最強になった俺は前世の夢を追い続ける。

音感あっきー

2章。氷の花。思わぬ刺客。

緊急依頼を引き受けたレインと『夢の欠片』達はアンダンテ平原へと距離を詰めていた。

「すげぇ、遠くからでも見て分かるくらいには多いな」

草原を踏み荒らしている、灰色の動物。
ブラッドウルフだ。
真上から平原を見ると、きっと、灰色の雪が積もったと表現できる程の量だ。

「まさか、こんなに多いとは思わなかったわ」
アールさんも唖然としている。

一匹狼のブラッドウルフがここまでの群れを作るのにはきっと理由がある。

「きっと何か血を流したままの魔獣がいるのよ」
ウールさんはこう言う。

そんな気がする。
でも、それならば何故、その魔獣を食らったりしないのだろうか。
一応、魔獣にも食物連鎖はあるはずなのだが…。

「私、少し怖い……レイン君こんな所に連れて来ちゃってごめんね…。」
エールさんが不安そうな顔をする。

群れと聞いても地面が見えなくなる程の群れは想像しなかっただろう。
俺も驚いている。

「あはは、大丈夫ですよ。何かあったら僕は皆を魔力を使い果たしてでも守ります。自分で言うのも何ですが…僕はそれが出来るくらいには、強いと思います。」

とは言ってみたものの、俺は10歳の新人。
頼りになると言っても、ただの強がりにしか聞こえなかっただろうなぁ。


そんなこんなで…

かなり近くまでやってきた。
まだ群れは俺たちには気が付いていない。
そして、気づいた事がある。
群れができている原因だ。

『レイン様、怪我をしている人間が結界に閉じ込められています、原因はそれです』

(人間…か。結界は壊れてない?)

『はい、比較的強い結界です、ブラッドウルフには壊せない物ですね』

(何人くらい?)

『大体、10人くらいです。皆、血を流しています。』

(生きてるんだよな?)

『はい、意識は朦朧としてそうですが…まだ命はあります』

(わかった、ありがとう)


「あの、群れの原因が分かりました。平原の中央に強い結界に閉じ込められた怪我をした人が10人程います。恐らく、ブラッドウルフが匂いに釣られてやって来たものの、結界が壊れない為、どんどん溜まっていったんだと思います。結界は結構しっかりしてるので壊れる心配は無いと思います。」

改めて検索魔法で確認すると、しっかりと引っかかった。

「人だと?急がなければならないな。でも何でそんな事になっているのだろうな…いや、今は作戦を考えよう。」

アールさんは作戦を立案した。





後衛一人が遠くから魔獣に気付かれないように範囲魔法で数を減らす。

レイン担当。



気付かれたら強い結界を張って襲撃に備える。



後衛一人が再び別の場所から気付かれないように範囲魔法で数を減らす。

エール担当。



気付かれたら強い結界を張って襲撃に備える。



少なくなって来たら、前衛組が突撃。
敵を殲滅する。

アールとウール担当。




「皆、準備はいいな!作戦開始っ!!」

「「「おおー!」」」

アールさんの号令と共に戦いが始まった。




レインSide

まずは俺の役目だ。

範囲魔法を使って数を減らす。
一気にこの平原を潰してもいいんだけど、中央には人がいる。
そして、普段は綺麗な場所だと言うから、そんな場所を壊すのは余りよろしくない。
そして、魔獣の血液を残せば、そこにまたブラッドウルフが現れる。
負の連鎖が起こり得る。
草原で火の魔法は論外だ。
その他の、血が出る攻撃もできれば避けるべきだ。
傷も無いまま無力化するのが一番。
正直、エールさんがここまで考えているとは思えない。
何となく、範囲攻撃の代表格、エクスプロージョンとかを咬ます気がする。
ならば、その時に出る血を俺がカバーする必要がある。
どうやって。

凍死作戦。

平原一帯の魔獣を氷漬けにする。
とは言っても流石にこの広い平原、全部やろうと思うと、アールさん達まで巻き込む可能性がある。
だから、自分の近くの魔獣は凍死させて、あとは平原全体を衝撃や熱では溶けないような薄い氷で覆う。使う氷は絶対零度……は、やり過ぎか……まぁ、できるだけ低い温度の氷を張ろう。
そうすれば、魔獣の足止めが出来ると共に、血が出ても、土に染み込んだりせず氷の上に落ちて、そして凍る。

実行!

「絶対零度…まではしなくていいけど、取り敢えず熱と衝撃に強い、低い温度の氷で平原全体を覆って、自分の近くの魔獣を氷漬けにするのと遠くの魔獣の足の裏を徐々に凍結させる!後は、魔獣の血とか体液も同様に氷漬けにする!えーと、人間が踏み込んだ瞬間に氷の結晶以外は消失!その後も、魔獣の血と体液は凍結対象!凍結魔法!!」

ぴしぴしぴしっ!かこんっ!!

まず、平原が氷に覆われた後に、魔獣に氷が纏わりつき、他の魔獣に纏りついた氷と結合を始め、ついには大きな氷の結晶が出来上がり、閉じ込めれた幾多の魔獣は凍死した。
一切の血を流すことなく。

そこら中から魔獣の叫びが聞こえる。
警戒しているのだろう。

俺を他の魔獣が襲うにも氷のせいで上手く走れないのと、近づいた暁には氷の結晶と一体化して結局、凍死する。

うーん、結界張る必要無くなったな。

まぁ、これで俺の役目は終わりかなぁ。




エールSide

いきなり平原がとても冷たそうな白い氷に覆われてレイン君がいる近くには大きな氷の花が咲いていた。
とても幻想的で綺麗…
次々とレイン君の方向へと向かう魔獣は足を滑らせていたりする。
そして、レイン君に近づけば近づく程、更に大きな氷の花が出来上がっていく。

凄い。
こんな魔法は見た事がない。
殆どの魔獣は足場が氷になって動けていない。

次は私が倒さなきゃ。
範囲魔法。エクスプロージョンを使う。
これだけ、氷が張ってあったら衝撃で氷が割れる事はあっても平原が焼ける事もないだろう。

「我が思いとともに、大きく弾けて燃えよ!火炎魔法!エクスプロージョン!!」

どごごごごん!!

沢山の魔獣の肉片が舞う。

「!」

しまった。
血の事を考慮していなかった。
このままでは、ブラッドウルフがまた集まってしまう。
どうにかしなければ…

そう思っている間にある事に気がついた。
氷が溶けてもなく、割れてもいない。
そして、血や、血のついた肉片はレイン君の所にある物と同じような、小さな氷の花によって凍結されていた。

普通ならば、惨劇な血生臭い戦場になるはずの場所が、幻想的で美しい場所を保っている。

まるで1つの美術作品のように、平原は氷の草原へと化した。

一先ず、魔法を何回か打ち終えた私は結界を張って待機していた。

「あれって全部レイン君の魔法なんだよね、凄いや、教えてもらいたいなぁ」

レイン君は格好いい。そして、可愛い。
見た目とは違ってとても、考え方が大人だ。
もっと甘えても良いのにな。

……私は会ったばかりの相手に何を考えているのだろうか。
でも、年齢は関係ないよね。
もっと仲良くなりたいな。

ぱりんっ!!

ふと私の後ろで音がした。
結界が……割れた?

その音を聞くと同時に私は何か重いものに押さえつけられ自分の骨が不規則に折れる音を耳にしていた。
痛くて苦しくて辛くて悲しい。
いきなりで理解ができないが、1つ分かる事がある。
私は死ぬ。

そして…
私は意識を失った。




アールSide。withウール。

目の前が一面氷で覆われている。
私達は、氷の大地へと踏み出すべきなのか分からないがまだ、凍結していない魔獣や、爆発に飲み込まれていない魔獣も沢山いる。
だが、一瞬で。あれだけいた魔獣が数えられるくらいには減った。
この量なら私達でもできる。
そう思い、氷の上に滑らないよう一歩踏み出す。

しゅーー

すると、平原を覆っていた氷が綺麗に水を残す事なく消えていき、いつもの綺麗な草原へと戻っていた。
その草原にはいくつもの色々な大きさの氷の結晶が生えている。
まるで、花のようだ。
何故、氷が消えたかは分からない。
でも、これで足場はしっかりとした。
そして何故か魔獣は動かない。
いや、動けないように見える。
チャンスだ。
だが、斬ったとして血はどうする。
ここまで考えていなかった。
何か方法はないだろうか…

「血は凍るので気にせず斬ってくださーい」

遠くからレイン君の声が聞こえた。
かなり離れているはずだが、はっきりと聞こえる。
何故だろう。
まぁ、良い。
血が凍る。
そんな事ができるのか?
そうは思ったがこの状況で嘘なんて付くはずがない。
やるか。

「いくよ!ウール!」

「うん!」

ざく!

ぴしししっ

斬った魔獣は瞬く間に凍結され、飛び散った血もしっかりと凍結されていた。

原理は分からない。
でも、動かない相手など敵ではない。

こうして、私とウールは残った敵を殲滅させた。


ドスンっドスンっ。

何かが後ろから近づいてくる。

私は振り返った。

そして、目に入って来た光景に何も言えなくなった。

ウールが倒れていた。
血だらけになって。

何かにやられた。
そうとしか、考えられない。

私は駆け付けようとした。
すると、私の視界の右から大きな何かが凄い風圧と共に近づいていた。

私にはハッキリと見えた。

睨むような目。
大きな顎。
大きな尻尾。
素早く走る巨体。

Aクラスの魔獣。
地竜だ。

私は物凄い圧力を体に感じて吹き飛んでいた。
意識は薄れていく。
体が軋む。

私は意識を失った。




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