最強になった俺は前世の夢を追い続ける。

音感あっきー

2章。諜報暗殺部隊隊長のキールは人を殺した事が無い。

グレンSide

レインと別れた後、私は王様達を連れて訓練場へと向かっていた。
途中でラグナ先生と王女様達と遭遇し、行動を共にする事にした。

「お父様、これは何の騒ぎなのですか?」
ラーラが王様に聞いている。

「あぁ、ちょっとな」
王様は言葉を濁した。

流石に騎士団が攻めて来た。とは言えない。
これは明らかな失態だ。

「皆、避難は終わったのか?」
王様はラーラに聞き返す。

「いいえ、まだ、1年生と2年生のSクラスが残っていますわ」

「よし。急ごう」
王様がそう言って、私達は2年生を避難させた後、1年生のSクラスへと向かった。



「生徒の皆、今すぐ訓練場に避難して!」
ラグナ先生が避難を促すと、ゾロゾロと生徒が移動を始める。

そして、
「あのー、王女様達が戻ってないようなのですが………」

そうラグナ先生に言っていたのは今日、見学に来ていた2人の女性の内の1人。

「あ、はい、王女様はここにいますよ」
ラグナ先生がそう言って、王様達の方に顔を向ける。

「では、レインという者は…」

「今、騒ぎが起こっているため、その騒ぎの中心に向かっていると思います……でも、何でレイン君を…?」

すると、
「ありがとうございます」

ずしゅ。

お礼を言った1人の女性はラグナ先生の喉元をナイフで突こうとしたが、ラグナ先生がギリギリで躱し、肩に刺さった。

私は何かを感じた。
この動きと声は何処かで見て、そして聞いた事があった。
暗殺術?
王女様とレインを狙っている…
私は直ぐに、ラグナ先生を支えて、後ろに後退する。
そして、攻撃して来なかった方1人は窓から出ていった。
顔はよく見えなかったが、かなり速い動きだ。
そして、もう1人の暗殺術を心得てる雰囲気の方は残った。

「ラグナ先生、王女様達を連れて訓練場まで最短距離で逃げて下さい、狙いは王女様です。暗殺術を心得てる様なので、かなり速いと思います。私は護衛をしながら着いていきます。」

「は……はい。わかりました……。」

「光れ、傷を癒やし給え、ヒール!」
私はラグナ先生に苦手な回復魔法をかける。

少しずつ傷は塞がれていくが、完治とまでは行かない。
どうしたらレインのように回復魔法ができるのだ…理解不能だな。

「ありがとうございます…気をつけて下さい」

「あぁ、任せておけ」

そうして、王様達はラグナ先生と共に逃げる。

私も新たな敵が現れた時のために、それに続きながら敵に抜かれないようにする。

幸い、王様と女王様は隠蔽魔法で一般人となっている為、敢えて狙う事は無さそうだが、狙いの王女様達と一緒にいるとなると、さっきのラグナ先生と同様に狙われない保証はない。

取り敢えず、足止め、足止め。

「お前は誰だ!顔の隠蔽魔法を解け!」

「暗殺者は自分の情報を教えないのが当たり前なんですが、貴方は何者ですか?尋常じゃない雰囲気がするのですが…」

「お前が言えば私も言おう、私はお前の声に聞き覚えがある」

「ほう、では殺してから確認するというのはどうですか?」

「良いだろう」

相手の顔は隠蔽魔法が掛かっている。
レインに隠蔽魔法をかけられた人間を見たからか、すぐにそれだと分かった。
そして、相手は私が隠蔽魔法を使っているとは知らない模様。
殺して姿を確認するのが楽だが、学園内で人を殺すのは少し躊躇われる。
レインも多分、殺してはいないだろう。
しかし、害であるのは確実だ。
立ち上がれないくらいには痛み付けないと…

「ふっ、直ぐに終わらせてやる。死ね!」

物凄い速さで近寄ってくる暗殺者は片手で短剣を投げながら、人間離れした身のこなしで飛び、体を回転させ、回し蹴りを繰り出す。
計算された攻撃。
私が短剣を躱せば回し蹴りに当たるような距離感だ。

かきんっ。
私は片手で剣を抜き短剣を弾き、もう片方の手で魔法を撃とうとする。
無詠唱であるため威力はかなり落ちるが、それでも普通の騎士レベルの威力はある。
レインは意味の分からない詠唱で意味の分からない程の威力が出るが、正直、無詠唱とほぼ変わらない気がする。
アイツは規格外だ。
頭おかC。

「風魔法!突風斬!!」


回し蹴りを繰り出そうとする敵に風の刃が当たる寸前で普通はあり得ない動きで躱される。
まるで軟体動物かのように。
そして、距離が近くなった私と暗殺者。
私は片手に持っている剣を振る。
が、相手は何か魔法を撃とうとしている。

ぶんっ!


私の斬撃は空を切る。

そして、
「火炎魔法。煙玉!」
相手の無詠唱魔法と共に黒い煙に覆われる。
私は、自分の身に危険が迫る可能性と、王様達の身に危険が迫る可能性を考えて、逃げると同時に王様達を追いかけた。

煙から抜け出すと、前には暗殺者がいた。
やはり、王女様を優先するつもりだ。

相手は私に気づき驚いているがその足を止めない。
私は最高速度を出して追いかける。
この間に1つ魔法の詠唱を終えた。
段々と距離が迫る。

「くっ!何でそんなに走るのが速い!!火炎魔法…」
相手は火炎魔法を撃とうとするがその隙は与えない。

「風魔法!迅速っ!」

ひゅん!!

「はぁっ!!」

ずしっ!!!

風魔法、迅速は自分の走る速度を数秒間の間、増す魔法である。
ただし、私は1秒が限界。
身体強化の魔法では出しきれない速度だ。
身体強化との掛け重ねもできるが、魔法の制度が落ちて1秒も持たなくなる。
そして、私は迅速の魔法で上がった速度で勢いを乗せた蹴りを入れた。
蹴りは敵の骨を何本か折った感覚がある。
これで、戦闘不能になるだろう。

「く……くそっ!!ていっ!」

「!?」

敵は骨が折れているにも関わらず、私に向けて短剣を投げ、そして再び走りだした。

私は驚きで短剣を躱し損ねる所だったが、相手のコントロールが少しズレていたため、躱しやすかった。
それにしても、何で動けるのだろうか。
私は再び最高速度で追いかける。
少しずつ距離が迫る。

「風魔法、突風斬!」

相手の足元に向けて撃つ。

どごっ!

相手はバランスを崩し凄い勢いで前に転がる。

そして、それに追いつくべく私も全力で走る。

今の転がっている間にもいくつか肋骨とか折れていそうな雰囲気だが、何かコイツはおかしい。
痛みさえ無視して全力を出している雰囲気だ。

追いついた私は敵の頭に思い切り速度を乗せた肘打ちを食らわす。

そした、敵はその勢いで再び転がり骨が折れる音を何度か出しながら、意識を失って倒れた。

私は、近寄って顔を確かめた。
気を失った時点で隠蔽魔法は解けていたみたいだ。
そして、正体が分かった。

「国の諜報暗殺部隊…隊長のキールか。いつも王城にいるから声を聞いた事があるわけだ…」

国に対する反逆だろうか。
だとしたら何か不満な事があったのか?
いや、そんな事は無かったはず。
コイツは王様にかなり、よくしてもらっていたはすだ。
何か他に理由が…

私はソイツの服を脱がして武器になりそうな物を全て回収し、手と足をそこの辺にあったロープで何重にも縛り付けて背負った。
相手は女の子だから別にやましい事はしてないよ?
ちょっと私より大きい胸にムカついて触ってしまったけど…

私は走って王様達へと合流した。


訓練場には、これでもかという程の生徒。
10学年全員がいる。
本来なら私はここでレインの手伝いに行くべきなのだろうが、暗殺隊長の目が覚め次第、話を聞くため残っている。
それに、レインなら大丈夫だと思っている。
倒すつもりの無かった古竜を魔法で知らずの内に倒すような奴だ。
メチャクチャ過ぎる。
私も頑張らなくては……
Sランクとは言っても、10歳の少年に負けてるんじゃなぁ、悲しかなってくる。

そして、それから暫くして目を覚ました暗殺隊長キールであったが、何が起こっているのか全く分からない様子であった。

「おいおい、キール、私に攻撃したのとか忘れちゃったの?王女様とレインを狙ってるみたいだったし」

「え、何ですかそれ。レインって誰ですか?しかも、体中何か痛過ぎですよ、骨折れてません?これ」
暗殺隊長キールはその様に言う。
考えてみるとさっきとは少し表情が違う気がする。
さっきはもっと冷たい顔をしていた。
今は、王女様だとかを狙ったと聞いて若干青ざめてはいるが、温かみのある表情に富んだ顔だ。

「えええ、じゃあ覚えてる記憶を辿ってよ」

「ええっと……王城にいて……ん?王城にいて………何か外で騎士と貴族が喧嘩してるから…ってなって駆けつけたら、いきなり変な光を浴びた気がする。」
よく考え込むように、キールは顎に手を当てている。
嘘には感じられない。

「光を浴びて誰かに操られていたって感じかなぁ」

「あっ、何か光を浴びた後に男の声で学園にいるレインと王女を殺せって言ってた!!!そこから、何言ってんだコイツって思ってたんだけど……何か私、殺そうとしてたみたい、てへ」
舌をペロッと出して言う。

「いや、てへ、とか言ってる場合じゃない、1人刺してるからな?死んではないけど」

「ぎょええええええ!!!謝らせて下さい、その人に、今すぐ!!!」
本当に何も分からなかったかのような雰囲気。
操られていたというのが確かなら納得がいく。

「ここにいるよ、この人。ラグナ先生。」
私が紹介する。
肩にはまだ少し傷は残っているがレインに後で治してもらえばきっと大丈夫。

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!!!!!!」
泣き喚きながら謝るキール。
ラグナ先生は少し驚きながらも仕方が無い事だったと理解し、肩を叩いて慰めてあげている。

「あの…グレン…刃物に毒は塗ってありませんでしたか……?」
申し訳なさそうに言うキール。

「「えっ………」」
顔面真っ青の先生と私。
言われてみると先生の顔色が少し悪い様な…

「さっきから、フラフラするのって……」
ラグナ先生が言う。

まさかのまさかだ…。

「毒ですね、本当にすみません、暗殺部隊隊長と言っても暗殺する事は今まで無かったので死ぬ様な毒は持ってなくて、えへへ、目眩を起こす毒が塗ってあるだけです。命に関わるものではありません!」
そうドヤ顔しながら言うキール。

「えへへ、じゃないよ、危うく死ぬ所だったじゃないか」
私は少し叱った。

「うううう、ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!!」

再びそう泣き喚くキール。

その姿を見ていたラグナ先生は呆れながら、大丈夫ですと言い続けていた。

「王様、キールの事なのですが……どうしますか?」

先程の会話を聞いていた、王様、女王様、王女様。
その顔には怒りという物は大して無かった。

「まぁ、話を聞いた所だと操られてたらしいしな、罰とかは考えてない。ただ、その変な貴族を捕まえなければ気が済まない。人を操り娘を狙ったのだ、許してはおけない」

「ですね、私も協力します」
「私も!挽回せねば!!」

私が賛同するとキールも賛同した。

「だな、後はレインの帰りを待つだけなのだが………少し遅いな…。」
王様は心配そうな顔を浮かべる。

「大丈夫なのでしょうか……」
ラーラを含む三姉妹、女王様も心配そうだ。

「まぁ、レインに限って死ぬとは思い難いけどなぁ。竜を雷で落とす様な奴だし……」
私が前の依頼の事を少し口にすると…

「え、何ですかその話!前の依頼の話ですか?」
ラーラが聞いてきた。

「え、レインから聞いてないのか?アイツ、飛竜の攻撃を避けるのが面倒だからって言って意味の分からない詠唱したら竜に雷が落ちてさ、全部、煙を出しながら空から落ちてきたんだよ、中々残酷な絵面だったなぁ。その後は、倒すつもりのなかった古竜にも雷が当たってたみたいで、それも落ちてきて、私とレインはそれに潰される予定だったんだが、レインが私をお姫様抱っこして走って逃げてくれたんだ。あれは、流石に死を覚悟したんだけどなぁ、今、生きてるから驚きだよ、あはは」

「「「「「「…………………。」」」」」」

沈黙。
あぁ、レイン、もしかして隠してたのか?
中々の武勇伝になりそうなんだがな。
自慢しないなんて珍しい男がいるもんだ。

「グレンさん、お姫様抱っこしてもらったんですか?」
沈黙の中、ポツリとラーラは顔を暗くして言う。

あれ、もしかして……


「もしかして、レインの事、好きなんですか…?」
私はラーラに耳打ちをする。

するとラーラは顔を真っ赤にする。

「い、いえ。そんなんじゃ、ありませんわ」

うん、バレバレ。

「ま、まぁ。そうだな、一応、必要無いと思うが、レインの様子を見に行こうと思う」

「そうだな、頼む。こっちには10年生もいる。大丈夫だ。」
王様はそう言う。


「では、行ってきます」


私は、そう言って訓練場を後にした。



そして、レインのいる場所に行き、私は目を疑った。




血は出ていないが大量に倒れている人。
毒殺テロが起こったかのようだ。





そして、最後の1人と戦っているであろう、レインの血だらけでボロボロの姿を見つけた。

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