男女比が異常な異世界で最強になった俺は前世の夢を追い続ける

音感あっきー

2章。王様は顔がぐしゃぐしゃだった。

グレンさんの部屋から俺と王女三姉妹は退出した。
アエンさんは話していくらしい。

「にしても、王城に来て王族に普通に会うことになるとは思わなかったわ」

「そうですか?私は比較的フラフラとしているのですが」
ルーラが言う。

「私もですね」
ラーラが言う。

「私もですわ」
ローラが言う。

何だろうか。
この王女三姉妹。
全く緊張しない。

「そういや、ルーラは寮じゃないんだな」

「はい、寮でも良かったのですが…お母様から余り……離れたくなかったので…」

「女王様?マザコン?」

俺、かなり失礼だな。
反省。

「まざこん、というのが何かはよく分かりませんが、お母様は………病気なのです…。」
ラーラが言う。

「カンポーヤクを使っても治らなくって……」
ローラが言う。

「カンポーヤクは栄養剤だから、栄養不足が原因の病気にしか効かないよ?」

「そうなのですか!?」
ルーラが言う。

「うん、あれは僕の故郷で作ってるからね。こんな事するのは無礼かもしれないけどさ、僕、回復魔法は人より何倍も得意でさ、一回、女王様を診断してみてもいいかな。病気が治せるかは分からないけど、僕、回復魔法師よりも回復魔法が上手って言われてるんだ」

「そういえば…試験の前に、騎士様を一瞬で治していた気がしますわ…。レイン君なら……」
ルーラが言う。

「よく分からない病気だけど……良い?」
ラーラが言う。

「うん、大丈夫。やれるだけの事はするよ」



大勢で行くと迷惑をかけそうという事で、ルーラと俺で行く事になった。


「お母様、部屋に入りますわね」

がちゃ。

「こんにち……は。」

「お母様…?」

とてつもなく冷たい感覚に襲われた。

ベットには、皮肉そうに笑っている女王様がいた。
だが、目に涙を浮かべている。
とても奇妙だ。
そして、若干だが、体が不規則にビクンっと動いている。
痙攣だ。

「なぁ、ルーラ、今までの症状はなんだったんだ?」
俺は小さな声で聞いた。

「…………。」

ルーラは何か恐ろしい物を見たかのように、少し泣きそうになって、ぺたんと座り込んでしまった。
その気持ちも分かる。
これは異常だ。
感情と表情が食い違っているのが分かる。

俺はルーラの頭を撫でながら小さな声で聞いた。
「発症したのはいつ?」

「二週間前…くらいかな…」

「初めの症状は?」

「口が開き難い…って言ってたり沢山汗が出たり…寝違えたり…体が痛いって…そしたら、足とか動かなくなって…喋れなくなって……」

「そっか…ありがとう」
俺は頭を撫でながら、お礼を言った。

「治して…レイン君、お母様を治して…お願い…お願い……」
泣きながら、足に捕まって懇願してくるルーラ。
少し声が大きい。


ビクンっビクンっ


女王様は痙攣した。
まるで声に反応したかのように。
痙攣するその度に、女王様からは苦痛に耐えるかのような涙と、不自然な皮肉気な笑顔を見せる。


俺はこの病気を知っている。
症状も原因も。

医学科に行きたいって思わなかったら多分、名前は聞いたことがあっても、詳しい原因は解らなかったと思う。
とは言っても魔法があれば、知らなくても治せるかもな。

「ルーラ、声を小さくね…。音や光に反応して痙攣が起きるから、気をつけてね…」

「この病気は、多分、破傷風って言う病気だよ。土とかが付着した物で怪我をした後に怪我を治すのを放っておいたりすると発症する。女王様が笑ってる様に見えるのは、筋肉が硬直してるからだよ」

そして、この病気の面倒な所。
それは、ただ怪我から入った菌を消毒するだけでは何の解決にもならないという事。
菌が出した毒素を無くさない限り、症状は悪化する。
恐らく、小さな気にならない怪我だったんだろう。
回復魔法師が回復させられるのは怪我、そして、精々、体調不良程度。それも、十分には出来ない。
治らないのも当たり前だ。

「今から治療をするね…」

(神ちゃん、破傷風で合ってるよね?)

『はい、ここまではっきり症状が現れれば断定しても良いかと。気づくのが早くて良かったですね。』

(あぁ。この病気は意識が朦朧とする事はないからな、ずっと苦痛を味わう事になる。それに、もうすぐで、あの有名な絵に近い症状に達する所だったし)

あの絵とは、
裸の男が、仰向けで大きく体を沿って痙攣している絵である。
体が弓状に曲がっている衝撃的な絵だ。
筋肉が痙攣するため、悪化するとそのような体勢になってしまう。
そして、そのまま、背骨を折ることもある。

『毒素を殺せば良いですから、風邪を治す時と同じ感覚で大丈夫です。』

(了解)

俺は女王様に目を閉じる様に、自分の瞼を指差し閉じる仕草をして伝えた。
この状況で、それが出来るかは分からなかったが、閉じてくれた。
回復魔法による、光を見せない為だ。
声を出さずに心の中で詠唱する。
(ハイヒール。)

神ちゃんを通じての魔法だから、女王様の体に黒いモヤモヤがあるのがよく分かる。
そして、それが全て消えていくのも良く分かる。

治療が終わった。
次に硬直し続けて張った状態の筋肉を解す。
(ハイリラックス)

徐々に、皮肉げな笑顔が緩んでいく。
全身も少し強張っていたのが、解けたようだ。

開放された気持ちからなのか女王様は再び目を瞑りながら涙を流し始めた。

「まだ体は痛いですか?」
一応小さな声で聞く。

「…すぁ、さ、先、程より、くぁは痛く、あいえすが…今、も…痛い、えす…」

『後遺症が残ってますね。強制的に筋肉が張ったまま硬直していたので、沢山の筋繊維が切れているんでしょう。うまく話せないのはそれが原因だと思います。レイン様、強制回復を使った方が良いかと…』

(回復魔法じゃキツい?)

『はい、見えていないだけできっと筋肉はかなりボロボロでしょうし、後遺症も強制回復なら治ります。』

魔法陣の巻物は昨日使ったから無い。

「ルーラ、何か紙………え?」

ルーラが俺を抱きしめた。

「お母様が、喋った…お母様が喋ったよ…レイン君」

破傷風は徐々に筋肉が硬直して、口が開かなくなっていく。
そのため、声を聞いたの自体、久し振りだったのだろう。
辛かっただろうな。
ルーラも女王様も。

「よかったな。でもな、ルーラ、女王様は今、ちょっと後遺症が残ってたり、全身がボロボロで痛みが収まって無いんだ。だから、今から、それを治すために大きい紙を持ってきてくれないか?」

「………ありがとう、レイン君……ありがとう…」

紙を取りに行ったルーラは女王様が少しだが、話せる様になったのが嬉しかったのか、ラーラとローラ、そして、父親である王様のルージュまでもを呼んで戻ってきた。
そういや、女王様の名前何だっけ……。

『アリスですよ。』

(何で、神ちゃんが知ってるんだ?)

『あのー、私が人のプライベート以外は全知全能って事を忘れましたか?王族は情報公開が多いので名前くらい知ってて当然ですよ』

(あはは、そうだった。)

『因みに、レイン様、フルネームは分かりますか?』

(そりゃ、名前が分かれば分かるよ、アリス・フォン・アンダンテだろ?)

『良くできました。頭を低くして王様に名乗って下さい』

(むむむむむ…)

俺は頭を低くして王様に挨拶をした。
「えー、私は………レインです。ルーラ様とは学園が同じで仲良くさせて頂いてます。女王様の治療をさせて頂いてもよろしいでしょうか。というか、既にさっき軽くですが、治療してしまっているのですが。」

やべぇ。言葉使い合ってる?
というかって、王様の前で使って良い言葉だっけ…

「うむ………続け給え………」
王様のとても暗い、何でも闇に取り込むかのような内心、怒りに満ちているかの様な声が聞こえた。

何か怖い…。怒ってる…?顔見れない…。どうしよう…。

「お父様?泣いていらっしゃるのですか?」
ラーラが言う。

え、怒ってるんじゃないの…?
俺は少し顔を上げて王様を見た。

「だって…だってええ……アリスが…もう死んじゃうと思ったからあああ……」

俺の目に入った光景は、イケメンな男性が顔をぐしゃぐしゃにして泣いている様子だった。

うーん、鼻水。

早く、元気な女王様に会わせてあげねば俺の心が痛む…。

「ルーラ、紙をくれるか?」

「はい、大きめの紙ってこれくらいで良いですか?」

渡されたのはこの時代では珍しい真っ白な紙。
こんな貴重品良いのだろうか…

「ええっと……真っ白じゃなくて良いんだよ…?」

「すみません…ココにはそれしかなくて……」

ああ、忘れてた、ここは王城だったな。
気にするだけ無駄というやつだ。

「わかった。ありがとう。」

(神ちゃん、短剣)

『了解しました』

ストン。

ずしゅ!!

「「「「えっ………」」」」

いつもの事だが、自分の手の平に思い切り短剣を突き刺した。

「レイン君、何を…」
「坊主、早まるな…!」
「レイン君、狂った…?」
「レイン君、大丈夫なの…?」

いつも通りの反応にいつも通りの回答をする。

「あはは、必要な事なんです」

すーーーー

すーーーー

ぺた。

紙に魔法陣を書いた俺は陣内に入って魔力を流す。

『強制回復を実行します。対象は女王様。実行。』

女王様が白い光に包まれる。

(よし、ありがとう神ちゃん)

『いえいえ、20分程で完治します。かなり、筋繊維が切れているようです。』

(了解)

「20分後には後遺症も痛みも完治すると思います、それまではゆっくりしておいて下さい」

俺は女王様にそう伝えると、女王様は、こくり、と頷いて涙を流してこう言った。

「あいあとうごあいます…」

「お気になさらずっ」
俺はニコッと微笑んでおいた。

「坊主、アリスは治るのか……?」
王様が心配そうに聞いてきた。

「もう少ししたら、ちゃんと喋れるようになると思いますし、歩ける様にもなると思います。」

「ほ、ほほ本当か…本当なのか…?」

「はいっ」
俺は王様にもニコッと微笑えんでおいた。

「「「レイン君ありがとう」」」
三姉妹が同時にお礼を言う。

何か少し照れ臭い。
「えへへ」



1つの家族を幸せへと導いたレインであった。


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