ニートの魔法

山本の熊

6話 決意


「ねえ、幕くん!起きてよ!」

「ん?んんん…あっ!?」

あの一件があってから家に帰って速攻で眠ってしまったようだ。

「起きたみたいだね!さっそく、魔法使いセットに着替えてみないかい?」

「うーん、そんな気分じゃないんだが…今何時だ?」

「朝の3時だよ」

自分はブフッと吹き出しそうになった。そんな時間に起こすもんなのか。
まあ、この時間なら急な訪問者もいなさそうだし、気は乗らないけど着替えるか。




買ったものは

黒いローブ

赤い蝶ネクタイ

魔法使いみたいな黒い帽子(コスプレグッズ)

帽子はともかく、蝶ネクタイいらなくないか…?
セジアントが言うには必須アイテムだとかなんとか。

話が長くなりそうなのでなるほど、とは言っておいたものの

いざ着てみると気恥ずかしいものだ。

「ふふふ、似合ってるよ!」

ふふふじゃねーよ…まったく。

「それじゃあ魔法の出し方を教えるね!まず指をピース!してみて!」

言われるがままにピースする。コスプレ同好会の写真撮影みたいだ。見たことないけど。

「その状態で、魔法を放つための言葉『魔言』(まごん)を言うんだ!えーと、今使えそうなかんたんな魔法は…アツラ!」

「アツラ!」

フッ…と自分の前を熱気が通り過ぎたような感覚だ。

「紙を置いておくと燃えるくらいの熱気を出せるんだよ!」

「なっ…!危なくないか!?」

「大丈夫。頭の中で出したい場所を勝手に想像しちゃうから。少なくとも自分には当たらないよ!」

「そういう危ないなのか…まあ使うのはエムラスだけだしいいか。」

勝手に納得して質問する。

「で、今から何をしたらいいんだ?」

セジアントは少し考えて言う。

「ぼくら魔法使いの使命はエムラスを完全に消し去ること…いわば撲滅。エムラスの王を倒して世界を平和にすること。」

「ほう…世界規模ねえ、えらい昇進だよなあ。魔法使いは何人くらいいるんだ?」

「君を含めて世界に13人存在しているよ!」

「え!?世界にニートはもっといるだろ?」

「だーかーら、ぼくらはニートだから君を選んだわけじゃないよ!気に病まないで!」

うーん、確かに俺は度を超えた暇人間だったかもしれない。

「それに、人のエムラスを撃破すればその人のためになるし!」

その言葉を聞いて、俺は嬉しくなった。
人のためになにかを出来るということは、俺は役に立つということだ。

それが、ニートの俺には嬉しくて、強い魔法使いになりたいという原動力だった。

今、この時から俺は、魔法使いになりエムラスを退治するという決意をする。

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