまり、俺があっちの世界の1人の人生を勝手に生きるってわけじゃないんですね。」


「そうだ。あと、もう一つ言わせてもらう。私ができるのは転生までだ。それ以降の運命は私にも分からぬし、どうなるかはお主次第という事になる。」


「逆にそっちの方が良いですよ。決まったレールを走るより、自分でレールを敷いて行く方が楽しいに決まってる。」


「そして、お主には辛い人生になるかもしれぬ。申し訳ない。」


和人はその言葉を聞き、首をかしげる。


「それってどういう・・・・?」


和人の疑問は晴れる事なく、和人の足元が光り始める。


「それでは、またどこかで会おう。異世界の恩人よ。」


光が徐々に強くなるに連れ、和人の意識は途切れていった。




















和人が眼が覚めるとそこはベットの上というか布団の上だった。


「クロ〜。ご飯の時間よ?」


聞いたことのない言語だったが何を言っているのかは理解できた。どうやら転生特典というものだろう。
そう言って女性は和人を持ち上げ、乳房を露わにしその先端を和人の口元へと持っていく。
生存本能か、無意識にチュパチュパとそれを吸い、出てくる母乳を堪能する。


「(少し恥ずかしい感じだが・・・・生きるためにはしょうがないか。この人が俺の新しい母親か。しかし――――)」


和人・・・・改めてクロは目を見開いていた。


「(ね、猫耳だと・・・・!?猫耳母・・・・新たなジャンルだな。)」


近親相姦などの特殊性癖を持ってはいないが、これはこれで・・・・とクロは思う。


「(てか、クロって猫につける名前かよ。待てよ?母が猫耳ということは・・・・?)」


クロは手を頭の方に持って行く。
そこには今まで自分にはなかったある部位が存在する。
そう――――


「(猫耳だぁぁぁぁぁぁぁ!!!)」














「・・・・この選択が吉と出るか凶とでるか。」


彼が居なくなって神である猫耳美女は虚空を見上げた。
神でありながら、世界を正すことができない彼女は異世界の恩人に世界を託すしかなかった。
自分を助けてもらって、さらに世界をも救ってもらおうと思うのはとても烏滸がましい。
だが、あの世界ではもう不確定要素に頼るしか方法が無いのだ。


「頼んだぞ・・・・。」


そう呟くと彼女は仕事に戻るため、その場から消えた。
自分が猫耳になるとは思っていなかった猫宮和人改めてクロは今後の世界を揺るがす、獣人の英雄と呼ばれる存在になる。
この物語はそんな彼が平和を掴んでいく物語である。















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