最強になった俺は前世の夢を追い続ける。

音感あっきー

2章。コロウの記憶。

俺は強かった。
そして、俺は孤独だった。
誰からも理解されない程の力。
初めは理解してもらおうと頑張った。
自分は何も危害を加えない。
そう言ったのだが、信じては貰えなかった。
自分でも分からない。
どうして自分にはこんなに強い力があるのか。
魔法も他の人より優れ、武術も同様。
ただ、優れているだけなら良い。
違うんだ。
明らかに殺傷能力を持つ魔法と武術。
どんなに、手を抜いても殺傷能力が伴う。
人の顔を殴れば頭ごと消し飛び、横腹に蹴りを入れれば真っ二つに身体が断裂する。
魔法を撃てばそこには何も残らない。
親だけはそんな俺を育ててくれた。
人間の親じゃない。
生みの親は俺から逃げた。
俺の親は狼だ。
キングウルフ。
それが俺の親の世間一般での名前。
魔物だ。
そいつは初めは俺を食おうとしてきた。
俺は抵抗した。
この意味のわからない力で。
でも抵抗しきれなかった。
キングウルフの方が強かったのだ。
目に付いた傷はその時に負けた証拠だ。
俺はもうそこで終わりだと思った。
でも、いっそのこと食べられてこれで人生が終わるならとも思った。
だが、キングウルフは俺に噛み付いたと思ったら、加えたまま俺をどこかへ運んでいった。
目が醒めると、キングウルフと共に寝ていた。
俺は混乱した。
死んだものと思っていたから。
だが、何らかの理由があり俺を殺し損ねた。
ならば今しかキングウルフを殺せる時はない。
そう思い、キングウルフに全力の魔法を打った。
だが、その力はいつもの何倍も弱くなっているように見えた。
消し飛び無くなるはずのウルフには毛皮が少し焦げたような色が付いているだけであった。
攻撃された事に気付いたウルフは俺の方を向いた後、軽く視線を別の方にやって、そして再び寝た。
その視線の方向に俺は目をやった。
そこには2人の人間、いや、獣人の少女が眠っていた。
首には奴隷の首輪が付いていた。
彼女らは何なんだろうか。
俺と同じ様にウルフに連れてこられたのだろうか。
俺は、ウルフが襲ってこない事を確認した後、彼女らの側に近づいて起こしてみようとした。
彼女らは俺が近づこうとした瞬間に目を覚ました。
そして、一気に警戒する様な素振りを見せた。
まるで狼の様だ。
彼女らは近づいて来たのが俺であるのを確認すると、警戒を解いて、話しかけて来た。

「おじさんのお陰で私達助かった、ありがとう」

「ありがとう」

俺には全くその言葉の意味がわからなかった。
それは2つの意味でだ。
まず、俺が彼女らを助けたという言葉の意味が分からない。
俺はウルフに負けてここに連れてこられただけであるのに。
まさか、今から俺はこいつらの晩餐にでもなるのか?

もう1つの意味。
それは、「ありがとう」
俺が生まれて初めて聞けたかもしれない感謝の意を込めた言葉。
俺は暖かい気持ちになった。
孤独でない様な気持ちになった。
嬉しかった。

それからよく分からないまま、俺はウルフと少女2人と過ごしていた。
単純に楽しかった。
人生が変わった瞬間であった。


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