男女比が異常な異世界で最強になった俺は前世の夢を追い続ける

音感あっきー

2章。LOST.

あの日からもう半年経つ。
そう、あの日とは姉さんが消えた日だ。
姉さんが消えた事を母さんと父さんに言った。
勿論、悲しんでいた。
悲しむという言葉で表現するのは何か間違っているのかもしれない。
とても残酷な光景だった。

学園ではSクラスの首席が消息不明となり一時期とても話題になったが、今ではそんな事、無かったかのように日付が進んでいく。
姉さんは忘れ去られた。

「レイン君、見てぇー、これぇ!ジャーンっ!」

「え……なんですか、それ」

「アリエルちゃん特製の卵焼きだよぉー?」

アリエルさんは今、姉さんのクラスの首席だ。
姉さんが消えた事で自然と繰り上がった。
この人は以前、俺に誘惑をかけてきた人だ。
今も誘惑目当てでよく俺に接してくる。
でも、知っている。
この人は俺を慰めようとしている。
ずっと。
あの日から。
ずっと。

「……焦げすぎてません?」

「えー?これはチョコだよぉー」

なお、慰め方がとても下手な模様。
でも、アリエルさんと一緒にいると何か温かい気持ちになる。
そんな気がした。
無くなった穴を埋めてくれる。
俺はアリエルさんを利用しているのかもしれない。
姉さんがいない寂しさ、悲しさを埋めるために。
でも、今は許して欲しい。
いつこの気持ちに慣れるのかは分からない。
責めて慣れるまで……

「……あはは、折角なのでいただきますね……」

口に茶色い卵焼きを放り込む。
とにかく甘い。
そして、地味に塩気がある。
でも、何か温度的な意味ではなく温かい。
そんな気がする。



「レイン君、今からGクラスとの合同授業だって、楽しみだね!ラです」

「うん、そうだね」

ラーラは以前と余り変わらない。
少しは変わった。
俺にとても優しくなった。
それは恋愛的な意味ではなく。
慈悲的な意味でかもしれない。
温かい。
ここにもそんな物を感じる。

「ラーラ、レイン君、早く行かないと遅れてしまいますわよ。ルです」

「そうですわ。ロです」

ルーラもローラもラーラと同じ。
温かい。
俺の周りに居る人は、皆、温かい。
言葉、行動、表情。
全てが俺の心を温めてくた。




「じゃあ、レインと……アーニャ、模擬戦始めるぞー」

「よろしくお願いします……」

「うん、よろしく」

Sクラスのアーニャという白髪短髪の女の子は剣術がSクラスで1番優れている。
その為、よく相手をするのだ。
お互い、欠点を言い合って高め合っている。
と言っても俺に関してはただ速さを頼りに型とか気にせず振っているだけだから欠点だらけだ。
そして、アーニャは、その1つ1つをしっかりと指摘してくれる。
まぁ、指摘された所はどうしても直らないのだが。
剣術自体の才能は皆無なんだろうな俺。
そして、話し合っている時、ラーラからチラチラと視線を感じるのは、きっと気のせいでは無いのだろう。
最も、アーニャも俺の事を好いているようだが。

「始め!」

ラグナ先生の合図と共に互いが相手に素早く剣撃を入れようとする。

かんっ!

かっ!かんっ!

かんかんかんっ!

かかかかかかんっ!

かんっ!!

「参りました……」

アーニャの首元には剣先が向けられている。
俺は勿論、手加減をしている。
本気を出せば訓練所を吹き飛ばすなんて容易い。
そして、そんな俺の木剣の剣先を向けられたアーニャは顔を赤くしてチロチロとこちらを見る。
可愛い。
だが、実際の戦いはこんなにも甘くない。
それをアーニャは知らない。
もっと言えば、王女三姉妹も知らない。
何の為の授業なのか。
そこを考えるべきだ。
戦う為の授業。
誰かを守る為の授業。
大切なものを失わない為の……授業。




がちゃ。

からんからん。

ぎろっ。

「アエンさん、ありませんか」

「……ないな」

アエンさんは少し申し訳無さそうに答える。
ありませんか。
その言葉の対象は依頼の事だ。
何か姉さんに関する手掛かりになるような。
毎日、毎日毎日毎日。
俺はギルドに行った。
姉さんの手掛かりはいつになっても見つからない。
それも仕方が無いだろう。
神ちゃんでもどこに居るかが分からないのだ。
でも、どうしても、僅かな可能性を信じて毎日聞いてしまう。

「……いつまでも子供みたいに毎日毎日うるせぇなぁ」

そんな呟きが聞こえる。
以前からいる正体不明の銀髪で顔に傷の付いた狼のような男だ。
分かってる。
そんな事は。

「……元気…だして」

彼の連れのボロボロの服を着た奴隷の少女は俺に聞こえるか聞こえないか、いや、恐らく俺だけに聞こえる様にそう言っているのだろう。
銀髪の男に聞かれてしまえば、きっと何かしら罰を受けるから。
あくまでも予想だが。

「まぁ、レイン。明日になったらきっと何か変わるかもしれない。また来いよ。気が向いたら他の依頼でも受けな」

アエンさんの言葉は我が儘を言う子供の様な俺の気持ちを少し慰めてくれる。
温かい。
心が温まる。
俺はそのまま他の依頼を受ける事なくギルドを去った。



「ただいま」

「……どうだった?」

「駄目駄目」

「そう……私に出来る事があったら言ってね……」

「はい、ありがとうございます」

俺はミーシャさんに預けているアイを迎えに行く為に女子寮へと訪れた。
ミーシャさんはいつまでも親切だ。
気遣いだけでもありがたい。
きっと少なからず自分にも関係がある事であった為、責任を感じているのだろう。
きっとミーシャさんならそんな責任感など無く、助けになろうとしてくれたであろうが。
温かい。
心に染みる。

「お兄ちゃん、ん」

そう言って俺の方へ手の平を出しながら歩み寄るアイ。
手を繋いでというサインみたいな物だ。
俺はアイの小さな紅葉の様な手を握る。

「家帰ったらキャラメルナッツ食べるか?」

「ん!」

アイはどこまでも無邪気だ。
もしかしたらキャラメルナッツの事しか頭に無いのかもしれない。
でも、これはアイなりの慰めだと何となく分かる。
小さな手から伝わる魔力と温もり。
俺が助けたアイ。
ちゃんと俺はアイを助けれた。
姉さんだってきっと次は助けられる。
そんな風に思わせてくれる。
温かい。




「レイン君……ごめんなさい……」

「謝らないで下さい、仕方が無い事だったんです、それに姉さんは……生きていますから」

「……私だけ助かって…」

「ルーシャさん、それは言わない約束です」

「でも……」

「約束です」

「……」

ルーシャさんはあの日から毎日俺に謝る。
その言葉一つ一つは重い。
心の底に沈んで落ちていき、そして最期には山となる。
もう、沢山聞いた。
別にルーシャさんが悪いだなんて思っていない。
悪いのは他にいる。
それでも、この人はきっと一生、自分を責め続けるだろう。
そういう人だ。
この人は俺と同じ気持ちを背負っている。
共に背負っている。
だからこそ。

「ほら、そんな事より一緒にキャラメルナッツ食べましょ」

「え…ええ……」

渋々承諾するルーシャさん。
最近は俺とアイとルーシャさんで間食や夕食を取っている。

俺だけでいいのだ。
苦しみを背追うのは俺だけで十分だ。




日常の温かさは俺を優しく包んでいる。




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