僕の魔法は今日も通常運転

催眠ますたー

第3話:剣術クラステスト(改稿版)

 剣術クラスでは、剣術アカデミーひいては騎士団に所属する人材を育成していくためのクラスなので、剣術ができることが必須です。
 ルクス兄さんが剣術アカデミーに行っているので、ちゃんとテスト内容を聞いておけば良かったと思ってしまいましたが、後の祭りです。

『鉄の剣使うなんて聞いてないよ・・・』

 毎日振っている木刀ですが、鉄の剣とは重さがまったく違います。
 持ったことないけど、多分違うと思います、違うよね?
 そんな鉄の剣で対人の実技を行うなんて、一朝一夕では無理な気がします。
 でも、そんなことも言っていられないので、諦めてテストを受けに行きたいと思います。
 とりあえず受けるだけなら、タダなので。

 テスト会場である武道場は、魔射場や講堂と共に学校の敷地の真ん中あたりに固まっています。
 第3教室でテストをしていましたが、そこからまた講堂の方へ戻ることになります。
 なぜ武道場かというと、剣術だけではなく様々な武道の授業が行われるからです。
 剣術のみに偏らず、体術なども鍛えることによって、全体的に身体能力を高めるというのが剣術コースの目的となるからです。
 剣術アカデミーに進まないまでも、剣術コースに進んだ人の多くは、脳筋・・・もとい身体を張った仕事に就くことが多いと言われています。

 武道場の方に向かうと、それとなしに筋肉率が高くなっていきます。
 こんなに筋肉隆々とした同級生なんて居たっけなーとか思いながら、テスト会場の武道場に入ります。
 受付で、シールド用の腕輪と鉄の剣を受け取ります。
 腕輪は、万が一のために剣が身体に触れても滑るだけでケガはしない仕組みらしいです。
 ただ、それなりの痛みはあると・・・どれくらいの痛みなんでしょうね。
 今までのアカデミーの授業だと、木刀で型を振る練習くらいしかやっていないので、鉄の剣での経験がまったくないんですよね。
 ルクス兄さん助けて!

 さて、テストは剣術の型・対戦・体力テストの3本立てらしいです。
 結構疲れそうな気がしますが、もしかして魔術クラスの方を先にやれば良かったかなと思ってしまっても、もう後戻りできません。
 とりあえず、剣術の型から頑張ってみるとします。

 剣術の型のテストの場では、5人1組くらいで型を実演して、その出来具合が採点されます。
 型の正確性、スピード、美しさが採点されるらしいです。
 美しさって何だよとか思いますが、見ていると確かに優美に見える人もいるから不思議なものです。
 僕の番が来たようです。
 マッチョな男子4人と組になってしまったようですが、対戦ではなく型の披露なので、筋肉のあるなしで優劣はつかないと思い込んで頑張ってみようかと思います。

「では、合図をしたら、王国剣技1の型から3の型までを連続で披露して下さい。
 剣技のテストでは魔法を使うことは禁止されていますので、その点は注意してください。
 では、始め!」

 と審査役の先生が告げます。

 真横で、すさまじい音をさせながら剣を振るうマッチョを横目に、持ちなれていない鉄の剣を頑張って型通りに振ります。
 やはり普段よりかなり重い剣なので、若干剣の方に振り回される感じがあり、自分の力でちゃんと振り切れてる感じではありません。
 それでも何とか指定の型をこなしていきます。
 スピードはともかく、型自体は間違わずに振ることができたので、少なくともゼロ点ではないんじゃないかと思います。
 スピードとか美しさとかは・・・ノーコメントでお願いします。

 自分の番がなんとか終わり、次の対戦テストに行こうかと思っていた所に、友達のフォルスが来ました。
 彼は、騎士団長の息子なのですが、めかけ筋の子どもなので、正妻の子どもともめないために、王都ではなくここアディスのアカデミーに通っています。
 詳しくは知りませんが、剣技の優劣という意味では、正妻の子よりもフォルスの方が上だと言う噂を聞いたことがあります。
 騎士団では剣技のみが物差しとはいえ、もし正妻の子と一緒になるようであればやり辛い気はします。
 しかも、正妻の子はお兄さんらしく、その点からもやり辛いところなんだと思います。

 そんなフォルスが来たので、もう遅いですけど後学のために剣技を見せてもらうことにします。
 彼は、ガチガチのマッチョではなく、均整の取れた筋肉でバランスの良い身体をしています。
 やはりちゃんと身体を鍛えている武家の子どもという感じがしますね。型の実演が始まりましたが・・・

「なんつー速さだよ・・・」

 思わず声に出てしまいました。

 魔法で強化しているわけでもないのに、剣先が霞んでるとかどういうレベルなんだかまったくわかりません。
 正直、同じ組で実演していた他の4人と比べても、優劣の差がはっきりわかるくらいレベルが違います。
 恐らく、剣術クラス筆頭になるんじゃないかなと思わせるような型の実演でした。
 対戦や体力テストもあるので、確実には言えませんが、トップクラスに実力を持っているのは確かでしょうね。

「フォルス、お疲れ!」声をかけてみました。
「リートのも見てたぞ。なんか、剣に振りまわされてたな」
「鉄の剣持ったの今日が初めてなんだよ、面目ない・・・」
「まぁ、リートは商店の息子だし、そんなもんじゃないか?」
「一応、毎日木刀は振ってたんだけどね」
「鉄の剣を使いこなすには、それだけじゃまったく足りないな。やはり実際持ってみないことには」
「そうだね、ぎりぎりでも剣術コースに入ることがあれば、鉄の剣も頑張ってみるよ」
「そうだな。次は・・・対戦か」
「死なない程度に頑張るよ・・・」
「痛いだけで死なないから大丈夫だよ」

 慰めになってないです。

 ということで、対戦テストの方へ移動します。
 対戦テストは闘技台の上で行われており、当たり判定の他に、台の外に出てしまった場合にも減点になります。
 満点から段々減らされる減点方式らしいので、どれだけ減点を減らせるかが肝らしいですが、いい予感がまったくしません。
 でも、がんばるっきゃないので、ベストを尽くしてみます。

「リートと、エリエルか。では、対戦開始!」

 エリエルは友達の女の子です。
 実家が市内でも有数の実力を持つ剣術道場で、彼女自身も段位を持ってるという話を聞いたことがあります。
 はっきり言って、男女の差以前に、実力の差がありすぎて勝負になるかどうかわかりません。
 ですが、手を抜いたなんて知れたら、後で彼女にボコボコにされるのが目に見えてるので、死ぬ気で頑張るしかありません。
 テストでは死なないけど、死ぬ気にならないと後で死んでしまうパターンですね。

 彼女と相対して剣を構えた瞬間、みぞおちに彼女の剣が突き刺さってました。
 痛みで悶絶して、声も出せずに倒れます。
 これ、シールド用の腕輪、ちゃんとお仕事してるんですかね?
 死ぬほど痛いんですけど。
 というか、何も見えなかったので、それだけ隔絶した実力差があるってことなんでしょう。
 勝てる気がまったくしません。
 てか、痛いです・・・

「10秒経過。
 リートが起き上がれないため、エリエルの勝ちとする」

 悶絶する僕をしり目に、審判役の先生が淡々と勝敗を告げました。

「リート、立てる?」

 エリエルが優しく声をかけて、手を差し伸べてくれる。

「猛烈に痛いけど、なんとか立てると思う」

 なんとか声を絞り出して、彼女の手に引き起こしてもらいます。

 情けないですが、商店の息子なんてこんなもんですよね。
 本格的に剣術をやっている人にはまったく勝てないということがわかったので、無駄な努力はやめて魔術とか頑張りたいと思います。

「今、剣術諦めるとか考えたよね?」エリエルさん鋭いです。
「え?お、おもってないよ?」

 なんでこういう時って、疑問形になるんでしょうね。

「リートは、明日からうちの道場でしごきね」

 明日から、地獄が始まることが確定しました。
 なんで、こんなことになるんでしょうか。
 人生、一寸先は闇といいますが、僕の人生まだそんなに長い時間経ってるわけじゃないんですけどね。
 とりあえず今はそんなことを考えてもしょうがないので、次の体力テストをやりたいと思います。

 シールドがあったおかげで、痛みが去ってしまえば身体は自由に動くので、次の体力テストはなんとかなりそうです。
 何をやるのかな?と思いながら行ってみると、マッチョが巨大な岩を持ち上げて、武道場内を走って行きます。

『あんなでかい岩持って走るとか無茶じゃない???』

「体力テストは自分の持てると思う大きさの岩を持って、武道場内を10周してください」と担当の先生が言ってます。

 自分の持てる大きさでいいんだったらどうにかなるかなと思って、置いてある岩を見てみます。
 結構小さいやつもあって、人の頭の大きさくらいのものもあったりします。
 一番大きいやつは、人のサイズよりでかいんですけど、あんなの持てる人いるんでしょうかね。

「その頭くらいのサイズのやつにします」

 と先生に伝えます。

「本当にいいんですか?」

 先生が言ってる意味がわかりませんが、どういうことでしょう?

「他に持てるようなサイズもないので、それにします」
「替えはききませんが、それでもいいですか?」

 そんなに確認しなくてもいいと思うんですけどね。

「それ以外は無理そうなので、それでお願いします」
「わかりました、忠告はしたので、どうぞ」

 忠告・・・って何ですか?

 疑問に思いながら岩に近づいて持ち上げます。
 気合で持ち上げます。
 死ぬ気で持ち上げます。
 まったく持ち上がりませんね、これ。

「先生、これ、重すぎるんですけど」
「だから言いましたよね?いいんですか?って。
 持ち上がらないならその時点でゼロ点ですよ」
「ゼロ点は困ります!」

 焦りながら気合を入れなおして持ち上げます。

 火事場のなんとやらで気合を入れなおして頑張ってみると、地面から少し持ち上がりました。
 そのまま、武道場の周りを周回するべく動き始めます。
 走るとか以前の話で、持ち上げるのがやっとなのですが、死ぬ気で頑張っていきます。

 かれこれ3時間は経ったくらいでしょうか、なんとか武道場を10周できました。
 みんなはせいぜい15分程度で10周してるところなので、ゼロ点ではないでしょうが、タイム的に考えて点数は限りなく低い気がします。
 あんなに小さな岩があんなに重いなんて、騙すにもほどがあります。

「リート、あれは見識眼を見るための一つのテストだよ」

 となぜか待っていてくれたフォルスが声をかけてくれます。

「そうなんだ・・・すっかり騙されて死ぬ目にあったよ・・・」
「剣術では、切れるか切れないかをしっかり見極めることも必要だからな」

 最初から教えて欲しかったです。

 対戦、体力テストともに死ぬような目にあって、この後魔術クラスのテストなんですが僕は耐えられるのでしょうか。
 とりあえず、体力は底をついているので、魔術クラスのテストでは体力を使わないことを祈ります。
 剣術クラスのテストで終わりのフォルスと別れて、フラフラしながら次の魔射場に向かいます。
 はっきり言ってもう自信がまったくないので、学術クラスでいい気がしてきました。

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