最強になった俺は前世の夢を追い続ける。

音感あっきー

2章。キャラメルナッツは世界を救う。

今、男子寮の自室で調理をしている。
と言っても、簡単な事しかしていないのだが。

まずは今日取れた蜂蜜。
何か菌がいたら嫌だから、回復魔法で菌を死滅しておいた。
瓶3本一杯に入った蜂蜜。
今世、初である。

そして、沢山取ってきた木の実。

まずは、いくつか木の実を煎る。
フライパンを使って加熱している。
この世界のフライパンは前世と余り変わらない。

次に小瓶に煎った木の実を入れてそこに蜂蜜を流し込む。
これを一晩置けば、ハニーナッツの完成。
一晩置く作業は神ちゃんの力で3秒置いて完了させた。
カップラーメンか。
いや、それでも3分。
神ちゃん様々である。

取り敢えず、木の実を使った創作料理。
アイに食べてもらおう。
単純過ぎるメニューで感想などないかもしれないが。

「アイ、ちょっとこれ食べてみて。」

「ん」
俺はアイにハニーナッツの皿を差し出すが、口を、あーっと開けたまま俺の目をジーッと見て食べようとしない。
まさか…。
良く出来た子だ!
あーんをしろって事だろ?
雛鳥みたいで可愛すぎるわ。

「はい、あーん」

「ん」
口の中にハニーナッツを入れるパクっと口を閉じる。
やべぇ、動作1つ1つが神様からの癒しのようだ。
『可愛いですね』
神ちゃんも絶賛!!

「おいし」

うおおおおおおお。
お兄ちゃん頑張って良かったあああああ!!!!
やべえ、姉さんに対してシスコン拗らせてたけど、これは妹ちゃんにもシスコンを拗らせるべきか?
いや、周りから見たら俺はロリコン…?
でもでも、俺はまだ10歳!
ロリコンと呼ばれるにはまだ早すぎるぜっ!!
それに、アイはもう家族だ!!
まぁ、母さんにも姉さんにも何も言ってないんですけど。

『頑張ったのは私ですけどね…』
まぁ、それは言えてる。
神ちゃんが蜂の巣から蜂蜜を取り出した上に一晩漬けておく物を3秒で済ませたんだから。
俺がしたのは精々、蜂の巣を凍らせて、木の実を煎っただけ。
神ちゃんのお陰です。
ありがとうございます。

「因みに、エルフは蜂蜜をどう使うの?」

「これ」
アイはハニーナッツに指を指す。
あら、これはこれは。
考える事は同じだったという訳か。
これは、他の使い道を探して驚かせなければ…!

「ナッツは?」

「これ」
うーん。
という事は、アイはハニーナッツが食べたかったのか。
もしかしたら、思い出があったのかもしれない。
こんなピンポイントな料理を食べたかったのだから。
まぁ、それはいずれ、心の傷が癒えた時に聞こう。

「アイ、ちょっと待っててねー」

俺はナッツの使い道が今、パッと頭に浮かんだ。

砂糖とミルクをフライパンに入れて加熱する。
色が少し茶色くなって来たら加熱を止めて、そこへ煎った木の実を投入。
しっかりと絡ませていく。
そして、少しだけ冷却する。

キャラメルナッツの完成だ。

どうやらアイは今までに嗅いだ事の無い甘くて良い匂いに少し肩を揺らしてソワソワしていた。
その動作も可愛過ぎる。

「アイ、これ食べてみて」

「ん」
また口をあーって開けたまま、俺の目をジーッと見ている。

ふははは、仕方が無い、是非是非あーんをさせて頂く。

「はい、あーん」

「おいし…おいし!」
アイは一度驚いた様な顔をした後、頬を緩ませてニコニコしながら呟く。

その笑顔……120万円!!
俺、300万円で買います!
釣りは要らねえくれてやる!
ははは!
これで毎日、120万円の笑顔だ!!
2億5000万円の瞳は?
買います買います!
3億円で買います!!

茶番はこれくらいにして…

「初めて食べた?」

「ん!おいし!食べよ?」
アイはニコニコしたまま呟く。

俺にキャラメルナッツを共有する事を許してくれた。
はう!
なんて優しい世界!
これなら争いなんて起こらない!
アイと共有するキャラメルナッツ1つは、こんなにも人を幸せにするのか!
いや、寧ろ独り占めしたい!
こんな、貴重な経験を…
うおお、前世の俺!
聞こえてるか!
何か、俺、優しい世界にいるぞ!
キャラメルナッツは世界を救う!
アイ、俺と共に平和を作ろう!!!

「ん」

見てろよ?世界!!
アイがキャラメルナッツで世界を救う所を首を洗って待ってろ!!
いいや、心を洗って待ってろ!
不純な者にはこの幸せが分かるまい!
いや、アイのキャラメルナッツなら不純な者を優しい世界へ導く事も可能かもしれない!
アイは世界を救う!
そう、キャラメルナッツと共に!!!

「ん」

アイ、俺と一緒に頑張ろうな!

「ん」

俺達でこの世界を優しい世界に変えような!

「ん」

ん?

「ん?」

ん?

「ん?」


「「ん?」」



あれ、もしかして。

『声に出てました』

わぉ。
思いが強過ぎると口は勝手に動いちゃうのね?

「優し、世界、頑張る」

胸の前に両手で拳を作って張り切るアイ。
あぁ、この子は俺をどこまで狂わせるんだ。
愛おしいいいいいい!!!!

「お兄ちゃんと頑張るか!」

「ん!」

アイは天才児らしいからな。
アイには、暗黒魔法とか言う残虐な魔法じゃなくて、もっと爽やかな幸せ溢れる魔法をコピーしてもらおう。
アイは俺より年下に見えて仕方がないが、年上だからな。
ギルド登録もできちゃう訳だ。

とか思ってたら。

「冒険者」

「え?」

「冒険者、なる」

もしかして俺の心を読めちゃうの?
魔眼にはそんな効果が…?
いや、アイの瞳は2億5000万円だったな。
有り得るか。
『たまたまです』

「じゃあ、明日、アエンさんの所に行こうか!」

「ん!アエン」


これで、明日の予定は決まった。
でも、取り敢えず今は俺の作ったキャラメルナッツを、アイに恵んでもらったこのキャラメルナッツを、世界を優しさで包むキャラメルナッツを、食べなければならない。

アイ様、アイ様、神様!
神様も分かるよね!
この気持ち!

神の気持ち!絶賛発売中!

俺は恐る恐る口にキャラメルナッツを放り込む。いや、神ちゃんを媒介に神様に気持ちを伝えるかのように、口の中に奉納した。

口の中で、ほどけるように広がるホンノリとした砂糖本来の甘さとミルクによる滑らかさ。
そして、その中にカラメルとしてのホロ苦さが混じる。
ナッツを煎った事による芳ばしさが、その苦さと絶妙に混ざり合い、深みのある苦さへと変換させ、それがナッツの甘みに飲まれていく。
これは、キャラメルナッツなんかじゃない。
改名すべきだ。
アイのキャラメルナッツだ。
勿論、掛け言葉だ。
比喩になる方を間違えてはいけない。
まるで愛がこめられているかのような、アイのキャラメルナッツ!
いいや、案外、逆でも成り立つかもしれない。
まるでアイを食べているかのような、愛のキャラメルナッツ!
売るか?
売っちゃうか?
いいや、売らせはしない。
アイに愛された者だけしか食べてはならない禁断の味。
これを味わいたければ、誰にでも優しくあれ、憎しみは平和的に解消せよ、自分の欲に溺れるな、優しい世界を作るのだ!

『レイン様、ルーシャ様が店で男性に絡まれています』

だにぃ!?
さっそく、優しい世界を壊したな?
しっかりと改心させて、このキャラメルナッツを食べさせてやる!!!

「アイ、ちょっと優しい世界を作ってくる。ここで待っててな。キャラメルナッツ、少し貰ってくね。」

「私も」

「分かった!アイ、行こう!」

「ん」



俺はアイを背中に背負ってルーシャさんの所まで瞬足で行く。
瞬足は魔法ではなく、神ちゃんチートらしいため、アイもコピーできないらしい。

よくよく考えてみたら、アイを連れてきて良かったのか少し迷えて来た。
もしもアイが危険にさらされたら…とか、もしもアイが何か悲しむような事があったら…とか。
うーん。
ちょっと、キャラメルナッツのせいで熱くなり過ぎたな。
反省。
でも、今更引き返しても仕方が無い。
命をかけてアイとルーシャさんを守ろう。
ルーシャさんなぁ…。
ミーシャさんみたいになって欲しいとは言わないけど、少し損してると思うんだよなぁ。
俺が帰りが遅くなった時はいつもお詫びとして、何か食材をあげるのだけれど、一応、感謝しとくわ。みたいな感じで、人によってはその態度が気に食わない人もいると思うんだよな。
俺はまぁ、ルーシャさんはそういう人だと思ってるから良いけども。
何で、ミーシャさんとルーシャさんでこんなにも真逆な差があるのだろうか。

そんな事を考えているとルーシャさんが男に胸ぐらを掴まれているのを見つけた。

取り敢えず、引き離す…か。

「アイ、しっかりフード被っとけよ」

「ん」

俺は走っていた勢いを落として、歩きながら2人の間に入り、ルーシャさんの胸ぐらを掴んでる男の手をしっかりと掴んだ。

「何だ?クソガキ!」

「れ、レイン君!?」

「取り敢えず、手を離しましょうか」

そう言って俺は男の手を少し強めに掴む。
と言っても、強めというのは手の骨を軋ませるくらいの力はある。

「いたたたたた!」

男はルーシャさんから手を離し少し距離を取った。

「レイン君、どうして…」

あれ、いつになくルーシャさんが弱気だな。
まぁ、威圧されて少し怖かったのかもしれない。

「あの、まずはこうなった経緯を教えて頂けますか?」



そう言うと、ルーシャさんから説明があった。
時々、男が話に入ってくるが無視する。

どうやら、男がルーシャさんに道を退けと言ったらしく、そこからルーシャさんのツンが炸裂し、男は怒り心頭。
結果、胸ぐらを掴んでぶん殴ろうとしていたらしい。
まぁ、なんと言いますか、いつこんな事が起こってもおかしくなかった気はするなぁ。

「あの…しょうもなさ過ぎませんか?」

「あ?」

「道を退けって別に貴方が1歩か2歩、斜めに歩けば前に進みながら避けれるでしょ、いちいち道を退け退けって言ってる時間があれば避ければ良い。貴方の道を譲りたくない幼稚なプライドは少し捨てて下さい」

「お、おう……」

あ。少し腹が立ってるからか何か酷い言葉が混ざってしまったな。

「ルーシャさんも、別に性格は貴方の個性ですから直せとかは言ったりしませんが、責めてコントロールくらいはして下さい、初対面の相手にツンツンした態度は少し毒です。知り合いの前だけにしましょう」

「はい…」

あれ、今度は気をつけた筈なんだけどなぁ…。
ルーシャさん、こんなにも素直だったっけ…。

『…………。』



「すまなかった…」

「いいえ、私こそ…」


あれ、仲直りしちゃったよ。
何か単純過ぎないか?

「お兄ちゃん、凄い」

アイがそんな事を言う。

うん、確かに凄く見えるよね。
でも、俺はビックリだよ、てっきり男はムカついて殴りかかってきて、ルーシャさんはもう知らない!とか言ってズカズカとどこか行ってしまうのを予想していたんだが…。

『あの、レイン様、神様から新しい力を頂いていた様です』

「はっ!?」

「ん?」

つい声をあげてしまった俺にアイは疑問の声を出すが、何もないと伝えておいた。

いや、しかし、何の力?

『説得力を増す力だそうです。魔王ユウト様にあげた力をレイン様にも差し上げていたそうです』

マジか、説得力を増すって…。
内容が薄くても勝手にその論があっているかのような錯覚を与える力って事だろ?
発動条件無かったら危ないぞこれ。
俺が、女の子に、脱げっ!って言ったら、あー、確かに、良いかも。とか言って、脱ぎ出す可能性多有りだよね。

『コントロールは私に任されている様です。私がレイン様の意見にある程度、同意すると、発動するみたいです』

おお、じゃあ、神ちゃんの監視があるわけか。

(神ちゃん、ルーシャさん、脱がせて良い?)

『駄目です』

ですよねー。


こんな訳で、新たな力を授かったレインであった。

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