ニートの魔法

山本の熊

11話 兄弟


「んあ…ん、朝か。」

「昼だよー」

「うわああああ!?」

俺の部屋にとんびが勝手に入ってきててビビった。普段はないだろそんなこと。

「驚きすぎだよー」

「とんび…なんで俺の部屋にいる?」

「リビングのこたつ取っ払っちゃったみたいでさー、寒いからあにの布団入ってた」

ゲームに熱中しながら答える。
くっ…相変わらずかわいい弟だ。ニートの俺にも分け隔たりなく接してくれる。

今日は休日、土曜日だ。俺は寝起きのトイレに向かった。

〜♪(用を足している)

「おはよう」

「うわあああああああ!?」

「ぼくだよ!そんな驚かないでよ!」

セジアントは頬を膨らませながら頭の上を飛んでいる。
今日だけで寿命が相当縮むぞ。

「はぁ…セジアントくんはなぜここに?」

「部屋にとんび殿がいるからね…見られる可能性があるなんて思いもしなかったよ。幕くんの家族変わってるね〜。」

変わってるなんてお前に言われたかないやい。
おれは用を済まし、部屋に戻った。

とんびは相変わらずゲームしている。

「そういえばあに」

「なんだ」

「昨日の魔法があるかないかって質問なんだけど」

「あ、ああ」

「あると思うんだ。」

んん…正解だかわいい弟よ。

「なんでだ?」

「なんとなく。」

ああ…なんてことだ。お前は“なんとなく”で使い魔とご対面するチャンスを手に入れられるんだ。
とりあえずトイレでセジアントと作戦会議を…

「あっ!トイレに変な動物いたよ」

ああ…なんてことだ。………なんてことだあああ

「なあ、とんび。これから言う事はすべて本当だ。絶対に人に言わないでくれ。」

「うん、わかった」

「魔法は存在する。俺は魔法使いなんだ。」

「えー」

なんだそのどうでもよさそうな反応は…

「セジアント!来てくれ!」




「こいつが俺の使い魔、セジアントだ。」

使い魔を見せたらさすがに本当だと信じたようだ。

「あに、魔法使いなんだねー、かっこいい」

なんか恥ずかしいな、でも本当のことなんだ。
俺は自分に課せられた使命、そして悪と戦うこと、世界を救うこと。

絶対に言わないでくれと口止めしたあと、最後にとんびはこう言った。

「セジアントくんと遊んでいい?」

「……いいぞ。」

目の前に世界を救う魔法使いがいるのにお前は遊びを取るのか。不思議なやつだ。
バレてしまったものは仕方ない。

だけど、とんびとの仲はより一層深まった気がした。



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